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「赤いきつね」の件を見ていて思うことがいくつかある。自分はこれがアニメ表現や広告表現が変わっていくひとつのきっかけになるといい、と思っている。 まず思うのは、「性的」という言葉の意味について共通の理解ができていないことだ。「そこまででない」と表明している人たちの多くは、「性的」ということばを「性欲」に関するものと捉えていて、この動画を「性欲を刺激する要素はない」あるいは「ポルノグラフィックではない」ということを言っているのだと思う。一方、この動画を「性的だ」として「気持ち悪い」と表明する人の多くは文字通りこの世界の「性」差の話をしていて、とくにこの動画の女性の描かれ方に強い「男性のまなざし(male gaze)」を感じ、「性的だ」=「男性のまなざし(male gaze)がある」ということを指摘しているように思う。リアリティに関する指摘(現実にこういう食べ方はしない)の多くも、アニメに刷り込まれたまなざしの話をしていると感じる。さらに「男性が職場で残業している/女性は家で映画を見て涙を流している」というジェンダーバイアスの問題も重なっている。そこがずれたまま「性的である/ない」というかみ合わない話が行われているところがある。 もうひとつ思うのは、単にこの「赤いきつね」の動画だけが突出して問題だというよりも、アニメ表現やCM表現に長らく存在していたこの「男性のまなざし(male gaze)」やジェンダーバイアスの問題が、たまたまこのタイミングで噴出しているということだ。だから通常の炎上ほどは「不買だ」とか「取り下げろ」とかいう人は(いないことはないが)少ない。作り手を責める人も少ない(偶然のタイミングであって誰にでも訪れた可能性があるし、そもそも当然このようなときにクリエイター個人を責めるべきではない。クライアントの要望と業界慣習の中で仕事をしているはずだし、だからこそ製作者のジェンダーとは関係ない問題として語られている)し、個人的には広告主にマイナスの感情はない(当然マイナスの感情を持つことも自然で自由だし、表明しても何も咎められるべきことはないと思う)。ずっとこうだったから、さすがにもうこれをきっかけに、アニメも広告も、いい加減変わろう、という立場の人が多いと感じる。自分もそうだ。 またやや視点がずれるが、この炎上をきっかけにやや広がった「非実在型ネット炎上」ということばについても思うところがある。もともと小さな話題を炎上としてメディアが書くことで起こった炎上という意味のようだが、炎上とは文字通り小さな火がどんどん大きくなることであり、「非実在型」というワーディングは「小さな声」を矮小化することになる。やや説明的過ぎるかもしれないが「メディア増幅型」とでもしたほうがよいのではないか。実際、今回の「赤いきつね」の件は最初は「小さな声」だったかもしれないし、メディアの力で大きくなったかもしれないが、しかしこれだけ議論が続いているのは、アニメや広告の中に過去からずっと続いてきた見えにくい「性的」な問題が詰め込まれていたからだと思う。多くの不毛な炎上とは違い、いろんな人の意見を読んで発見することも多い。 自分自身も勉強中の男性であり、この投稿にもまたバイアスがある可能性は否めない。自分も学ぶきっかけになればと思って投稿しているし、せっかく大きくなったこの話題が、世の中の意識が少しでも変わるきっかけになればと思っている。アニメの動きはすべて人間の表象であるから人間側が変われば変わるし、広告の歴史を振り返ってもそこで果たされるべき企業の社会的責任があるので組織の意識が変われば変わる。そしてメディアの側は、PV目的で小さな火をいたずらに炎上させるのでも、既得権の側について特定の炎上を消そうとするのでもなく、焚き火のそばに座る人のように、社会を照らし温める役割として、問うべきことを問いつつ個人を不当に傷つけないよう、適切に火を扱う責任を持つべきだと思う。
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