「ブチ殺してやるッ‼︎」
『ははっ、ははははははっ‼︎ 我々を殺すだと⁉︎ そうか、
──────。
その瞬間、辺り一帯から音が消滅した。
いや、違う。ヤツが放つプレッシャーがそう知覚させた。
来る、分かる。身に染みた感覚。いつもの殺し合いの始まり。
そして、フラン=シェリー・サンクチュアリはその
直後、世界がひっくり返った。
これより先は異世界、無限の可能世界を許容する宇宙。
『
ゾワゾワゾワッ‼︎ と。
不気味な感覚に体が震え、鳥肌が立つ。
例えば、宇宙戦艦。
例えば、浮遊都市。
例えば、軌道エレベータ。
それ一つで
「……おい、まさかテメェはッ」
『我々は数多の
「そのSF兵器を全部一つの世界で手にしたってのか⁉︎」
そう、今から敵に回すのは正しく一つの文明。
『始めるか、
無数の異能。
即ちッ、俺の天敵……‼︎
『はははははははっ‼︎ 威勢がいいのは口だけか? 逃げてばかりだなッ、
異能、異能、異能、異能。
無数の
異能感知の感覚を信じるなら、その数は千を超える。
そして、それすらも第三位の本気の一端に過ぎない。
「ッ‼︎」
反射的に地面を蹴り、壁も蹴って二段ジャンプという不自然な軌道で飛ぶ。
その瞬間、ガガガガガガガガガガッ‼︎ と連射されるレーザーが地面を砕く。
ドローンの角度、異能感知が働くタイミング。どれか一つでも見落とせば、ほんの僅かでも反応が遅れたら、今頃俺の身体は穴だらけになっていた事だろう。
(異能の反応を辿れ。その先に、下手人がいるはずだ。何キロ先だろうとヤツを見つけ出し、必ずブチ殺して──)
『──我々がそんな暇を与えると思うか?』
…………ッ⁉︎ 読心能力⁉︎
超能力的な異能か? それとも、
今までの異能の傾向からして、恐らく高度に発達した文明のような異世界。
「
『………………』
「それも、思考してから読み取るまでに僅かだが
『……それで? 分かった所で何が出来ると言うんだ?』
「何だって出来るさ。馬鹿なテメェには想像つかねぇ事がよッ‼︎」
息を吸い、目を見開く。
頭を空っぽにしろ、本能に身を委ねろ。
俺ならできる。怒りで思考を満たせ。
(──────)
『……チッ、本当に
無心で洋服店のショーケースをブチ破る。
まずは射線を切る。本能のままに屋内へ逃げ込んだ。
…………だが。
『
カタカタカタッ、と建物自体が小刻みに振動する。
考えている暇はない。咄嗟に壁を破り、隣屋に飛び込む。
それと同時、洋服店は
「なん、だ⁉︎」
『《5437AL28:フォノンメーサー》。超音波を使用した熱量攻撃。電子レンジみたいなものさ』
「そっちじゃねぇ‼︎ 何でだっ、どうやって俺の考えを読み取った⁉︎ 俺は思考なんてしてなかった‼︎」
『
「…………は?」
勝ち誇るような、馬鹿にするような声色だった。
ここで俺に能力の説明をする必要はない。だけど、ヤツは嘲るように俺に告げる。
フランは俺を心の底から見下していたのだ。
『
《3933AB82:ラプラスカリキュレータ》。
それはクシャナですら理解できなかった六道伊吹の無限の可能性を全て読み切った最強の演算機。
反射的に攻撃を仕掛けようとして。
ズドンッ、と踏み出した足の甲を光線が撃ち抜く。
『六八七億八三九〇万二〇〇七通り。とても人間とは思えない、人間では数えきれない
「………………」
『
「……………………、」
『そもそも、
「……………………………………ははっ」
その言葉を聞いて。
思わず、俺は笑ってしまった。
「
一閃。
繊維レベルにまで細く伸ばした《
『………………あ?』
「本当に読み通りだったなら、俺は既に死んでんだろ。でも、生きてる。だったら、テメェが予測した未来はズレてる筈だ」
『そんな訳がない‼︎ 《3933AB82:ラプラスカリキュレータ》が演算を間違えるはずが──』
「なら、打ち込んだ情報が間違ってんじゃねぇのか?」
身体、精神、異能。
その全ての情報を打ち込んだとフランは語った。
……本当に?
確かに、短期間で身体が変わることは無い。
確かに、異能のそもそもの効果を変える事も出来ない。
だが、精神は?
「俺のッ、
「────ッ⁉︎」
異能の発生源を感知した。
ヤツはこの街にいる。
五〇〇メートル先ッ、一分も必要ねぇ‼︎
(ちょこまかとッ‼︎ 街全体を巻き込む攻撃ではッ、九相霧黎も纏めて
数秒の逡巡。
ドローン達が軒並み動きを停止する。
その一瞬で、感知した
(そもそも、なぜ
──
(
フランの脳裏に、とある
『余裕のある今、六道伊吹くんを殺すか。それとも、九相霧黎くんと殺し合って消耗した後に
(
気づいてももう遅い。
改めて情報を集める隙も、演算し直す時間も無い。
ゴッッッガッッッ‼︎‼︎‼︎ と。
壁をブチ抜く音がフランの耳に届く。
「よお、フラン=シェリー・サンクチュアリ」
「…………
「それが辞世の句でいいな?」
《
聖なる刃が肌に喰い込み、頸を斬り落とす。
──その、一瞬前。
「……………………っ」
ふっ、と
全てに諦めたかのように。
やっと、報いが受けられるとでも言うかのように。
(──違う。
咄嗟に、《
慣性の法則に反するような急制動。
痛む腕を無視して、俺は
ショッキングピンクの髪に、メイド服。
巫山戯た格好をした無表情の少女。
だけど、唇が青い。分かりづらいが、足が震えている。…………死に怯え、それでも抵抗できないでいる
間違いなく、異能の発生源は目の前の彼女だ。
コイツを殺せば、全ては終わる筈だ。
……でも、だけど。
(
本能がそう訴えている。
何もかもが違い過ぎる。ドローン越しに聞いた言葉と、目の前にいるコイツとでは。
「お前は誰だッ⁉︎」
「…………ぁ、わた、『ははははははははははははははははははははっ‼︎ 気づいたのか? だが──』」
「『────遅かったな?』」
後ろから、足音と共に声が聞こえた。
咄嗟に抱き抱え、彼女を庇う。
「がば、あッ⁉︎」
「……ぁ、なん、で」
背中が焼け焦げた。
だが、
なら、大丈夫だ。まだ擦り傷の範疇だ。
カツン、と足音が響く。
それも、一つじゃない。
二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ────足音は際限なく増えていく。
カツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツン、と。
「はぁ、はぁ、はぁ、何なんだ……どうなってんだッ、
ショッキングピンクの髪に、メイド服。
巫山戯た格好をした無表情の少女。
──
「『どうなっていると言われてもな』」「『やはり
口々に少女達は声を発する。
全員が第三位……
目の前のヤツらも俺が庇った少女と同じだ。
コイツらの背後に本当の黒幕が潜んでいる。
「『知らないか? 異能は
「…………テメェの?」
「『第三摂理──「
「…………?」
「『理解できないか? 憐れなほど脳の
……理解が追いつかない。
コイツの言いたい事が掴めない。
「『話が逸れたか』」「『つまり、異能は
「………………は?」
「『
「おい、待て。つまり、それは──⁉︎」
「『
最多にして、最強。
ここからが、本当の戦い。
「ッ、巫山戯んなッ‼︎ テメェ自身は何処に居やがるッ⁉︎」
「『言った所で何ができる?』」「『そもそも、
「………………ぁ」
声が、出なかった。
だって、俺は触れたモノしか殺せない。
だから、それはあまりにも致命的だった。
「『
フランの世界観、《
その異能射程は
「生存者リスト」
▽天命機関
ブレンダ
ジェンマ
ロドリゴ
レオンハルト
ファウスト
etc
▽転生者
六道伊吹
アドレイド・アブソリュート
二神双葉
三瀬春夏冬
九相霧黎
ディートリンデ
フラン=シェリー・サンクチュアリ
ルーアハ
▽一般人
栗栖椎菜
デッドコピー×20000
世界観:《
転生者:フラン=シェリー・サンクチュアリ
グレード:
タイプ:
ステータス:
強度-B/出力-D/射程-EX/規模-A/持続-D
異能:《13099AX5:アースシェイカー》、《5437AL28:フォノンメーサー》、《3933AB82:ラプラスカリキュレータ》、《3303DC01:デッドコピー》……etc
終末摂理:『拡散』