1500億円超の投資マネーを集めた「みんなで大家さん」の成田プロジェクトに新たな懸念が浮上した。用地の4割を保有する成田国際空港株式会社(NAA)との借地契約が間もなく期限を迎えるにもかかわらず、その延長に向けた交渉が滞っているのだ。3万8000人の投資家が固唾をのんで見守るなか、事業主である共生バンクに対する監督当局の視線は厳しさを増している。


 渦中のプロジェクトは、「GATEWAY NARITA」の名で共生バンク(本社:千代田区)が計画する大型複合開発(以下、成田PJ)。目下、成田空港近くに位置する、東京ドーム10個分の開発用地で造成工事が進行中だ。この用地の一部をファンド資産として組み入れた「みんなで大家さん シリーズ成田」は、グループの預かり資産約2000億円のうち、1500億円超を占める同社の主力商品である。

 今回、新たに明らかになったのは、NAAからの借地をめぐるトラブルの存在だ。現行の借地契約が期限を迎えるのは今年3月末。本稿執筆時点で約1カ月半後に迫っているにもかかわらず、その延長に向けた見通しが立っていないとみられる。対象となる借地は18万m2と、全体面積46万m2のうち4割に及ぶ。その分布を下の図に示した。

計画地内に借地が散在
計画地内に借地が散在
不動産登記簿、行政資料などから日経不動産マーケット情報が作成(国土地理院地図を加工)
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「GATEWAY NARITA」の建設予定地(2025年1月撮影)
「GATEWAY NARITA」の建設予定地(2025年1月撮影)
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 こま切れの借地が、主要な計画道路を含む開発用地の各所に入り組んで点在しており、NAAとの契約が、いわばプロジェクト全体の生殺与奪権を握っていることが分かる。もし契約の延長に失敗すれば、すでに遅れが懸念されている工事が、全面停止を余儀なくされる可能性も現実味を帯びる。

 なぜ、ここに来てプロジェクトを揺るがす事態が発生しているのか。公表事実は少なく不明点も多いが、これまでに裁判資料の閲覧などで得た情報を交えて、その経緯をかいつまんで紹介してみよう。


度重なる工事遅延に態度を硬化

 成田PJ の用地は、空港A滑走路の延長線上、約1kmの航路直下にある。特別法に基づく騒音対策の一環として旧空港公団やその後身のNAAが取得し、移転を希望する住民の便宜を図ってきた。一部が農地として貸し出された以外、荒れるがままに放置されてきた山林や原野である。

 共生バンクが、この地の開発許可を成田市から取得したのは2019年のこと。周辺ですでに購入済みの用地とあわせ、土地の造成に着手したのは翌2020年の7月だ。前後して、NAAとの間で3年間の借地契約が締結された。

 当初、造成工事の完了は2022年を予定しており、上記の借地期間には十分に余裕があるようにみえた。工事中の土地は収益を生まないことから、この間の地代は通常の水準よりはるかに安く抑え、完了後には改めて50年間の定期借地契約を結び直す計画とした。

 ところが、プロジェクトは着工後間もなく遅れを見せ始める。2024年中に予定していた施設開業は数度にわたる大幅な計画変更を経て、2027年冬に延期された。共生バンクによると、造成工事は今年10月の完了をめざして進行中だ。

 NAAとの借地契約についても、工事期間の長期化に合わせ一度は今年3月までの延長が決まったが、その後の再延長について、今に至るまで手当てされてこなかった事情は不明だ。本誌が周辺取材から得た情報によると、NAA側は工事の進捗状況などに対して共生バンクから明確な回答が得られないことに対し、契約の再延長に応じない可能性を警告しつつ強い口調で質問を投げかけているという。

 国の全額出資を受けた公益企業であるNAAは、航空行政を監督する国土交通省の意向や世論への影響を慎重に見極めながら対応を判断するとみられる。広報担当者は、本誌の問い合わせに対して回答を留保した。


投資家には「寝耳に水」

 成田PJを巡り、こうした借地リスクの存在が公になったのは今回が初めてとみられる。むしろ、上記借地契約の存在自体、知る人ぞ知る情報といえるだろう。本誌が手元で確認する限り、「大家さん」が商品パンフレットや契約書といった投資家向け説明資料、公式サイトなどで借地の存在を分かりやすく説明してきた形跡はない。

 それどころか、シリーズ成田各号の重要事項説明書には「本事業の対象不動産の借地権は存在しません」との一文さえ存在する。この文言から前述の借地の存在を想起するのはほとんど不可能だ。公開情報の範囲で確認できた唯一の関連記述は、グループ代表の栁瀨氏による自著内での言及のみである。

 投資家に対する不十分な情報開示は、これまで行政も繰り返し指摘してきたところだ。過去3年あまりにわたってシリーズ成田の各号を購入してきた投資家の一人は、本誌の問い合わせに対して「成田PJ用地内に借地があることは、今まで全く知りませんでした。口頭での説明も記憶にありません」と話している。

 従来「大家さん」対応の最前線を担ってきた大阪府、東京都に加え、国側の動きも慌ただしくなってきた。

 不動産特定共同事業法(不特法)を共同で所管する国交省と金融庁は、昨年10月以来、事業者を対象にした一斉調査に乗り出している。各都道府県の不特法許可に関わる部署(一般には宅建担当)の協力も得ながら、全事業者に文書で回答と資料提出を求めるもの。具体的には、開発プロジェクトの用地を対象としたファンド商品の有無や、それら商品における計画変更の事例と投資家説明の中身を尋ねている。報告徴求命令と呼び、指示に従わなかった場合、業務停止処分が下ることもある。

 不特法、小規模不特法の営業許可を持つ事業者は全国で300社あまり。このうち半数程度がクラウドファンディングを含む、不動産小口化商品の組成や販売を手がける。「規制緩和に伴い多くが参入したが、利回りを追求するあまり、リスク管理や投資家保護体制に懸念を抱かせる事業者が目立つ」(不特法ファンド関係者)。

 第2、第3の「大家さん」につながる動きはないか。当局は厳しい目を光らせている。


目詰まりする“香港ルート”

 国内での新ファンド組成がままならない中、成田PJの現金化を急ぐ共生バンク。同社が海外で模索する資金調達ルートには、投資会社ロイズ・キャピタルを通じた「米国ルート」(関連記事)、SPAC(特別買収目的会社)上場を通じた「英国ルート」(関連記事)に加え、これまで本誌で取り上げてこなかった「香港ルート」が存在する。

 共生バンク代表の栁瀨健一氏は2023年夏、複数の関連企業を通じて香港市場上場の不動産デベロッパーを買収。この会社の社長に就いたもう一人のグループ幹部と共に、実質的なオーナーに収まった。その後、日本共生集団(Japan Kyosei Group)と改称した同社は昨年6月、英バージン諸島籍の投資ビークルを通じて、「成田ゲートウェイプロジェクト3号」など四つのSPCを4億香港ドル(約80億円)で買収する計画を発表している。

日本共生集団のウェブサイト
日本共生集団のウェブサイト

 日本共生によると、その目的は国際的な航空ハブである成田でのホテル開発事業への参入。SPC4社が保有する土地の価値は、同社が依頼した鑑定評価を引き合いに700億円を下らないとした。栁瀨氏らによる買収前、日本円換算で20億円あまりにすぎなかった日本共生の時価総額は、発表を機に、一時500億円ほどに膨れ上がった。

 なお、約46万m2の成田PJ用地内には、シリーズ成田1号〜18号としてファンド化された土地やNAAの土地のほか、共生バンクグループが未販売の在庫として保有する土地5万m2強が存在する。詳細は不明だが、上記の目的はこれら残地の処分と、株式市場での話題作りを兼ねたものとも考えられる。

 翌月、計画の延期が発表されると、以降、4度にわたり延期が続いた。日本共生の株価は再び低迷し、記事執筆時点で買収はいまだに実現していない。

(「日経不動産マーケット情報」2025年3月号より。購読者限定のPDF版はこちら→