原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

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八五話:血路界通/Point_EX

 

 

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「君はもっと理不尽だった。君はもっと滅茶苦茶だった。私の未来予測を超え、常識にも物理法則にも縛られない暴君だった。……それが、今ではこの体たらくとは。私を殺した頃の番外位は何処へ行った?」

 

 (あざけ)るように、(なじ)るように。

 アダマスは折手メアを傷つける言葉を放つ。

 

「君達は私には勝てない。今の番外位では私の足元にも及ばない。単純な能力(スペック)の差と相性によって、伊吹は私に殺される」

「…………ッ」

「唯一の勝ち筋は《主人公補正(プロット・アーマー)》の活用だが、その異能には番外位の精神の影響を強く受けるという弱点がある。どうして一度君達を見逃したと思っている? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「く、そが……ッ‼︎」

 

 脳を揺さぶられた。

 俺の意思は折れちゃいないのに、まるでコントローラの接続が切れたみたいに身体が動かない。

 

 アダマスは俺達を見下して畳み掛ける。

 それは慢心故の言葉ではない。

 油断なく、折手メアの心を折るための言葉だった。

 

「君達の抵抗は無意味だ。この世界は終わる。それは既に確定した。たとえ私の予測を超えて第一位の殺害に成功したとしても、消滅した宇宙は元に戻らずこの地球は自壊する。どう足掻いてもこの世界(ループ)は救えない」

「………………、」

「だから次の世界(ループ)に託すしかないが、『白紙』の摂理による繰り返し(ループ)は無限ではない。世界には容量がある。世界は有限しか許容できない。いつか必ず、世界(ループ)は崩壊する。ならば、無駄な歴史を続ける余裕などない。一度でも多く試行回数(ループ)を増やすために、ほんの僅かでも世界が救われる可能性を上げるために、滅びが確定した世界(ループ)は速やかに切り捨てなければならない」

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ッ」

 

 正義の極地。

 世界を救うために世界を滅ぼす。

 

 ああ。きっと、アダマスが正しい。

 俺達は間違っていて、世界からしたら害悪に過ぎない愚行をしているのだろう。

 

 

()()()()ッ、()()()()()()()()()()()()()()()()‼︎」

 

 

 だけど。

 折手メアは折れない。

 

「ボクには未来なんて視えない。言葉の内容を判別できるだけの脳味噌もない。だから、ボクにできるのは()()()()()()で判断する事だけだ」

 

 代替案なんて無い。

 理屈の通った理論武装は用意していない。

 

「たとえ君が不可能だと諦めたのだとしても、六道伊吹は諦めてない。だったら、まだボクは頑張れる。彼を信じて突き進める‼︎」

 

 それでも、折手メアの目には迷いがなかった。

 もはや彼女はアダマスの知る番外位ではない。

 今の彼女には、確かな覚悟があった。

 

「……変わったな、折手メア。ああ、認めよう。今の君はかつての君とは違う。この世界の全てを見下した諸悪の根源とは全く異なる」

 

 その時初めてアダマスの目に感情が宿った。

 無機質な、機械的な瞳じゃない。

 その目に宿ったのは人間的な激情──

 

 

「──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「………………………………………………そ、れは」

 

 

 ──()()()()()

 

 折手メアの言葉が詰まる。

 それは致命的(クリティカル)だった。

 折手メアの罪悪感に刃を突き立てる台詞だった。

 

「もしも君が善人だったのなら、もしも君があと少しでも優しかったのなら、……もしも君が平和な日常を楽しいと、幸せだと、そう思ってくれたのなら────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 事実、《ご都合主義(デウス・エクス・マキナ)》にはそれだけの力があった。

 六道伊吹と出会う前、()()()の折手メアならば転生前の第一位にさえ完封勝ちできる可能性があったのに。

 

 だけど、そうはならなかった。

 折手メアは善人じゃなかった。

 折手メアは優しくなかった。

 折手メアは日常に幸せを感じられなかった。

 

「ああ、そこまでは高望みだったがしれない。だけど、もっと……別の道があった筈だろう。何もこんなに早くに第一位を転生させる必要はなかっただろう。君がそう望まなければ、こうはならなかった。これが君の歪めた未来だ、これは君が望んだ結末(デッドエンド)だ!」

「…………っ」

 

 折手メアは望んだ。

 五月七日、始まりの日。

 ラスボスが倒された後に、もっと強い敵が欲しいと望んだ。

 その結果がこれだ。その結末がこの戦いだ。

 

「諦める理由にはならない? ああ、そうだよ。諦めたくなんかなかった。この世界を見捨てたくなかった! だがッ、諦めるしかないだろう⁉︎ 諦めなければ世界は救えないのだから! それを君が確定させたのだから‼︎」

 

 正論だった。

 当然だった。

 アダマスは正義で、折手メアは悪。

 世界中の人に尋ねてもこの結論は変わらない。

 

「は、ははは。どの口で、どんな気持ちで言ったんだ? 諦める理由にはならない? 君のせいだろうがッ! 全て、全てッ、すべてがァ‼︎ 君の責任だろうがッ、折手メアぁ‼︎ ()()()()()()()()()()()ッ‼︎」

 

 ()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「……()()()()()()()

 

 

 

 立ち上がる。

 脳が揺れた吐き気を抑え、震える脚を無理やり叩き伏せて直立する。

 だって、許せなかった。アダマスの言い分が飲み込めなかった。

 

「確かに、メアは悪人だった。最低最悪の転生者で、世界の敵だった。この世界の終わりを確定したのはコイツだし、ギリギリで保っていた世界の背中を押して突き落としたのはこのクソ野郎だよ」

 

 認めよう、折手メアは最低だ。

 諦めよう、折手メアは最悪だ。

 

 

「──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 それでも。

 その言葉だけは認める訳にはいかない。

 

「だって、コイツはちょっと思っただけだ! もっと世界を面白くしたい、もっと強い敵と六道伊吹のバトルが見たい! 興味本意でそんな思考が頭に浮かんだだけだろ⁉︎ 意識的に世界を滅ぼそうとした訳じゃない。こんな結末(デッドエンド)が見たかった訳じゃない‼︎」

「その興味本意がッ、世界を滅ぼした!」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ‼︎ クソ野郎がちょっと馬鹿な考えを巡らせただけで滅ぶ世界だなんて、メアがいなくなって何かの拍子で滅んでただろうが‼︎」

 

 確かに、折手メアは世界を崖下まで突き落とした。

 だけど、彼女がやったのはそれだけ。最後にちょっと背中を押しただけだ。いわばラストアタックを取ったのが折手メアだったというだけ。

 世界は元から瀕死だった。折手メアがやったのはHPの最後の最後、一%にも満たない部分を削っただけ。なのに、彼女はHPを削った全ての責任を負わされている。

 

「メアにだって罪はある。メアにだって責任はある。だけど、それは世界の終わりにまつわる全ての責任を被せられるほどか? 諸悪の根源だって世界の全てから罰せられるほどなのかよッ⁉︎」

「…………だがッ、」

「テメェも他人(ヒト)の責任にしてんじゃねぇぞ! 元々この世界は崖っぷちだった! メアのちょっとした興味本意で滅ぶくらいに! だったら、そんな世界を許したヤツのせいだろうが。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ‼︎」

「…………っっっ⁉︎」

 

 だって、この世界がもっと強かったなら。

 二千年の間に世界が救われていたのなら。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「俺はテメェらを許さねぇ。テメェが世界を救えない責任を他人(ヒト)に被せやがるテメェと、そもそもこの世界を滅ぼす原因である第一位を許さねぇ‼︎」

 

 

 拳を握り締める。

 地面を踏み締める。

 こんな巫山戯(ふざけ)結末(デッドエンド)を許容するコイツをブチ殺す‼︎

 

「……それで、君に何ができる? 君には何もできない。君の未来は予測している。特に君は念入りに演算した。《至高の座(メルカバー)》──第二位の遺骸を活用した『全知全能』の力も用いて、世界の全てを考慮に入れた上で」

「…………、」

「アドレイド・アブソリュートの魔法で世界を操る『全知全能』の特権(ギフト)は封じられた。ブレンダの武力で“(アダマス)”という群れの大部分は抑えられた。栗栖椎菜の思考で第一位へ繋がる『血路』は切り拓かれた。──それがどうした。私がいる。私だけで、君達を殺す事など容易い」

「ぷ、ぷはっ!」

 

 思わず、笑ってしまった。

 だって、強がりだ。

 アダマスは一人の少女について述べるのを避けている。

 

 

()()()?」

「……………………………………………………………………………………………………………………、」

 

 

 折手メア。

 アダマスが未来を予測できない絶対的な天敵。

 

「……問題はない。たとえ未来予測が困難だろうと、人体構造からして取れる行動は限られている。ならば、後は私が天使として極めた戦闘技術をゴリ押しすれば勝てる」

「つまり、重ねればいいんだな?」

「………………は?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 折手メアの手を取る。

 元よりこの身は《名前のない怪物》。

 形状なんてあって無いようなものだ。

 

 

「いくぞ、メア」

「任せろ、いぶき」

「「────()()‼︎」」

 

 

 グジュグジュグジュッ‼︎ と。

 俺の肉体の中に折手メアが沈んでいく。

 

「………………え、は? え?」

「『キミが予測できないほど突拍子もないボクの思考に』、テメェが追いつけない俺の肉体!」

「頭、おかしいのか……⁉︎」

「テメェをブチ殺して、『その道を通らせて貰うよ』‼︎」

 

 メキメキィッ‼︎ と。

 一発。アダマスの懐に拳がめり込んだ。

 通った。先程は何度やっても入らなかった拳が、アダマスを確かに撃ち抜いた。

 

「ッ、私を舐めるな! 未来予測が使えずとも、何の戦闘訓練も受けていない君達には負けられない‼︎」

「そっちこそ舐めんじゃねぇぞ! 《名前のない怪物》という異質な肉体と《主人公補正(プロット・アーマー)》による回復力! こっちは疲労も負傷も無視できるんだよ‼︎」

 

 素手喧嘩(ステゴロ)の殴り合い。

 アダマスの必勝パターンは破れた。

 

 折手メアがコントローラを持って、俺が戦闘アバターになる戦法。バカみたいな話だが、これが意外と効果的だった。

 アダマスの戦闘リズムが崩れる。俺の拳がアダマスの骨を折り、顎を撃ち抜き脳を揺らす。

 

好機(チャンス)……‼︎)

 

 脳が揺れ、意識が薄れる一瞬。

 無防備になったアダマスの頭に飛びつき、全体重をかけて頸を捻り潰す。

 

「折れろォォおおおおおおおおおおおお!」

 

 メキメキィィッ‼︎ と。

 頚椎が軋む音が響く。

 

 やがて、ボキッ‼︎ と鈍い音を立て。

 首がありえない方向へと曲がった。

 

 

()()()()ァ‼︎」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 共に怪物。

 共に不死身。

 死に体でも殺し合いを続けるバケモノ。

 

 ならば、不利なのはこちらだった。

 両者共に倒れないのならば、増援を見込めるアダマスの方が余裕がある。

 

 遠くから足音が聞こえる。

 それは徐々に、この戦場へ近づいていた。

 

「諦めろ、伊吹。次周(ツギ)の君自身を信じろ。いつか必ず、世界は救えると──」

「──どうでもいいさ、世界なんて。俺はこの終末を引き起こした第一位(カス)をブン殴りたい、ただそれだけのために此処に立っている」

「……そうか。ならば、最期まで馬鹿な希望を持って死ぬといい」

 

 そして。

 増援が、来た。

 

 

 

発見(Found)。助力いたします、ご主人様(My Master)

 

 

 

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「…………チッ」

 

 瞬間、アダマスは跳んだ。

 異能による妨害を嫌ったためか、俺達を無視してサササッチの胸元へ手を突き刺す。

 

 一瞬だった。

 一秒もかけずにアダマスの手はサササッチの心臓を抉った。

 

「サササッチ!」

「心配……ありません。当機(わたし)が死んでも、…………()()()()()()()()()()()

 

 

 ()()()()()()()()()()()‼︎‼︎‼︎ ()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「な、にが……」

回答(Answer)貴君(あなた)は死体に植え付けられた仕掛け(プログラム)に過ぎません。故に(So)、取り憑かせました」

「…………まさか」

「生前の貴君(あなた)が遺した精神情報(Ghost)──()()()()()()()()

 

 つまり、それはバグだった。

 生前の精神と死後に発動する仕掛けが相互に影響し合った結果、アダマスは動きに異常を来していた。

 

 

終末摂理(ワールドエンド)──‼︎」

 

 

 そして、畳み掛ける。

 第三摂理、擬似接続。本来ならば数秒の時間を有するが故にアダマス相手には発動できないそれを、致命的な隙を活用して発動する。

 

 効果範囲は見渡す限り全て。

 味方である俺達さえも巻き込んだ攻撃。

 だが、問題はない。俺には《破界(ワールドブレイカー)》による防御がある。

 

「おおおオオオオオオオオオオッ‼︎」

 

 咄嗟に、アダマスはサササッチの下まで駆けた。

 終末摂理(ワールドエンド)を利用する本人の居場所。そこが唯一の安全圏だと考えたため。

 

 ただし、彼にとっての予想外は──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()

 

 消える、消える、消える。

 肉体の八割が分解(バラ)された時点で、サササッチは息を引き取っていた。

 

「まだ、だッ‼︎」

 

 それでも、アダマスは諦めない。

 体の大部分が消滅していても、彼はまだ動く。

 

「しぶとい! 『……もうキミは止まっていい』」

 

 拳と蹴りで人体を破壊する。

 死なないのならば、物理的に動けなくなるまで。

 肩、肘、膝、股関節、首、顎、神経。全てを壊し、全てを引き千切り、アダマスの肉体全てを破壊する。

 

 

「地獄で待ってろ。第一位もすぐに送ってやる」

 

 

 そして、最期。

 未来に絶望したアダマスは、暗黒に輝く可能性に焼き尽くされた。

 

 

 世界終末まで 

 残り90分 

 

 

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