志望する大学の合否が判明する前に滑り止めの大学の入学金を納めなければならない「二重払い」の経験がある学生が4人に1人いるとの調査結果を、有志の若者グループが公表した。入学金の二重払いが発生しないよう受験を回避したケースもあり、「経済力によって受験機会の不平等が生じている」と改善を求めている。(山田祐一郎)
◆「大学受験自体が不安をあおることでビジネスとなっている」
調査を行った「入学金調査プロジェクト」が1月22日に記者会見して発表した。昨年10〜11月、3年以内に大学受験した学生を対象にアンケートを実施し、1039人から回答を得た。このうち入学金の二重払いを経験したのは281人(27.0%)。また、「入学するかわからない段階で入学金を支払う可能性がある入試を選択肢から外した」との回答は141人(13.6%)に上った。二重払いを問題視する学生は9割近くに上った。
「実際に二重払いしたり、志望先を変更したりするなど合わせて大学生の約4割が当事者となっていることが判明した。この数字はかなり大きい。保護者世代から続いている問題だ」と話すのは同プロジェクトのメンバーの森田友華さん(27)。学習塾に勤務し、学生が経済的な理由で志望校を悩む姿を目の当たりにしてきた。「国立大を目指す場合は、多くの私立大の入学金納付の締め切りが間に合わない。学生が納得しなくても、保護者が負担している。大学受験自体が不安をあおることでビジネスとなっている」
文部科学省によると、2023年度の大学の入学金は、私立大学の平均が約24万円、国立大が28万円、公立大が37万円。全国大学生活協同組合連合会が2024年度に全国約140の国公私立大新入生の保護者約2万6000人を対象に実施した調査では「大学受験から入学までにかかった費用で予定と違って困ったこと」として22%が「入学しない大学に入学金や授業料を払った」と回答した。
「こちら特報部」の取材に応じた20代の女性は、9年前に自身の大学受験で入学金の二重払いを経験した。第1志望は国立大だったが、私立大を4校併願した。「第4、5志望と立て続けに不合格となり、私も家族も大パニックとなった。私立大で唯一合格した第3志望の入学金は迷わず親に払ってもらった。30万円だったと聞いている」。第1志望の国立大に合格し、この30万円は戻らなかった。
◆「裕福な家庭は二重払いしていろんな大学を受験できるけど…」
同プロジェクトの活動を知り、入らない大学へ入学金を払ったことへ疑問がわいた。「当時は30万円の重みも実感できず、第1志望の試験を控え、考える余裕もなく受け入れていた。冷静に考えればおかしい」
現在、公立高校で教師をしている女性は、教育現場でこの問題に再び直面している。「私立大で併願が可能な推薦型受験が増えている。年内に推薦合格をもらって入学金を払い、一般入試で難易度の高い学校にチャレンジできる。教師としては、生徒にまず推薦を勧めたくなる思いもある」と複雑な心境を口にし、こう強調する。「自分の時代と比べても入学金を巡る状況は深刻になっている」
同グループは、入学金の二重払いが貧困家庭の受験機会を奪う恐れがあると主張する。森田さんは「裕福な家庭は二重払いしていろんな大学を受験できるが、その選択肢がない家庭もある。経済力によって受験機会に不平等が生じている」。また、入学直前まで追加合格や補欠合格がある現状も問題視する。「志望順の高い大学に追加や補欠で合格し、短期間で二重払いの判断を迫られるケースもあり、規制が必要だ」と訴える。
◆2006年に最高裁が示した判断は
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