「オトシマエ」をつけてやる
――「あと五年かかるか、十年かかるかわかんねえけど、おまえら全員、土下座させてやる!」
広島時代に「おばあちゃんが貧乏しながらでも買ってくれた」ドラムセットがあったのだが、いつのまにか、なぜか親戚のおじさんの家に移されている。返せと言っても返してくれない。あげくの果て、おじさんから上から目線で「売ってやる」と言われた直後に、矢沢永吉が放った言葉だ。
あなたも仕事に関しての夢や希望を持っているはずだ。しかし、この世知辛い世の中、それらが叶う確率は、正直高くない。
しかしそれでも、人事面談、いや日々毎日そこかしこで、とりあえず言葉として語っておく。そうすると言葉が既成事実となって、夢や希望に向けて、少しずつ物事が動き出していく。そしていつか、語ったことを実現してオトシマエ(『成りあがり』頻出語)を付ける。
そう、有言実行。矢沢永吉は有言実行のプロフェッショナルだ。不言実行なんて、誰も気付いちゃくれない。もう流行らない。若き矢沢永吉のように、これからは有言実行しかない。続いて2位。
――「永吉、お疲れさん。もうちょっとの時間、旅、長いから頑張れよ。きょう一日は、ともかくごくろうさん。おまえも最近やつれてきたな」
ソロとして成功した後、風呂の中で鏡を見ながらつぶやくシーン。勝って勝って勝ちまくってきた矢沢が、ちょっとだけ弱みのようなものを見せる、ほのぼのといいシーンである。