原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

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八三話:血路界通/Point_O

 

 

 深夜。寂れた公園にて。

 俺と折手メアは、正体不明(アンノウン)の怪物に立ち向かう。

 

 六界列強(グレートシックス)・第六位。

 名前も、姿形も、その異能さえも理解できない人外転生者。

 

 目がぼやける、焦点が合わない。

 しかし、それは相手の異能の効果ではない。

 むしろ原因は自分自分。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「縺弱>繧薙℃繧?>繧薙$繧上s縺舌o繧」

 

 ビキビキビキッッ‼︎‼︎ と。

 こめかみに血管が浮かび、頭に鈍痛が響く。

 

 人間には理解できない音域。

 金属を擦り合わせたかのような不快音。

 恐らくは第六位の鳴き声。それを聞いただけで、俺の脳味噌が悲鳴をあげていた。

 

「いぶき! 一旦距離を取れ! キミはもうリーチがかかってる‼︎」

「ッ‼︎」

 

 リーチ。

 その意味は何となく理解できた。

 

 第六位の姿形を捉えた視覚、第六位の鳴き声に耳を傾けた聴覚。五感の内、既に二つは侵蝕されている。

 もしも俺の直感が正しく、第六位の異能の効果が『第六位を理解した者を発狂させる』事であれば、侵蝕された五感が多いほど死に近づく。

 嗅覚。味覚。触覚。あと一つでも俺の感覚が第六位を理解すれば、即座に俺という人格は消滅する。

 

 しかし、その助言はほんの少し遅かった。

 

 

 縺阪?√″縺阪?√″縺?>縺阪<ッ‼︎ と。

 黒板を掻き毟るような不快音が空気を震わせる。

 

 

 それは多分、(ツバ)だった。

 まるで毒でも吐くかのように、第六位は彁妛色の霧を吹いた。

 

 聞いた事もない音、見た事もない色。

 それらを理解できる事実に恐怖する暇もなく、人智を超えた災害(かいぶつ)の毒は音速でこの身に迫る。

 

 触れれば終わり。

 いいや、それどころか、唾の微粒子の一つでも俺の鼻に入ってしまえば終わり。

 しかし、反射的に俺は避ける事ができた。異能感知、たとえ音速の異能だろうと事前に軌道が分かっている攻撃に当たるはずがない。

 

 

 ──()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()

 

 

(これッ、マズイ────)

 

 一瞬で意識が遠のく。

 奇妙な感覚だった。

 まるで全身を蟲に這いずり回られているかのような不快感。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 この後に待ち受ける第一位との戦いなんて、もはや気にかける余裕はなかった。

 咄嗟に、それを叫ぶ。

 

 

「《破界(ワールドブレイカー)》ッ‼︎」

 

 

 一度目。

 

 一日に六度。

 異能を無効化する埒外の異能。

 

 

 ──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

(不発ッ⁉︎ いやッ、確かに発動した感触はあった! 今も意識を継続できている時点で効果はあった! だけど、これは……‼︎)

「キミは一旦、目を閉じろ!」

 

 小さな手の感触が瞳を覆い隠す。

 折手メアが俺の背に飛び乗り、目隠しをしたのだ。

 視覚の侵蝕が治る。聴覚と異能感知、発狂までのリーチに踏み止まった。

 

「目は瞑ったまま、次は耳を覆う。それで頭痛はある程度マシになるはずさ」

「……メアは? 大丈夫なのか?」

「ボクも目は瞑っているから聴覚オンリーだよ。移動や回避はいぶきの異能感知頼りになるけどね」

 

 まさかメアを背負いながら戦うハメになるとは思わなかった。

 外界の音が全て閉ざされる。自らの声を鼓膜に響かせるためか、耳に直接口を当てて話すメアの息がこそばゆい。

 

「第六位の基本的な攻撃……ヤツは攻撃とすら思ってないかもだけれど、兎も角それは()()()()。一方で他は熊よりも凄い程度の身体能力と、唾を撒き散らすだけの遠距離攻撃だよ。とりあえず距離を空けて、逃げに徹していれば大きな問題はない」

「……それじゃあ反撃ができない」

「まずはボクの説明を聞いてくれ。話はそれからだ」

 

 銃を撃たれても避けれる程度の距離を空ける。

 第六位は追撃を行わなかった。というよりも、こちらに興味がない様子だった。あるいは、何も考えていないのか。

 あんな怪物の思考回路なんて理解できる訳がない。できて良い訳がない。ジャングルジムで遊んでいるように見える……感じる第六位に注意しつつ、同時に説明好きな折手メアの話にも耳を傾ける。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……………………は?」

 

 

 初めに、折手メアはそう言った。

 

「いや、そう言うと少し語弊があるかな。異能の影響ではあるのだけれど、異能そのものではない。こう言った方が正しいね」

「待て、待て待て。だけど、さっきは《破界(ワールドブレイカー)》が効いたぞ? 確かに完全に無効化ができた訳じゃないが、それでも意識は保てた」

「それって異能の反応を無効化したから一時的に異能感知が働かなくなって、ビンゴがリーチに戻っただけだろう?」

「…………、」

 

 それは……なるほど。

 そう考えると、俺は頭痛の原因そのものを無効化できた訳ではなかったのか。

 

「あれは肉体(アバター)型の異能、その効果は『第六位の姿形に成る』というただそれだけ。認識すれば頭痛がある? 理解すれば発狂する? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 第六位が有する唯一の異能。

 名称も分からない、非常にシンプルな効果。

 前世の見た目を現世にも持ち込める、本来ならばただそれだけの最弱の力だった。

 ──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「本来ならその異能は、五感の一つで捉えただけで発狂させるほどの異常。キミが五感の内二つも使えているのは《主人公補正(プロット・アーマー)》のお陰さ。ボクを褒め称えて貰っても構わないよ?」

「マジかよ、すげーな。そんなバケモノをどうやって倒して封印したんだよ、ブレンダ先輩」

「どうしてそこで他の女を褒めるんだよキミは!」

 

 五感を全て封じてから戦ったのだろうか。

 荒唐無稽にも思えるが、ブレンダ先輩ならばそれでも勝ちそうで怖い。

 

「……ふんだ。やっぱり、頭のおかしいTSクソ野郎よりも善人正統派美少女の方が好きなんだね。そりゃ当然だ、ボクだって男だったら普通に可愛い女の子の方が………………、いや、ボクはキミにゾッコンだったから頭のおかしい方が好みだったかも……」

「拗ねんなって。お前の解説も助かってるよ。それで? 俺はどうすればヤツを殺せる?」

「……どうしようか。わざわざ殺しに行く理由もないよ? 第六位の行動原理は読めないけれど、もしかしたら手を出さなければ放っておいてくれるかもしれない」

「もしかしたら後を追いかけてくるかもしれねぇだろ? 第一位と第六位に挟まれてバトルなんて俺は嫌だぞ」

 

 それに、故郷にこんな怪物を放置しておく訳にはいかない。

 そんな理不尽、気に食わない。

 

「なら、いつも通りだ」

 

 俺の内心を見透かしてか、折手メアは微笑んだ。

 

「第六位に接近して異能を叩きつけろ。相手が第六位だろうと、キミは六界列強(グレートシックス)死神(てんてき)だからね」

「むしろ注意すべきは殺し方よりも、殺されない方法か?」

「認識しないように気を付けるしかないね。接近すればどうしても微粒子は鼻に入るし、体に第六位の声が響く。戦闘するには異能感知は必須だし、異能を使うには触れる必要がある」

「くそッ、どうやっても三つ以上の感覚が侵蝕されるじゃねぇか!」

 

 目を抉って、鼓膜を引っこ抜いて、鼻を擦り潰して、舌を千切って、五感を封じて。

 そこまでやっても空気の振動で声は響くし、異能感知は欠かせないし、最後の最後で手が触れる。

 

「……いや、待てよ? 俺の血を媒介とした《魂絶(ソウルリーパー)》“弾丸(ブレット)”フォーム──遠隔での魂破壊なら……」

「無理じゃないかな? 手で触れなくて良いとしても、第六位に血をかけるために近づく必要はある。そして、感覚というのは五感や異能感知だけではなく、()()という言葉もある。第六位の輻射熱でも感じたら一発で終わりだろう?」

「……………………」

 

 手詰まりだった。

 近づく事さえ不可能な怪物に、俺の異能は届かない。

 

「なんて顔をしているんだい?」

 

 だが、折手メアは違った。

 彼女はドヤ顔で決め台詞を吐いた。

 

 

「ボクとキミ。二種類(ふたり)の異能のかけ算で、簡単に第六位を倒せるじゃあないか」

 

 

 


 

 

 

 カツン、と足音が響く。

 僅かに第六位の方へ近づく。

 反応は顕著だった。ジャングルジムと戯れていたはずの第六位は、一瞬で一〇メートル以上の高さまで跳躍する。

 

 その時にようやく第六位の全体像を掴む。

 第六位の形状は裏返った蛸に似ていた。

 ヤツはその触手のようなナニカを広げると、全ての脚から粘液を掃射する。

 

「縺阪?√″縺阪?√″縺?>縺阪<」

 

 一滴。

 あるいは微粒子の一つ。

 それだけでも感じたら発狂する体液。

 

 人智を超えた絶死圏。

 それを今、踏破する!

 

 

「──《破界(ワールドブレイカー)》」

 

 

 二度目。

 

 瞬間、触れた体液が全て消滅する。

 微粒子の一つすらも残さない。

 

 しかし、それはあくまで瞬間的な消滅。

 現時点では触れておらずとも、超至近距離に漂っていた微粒子一つ一つを打ち消すには至らない。

 恒常的な無効化には“(アーマー)”フォームが必須。一方で、“(アーマー)”フォームは異能の干渉を無効化するだけ。それ自体が異能の効果ではない『感覚』までは無効化できない。

 

 

「《破界(ワールドブレイカー)》」

 

 

 三度目。

 

 だから、重ねる。

 瞬間的な異能の消滅。

 それを繰り返す事で、完全なる防御を果たす。

 

 

「《破界(ワールドブレイカー)》」

 

 

 四度目。

 

 五度目。

 

 六度目。

 

 しかし、六道伊吹の異能は連発できない。

 一日六度、その制限がある故にすぐに限界を迎えてしまう。

 

 それを知ってか知らずか、第六位は噴射する体液を増量する。

 第六位の滞空時間は異常な程に長かった。それは触手を広げて空気抵抗が大きくなるようにした影響もあるだろうが、水上バイクの噴射装置を足に付けて水圧で空を飛ぶフライボードのように噴射している体液そのものが第六位を空中へ押し上げているのだろう。

 

(だったら、体液を纏めて無効化する!)

 

 

「《破界(ワールドブレイカー)》」

 

 

 七度目。

 

 限界を、超える。

 七度目。異能の過剰使用。

 その代償は生命力の喪失、寿命の削減、ランダムな体の破壊。

 

 ──()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()

 

「やっちゃえ! いぶき!」

「任せろォォオオオッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 《主人公補正(プロット・アーマー)》。

 それは主人公を都合良く生かす回復系の異能。

 

 生命力の喪失? そんなもの補填される。

 寿命の削減? そんなもの無視できる。

 ランダムな体の破壊? そんなもの治せる。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「《破界(ワールドブレイカー)》ッ!」

 

 

 もはや回数なんて数えちゃいなかった。

 噴射される体液がまとめて消滅する。

 それが意味するのは、第六位の落下。

 落下地点に先回りして、着地の瞬間を狩る。

 

「うおおオオオオオオオ‼︎」

 

 異能感知。第六位の落下を認識。

 五本の指を限界まで広げて、上空に向かって掌を突き出す。

 

 衝突(インパクト)

 その、瞬間────

 

 

「────は?」

 

 

 ()()()()()()()()()

 

 異能感知で把握していた形状が変化する。

 まるで俺を避けるみたいに、肉体が細くなる。

 

(──いや……形状変化じゃ、ない?)

 

 そうだ。そもそもの話。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 例えば、三次元の立体。

 それを上から見るか、横から見るかで、視界に映る平面(カタチ)は変化する。ペットボトルを上から見たら円形でも、横から見たら細長く見えるように。

 

 そして、第六位の肉体は三次元を超えたカタチだった。俺が異能感知により把握していた三次元のカタチも、第六位からすれば側面だけを観測していたに過ぎない。

 だから、これは形状変化ではなかった。()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 だが、そんな細かい理屈はどうでも良かった。

 重要なのは俺の攻撃が避けられたという事実。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 耳元で羽虫が飛んだような不快音で、第六位は囁いた。

 

 

「────邨よ忰鞫ら炊(ワールドエンド)

 

 

 世界そのものが異世界へと変質する。

 顕現するは第六の死因(おわり)

 この世界に刻まれた『彁妛』の法則。

 語られざる終末論の一つ(Apocalypse#06)

 

 それを人間の脳味噌で理解する事はできなかった。

 しかし、“それ”は確かに存在した、

 この世界の生き物が観測できない、そんな次元(レベル)での世界の終わりが。

 

 理解できない。

 観測できない。

 把握できない。

 異能感知ですら役に立たない。

 

 なのに、直感的に分かった。

 ()()()が、世界の終わりがこの身に迫っている事を。

 

 

(────()()

 

 

 終末摂理(ワールドエンド)とは世界を滅ぼす一撃。俺の《破界(ワールドブレイカー)》を除いて、それに対抗できる異能などありはしない。

 だが、俺の異能は一度に一種類までしか無効化できない。もし終末摂理(ワールドエンド)を《破界(ワールドブレイカー)》で無効化してしまえば、第六位の肉体(アバター)を感じた影響で俺は発狂する。

 異能の感覚(いのうかんち)微粒子(きゅうかく)鳴き声(ちょうかく)輻射熱(おんかく)。打ち消さなければ、この至近距離では既にビンゴは揃っているのだから。

 

 だから、死ぬ。

 ──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

終末摂理(ワールドエンド)……ッ‼︎」

 

 

 世界そのものが異世界へと変質する。

 顕現するは番外の死因(おわり)

 この世界に刻まれた『白紙』の法則。

 語られざる終末論の一つ(Apocalypse#EX)

 

 ()()

 終末摂理(ワールドエンド)終末摂理(ワールドエンド)

 第六位の第六摂理と折手メアの番外摂理。

 世界を滅ぼす一撃が、互いにぶつかり合って消滅する。

 

「行けッ、ぶちかませーッ‼︎」

 

 背負った折手メアが耳元で叫ぶ。

 正直うるさい。やかましい。

 けど、どうしてか、元気が湧き上がる。

 

 拳を力一杯握り締める。

 ここで終わらせる、禍根など残しはしない。

 

 

「《崩界(ワールドブレイカー)》ッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 バッギィィンッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 鋼鉄を金槌でブチ壊したような音が響く。

 

 第六位、ではなく。

 第六摂理。それそのものを破壊した。

 

「縺弱▲縲√℃縺後?√′繧。繧。繝ッッッ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 絶叫。

 第六位は金切り声で喚き散らす。

 理屈が分からないまま、()()()()主人公補正(・・・・・)()()()()()()()()()()()

 その声をマトモに聞いてしまえば発狂するしかない。構わない。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 第六位に触れたまま叫ぶ。

 沸騰した液体のようにも、霜を纏ったダイヤモンドのようにも感じられる奇妙な感触。

 

 理性が蒸発する。

 何も考えられない忘我の果て。

 だからこそ、俺の本性が剥き出しになる。

 

 

「──《魂絶(ソウルリーパー)》ッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 パキリ、と。

 硝子を踏み砕くような音が響く。

 

 数秒後になってやっと自覚する。

 何も考えていなかった。

 何も考えないまま、第六位の魂を握り潰していた。

 

 残されたのは第六位が宿っていた現世の体。

 ()()()。見えないほど小さな、矮小とも言えるそれがあの怪物の正体だった。

 もはや、その遺骸を見る事すら叶わない。風に吹かれ、第六位の痕跡は消え去る。

 

 

「テメェに相応しい結末(デッドエンド)だぜ」

 

 

 認識災害をばら撒く怪物は。

 誰に見られる事もなくこの世界から消え去った。

 

 

 世界終末まで 

 残り200分 

 

 






世界観:《螳?ョ咏噪諱先?(コズミックホラー)
転生者:名称不明(アンノウン)
グレード:第六界位(グレード6)
タイプ:肉体(アバター)
ステータス:
 強度-?/出力-?/射程-?/規模-?/持続-?
終末摂理:『彁妛

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