ロシアによるウクライナ侵略から24日で3年。日本に避難してきたウクライナ人の滞在が長期化する中、支援のあり方にも変化が生じている。当初は生活支援が中心だったが、戦争の長期化とともに定住支援へとシフトし、多くのウクライナ人が日本での自立を求められている。世論の関心の低下や支援離れなどの指摘もあり、避難したウクライナ人は「戦争はまだ終わっていないことを理解してほしい」と訴える。
母国で仕事難しい
「将来についての計画が立てられない日々を送ってきた」と振り返るのは、戦争開始直後の令和4年3月に来日したレヂコ・スヴィトラナさん(21)。日本経済大(福岡県太宰府市)の支援で3年間、ウクライナで始めた日本語を勉強しながら、日本舞踊などの文化にも触れてきた。
卒業を3月に控え、祖国に戻りたい気持ちはあったが、戦争が続いている母国で仕事を見つけるのは難しい。「貯金をして家族を支えたい」と日本での就職を決意した。
日本の学生と同様に就職活動をし、物流会社に就職が決まった。日本語をある程度話せるようになったとはいえ、仕事面での不安はぬぐえない。それでも、「日本で学ぶ機会や就職する機会をいただき本当に感謝している。緊張もしているが頑張りたい」と前を向く。
選択迫られる学生
ウクライナ人学生への支援の状況を調査している日本学生支援機構によると、これまでに少なくとも国内の約60大学が学生の受け入れや学費減免など生活面でのサポートを行っている。
日本経済大も交流協定を結ぶウクライナのキーウ国立言語大などから計74人の学生を受け入れた。今もスヴィトラナさんを含めた24人が在籍。クラウドファンディングも活用し、授業料の全額無償化や食事付きの寮の提供、通院の手助けなどの支援を続けてきた。
しかし、戦争の長期化で、避難してきたウクライナ人学生はスヴィトラナさんのように日本に残るかどうかを含め、進路の選択を迫られている。
同大は日本での就職を希望する学生が多いことを踏まえ、就職活動などを通じて自立を促すことに力点を置いた支援に乗り出した。松崎進一准教授は「支援がなくなっても、自立して生活できる強さを持つように指導している」と説明する。
約150社の企業に求人を出してもらうよう呼び掛け、合同企業説明会を開催。学生のメリットになればと、ウクライナの協定校と同大の両方の学位を取得できるプログラムも立ち上げた。学生を個別にフォローするきめ細かい対応により、希望者全員が内定を獲得。大学とウクライナ人学生の努力によって長期滞在が可能となっている。
アルバイトで生活
侵略開始当初は国内企業にもウクライナ人採用の意欲が高かったが、徐々に採用枠は減少。物価高が続く中、滞在に欠かせない民間団体などからの生活費支援も縮小し、アルバイトを余儀なくされる学生も少なくない。
スヴィトラナさんは「戦争が続いているので家族から仕送りはもらいにくい。学生はアルバイトを頑張らないといけない。戦争はまだ終わっていないことを分かってほしい」と訴える。
ウクライナではいまだに多くの学生が教育を受ける機会を奪われているとの指摘もある。このため文部科学省は日本政府が授業料などを負担する国費留学生として、ウクライナの大学生を年20人ずつ、5年間で計100人を受け入れるプログラムを今年度から開始。共同研究や研究者の交流を推進するなどの新たな支援策を打ち出している。(一居真由子)