ロシア正教の特徴とその意味は:十字の切り方、ドームの形態、色、数など

Mikhail Klimentyev/TASS
 ロシアを訪れた観光客は、教会の金色に輝くドームと、内部のほの暗くて心地良い神秘的な雰囲気に驚くことがしばしばだ。しかし、それらの特徴や儀式のなかには、外国人にはよく分からないものもある。

1. キリスト教はいかに正教その他に分かれたか? 

 キリスト教は1054年に、東方教会(正教会)と西方教会(カトリック教会)に分裂した。いわゆる「大シスマ」だ。

モスクワ総主教キリル1世(左)とローマ教皇フランシスコ (右)

 この事件は、キリスト教の東西の神学的および政治的な差異が頂点に達し、噴き出したもので、差異はそれまで何世紀にもわたって広がっていた。

 以来、ローマ・カトリック教会の中心はローマにあり、教皇がその指導者だ。正教会は、現イスタンブール(旧コンスタンティノープル)に精神的中心がある。

 東西分裂後最初のコンスタンティノープル総主教は、ミハイル1世キルラリオスだ。コンスタンティノープル総主教は、正教会では、「対等な者のうちの第一の者」とされる。

 しかし、正教会とカトリック教会は互いに平和を保っている。

2. 正教会とカトリック教会の儀式の違いは?

修道士になるための儀式、サロフのセラフィム修道院、ヴォロネジ州

 カトリックと正教の儀式には多くの違いがある。

 最も明白なのは十字の切り方だ。カトリックでは左肩から右肩に、正教会ではその逆に切る。洗礼、クリスマス、復活祭(イースター)の祝い方もかなり違う。また、カトリックと正教は、それぞれ異なる暦で日々を送る。

3. 正教会のイコンは奇妙に見えるが…

プスコフクレムリンの至聖三者大聖堂の内装

 正教では、イコン(聖像)は「神の世界への窓」として認識され、そういうものとして崇敬されねばならない。これが、正教のイコン画家が神、聖母マリア、イエス・キリスト、聖人を「リアルな」比率で描かない理由だ。

4. 正教の教会のドームの形、色、数は何を意味するか

 正教会のドームには3つの形がある。

モスクワのクレムリンにある生神女福音大聖堂のドーム

 まず、丸いもの(半球型)は、永遠の神の王国を象徴している。兜の形をしたものは、神のために戦う覚悟をシンボライズ。そして、蝋燭と炎を思わせるものは、祈りと神の国での永遠の命を象徴する。

 蝋燭型(ネギ坊主型)のドームは、ロシアに特に適している。この種のドームは、冬に除雪する必要がない。雪はこの形のドームには付着しないからだ。だから、蝋燭型のドームが最も一般的だ。

 黄金色のドームは、その聖堂がイエス・キリストまたは正教の重要な祭日に捧げられていることを意味する。青いドームは、聖堂が聖母に捧げられているということ。緑のドームは、聖霊を意味し、通常は聖三位一体または聖人に捧げられた聖堂のいただきにある。銀のドームは、その聖堂に正教の聖人の名が冠せられていることを示す。

 聖堂が修道院に属している場合、ドームはふつう黒色だ。黒は修道院における服従を象徴する。モスクワの名高い聖ワシリイ大聖堂のように、一つの聖堂に様々な色のドームがあるのが最も珍しいタイプだ。これは、喜びに満ちた神の国「新エルサレム」を象徴。

 正教会には1~33個のドームがある。しかし、単一の教会が4つまたは6つのドームを持つことはない。

聖ワシリイ大聖堂

 1つのドームは神を象徴している。2つのドームは、イエス・キリストにおける人性と神性の一致を意味する。3つのドームは聖三位一体。5つのドームは4人の福音記者とイエス。7つのドームは7つの秘跡(機密)。9つのドームは天使の9階層。13はイエスとその使徒を表し、33はイエスが人間の世界で過ごした年数だ。

5. 正教会の中でなぜ女性は頭部をスカーフなどで覆うのか?

 多くの宗教や教会では、聖堂へ行くときは控えめな服を着ることが義務付けられている。いったん聖堂の中に入れば、何ものによっても、敬虔な思念からそらされてはならないからだ。これが女性が正教会の聖堂に入るときに頭を覆う理由だ。

 昔、ロシアでは、髪は身体の非常にセクシャルな部分とみなされていたので、既婚女性の髪は常に覆われていた。もっと知りたい方は、これに関する記事をご覧いただきたい

6. 正教徒はなぜ教会内で座らずに立っているのか?

 ロシア正教会の勤行に際し人々が立っていなければならないという厳格なルールはない。教会内には、高齢者、病人、障害者が座るためのベンチがある。にもかかわらず、ロシア正教徒はおおむね勤行中に立つ。それは、時には耐え難いほど長く、2~4時間におよぶ。ただし、ギリシャ正教会では、カトリック教会のように、すべての人が座れるようにベンチと椅子が用意されている。

 これはもっぱら伝統によるもので、いくつかの説明がある、まず、ロシア正教会は、すべての信者が精神上のいさおしを行わねばならないという点に、大きな重点を置いている。したがって、教会で祈っている間、信者は休息すべきではない。信者は神を礼拝しているのだから。

 また、初期のロシア正教の教会は非常に小さく(主に、冬季に暖気を保つことがとても難しかったため)、ベンチや椅子を置く場所がまったくなかった。

7. 正教会の主だった聖人は?

 隣人への思いやりに満ちた正しい生活を送っていれば、ロシア正教会の聖人になる可能性がある。また、正教の普及に貢献し、神に忠実に仕え、奇跡を起こしたり、キリスト教の信仰のために殉教した場合も、ロシア正教会により列聖されることがある。

『ムロム修道院の聖人』、17世紀

 正教徒も、カトリック教徒と同じく、洗礼者ヨハネ、聖ニコラオス(ニコライ)を崇拝するが、ロシア正教会にも独自の聖人がいる。最も崇拝されているのは、ラドネジの聖セルギイ、「聖なる愚者」の聖ワシリイなどだ。

 この記事では、最も崇敬されるロシアの7人の聖人を紹介する

 もっと読む:ロシア正教徒が信じる三つの魅力的な奇跡譚

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ブリャートのエヴェンキ族が先祖の装飾を再現

東シベリアの先住民族であるエヴェンキ族の人々はかつて、顔や手に刺青を施していたが、その手法は少々変わっていた。トナカイの毛を石や煤で黒く着色し、それを針に通し、肌に直接縫い付けて様々な模様にした。

Zorik Darbakov

 こうした刺青を持つ者は「縫われた顔」と呼ばれ、18世紀の民俗学者ヤコブ・リンデナウとヨハン・ゲオルグ・グメリンの記録に残されている。

 こうした模様を再現するべく、フォトプロジェクト「縫われた顔」を実施したのが、ウラン・ウデ在住の友人グループである。オリガ・ダシーエワ、オリガ・イメーエワ、ダリヤ・バハノワ、ルスラン・ワチェラノフ、エレーナ・ツィディノワの5人組は、エヴェンキ族文化の研究と保存を行っている

オリガ・ダシーエワは語る:

「タトゥーはメイクアップ・アーティストに描いてもらいました。エヴェンキ族の刺青については聞いた事がある程度だったので、この特徴的な文化を実体化させてみたかったのです。最近では、若手ミュージシャンのULTAN KAI(マクシム・カラムジン)が私たちのプロジェクトに触発されて、刺青を施しました」。

 刺青の模様は、トナカイの角、小道、タンバリン、偶像などである。各々の社会的ステータス(狩人、トナカイ飼い)を表すほか、悪霊除けの護符としての役割があった。

 こうした特徴的なエヴェンキ族の模様は、現在では刺繍や骨彫刻に見られるのみで、刺青は行われていない。

 研究者によると、このような伝統はヤクートやチュクチ、エスキモーなど、他の北方諸民族にも見られる特徴だという。

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「ものさし と まなざし」:日露建築家ユニットKASAの個展が東京にて開幕

KASAは、東京とモスクワを拠点に活動する建築家ユニット。その初の個展では、国籍も性別も異なるふたりの「ものさし」と「まなざし」との間に生まれる往復運動、KASAのこれまでの歩みを主にドローイングとテキストで綴る。

KASA / KOVALEVA AND SATO ARCHITECTS 提供

日露両国で幅広く活動するKASAはロシアのアレクサンドラ・コヴァレヴァと日本の佐藤敬による建築家ユニット。

 ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展。1895年の第1回開催以来、連綿と続く国際的な美術の祭典のために、恒久パビリオンを現地に所有している国もある。ロシアもその1つで、ロシア館は1914年にアレクセイ・シューセフが設計した。その傑作建築を建造当初の姿に近い形で蘇らせるべく、改修設計を担当したのが、日露建築家ユニットのKASAだ。ロシア館は第17回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展で特別表彰を受賞した。

 日露両国で幅広く活動するKASAはロシアのアレクサンドラ・コヴァレヴァと日本の佐藤敬による建築家ユニット。2022年、2023年と小石川植物祭を企画して総合ディレクターを務め、好評を博した。

 こうした成果も含め、KASAの2人の足跡と世界観を詩と絵、写真や建築模型で表現した初の個展「KASA展:ものさしまなざし」が東京青山で開催されている。

 展示されたキャンバスの裏に詩が綴られ、絵と併せて淡いながら包容力ある色彩に満ちた空間となっている。

 同時に、否応なく自然に切り込まざるを得ない建築に対する逡巡を感じると同時に、それでもなお追及する建築の温かさを想像させる。会場に流れる小石川植物祭の映像からは、KASAの制作姿勢の原点も垣間見えるだろう。

建築家ユニットKASAの「KASA展:ものさし と まなざし」は東京都港区のPRISMIC GALLERYにて開催中。会期は2025年3月2日まで。

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