原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

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七七話:終末対策委員会議事録

 

 

 肉。魚。野菜。デザート。

 船内に足を踏み入れた俺を歓迎するのは、バイキング形式で皿に盛られた彩り豊かな料理の数々だった。

 

「……あと六時間で世界が終わるって伝えなかったっけ?」

「聞いたっすよ。けど、急いで解決できる問題でもないっすよね? まずは腹ごしらえから始めるっすよ」

 

 ジェンマの言葉に合わせて、俺の腹がぐうと鳴る。

 そう言えば、俺の肉体──《名前のない怪物》は出来立てホヤホヤで胃に何も入れていない状態だった。お腹が空いて当然だ。

 自覚すると空腹か強まり、ごくっと無意識で唾を飲み込んだ。

 

「さぁ、まずは席に着くっすよ。残りはもう揃ってるっす」

 

 既に食事中のメンバーが数人。

 どいつもこいつも見覚えのあるヤツばかりだった。

 

 目の前で司会を務める熾天使(セラフィム)宝石(ダイヤ)”のジェンマ。

 奥で大食いチャレンジみたいな有様になっている俺の奴隷のアドレイド・アブソリュート。

 背筋を正して礼儀作法(マナー)の見本みたいに食べている熾天使(セラフィム)(スペード)”のブレンダ。

 美味しいご飯とダイエットを天秤にかけておかわりを悩んでいる幼馴染の栗栖椎菜。

 口にサラダを捩じ込もうとしている憑依転生者のリィン(右腕)と、苦手なサラダを食べたくないと拒絶している幼女のエヴァ(左腕)、二人合わせて天使のイヴリン。

 そして、食事をせずにあえて給仕や調理を行っている、クローンのサササッチを始めとしたデッドコピーのみんな(二万人)。

 

 馬鹿みたいに派手な髪色の面々が、一堂に会して細長い楕円のテーブルに座っていた。

 

 

「さぁさぁ、六道伊吹くんもメアちゃんも座るっす。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 


 

 

 

「他のヤツらは居ないのか?」

 

 バイキングの料理を皿に盛りながら、周囲を見渡して尋ねる。

 肉。とにかく体が肉を求めている。俺の皿は馬鹿みたいに肉と炭水化物ばかり乗っていた。

 

「二神ちゃんは天命機関の協力者ではないから降ろしたっす。ロドリゴさんとレオンハルトさんは現在、地球での問題を対処中っすからリモートの参加っすね。多分、話を聞いてはいるけどこちらに話しかける余裕はないんじゃないっすか?」

「……サササッチ達は? アイツも天命機関の協力者じゃないだろ」

「それは自分で聞いて欲しいっすね」

 

 好き嫌いが多い折手は、肉・魚・野菜を全部無視してデザートを取りに向かった。そんな彼女を尻目に、丁度少なくなった肉を大皿に注ぎ足していたサササッチに話しかける。

 

「お前、世界とか救いたい性格(キャラ)だっけ?」

回答(Answer)当機(わたし)万能女中(Perfect Maid)ですので」

「は???」

 

 余りにも意味が分からず聞き返す。

 サササッチはショッキングピンクの髪を揺らして、誇らしげに自身が着ているメイド服を見せびらかす。

 

懇願(Please)、見てください。当機(わたし)女中(Maid)です」

「まぁ、メイド服を着ているからな」

しかし(But)当機(わたし)には仕えるべき主人(Master)がいません。今までは本体(Original)がそうでしたが、今となってはあのような主人(Master)は御免です」

「そりゃそうだ」

結論(Conclusion)、六道伊吹様……貴君(あなた)当機(わたし)達の主人(Master)となるべきです。伊吹様が当機(わたし)達を解放したのですから、責任を取って二万人を雇うべきです」

「破産させる気か???」

 

 何処かから『はぁ⁉︎ このアタシがいながら他のヤツにも主人(マスター)とか呼ばせてんの⁉︎ アンタ‼︎』とか聞こえた気がするが、奴隷(ツンデレ)の声は聞こえないフリをする。

 

「つーか、それはお前が此処にいる説明にはなってねぇよ」

補足(Supplement)女中(Maid)とは家の事なら何でもできる万能職(All Mighty)のように思われていますが、実際には客間女中(Parlour Maid)台所女中(Kitchen Maid)など専門職の総称であるそうです」

「そうか。その話がどうなったら元の話に繋がるんだ?」

しかし(But)当機(わたし)達ならば夢の万能女中(Perfect Maid)にも手が届きます。二万人が通信網(Network)で繋がっている当機(わたし)達は、それぞれが専門とする技能さえ共用できるのですから」

「オーイ、良い加減話を軌道修正してくれー」

了承(OK)。つまり、当機(わたし)達は主人(Master)が行うあらゆる雑務を代行したいと考えているため、伊吹様が行う戦いにもお力添えをしたいと考えています」

「…………それだけ?」

肯定(Yes)

 

 纏めると、完璧メイドに成りたいから戦闘にも協力したいというだけらしい。

 世界の存亡を賭けた戦いに参加するには余りにも軽すぎる理由であるが、それでこそ人間だ。デッドコピー達もよくぞここまで人間らしくなったものだ。

 

 

「まぁ、夢が持てたのならば何よりだ」

(Dream)……肯定(Yes)、夢のような毎日です。ご恩に報いるためにも何でもご奉仕いたします。覚悟してください」

 

 

 ニコリ、と。

 まだ表情を変えるのが不慣れなのかほぼ無表情(デフォルト)で、それでもほんの少しだけ口元を緩め柔らかい目つきでサササッチは笑った。

 

 料理を自分の皿に盛り付け終わったので、椅子を引いて席に着く。

 既に席に着いていた隣の折手は、盛り付けたデザートを食べるでもなく行儀悪くジュースのストローをがじがじと噛んで待っていた。

 

「よし、話は終わったっすね。じゃあ、まずは、状況整理から始めるっす」

 

 食べながら、ジェンマは司会を務める。

 なんと言うか沈黙に耐えきれないタイプなのだろうか。食べ終わってからでないと話せない俺は真逆だと思う。

 食べながら話しているのに下品とは感じない所に、心理を操る無駄な技術力を感じてしまう。

 

「現在起こっている問題は全部で四つ。重要度順に説明するっす」

 

 机から、立体映像(ホログラム)が浮かび上がる。

 四つの写真が空中に投影されていた。

 天命機関、やはりずば抜けた技術力を持った組織だ。

 

「優先順位一、六界列強(グレートシックス)・第一位。まずはアリス・アウターランドの討伐が最優先っす。彼女をどうにかしない限り、確定した世界の終わりは覆らない」

「……アタシらでどうにかできるの? そんなヤツ」

「そこも含めて検討中っすね。作戦の中心はやっぱり六道伊吹くんになると思うっすけど」

 

 責任重大だった。

 世界の命運が俺の肩にのしかかる。

 正直俺は、一発ブン殴ってやりたいくらいのモチベーションしかないのだが。

 隣を見ると、折手は申し訳なさそうに俯いていた。仕方ないので頭をぐちゃぐちゃにして撫でる。

 

「優先順位二、アダマス一派。もし第一位の殺害あるいは封印に成功したとしても、再び呼び出されちゃ元の木阿弥っす。そもそも第一位殺害作戦中にも妨害があると思われるっす」

「彼らの詳細については、現在わたくしが天命機関のデータベースを調査中ですわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……あとは自分の供述も書き加えておくっすよ。ロドリゴさんから聞いた話と一緒に」

 

 意気揚々と手を上げるイヴリン(恐らくリィンの方)だったが、その口元には生クリームで汚れている。エヴァが食事中だったのか、それともリィンはあれで食事が下手なドジっ子だったりするのだろうか?

 

「優先順位三、《千年奈落(アバドン)》の不死身達。直接的に世界の終わりには繋がらずとも、人類滅亡クラスの災害は引き起こす面々っす。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………第六位、ですか」

「そのせいで現場の混乱は最高潮に達してるっす。なにせ転生者を捜索中なのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が紛れているんすから」

 

 六界列強(グレートシックス)・第六位。

 確か、ブレンダ先輩が封印した転生者だったか。

 折手メアの話を思い出すに、ブレンダ先輩が主人公を飾る外伝のラスボスとか何とか言っていた気がする。

 

「優先順位四、第三次世界大戦。これは無視で良いっす。放置しても人類滅亡にすら届かない。そっちに必要なのは天使による武力介入ではなく、灰色の枢機卿(エミネンス・グリーズ)達が持つ権力と話術っすからね」

 

 第三次世界大戦ですら最低ライン。

 それこそが世界の終わり、その直前。

 映像(モニター)越しに見える地球は灰色の曇天に覆われていた。

 

「四は放置、三は現地の天使達による対処に任せるっす。なので自分達が今から取り掛かるのは二と一。アダマス一派の妨害を退けて、第一位を殺害あるいは封印する事っす」

 

 ここまでが前提。

 これから話し合うための事前情報。

 今からようやく、終末への対策を考えられる。

 

「アダマスの発言から制限時間(タイムリミット)は360分……今からだと、あと325分。天命機関側が有する終末時計も大体似たような制限時間(タイムリミット)を示してるっすから信用はできるんじゃ────」

 

 

 ()()()ッ‼︎ ()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「な、にが……?」

「敵襲⁉︎ いや、あり得ない! ()()()()()()()()ッ⁉︎」

 

 《超機動玉座(セディア・ゲスタトリア)》。

 それこそ、天命機関の技術が集結した現代最高の船。水陸両用どころか、陸海空宇宙を全てこの一機で進める万能船。

 擬似重力と百年分の資源を搭載したこの船は、同時に天命機関が有する全データを蒐集した極大のデータベースでもある。

 

 宇宙を征くこの船はこの世で最も安全な基地だと考えられていた。

 ──その、はずだった、

 

報告(Report)。敵襲ではありません。前方に障害物を発見したため、急遽方向転換したとのこと」

 

 船の管理を担当していたデッドコピーの一人はメイド服を揺らして早足で駆け付ける。

 

「障害、物……? こんな所に? スペースデブリとかっすか……?」

否定(No)、何かがあった訳ではありません。むしろ、その逆でございます」

 

 デッドコピーは珍しく大きく顔を歪めて。

 苦しそうにその言葉吐き出した。

 

 

「前方二〇〇メートル────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「────────────────、」

 

 

 思考が止まる。

 世界の終わり、ワールドエンド。

 今まで抽象的にしか思い浮かばなかった形而上の概念が、具体的な形を伴って目の前に顕現する。

 

 太陽系以外が消し飛んだ。

 原則、消し飛んだモノは戻って来ない。

 俺が無効化した異能だって、俺が死んだら再び異能が戻ってくる訳ではない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 誰もがその言葉を思い浮かべて。

 誰もが何も言えずに口を噤んだ。

 

 だって、それを認めてしまえば折れる。

 どう足掻いてもこの世界を救えないのならば、彼女達には第一位と戦う動機が無くなってしまう。

 

 だから。

 口を開いたのは、既に一度折れた事のある少女だった。

 

 

「────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 折手メア。

 諸悪の根源にして、贖罪者。

 因果を捻じ曲げる彼女の言葉には信憑性があった。

 

「それに、ここで勝ち逃げを許す訳にはいかない。どうせ死ぬなら前のめりに。いぶきもきっと、そう言ってくれる」

「だな。もし世界が滅ぶのだとしても、第一位のヤツも道連れにしなくちゃ割が合わねぇ」

 

 誰もがその言葉を信じた訳じゃない。

 折手メアは全盛期(かつて)の力を失っている。

 多分、宇宙全てを修復するなんて事はできない。

 それでも、みんな彼女を信じた。彼女の()に、笑って殉じると決めた。

 

 

「さぁ、再開しよう。ボクら終末対策委員会による、結末(デッドエンド)を覆すための話し合いを」

 

 

 世界終末まで 

 残り320分 

 

 

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