繰り返し拡散する「女性にAED使用で訴えられる」 警察や弁護士の解説による正しい知識で救命を
弁護士「仮に裁判になっても、救命者が負けるとは考えにくい」
もし本当に女性へのAED使用で被害届が出て、裁判になっていたとしたら、非常に珍しい事例で関係者の間で注目を集めたはずです。 JFCは交通事故の裁判を多く担当し、AED使用の関連法に詳しい、よつば総合法律事務所副代表の小林義和弁護士に取材しました。 Q)男性が女性にAEDを使用した後に、性被害などで女性側から訴えられた事例を聞いたことは。 A)判例秘書INTERNETやTKCローライブラリーなど、プロ向けのオンライン判例検索サービスで検索した限り、そういった事例は見当たらないです。弁護士としてそのような相談を受けたり、周囲で見聞きしたこともありません。 Q)もし刑事や民事で訴えられた場合、どうなりますか。 A)刑法第176条の「不同意わいせつ罪」に該当するかどうか等が問題になります。 不同意わいせつ罪のわいせつな行為に当たるかどうかは、救命行為から明らかに逸脱するような性的な意味があるかどうか、処罰に値するものかどうか等を考慮して判断されます。その時代の性犯罪に対する社会の一般的な受け止め方を考慮しつつ、客観的に判断されるべきとされています。 救命目的でAEDを使用する行為は、性的な意味があり不同意わいせつ罪として処罰に値する行為とは言い難いので、不同意わいせつ罪は成立しないと考えられます。裁判では、主観ではなく証拠が大事なので、救命目的以外の別の意図でAEDを使用した証拠がない限り、裁判に負けるとは考えにくいです。 Q)とはいえ、やはり訴えられるリスクはゼロではない? A)訴えることは自由なので、理論上リスクはゼロではありません。でも、これだけ検索しても類似の判例が見当たらないということは、刑事でも民事でも、訴えた側が勝つのが非常に難しいことを意味します。 訴訟の相談を受ける際、弁護士は、その裁判で勝てる見通しがどの程度あるかを相談者に伝えることが多い。訴訟には多大な費用と時間がかかる上に、裁判で負けると、訴えた側のダメージは非常に大きいです。自分がもし相談を受けたら、そうしたことも相談者に伝えて、よくよく考えるように促します。