伊藤詩織さん監督の映画、性被害めぐる集会の映像を一部許諾なく使用 非公開集会、発言者が削除求めたのに…

2025年1月14日 16時55分
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 ジャーナリストの伊藤詩織さん(35)が監督を務め、自身の性被害を調査したドキュメンタリー映画「Black Box Diaries」の中で、日本の女性記者たちが性被害などを語った非公開の集会の映像が、一部の発言者の許諾がないまま使われていたことが分かった。該当部分の削除を要求した女性は、昨年末に伊藤さんから「最新バージョンでは削除する」と伝えられた。だが、1月上旬から米パラマウントプラス(有料購読者・約7200万人)で公開された映画を確認すると、削除されていなかった。(望月衣塑子)

◆伊藤さんから「映画で使いたい」

 問題になっているのは、2017年12月に日本で開かれ、約30人が参加した非公開の集会の様子で、映画後半に約2分40秒ほど流れる。

民事訴訟の二審判決後に会見する伊藤詩織さん=2022年1月

 集会には伊藤さんも参加した。女性記者が「女性の意識だけでなく男性の意識も変わらなければ社会は変わらない」、別の女性記者も「20代のころ、詩織さんと似た経験した。公開すると記者の仕事も続けられなくなると思って黙っていた」と体験を振り返り、伊藤さんが感謝を述べている。
 集会の主催者によると、当初は英BBC放送(BBC)で放映するドキュメンタリーとして英の製作会社「TRUEVISION」が「伊藤さんを撮影したい。参加者は後ろから映すだけ」と参加者の許諾を得て撮影した。その後、伊藤さんから映像を映画で使いたいと申し入れがあり、主催者は「映っている参加者の許諾を得れば良い」と認めたが、全員の許諾を得たかは確認していなかった。

◆個人を特定されてしまう懸念

 他の参加者については、一部の人の正面の顔や横顔、後ろ姿でも個人を特定できる可能性が高いものもある。自身の性被害を語った女性からは許諾を得ていたが、映像に映ったり、発言したりしている女性らが「許諾していない」と話している。主催者は「会として今後、映像の削除を要望するかは、皆で検討する」としている。
 映画を巡っては、伊藤さんが元テレビ局記者から性加害を受けた場所とするホテルの監視カメラ映像が無断使用されていることが問題に。映像は加害者に損害賠償を求めた訴訟の証拠で、伊藤さん側とホテル側が「裁判以外では使わない」と誓約書を交わしていた。

◆「受忍限度を超える可能性が高い」

 この問題は、伊藤さんの民事訴訟で代理人を務めた弁護士が2024年10月に明らかにした。伊藤さんと元記者が乗ったタクシー運転手の姿や証言、刑事や伊藤さんの代理人弁護士との会話も無断で使われていると問題視している。

伊藤詩織さんの映画での映像の無断使用について「取材源の秘匿が守られていない」と批判する佃克彦弁護士=2024年10月、都内で

 この弁護士側の代理人となった佃克彦弁護士は「非公開で性犯罪被害などを話し合う場に参加する聴衆の姿を許諾なく使うことは、肖像の使用に関して受忍限度を超えている可能性が極めて高い」と指摘した。
 伊藤さんの代理人の神原元弁護士と師岡康子弁護士は取材に「悪質な人格攻撃を続ける相手方に対する回答義務は存在しないと思量しており、今後とも、その理解を前提に行動してください」と文書で答えた。
 TRUE社は取材に、「映像使用を伊藤さんに許可した」としたが、出演者の許諾を得たかについては期限までに回答しなかった。

 ※2025年2月7日午後3時追記 1月14日の記事公開当初、見出しを「伊藤詩織さん監督の映画、『性被害』語る女性の映像を許諾なく使用」としていましたが、「伊藤詩織さん監督の映画、性被害めぐる集会の映像を一部許諾なく使用」と訂正しました。集会の映像中で自身の性被害について語っていた女性からは伊藤さんが映像使用の許諾を得ており、そのことが見出し上、必ずしも明確でなかったためです。本文も一部修正しています。誤解を招く表現だったことをお詫びします。


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    みんなのコメント1件

  • ユーザー
    すとっく 2月2日23時14分

    もやもやします。AERA.dot(1月30日)で北原みのりさんも記事を書かれていましたが、権力者や加害者の映像を許諾なしで使うことは、公益性の観点でありうると思います。
    でも、今回は取材協力者や非公開の会合の映像(しかも女性記者)の許諾が一部ないのは、理解に苦しみます。国内上映に向けて、彼女たちから許諾をとたり、動画を加工・削除するなどの適切な対応をしてほしいと思います。
    それと、詩織さんの代理人のコメント「悪質な人格攻撃を続ける相手方に対する回答義務は存在しない」はとても攻撃的で下品と思います。詩織さんの言葉だとは信じられませんが、本当にこんな回答をしたのでしょうか・・・。

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