原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

51 / 103
四三話:一界戦/vsヒロインB

 

 

 バチィッ‼︎ と視線が交錯する。

 ブレンダは腰を低くして、《神殺の槍(ロンギヌス)》を構えて九相霧黎を観察する。

 

()()()()()()()()()()()()……立ち方も素人のそれです。まさか、巻き込まれたただの一般人ですか……?)

 

 だが、油断はできない。できる訳がない。

 相手は既に五七人の天使を殺害して退けた怪物。どんな手段を使ったかは知らないが、それができるだけの何かを秘めている事は間違いない。

 

(…………それに、転生者の雰囲気がない転生者というのは()()があります)

 

 つまり、()()()()

 歴史上初めて六界列強(グレートシックス)の完全殺害を果たした彼だって、元々はただの一般人だ。目の前の少年が同じように突然覚醒したとしても何らおかしい事ではない。

 

「そのパイルバンカーが話に聞く七天神装(アーティファクト)ってヤツかな?」

 

 なのに、当の本人は普通に話かけてきた。

 その態度はまるで学友にでも挨拶するような日常のもので、何処か違和感が付きまとう。

 

「……そうですが、それが何か?」

「いや、特に何も。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「それを、何処で……⁉︎」

「あなたを責める気はないけれど、人の命を冒涜しているのは転生者じゃなくて天命機関(あなたたち)なんじゃないかな?」

 

 ギュッ、と槍を持つ手に力が籠る。

 反論の余地はない。すべて、九相霧黎の言う通りだったからだ。

 

 

 第三位の終末摂理(ワールドエンド)によって、ありとあらゆる可能性は存続することが証明された。第四摂理によって世界に魔力が満ちたように、第三摂理は世界に可能性を齎した。

 死んだとしても生存の可能性が存続し、魂は逝き場を失って幽霊が発生するようになった。転生者が死亡したとしてもそれは同じで、たとえ魂が輪廻に還ってもそれに付随する異能は現世に置き去りとなった。

 

 七天神装(アーティファクト)はそういった摂理(ルール)を利用した武器だった。

 異能は肉体に宿る。そして、異能は転生者の死後も残り続ける。故に、遺体を加工して作成した武器は転生者の世界観をも貫く特権(ギフト)を手に入れる。

 

 理論の提唱者たる先代の“聖杯(ハート)”がその他大勢の天使と共に〈堕胎事変(フォールダウン)〉で亡くなったため、七天神装(アーティファクト)の製法は失伝してしまった。転生者に知られないように情報を知る人物を絞ったが故の悲劇であった。

 もしもそれが無ければ、七天神装(アーティファクト)千天神装(アーティファクト)にでもなっていたのではないだろうか。

 

「……ええ、私達は間違っている。それは百も承知です」

「だったら──」

「だとしてもッ、諦めるわけにはいきません。完璧な“正しさ”なんて無いのだとしても、それでも正しくあろうとすることは決して間違いではないのですから」

 

 ブレンダは正義を誓った。

 神に、己に、そして《神殺の槍(ロンギヌス)》にも。

 たとえこの手の中の武器(ヒト)がブレンダを恨んでいるのだとしても、彼女が歩みを止める事はない。

 

「……そうか、それがこの世界の普通か」

「………………?」

「けれど、すまないね。ぼくはもう彼女の『たすけて』を優先すると決めているんだ」

 

 直後、九相霧黎の雰囲気が変わった。

 歴戦のブレンダが怖気付くほどに。

 何かが始まる。何かを始めさせてはならない。目の前の少年が理解できない宇宙人に作り変えられていくような奇妙な感覚。

 

 相手のペースに乗せられるな、と理性が囁く。

 故に、ブレンダは様子見も兼ねて先手を取った。

 

 

主よ(Call)偉大なる我らが父よ(Lord)振り下ろされた断罪の剣(Thunder)声より早く姿を見せよ(Lightning)

 

 

 ()()

 即ち、“()()”である。

 第四摂理を犯し、魔法の領域に踏み入れた科学。

 神速で空気を切り裂いて進む電撃が、眼前の敵を刺し貫く。

 

 対して。

 九相霧黎はただ右手を突き出した。

 そして、その異能の名を宣言する。

 

 

「────《破界(ワールドブレイカー)》」

 

 

 何の変哲もない少年の右手に、生命を粉砕する雷があっさりと摘み取られた。

 

 それは正しく、《破界(ワールドブレイカー)》。

 領域(エリア)型の異能、《現実世界(ノンフィクション)》の産物。

 

「六道くんの異能と同種ッ⁉︎ 貴方もまた同一世界に生まれ直した転生者だと言うのですか……⁉︎」

「同一世界に転生する可能性は極めて低いけれど、決してゼロじゃない。だったら、ぼくが《破界(ワールドブレイカー)》を持っているのも何ら特別な事じゃあないだろう?」

 

 だとしてもッ、同時期に二人現れるのは異常でしょう……‼︎ と、ブレンダは内心で嘆いた。

 

 しかし、悪いことばかりじゃない。

 《破界(ワールドブレイカー)》は確かに脅威だ。《魂絶(ソウルリーパー)》すらも保有していたら、六界列強(グレートシックス)は悲鳴をあげるだろう。

 だけど、それは転生者に限っての話。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ズダンッ‼︎ と。

 ブレンダは力一杯地面を蹴った。

 

 《神殺の槍(ロンギヌス)》の特権(ギフト)──『生殺与奪』。

 敵から生命力(けいけんち)を奪い、槍の中に貯蔵し、それを味方に付与する能力。生命力とは単純な体力や治癒力だけでなく、身体能力も含まれる。

 その挙動は生物の限界を超えていた。並外れた身体能力はブレンダの身を弾丸のように駆動させ、音速近い一撃は瞬きの間に九相霧黎を突き穿つ。

 

 ────その、はずだった。

 

 

「──《破界(ワールドブレイカー)》」

「なッ⁉︎」

 

 

 初め、ブレンダはそれがブラフだと思った。

 だって、本来の《破界(ワールドブレイカー)》を知っているから。

 それは肉体と異能が接触しない限りは発動不可能だと理解しているから。

 

 だけど、現実は残酷だった。

 

 突如、身体能力が常人まで戻る。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(発動条件に接触が含まれない……⁉︎ ()()()()()()()()()()()()()‼︎ ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ⁉︎)

 

 そして、ブレンダには異能の詳細まで思考を巡らせる暇がなかった。

 命の危険はすぐそこまで迫っていた。

 

 当然の話をしよう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 具体例を出そう。

 バイクに乗って高速道路を走っているとする。法定速度をぶっちぎって、カーブを曲がれるギリギリの速度を維持していたとする。

 すると突然、バイクが消滅する。運転手は生身のまま空中に投げ出される。

 さて、どうなる?

 

 

 答え────()()()()()()()()()()()()

 

 

 今のブレンダは同じ状況に置かれていた。

 突然の『生殺与奪』の無効化により体勢は崩れ、速度の制御が効かず、上半身から地面に摺り下ろしになる。

 当たり前の物理法則に従って身体は粉砕される。

 

 

「────え」

 

 

 しかし、そんな未来は起こらなかった。

 あまりにも非現実的な光景──異能だと言われた方がまだ納得できる光景に九相霧黎は思わず声を溢す。

 

 ブレンダは地面との衝突の瞬間、くるっと一回転した。

 中国武術における化勁(かけい)、あるいはパルクールのロールが近いだろうか。回転により力の軌道を変化させ、受け流す。

 

 

「──行きますよ」

「ッ⁉︎」

 

 

 そして、それでは終わらない。

 前転後に立ち上がる瞬間、回転によって受け流された力を足に集中させて地面を蹴る。その衝撃は地面を震わせ、反作用としてブレンダを前方へ吹き飛ばした。

 即ち、()()()。今度こそ、音速に匹敵する一撃が九相霧黎まで到達する。

 

 

 ……もしも、相手が六道伊吹であったらなら、超速の一閃のもとに敗れ去っていただろう。

 彼に異能を無効化する力があったとしても、彼自身は何処にでもいる普通の高校生。軍人よりも鍛えたブレンダの近接格闘には到底敵わない。

 

 ──だから、それは証明だった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ゴガッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 その瞬間、何かが砕け散る音が響いた。

 それは九相霧黎──()()()()

 彼の足元、地面にヒビが入る音だった。

 

 九相霧黎は傷一つなくその場に立っていた。

 ──()()()()()()()()()()()()()

 

「受け、止めた……?」

「…………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「衝撃を地面に受け流した……‼︎ ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ⁉︎」

 

 

 ──天才。

 その一言がブレンダの脳裏に浮かぶ。

 

 彼女も、何度もその言葉で呼ばれてきた。

 だけど、目の前の少年のそれは度を越している。

 見取り稽古なんて言葉じゃ言い表せないほどに。

 

 異能がどうとか、装備がどうとか、そんなレベルの話じゃない。そんな段階はとっくに過ぎ去っている。

 《魂絶(ソウルリーパー)》そのものよりも六道伊吹のイかれた精神性が恐ろしいように、九相霧黎という存在そのものが真の脅威だった。

 

「さぁ、もっとぼくに見せてくれよ。この世界の当たり前ってヤツをさ」

「貴方は危険過ぎます! ここで確実に仕留める……‼︎」

 

 手刀、震脚、発勁、縮地、脳震盪。

 他にも、他にも、他にも、他にも、他にも。

 

 無数の武術を重ねる。

 無数の攻撃を重ねる。

 重ねて、重ねて、重ねて、重ねて。

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……天才、ですか」

「? 何を言っているんだ? あなたが出来ることなら、同じ人体構造を持つぼくができたっておかしい事じゃないだろう?」

「いいえ、貴方は天才ですよ。どうしようもない程に、まともじゃない」

「……………………」

 

 勝敗は明白だった。

 あらゆる武術は九相霧黎に通用しない。

 あらゆる武術を九相霧黎は吸収する。

 既にブレンダの近接格闘技術の内、四割は学習されている。

 あと三〇分戦いを繰り返せば、彼の技量はブレンダに追いつく……いや、()()()()。そう確信する程の学習速度。

 

「ですが、貴方は可能な事なら何でもできる天才に過ぎません。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………それが?」

「貴方の底は知れたって事ですよ」

 

 

 バヂィッ‼︎ と。

 電光が迸った。

 

(これっ、はッ、鋼糸(ワイヤー)か……⁉︎)

 

 目に見えないレベルで細いワイヤー。

 そこから放たれた電撃(スタンガン)

 ブレンダがまだ見せていなかった、『科学』という武器。

 

 ほんの一瞬、九相霧黎の意識が明滅する。

 その一瞬でブレンダは懐まで潜り込む。

 

(だがッ、その受け流し方は既にあなたから学んだ……‼︎)

 

 ブレンダは掌底を繰り出し。

 九相霧黎はそれを受け流そうとして。

 

 

「────は?」

 

 

 ()()()()()()()()()

 

「貴方は私の武術を学習しましたが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「………………誘導された⁉︎」

 

 九相霧黎は知らず知らずのうちに、防御の型を学習させられていた。

 危機的状況において、反射的にその行動が発揮されるように。無意識に刷り込まれた。

 

 防御が空振り、ガラ空きになった胴体。

 そこに、ブレンダの手が伸びる。

 

 

 トンッ、と。

 ブレンダの拳が九相霧黎の胸を軽く叩いた。

 ただ、それだけのことで。

 

 

「っ、 ぁ。 ッ⁉︎」

 

 

 ()()()()()()‼︎‼︎‼︎ ()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

(なッ、に……がっ⁉︎)

 

 ()()()()

 心臓の真上から外力が加わった事で、心室細動という不整脈が起こり、心臓が機能を停止してしまった状態。

 衝撃が当たる場所・衝撃の強さ・衝撃のタイミングが揃わなければ起こらないそれを、ブレンダの神技は人力で成し遂げた。

 

 初めに感じたのは息苦しさだった。

 九相霧黎は荒い呼吸を繰り返す。

 だが、そうして息苦しさは晴れない。そんな呼吸に意味はない。

 だって、心臓が動いてないんだから。いくら酸素を取り込もうとも、血液が循環していないのだから、酸素もまた全身に送られることはない。

 

 手足が痺れる。感覚が消えてゆく。

 耳鳴りが聞こえる。何も聞こえない。

 視界が白く染まる。走馬灯が見え始める。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ブレンダから学習していた手刀は筋繊維を避け、肋骨の内部まで手が潜り込む。

 そして、掌で心臓を掴み、()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 ──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 彼女の手にあるのは通信機。

 ロドリゴとの直通回線(ホットライン)である。

 

老翁(おじ)様、私の位置座標は分かりますね?」

『了解したよぉ。着弾まで一〇秒‼︎』

 

 空を覆う無数の黒い影。

 大地を揺るがす轟音。

 それは異能ではなく、武術なんかで敵うはずもない兵器。

 

 

()()()()……⁉︎」

「当たり前の物理法則に敗れて死になさい」

 

 

 もはや、九相霧黎に出来ることはなかった。

 異能でないそれは無効化できない。

 武術を用いてもミサイルは避けられない。

 そもそも、心臓が動いたばかりの今じゃ何もできない。

 

 だから、九相霧黎は諦めて呟いた。

 

 

「……この世界の人間としてはあなたの勝ちだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……………………………………………………は?」

 

 

 ミサイルが放つ轟音は九相霧黎の声を掻き消した。

 けれど、目の前にいたブレンダだけは口の動きからその言葉を読み取ることができた。

 ()()()()()()()()()()

 

 

 

世界新生(reverse)───《■■■■■》」

 

 

 直後、世界が繋がった。

 世界観(ジャンル)が拡大される。

 物理法則(第零摂理)が改訂される。

 これより先は異世界、なんて境界は存在しない。

 

 

「貴方まさかッ、現世出身なんかじゃな──」

 

 


 

 

 ザザザザザザザザザザざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザざざざざざざざザザザザザザザザザザざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザざざざざざざざざざざざざざざザザザザザざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザざざざざざざざざざざざざざざ‼︎

 

 


 

 

 ブレンダとの通信は途絶えた。

 通信機からの応答は無い。彼女はもう何も応えられない。

 通信機ははただ、ぐちゃっぐちゃっと水っぽい何かが潰れる音を奏でていた。

 

 けれど、最期に。

 彼女は一つだけ重要な情報を遺した。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 


 

 

「生存者リスト」

 

▽天命機関

ブレンダ

ジェンマ

ロドリゴ

レオンハルト

etc

 

▽転生者

六道伊吹

“奴隷”

“冥府送り”

死の商人(ウォー・バイヤー)

九相霧黎

ディートリンデ

フラン=シェリー・サンクチュアリ

ルーアハ

 






世界観:《■■■■■》
転生者:九相霧黎(きゅうそうむくろ)
グレード:第五界位(グレード5)
タイプ:領域(エリア)
ステータス:
 強度-A/出力-A/射程-A/規模-A/持続-A
異能:《破界(ワールドブレイカー)》?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。