きょうは「今どきの暴力団事情」について、フジテレビ報道局・平松秀敏解説委員に伝えてもらう。
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最近、今の暴力団が置かれている現状を象徴するような事件が相次いでいる。まずは、「神戸・ラーメン店主殺人事件」。4月22日、神戸市長田区のラーメン店で、余嶋学(よじま・まなぶ)店主・57歳が、銃で撃たれて殺害されているのが見つかった。その後、驚きの事実が2つ明らかになった。
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1つ目は「拳銃を口に入れられ殺害か」。警察が、余嶋さんの遺体を調べたところ、なんと、頭から銃弾のようなものが見つかった。拳銃を口に突っ込まれて、発射された可能性があるとのこと。
拳銃は、犯人は持ち去ったのだろう。かなり、強い殺意に基づく犯行と言える。では、なぜ、ラーメン店の店主が射殺されたのか、その理由が、2つ目の”驚きの事実”。
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実は「余嶋店主は、暴力団組長だった」のだ。しかも、あの「山口組」系、弘道会傘下の組長という肩書きを持っていることが判明。ただ、周囲の人たちには、余嶋さん=組長だとは知られていなかったという。
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この「弘道会」というのは、現在の六代目山口組の司忍こと、篠田建市組長の出身母体。最も勢力が大きい組織と言えるだろう。ただ、捜査関係者によると、余嶋組長が殺害された事件の背景は、山口組の分裂による抗争というよりも、何らかの金銭トラブルの可能性が高いとみられている。
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ここまでは、この事件の概要。容疑者は、まだ逮捕されていない。一方で、今回、この事件を、別の視点から切り取りたい。それが、きょうのウラドリ情報。「今どきの“ヤクザ”はつらい?」だ。
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そもそも、今回の事件で、最も驚かされたのが、なぜ「暴力団組長」が「ラーメン屋さん」なのかだろう。かつての暴力団であれば、ラーメン店を“隠れ蓑”にして、不正に金を稼いでいた可能性はある。
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しかし、余嶋組長は、”本気”で、ラーメン店経営に取り組んでいたとされている。そのせいか、余嶋組長の店の評判は「コクがあって本当に美味しかった」と言う声や「お店の方は腰が低くてとっても一生懸命」などといった声もあった。
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味だけでなく、接客に関しても、お客さんからも、とても好評だったようだ。つまり、ここまで取材を総合すると、余嶋組長は、金を稼ぐために、本気でラーメンを作っていた可能性が高いのだ。
実は、現在の暴力団は、暴対法の規制強化により、経済活動が、かなり制限されている。今や、暴力団員というだけで、銀行口座さえ開設できない時代となった。当然、警察当局の取り締まりも厳しい。
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いわゆる暴力団の稼ぎである「シノギ」が成り立たなくなっている。よく、「暴力団ではメシが食えない」などとも言われているという。このように、暴力団が立たされている現状は、非常に厳しいのだ。
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一方で、暴力団である以上、上部組織に対して、会費=上納金を納める必要がある。この会費が、かなりの負担となっているとされる。稼ぎがないのに、出費はかさんでいるのだ。
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こんな状況の中、余嶋組長はと言うと、捜査関係者によると、組長とは言え、子分がいなかったとのこと。いわゆる、組長兼組員の「ひとり親方」だったのだ。
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それならば、暴力団を辞めればいいのではないか?との指摘もあるだろう。しかし、余嶋組長は、色々なしがらみから、暴力団を辞めるに辞められなかったとみられている。
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なお、この「ひとり親方」組長は、全国で増加傾向にあるという。ある捜査関係者は、余嶋組長について「暴力団としての収入源(=しのぎ)はなく、真面目にラーメンを作って、生計を立てていたのではないか」と話している。
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もう1つ、暴力団の現状を物語るような事件が、明らかになった。それが、「暴力団の父がかわいそう事件」。警視庁は、先月、指定暴力団・住吉会系、日野一家総長(73)と、43歳の無職の娘を逮捕した。容疑は詐欺。どういう事件か、概要を説明すると・・・。
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この総長と娘は、去年3月30日、都内の自動車販売店を訪れ、自らが暴力団幹部であることを隠して、売買契約を結び、およそ560万円の乗用車を購入した疑いがもたれています。この店は「暴力団に車は売らない」と表明しているのに、身分を偽って購入した行為が、詐欺と認定された。
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さきほど、現在の日本では、暴力団の経済活動は制限されていると説明したが、この新車購入も、その1つ。暴力団は、簡単に、車も買えない時代なのだ。
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では、なぜ、娘まで逮捕されたかと言うと、実は、娘は、車購入の名義人になったため、共犯者として逮捕されたのだった。
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この2人の供述が、とても印象的だった。父親の総長は、調べに対して、容疑を一部否認していたものの、「暴力団員である自分の名義で、車を買えないことは知っている」と供述していたという。
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これに対して、娘は「暴力団の父が車が買えないことは知っていた。父がかわいそうなので名義を貸しました。」と供述していた。やはり、今の暴力団の置かれた現状を物語るような事件だろう。
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最後に、それを裏付けるようなデータを紹介したい。警察庁によると、去年末時点での暴力団員・準構成員の数は、全国で2万2400人。ご覧のように、18年連続で減少している。この18年で、3分の1以下に減った。「人口減少」の状態だ。
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さらに、年齢構成で見ると、最も多いのが50代で、全体の30.8%を占めている。次いで多いのは、40代で26.3%、30代で12.9%、そして、60代、70代となっている。20代の暴力団組員・準構成員は、わずか5.4%だ。全体の半数以上を50代以上が占め、平均年齢は、なんと54.2歳だ。まさに「高齢化」と言える。
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「人口減少、高齢化」が、今の暴力団が置かれた現状。反社会勢力に同情するつもりは全くないが、今の、暴力団が置かれている現状は、とても厳しいと言える。
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(「イット!」5月2日OA)