FOMCの資料ホルダーに注目
グローバライゼーションの成り行きは、FRBによる金利の増減でほぼ決まる。それを検討するのがFOMC(連邦公開市場委員会)だ。ワシントンのFRB本部の代表と、傘下の地域連銀の代表から成る委員たちが、緊急事態は別として、1ヶ月半に1度の割で集まり、基準の金利を検討し、結果を発表する。
その際に、いつもではないが、記者団に写真が配られる。それをしげしげと見ていると、大きな卓を囲む委員の前に、濃い青緑色の冊子、またはそれが入っているホルダーが存在するのに気づくことがある。情報管理のためには撮影の前に隠されねばならないのだが、その点について注意が欠けていたのだろう。
この冊子が極秘資料で、表紙の色から「ティール・ブック」と呼ばれる(ティールは雄のマガモの後頭部の羽の色)。
その中身は、委員の検討に供される利率の候補となる何通りかの数値、それを根拠づけるデータとその分析結果だ。これが外部に知れると、委員の顔ぶれと、彼らの日頃の言動からの推測などをからめると、発表されるであろう利率は、事前に見当がついてしまう。
というのは、候補の利率を導く「テーラー・ルール」は、博士課程の大学院生ならば、見当をつけられる程度の至って単純な数式だからだ。目標のインフレ率を決めれば、あとはそれを実現するために必要な利率の増減値、そしてGDPの増減見込み値(データとして公表)を利率に換算した値、この両者について適当に見計らって、それらを足すだけの実に大雑把な事柄なのだ。
そんなふうに簡単に推定できる数値である利率を、なぜ極秘扱いするのか。金融コントロールでは、一定期間内に目標のインフレ率を実現させるように、当局は市中を誘導する。そのためには、その一定期間より先は利率を不確定(機密)化し、期間内での早い目標達成を促す。つまり、利率の検討過程を秘密にしなければ、要するに、何が何でも将来は推定不能にして置かねば、金融行政が成り立たないというだけの話なのだ。
ちなみにFRBでの機密扱いは3段構えになっている。1)極秘:ティール・ブック、シミュレーション資料、FOMC発言記録。2)機微情報:内外経済の分析結果。3)内部限り:委員会の議案、経済データ。1が洩れると政策は効かなくなる。被疑者のロジャーズは1のシミュレーション担当主管だった。