発端はある男の一言だった。
「トーナメント……?」
「うん。儂等も暇ではないからねぇ。貴君にも手伝って貰うよぉ」
そいつは
七十代くらいの白髪のジジイは明らかに機密文書っぽい資料を俺に手渡す。
「〈
「……なら、俺にも異論はねぇ。
背後からブレンダ先輩が資料を覗き込む。
耳元で息を呑む音が聞こえた。
「……ッ⁉︎ ここ、は……ッ」
「知ってんのか?」
「…………私の故郷──〈
…………趣味が悪いな、第二位。
天命機関が大敗北を喫した場所を開催地に選ぶなんて。
(…………ん?)
あれ、〈
「それで? 自分達にも知らされてなかったその〈
ジェンマの声に思考を遮られる。
自分が何を考えていたのか忘れる。
それだけじゃない。何かを考えていた事すらも、忘却の彼方へ流されてゆく。
ロドリゴは当然のように言い放った。
「
「………………は?」
「
…………間に合わねぇが⁉︎
ここは日本だぞ⁉︎ 今まさに一二時だぞ⁉︎ イギリスの正午に間に合う訳がねぇだろ‼︎
「準備はできたかなぁ?」
「待て待て待てッ、ちょっとは説明をしろ‼︎」
「ごめんねぇ。貴君には悪いけれど、作戦は儂の頭にしかないよぉ。貴君には臨機応変な行動を要請するねぇ」
「は? どうやっ────」
「───
それは
その
銀河の果てに向かって旅する超科学の宇宙船は空間を歪め、日本からイギリスまでの距離を無にする。
「……転生者と天命機関の総力戦を始めようかぁ」
転移した先は上空。
恐らくロドリゴの差し金だろうが、空中に浮いていた第二位・ルーアハの真上であった。
ごちゃごちゃなんか言ってるミイラ男の頭を俺の踵が捉え、質量×速度の威力を叩き付ける。
「エントリィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッ‼︎‼︎‼︎」
そして、接触と同時。
俺は足の裏から
(《
一度目。
唯一無二、
ゴッッッ‼︎‼︎‼︎ と。
『……謝罪するねぇ。ルーアハの持つ異能は《死体化生神話》。彼奴自身が世界と成り果てた世界観。
何処からともなくロドリゴの声が聞こえる。
空気を振動させた普通の発音とは違う。しかし、俺はイヤホンを付けている訳ではない。
(骨伝導か何かか? 相変わらず、訳わかんねぇレベルのテクノロジー使ってんな……)
『ここから先は儂が指示を出すよぉ。この場に存在する転生者、その全てのデータが頭に入っているからねぇ』
力強いことこの上ない。
周囲には俺を取り囲む転生者の群れ。
だけど、こちらの味方もまた常識から逸脱した
『儂にはブレンダの如き戦闘力はないよぉ。儂にはジェンマの如き話術も、レオンハルトの如きテクノロジーもねぇ。だが、安心してねぇ?』
正面から物理的に突破する“
だけど、それでもロドリゴは
『儂より経験のある天使はいないし、儂よりも知識のある天使はいないよぉ。
ロドリゴの考えた対転生者戦術──
『数を揃えて物量で勝つ』。
相手の力を調べ上げ、大勢で取り囲んでその弱点を突く。ただそれだけの誰でもやっているようなこと。
『
七七七個に分けた
単純な数の利と一人の指揮者による緻密な連携、そしてロドリゴの豊富な経験と転生者に対する知識。これらを組み合わせ、誰でも転生者を殺せる状態に持って行く。
それこそがロドリゴを
そんな彼の言葉に後押しされ、俺は周囲に蠢く転生者共を挑発する。
「せんしゅせんせー。俺はトーナメントなんて行儀の良い戦い方を殴り捨てて、此処にいるカス共を一人残らずブチ殺す事を宣言しまーす」
一番厄介なのは転生者共が散り散りになって逃げる事。
だから、怒らせる。逃げるヤツもいるかもしれないが、ほんの数人程度なら処理もできる。兎に角ヤツらの足並みを揃えさせず、乱戦に持ち込む。
全ての転生者を敵に回して俺は宣言した。
「纏めてかかって来いよ、
直後。
無数の転生者達が俺に殺到する。
──
俺がする事など何一つなかった。
「…………強すぎんだろ」
ぼけーっと突っ立って見ていた。
天命機関ってものの恐ろしさを知った。
本当に、コイツらにとって脅威だったのは何度殺しても転生して戻ってくる
第二位の殺害に俺が必要だった。
だけど、単に殺すだけなら俺はいらなかった。
きっと、殲滅までに十分もかからなかった。
「六一人の処理完了っす。協力者を除けば、逃したのは二名っすね」
「名称は分かっているかなぁ?」
「“冥府送り”と“
「……第三位はどうなっているのぉ?」
「未だ捜索中っすけど、動きは無しっすね」
「…………………………」
こうして、〈
「そういえば、転生者が六六人いたんですけど何か知ってますか?」
「ええぇ……? それは儂知らないよぉ⁉︎」
本当に大丈夫か、コイツら?
だけど、俺達は知らなかった。
六四人の転生者との殺し合いが、この地を舞台にして巻き起こる騒動のほんの前哨戦に過ぎないことを。
「あっ」
「あ?」
コツン、と。
静かになった街に足音が響く。
この地に残った転生者は七人。
それは奇しくも、かつてこの地で起きた〈
天命機関の協力者として参戦した六道伊吹と
包囲網を抜け出した“冥府送り”と“
飛び入り参加の九相霧黎とディートリンデ。
そして、
その中でも、よりにもよってこの二人が出会うのは何の因果なのか。
偶然にも二人の転生者は出会ってしまった。
「オイッ、テメェは……‼︎」
それはビスクドールのような美少女。
黄金の瞳を輝かせ、黄金の髪を揺らす。
その不安げな表情は、まるで親と逸れて迷子になった幼子のようにも見える。
だけど、俺は知っている。
美しい顔に反して、ヤツが持つのは醜悪な心だ。幼子なんていたいけな存在なんかじゃない。
ヤツの姿に見覚えはないが、
「なぁ、なんで生きてやがるッ‼︎
「我の名はディートリンデである! そんな可愛くない名は捨てたァ‼︎」
一界戦。
六道伊吹vsディートリンデ。
「……死ぬのが怖い癖に、不死身だった時の感覚が抜けてないのかな?」
霧黎は掴めなかった右手を見て、そう呟いた。
本来、ディートリンデは九相霧黎の側を離れない。命を狙われているディートリンデにとって、一番の安全地帯がそこだからだ。
だけど、彼女は今そこにいなかった。
理由は単純。
「
ディートリンデは六道伊吹の挑発を聞いて頭が沸騰し、複数の転生者達共に彼を殺しに殺到した。そして、天命機関とかではなく隣の転生者の異能に巻き込まれて吹っ飛んだ。
つまりところ、自業自得である。
それでも、心配なのには変わりない。
今ここには彼女の天敵たる六道伊吹がいる。
万が一巡り会えばとんでもないことになる。
「早く探しに行かないと」
「────そうはさせません」
だけど、それを阻む影があった。
ロドリゴが把握していない二人の
それに対応できると目された最強の天使の姿が。
「〈
「そういうあなたは最強の天使、ブレンダって人で合ってるかな?」
一界戦。
九相霧黎vsブレンダ。
「生存者リスト」
▽天命機関
ブレンダ
ジェンマ
ロドリゴ
レオンハルト
etc
▽転生者
六道伊吹
“奴隷”
“冥府送り”
“
九相霧黎
ディートリンデ
フラン=シェリー・サンクチュアリ
ルーアハ
世界観:《
転生者:ルーアハ
グレード:
タイプ:
ステータス:
強度-D/出力-A/射程-A/規模-A/持続-EX
異能:《死体化生神話》
終末摂理:『??』