原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

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四五話:途中経過/Result_1

 

 

「ごッ、あああアアアアアアアアアッ⁉︎」

「待て、すぐに処置をする」

 

 六道伊吹は奈落の底へ落ちた。

 それでも、ディートリンデの傷は深かった。

 内臓には届いていないものの、肩から腰にかけてあるぐちゃぐちゃの切り傷から血が垂れ流しになる。

 

「《ロイヤルタッチ》」

 

 九相霧黎は異能を発動する。

 それは触れた者を癒す技能(スキル)型の異能。

 時間が逆行したみたいに切り傷は修復される───()()()()()

 

「……何だ?」

 

 ディートリンデに触れた胸元に、ナニカがあった。

 それに触れた瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「…………ッ、()()()()()()()()()()ッ⁉︎」

 

 

 《破界(ワールドブレイカー)》、“(ネイル)”フォーム。

 ディートリンデの異能の行使を阻害するそれが、九相霧黎による回復すらも無効化した。

 

「だけど、これも異能だろ? それなら……」

「まッ、待て‼︎」

「────《破界(ワールドブレイカー)》」

 

 再び、九相霧黎の手がディートリンデに触れる。

 六道伊吹と同一の異能。異能を無効化する異能を無効化する。二つの異能が鍔迫り合う。

 そして──

 

 

「ッ⁉︎」

 

 

 ──バチッ‼︎ と。

 九相霧黎の異能が弾かれた。

 

「な、に……?」

「……ぐッ、当然であろォ。霧黎の世界強度は、…………ッ、や、ヤツの世界強度には及ばない……」

 

 痛む傷口を抑え、息も絶え絶えにディートリンデは告げた。

 互いに、異能を無効化する異能。矛盾する二つがぶつかり合った場合、世界強度の高い異能の効果が優先される。

 そして、六道伊吹の世界強度は規格外(EXランク)である。九相霧黎の《破界(ワールドブレイカー)》で覆す事はできない。

 

「……ッ、よいのである。このままっ、いくぞォ……‼︎」

「ダメだ、ディートリンデ。出血量が酷いのに、傷口が荒すぎるから縫う事もできない。このままじゃ……」

「ヤツの、……世界持続はっ……ゴミである。その内っ、効果も、途切れる…………はずだァ」

「………………、」

「だからッ、行くのである‼︎ まずはっ、ここから離れなければァ……‼︎」

「……?」

 

 九相霧黎は首を傾げた。

 ディートリンデの言っている意味がよく分からなかったのだ。

 

「危機はもう去っただろう? 何をそんなに急いで──」

 

 遮るように、ディートリンデは叫んだ。

 

 

()()()()()ッ、()()()()()()()()()()()()()()ォ……‼︎」

 

 

 それは、心の底からの恐怖だった。

 一分一秒でも早く、一メートルでも一センチでも遠く、ディートリンデは六道伊吹の落ちた穴から離れたくて仕方がなかった。

 

「…………60メートルの大穴に落ちて、まだ死んでないと?」

「ヤツはッ、全ルートで我を殺すっ……最悪の原作主人公(タイトルロール)であるぞ⁉︎ ヤツの往生際の悪さはっ、作中トップクラスである……‼︎」

「そうなのか……すまない、認識を改めよう」

 

 

 九相霧黎は律儀に謝ると、血塗れのディートリンデをお姫様抱っこした。

 背負った方が楽なのだろうが、傷口は前側にある。血が流れないように仰向けにして、痛みを軽減するために接触面を限りなく減らす。

 

「……何処へ向かう?」

「街の中心部ッ、そこにある一つの店──」

 

 ディートリンデは目的地となる店名を告げた。

 

 

「──『()()()()()()()()()()()()()()()()()っ、〈商印堂(ショーウィンドウ)()()()ッ‼︎」

 

 


 

 

「……ブレンダは異分子(イレギュラー)により死亡。頼みの綱の六道伊吹は反応消失(ロスト)、か」

 

 あらゆる監視カメラの映像が集まった管制室。

 そこにある高そうな椅子にロドリゴは腰掛けていた。

 老人は悲鳴しか聞こえないイヤホンの声に耳を傾け、諦めるようにこう吐き捨てた。

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

 第二位は完全に消滅させた。

 転生者のほとんどは殺した。

 だが、それだけだ。

 

 第三位は未だ健在。

 転生者は全て殺せた訳ではなく、加えて二人の異分子(イレギュラー)が混ざっている。

 対して、天命機関は()()した。もちろん全天使が死亡した訳ではないが、損耗率が七〇パーセントを超えている今、軍隊としては全滅と言っても過言ではない。

 

 そして、何よりも。

 ()()使()()()()()()()()()()()()()()

 三人の熾天使(セラフィム)が欠けた〈堕胎事変(フォールダウン)〉と同じように、今回もまた天命機関の敗北と言うほかない。

 

(……恐るるべきは異分子(イレギュラー)の片側、九相霧黎だねぇ。ブレンダの殺害は言わずもがな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()……‼︎)

 

 “(スペード)”はもういない。

 余りにも味方の数が減りすぎたこの状況では“(クローバー)”の真価は発揮できない。

 

 今、頼りにできる熾天使(セラフィム)は二人。

 しかし、“聖杯(ハート)”は技術畑の男だ。直接戦闘に向いているとは言いがたい。()()()()()()()()()()()()()()()()、あれは未だ調整段階。戦闘力は未知数だ。

 ならば、“宝石(ダイヤ)”に頼ればいいのか? 成程、彼女は九相霧黎の対応要因としてピッタリだろう。ブレンダとの会話を盗聴した所、彼がヒトとしての精神性を持つ事は明白だからだ。

 

()()()()()()()──)

 

 そして、ロドリゴは決意した。

 七年前に失った四肢の代わりに、レオンハルトが作製した特殊な義手義足を嵌めて立ち上がる。

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

 ……今更、何が出来るかは分からない。

 それでも行かねばならない。

 

(七年前──〈()()()()〉において、最年長の儂だけが生き残った。グレイも、クリスも、アダマスも、儂よりずっと強く、未来ある若者だったのにねぇ)

 

 かつての、黄金時代と呼ばれた熾天使(セラフィム)を思い出す。

 先代“聖杯(ハート)”、グレイ。第三摂理を解き明かし、七天神装(アーティファクト)を作成した天才科学者。

 先代“宝石(ダイヤ)”、クリス。現世出身にも関わらず、異能を使用する事ができた異端の奇人。

 先代“(スペード)”、アダマス。歴代最強と謳われた天使。

 

 みんな、ロドリゴの半分くらいの歳だったのに……生き残ったのは誰よりも弱く、誰よりも未来の無い老ぼれだった。

 そんな悲劇、二度とあってはならない。

 

「総員傾注。天上位階序列二位(セカンド・オーダー)以下の天使は都市外まで退却してねぇ」

『総司令官ッ⁉︎ ですがそれでは貴方が……‼︎』

「逃げろと言っている訳じゃないよぉ。都市外からの援護をよろしくねぇ」

『……ッ、了解であります……‼︎』

 

 


 

 

「カネさえあれば何でも買える。〈商印堂(ショーウィンドウ)〉異世界出張店へようこそ」

 

 それは人相の分からない怪しげな男だった。

 身を包む和装に、毒々しい紫色の髪。そこまではある程度許容できる。

 しかし、顔を隠すぐるぐる巻きの黒い包帯。それは余りにも不気味で、客商売に向いてないと言うしか無い見た目をしていた。

 

「ふっ、この状況でも商売をするとは。大した度胸であるな、“死の商人(ウォー・バイヤー)”……‼︎」

「まさか。当店も閉店の危機にあります。ですが、だからこそ! お客様の言うように、いつも通り商売する事が大切だと思っております。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………貴様の世界観……《資本主義経済(マネーゲーム)》、であったか」

「ご名答です、お客様」

 

 六六人の〈列強選定(キングセレクター)〉の参加者、その残党。

 この男もまた、怪物と呼ぶに相応しい第五界位(グレード5)の転生者である。

 

 〈商印堂(ショーウィンドウ)〉に来店したディートリンデは対戦相手になるかもしれなかった男を見て、嫌そうに呟いた。

 既に異能の封印は解け、応急処置も終わっているためディートリンデはもう一人で歩けるのだが、彼女が九相霧黎から離れる様子はない。

 

「あなたの名前は?」

「……そうですね。お客様に合わせて三瀬春夏冬(みせあきない)とでも名乗っておきましょう」

 

 それは絶対に嘘だとディートリンデは思った。

 確かに、和装に身を包んでいる。顔立ちもよく分からない。

 だが、背格好が明らかに日本人ではない。『原作』でもそうだったが、恐らく九相霧黎の出身に合わせた接客を行っているのだろう。

 

 九相霧黎はそんな嘘に一切気付く様子はない(或いは気付いても気にしていないのか)。彼は血だらけのディートリンデをお姫様抱っこで抱えながら、平然とした顔で尋ねた。

 

「何でも買えるって、具体的には何を買えるのかな?」

 

 対する三瀬春夏冬の返答は端的だった。

 

 

()()()()()()

「…………それ、は」

 

 

 何でも。

 それは比喩でも、誇張でもない。

 文字通り、何でも買える。

 

「愛はカネで買えない? 時間はカネで買えない? ノンノン。それは此方の世界の常識でしょう? 当店は何だって販売しております」

「……例えば、不老不死……とかなら?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 目の前に、ディートリンデが求めているモノがある。

 九相霧黎は思わぬ場所で目的(ゴール)を見つけ、目を見開く。しかし、当事者であるディートリンデは冷めた目でそれを見ていた。

 

「不老不死を得られるほどのカネを手に入れるなど、不可能である」

「いや、それは早計だよ。ぼくのチカラで世界中の銀行を襲えば──」

「──()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「………………あ」

 

 〈商印堂(ショーウィンドウ)〉。

 それは言わずもがな、異世界に存在する商店。

 この世界のお金は金属・紙としての価値はあれど、通貨としては扱ってもらえない。

 

「ええ……? じゃあ誰もこの店を利用できないんじゃ……」

「当店は買取も行っております。お客様が持つモノを()()()買い取り、当店の扱う通貨をお支払い致します」

「つまり、ヤツはこう言っているのである。不老不死を買いたいなら、不老不死と同じ価値があるモノを売れとなァ」

 

 そんな事ができれば苦労しない。

 不老不死と同じ価値があると言うことは、不老不死になる事と同じくらい難しいということだ。それなら、普通に不老不死を目指した方が早い。

 

「……ディートリンデ。それなら、あなたは何の目的でこの店に来たのかな?」

「もちろん、憎き宿敵(ヤツ)を迎え討つ為に戦力を揃えに来たのである」

 

 ディートリンデはこめかみは親指で抑え、記憶を絞り出すようにして言う。

 

「『テンプレート・トライアンフ2』において、この店はアイテムショップの役割を持っているのである。装備を買えるだけでなく、格上に勝てる強化アイテムを買えるようななァ」

「あれ? あなたの言う『原作』って、ノベルゲーって話じゃなかったかい?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()R()P()G()()()()()()?」

 

 ちらり、と九相霧黎が持つ《神殺の槍(ロンギヌス)》に目をやる。

 レベル制というシステムの根幹を支えるのが、『生殺与奪』という特権(ギフト)であった。六道伊吹が転生者に殺されてゲームが始まるように、九相霧黎は天使から七天神装(アーティファクト)を奪ってゲームが始まるのだ。

 

「六道伊吹は『テントラ2』の3rdルートにおいて、ラスボスとして立ちはだかる。分かるかァ? ()()()()()()()()()()()()()未来(ルート)()()()()()()()()()

「…………なるほど、そのルートをなぞれば六道伊吹を殺せるということだね。そして、ラスボス戦のレベルにまですぐに到達するためにこの店にやって来たのか」

「理解が速いであるなァ……」

「なら、まず初めに何をする?」

 

 六道伊吹を穴に落として稼いだ時間。

 ヤツはいつだってこちらの想定を上回る。

 ならば、それを更に上回るような準備をしなければならない。やる事は盛りだくさんだ。

 そして、ディートリンデは何が必要かが思い浮かんでいる様子であった。彼女は自信満々に九相霧黎に告げる。

 

 

「ヒロインを口説き落とすのである」

「なんて???」

 

 

 ??????????????

 

 


 

 

「生存者リスト」

 

▽天命機関

ブレンダ

ジェンマ

ロドリゴ

レオンハルト

etc

 

▽転生者

六道伊吹

“奴隷”

“冥府送り”

三瀬春夏冬(みせあきない)

九相霧黎

ディートリンデ

フラン=シェリー・サンクチュアリ

ルーアハ

 






世界観:《資本主義社会(マネーゲーム)
転生者:三瀬春夏冬(みせあきない)(偽名)
グレード:第五界位(グレード5)
タイプ:道具(アイテム)領域(エリア)
ステータス:
 強度-A/出力-E/射程-E/規模-D/持続-C
異能:《売買(Buy-Buy)》、《??》

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