ロシアによるウクライナ侵攻開始から24日で3年となる。現地はいまだ危険な状況が続いており、本県などに避難する人々は先の見えない状況や母国にいる家族らの安否に不安を募らせている。ウクライナ不在の和平交渉の動きもみられる中、疑問の声も上がる。
「領土と生活取り戻す結末を」
「怒りや涙、悔しさしかない」。福島大大学院共生システム理工学研究科で学ぶ首都キーウ出身のカテリーナ・コレパノバさん(31)は、終わらない侵攻への憤りを語る。いつ攻撃が起きるか分からない中、母国の両親が電話の度に「何もない。大丈夫」と繰り返す声に、心を痛め続けている。
米国とロシアがウクライナ抜きで停戦条件などの協議を始めたことにも疑問しかない。「傷ついたウクライナを置き去りにして、無傷の国同士で何の話ができるのか。奪われた領土と住民の生活を取り戻すことしか望む結末はない」
放射性物質が生物に与える影響を専門に勉強してきたが、「学びたいだけ」という思いは侵攻で踏みにじられてきた。大学生活を送っていた母国南部のクリミア半島が2014年にロシアに併合され、同所を拠点に研究を続ける計画を断念。その後、チェルノブイリ原発事故の被災地で野外調査や論文執筆を行う日々も今回の侵攻で奪われた。
福島大環境放射能研究所との共同研究に関わった縁で、昨年10月から福島の地で学ぶ。コレパノバさんは「未来のために戦いたい」と、研究の成果を母国の復興に役立てることを誓う。
県内支援団体、精神的なケア
一方、県内の支援団体も活動を続けている。白河市の一般社団法人「こころのケアまごころ」は、ロシアとの国境近くにあるスームィに電灯やカイロなど支援物資を届け、国内では避難者の多い東京や大阪の避難者を訪ねて、精神的なケアや行政手続きの補助を行ってきた。玉手幸一代表(77)によると、避難直後は不安感にさいなまれていた人も多くみられたが、「日本で就職したり結婚するなど生活を落ち着けようとみんな頑張っている」と話す。
外務省の「退避勧告」が発令されているため、現在は現地で活動できないが、玉手さんは「現地を訪れることができれば、復興のために傷病者のケアに取り組みたい」と力を込めた。
県内避難者は6人
出入国在留管理庁の発表する1月31日時点のウクライナ避難民の在留者数(速報値)は1982人で、このうち626人が東京におり、神奈川県や大阪府、千葉県などにもそれぞれ100人超が在留する。県によると、本県の避難者は侵攻開始から約1年後の23年2月21日時点で17人いたが、昨年2月19日時点では10人で同12月12日時点には6人となった。減少傾向となっており、県は「帰国したほか、県外や第三国に移動していたりするケースがある」(国際課)としている。
県は避難者に県営住宅の無償提供や「ふくしまウクライナ避難民支援金」で募った浄財を支給している。支援金は3月末まで募っている。問い合わせは県国際課(電話024・521・7182)へ。