「…………《
瞬間。
俺はクシャナの時間停止を無効化するために、七度目の異能使用を行なった。異能の反応を知覚し、クシャナの発言に対応して。
だが、その全てが
「うぐア……ッッッ‼︎」
内臓が一つ吹き飛ぶ。
何の効果も得られずに、空振りする。
完全な無駄撃ち、無駄骨、無駄死に。
本来ならば、異能の反応を間違うことはない。
異能の反応がしたからには、必ず異能は使用されている。唯一の例外は未来で発動し、その余波が現在まで届く時間遡行の異能であるが、それも残響……あるいは残り香のような薄まった反応であるため、時間停止の異能使用と間違うはずがない。
ただし、今回ばかりは話が異なる。
時間停止と誤認してしまうほどの反応。
加えて。
攻撃をズラしたということは、ヤツの手札にはまだ
防御なんて出来るはずもなかった。
「《
瞬間。
時間が、止まった。
ドゴッドガッメリメリィビギッゴンッバキバキベキベキィィッッッ‼︎‼︎‼︎ と。
六道伊吹は粉砕された。
「さて、六道伊吹は何処へ行ったのか」
折手メアは路上で呟いた。
ジェンマを撃退した彼女は、今度こそ六道伊吹と共闘するために、彼を探して歩き回っていた。
だけど、見つからない。
(防音の室内にでも閉じ込められている……? あるいは、ボクも知らないような新技術で音が聞こえないようになっている可能性……。……だけど、
折手メアの思い通りにならない。
つまり、事態は《
ふらふらと歩いていると、そこで赤い影が視界の端に映る。
それはヒロインの一人にして、六道伊吹の奴隷。
アドレイド・アブソリュート。
彼女もまた六道伊吹を探していた。
イヴリンとの戦いが激闘だったのか、服の皺一つもない折手メアとは違ってボロボロの格好をしている。
「……なんだ、アンタか」
「キミはそこで何をしているんだい?」
そこほ奇妙な場所だった。
アドレイド以外の誰もいない。
血の痕跡があるわけでもない。
なのに何故か、荒れた路上。
いいや、
近くで見ようと、折手メアが一歩進んだ時だった。
「………………は?」
「うん、やっぱり感じるわ。此処よ、
「アタシとアイツ……
「普段から
「うるっさいわね! 今それ関係ないでしょ‼︎」
アドレイドは顔を真っ赤にして叫ぶ。
頭も赤い上に、所々が血で赤く染まっているため、全身真っ赤の怪人にも見える。
(これどっちだ……⁉︎ 屈辱か羞恥か。今日会ったばかりならば好意は持っていても、恋愛感情にまでは発展していないはずだが…………いや、でも相手はあの六道伊吹だぞ? ヒロイン攻略RTAを行っていても不思議じゃない‼︎)
頭ではふざけた事を考えながら、顔はシリアスを維持したまま会話する。
折手メアの特技の一つである。
「それで、間違いないんだね?」
「……ええ、アタシ達は契約により魂レベルで繋がっているわ。魂は世界よりも優先される最高強度の概念、時空を超越した超次元情報連続体よ。並大抵の異能じゃ遮断できないわ」
「うーん、
「少なくとも
折手メアの異能が及ばない領域。
そんなもの、一つしか思い浮かばない。
「
「あッがアアアアアああああああああああッッッ‼︎⁉︎⁉︎」
「クハハハハハハハハハッ‼︎ 抜け出したぜぇぇええええええええええッ‼︎ オレサマはッ、あの
機動力を完全に奪われた。
だが、そもそも時間を停止できたならば俺を殺せたはずだ。しかし、そうはならなかった。
今の攻撃は憂さ晴らしのようにも感じた。
「ふゥゥゥゥゥッ‼︎ あああ、あああアアアアッッッ‼︎⁉︎⁉︎ 幻覚じゃねぇッ‼︎ オレサマは本当に勝ったんだ……‼︎ ……そう、だよな……? そうだって言ってくれよ、ディートリヒ。言えよぉぉおおおおおオオオオオオッッッ‼︎‼︎‼︎」
「どうしたクシャナァ‼︎ 何がッ、未来で何があったァ⁉︎」
「うぐっ、うぐアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼︎‼︎‼︎⁉︎⁉︎⁉︎」
クシャナは錯乱していた。
文字通り
(…………ッ? よく分からないがチャンスだ。地面を這いずってでも、ヤツに手を伸ばす‼︎)
全体重を右手の指に乗せ、地面を引っ掻くようにして前へ進───
「───《
「がっ、ぎぶア⁉︎」
「何度繰り返したと思ってる……‼︎ オマエさんの考えなんざ丸わかりに決まってるだろッ‼︎」
右手の指の骨が折れた。
その上、地面にめり込んだ自販機の下敷きとなって右手が動かない。
気分は
「オレサマは
「……今まで苦労させられたお返しに痛めつけてから殺す予定ではなかったかァ……?」
「油断も隙もねぇッ! 時間をかければどうなるか分かったもんじゃねぇぜッ‼︎‼︎」
「クシャナのチカラの前には、番外位の増援という心配も必要ない。予定通り時間をかけて憂さ晴らしをしても問題ないと思うがァ……」
「あんなヤツはどうでもいい。一番の脅威は六道伊吹、ただ一人だぜ……‼︎」
クシャナは俺に向かって左手をかざす。
そして、ただ一言を告げた。
世界そのものが異世界へと変質する。
顕現するは第五の
この世界に刻まれた『矛盾』の法則。
語られざる
「第五摂理接続ッ‼︎ これがオレサマが世界に刻んだ摂理ッ、タイムパラドックスを許さない世界による制裁‼︎」
そんな状況の中で。
ふと、何故か目に付いたものがあった。
かざされた左手首の電子時計がバグっている。
初めはそう思っていた。
だけど、気づく。
似たような現象に見覚えがある。
昨日の朝の目覚まし時計もそんな感じだった気がする。
ディートリヒの言葉を思い出す。
折手メアの助けは望めそうにない。
たとえ同じ空間座標に辿り着いたとしても、
(だったらッ、俺がやるしかないよなぁ……‼︎)
時間軸に影響を与えながら、どの時系列にも存在しない『矛盾』した時間座標。
この場にいる者しか、この時間座標には干渉できない。
内臓が吹っ飛んだ。
足が砕け散った。
指が折れ曲がった。
それがどうしたッ、俺がやらなきゃ誰がやる‼︎
「さぁ、あらゆる時間軸から消し飛びなッ‼︎」
それは蒼白いほのかな光だった。
左手から放たれたビームのようのそれは、一直線に俺を穿つ。
「オラァッ‼︎」
その前に。
馬鹿力で右手を挟む自販機を持ち上げ、クシャナに向かって投げつける。
音はなかった。
ビームに触れた自販機が消滅し───
───何が、消えた?
間違いなく何かが消えたはずだ。
だけど何だったか、思い出せない。
まるで、世界を
折れ曲がった右手の指だけが存在したはずの何かを証明する。
これが、第五摂理か……⁉︎
現時点だけでなく、過去や未来からも消滅させる『矛盾』の摂理。
存在したという痕跡は残っても、存在自体は掻き消す終末の理。
「無駄な足掻きだ。もう未来は変わらねぇ……変えさせねぇぜ」
即座に、次の攻撃が迸る。
準備時間も待機時間も存在しない。
消耗さえ見えないような理不尽の一撃。
(クソがッ! 《
「
グチュッ‼︎ と。
地面から生えて来た槍が腹に突き刺さる。
文字通り、ディートリヒからの
分かっていたさ、異能の反応を感じていた。
それでも、避けられない。
避けるための足も、体力もない。
そして、俺の思考は完全に途切れた。
「今度こそ、サヨナラだぜ。オマエさんの戦いは何の意味も無く終わる。無駄死にのまま、くたばりやがれぇ‼︎」
蒼
光
消
死。
「───まだ諦めてはいけません、六道君」
声が、聞こえた。
存在しないはずの助け。
だが、思い出せ。
この場にはあと一人いなかったか……?
そして、
「私は
ゴッッッ‼︎ と。
回転した《
「────ッッッ‼︎⁉︎⁉︎」
瞬殺。
一瞬で絶望的な状況が覆った。
「先輩っ⁉︎ どうやって……‼︎」
「殺してはいませんよ。死なせると面倒なので。ただ、ちょっと脳を揺らして気絶させただけです」
「脳震盪……⁉︎ いっ、いや、そっちも気になってたけどッ……‼︎」
「何故だァッ⁉︎ 何故ッ、貴様が生きているッッッ⁉︎ 体を真っ二つに裂いたはずであろうがァ‼︎」
ディートリヒが俺の言いたい事を代弁する。
ブレンダ先輩はディートリヒの《神威聖剣》によって肩から腰までを切り裂かれたはずだ。俺だってそれを見ていた。
あんな状態から五体満足で生き返るなどあり得るのか……⁉︎
「これです、これ……」
コンコン、と。
ブレンダ先輩は手元の《
「《
「そんな訳があるかァ‼︎ 確かにその槍には生命力を譲渡する機能があるがッ、それはただ死なないだけだァ‼︎ 治癒力が多少上がることはあっても、切断された肉体が元に戻る訳がないだろうがァッ‼︎‼︎」
ブレンダ先輩が切られた箇所を見る。
確かに綺麗に繋がっている。
……ん? 光の加減か、一瞬何かが反射して見えた。いや、これは…………‼︎
思わず、言葉が溢れた。
「
よく見ると気道切開の穴も塞がれている。
この糸はもしや
だが、そんなことが可能なのか⁉︎
「元々、
そんな訳があるか。
「貴様ッ、何者だァ……⁉︎」
「覚えていませんか、私のことを。七年前のあの日のことをッ‼︎」
「なッ、いやっ、まさかァッッッ‼︎⁉︎⁉︎」
「私は貴方を殺します、
すっ、と。
そこにいた筈のブレンダ先輩が消える。
視界の中にいる筈なのに、脳がいないと錯覚してしまうほどの気配遮断。
「この気配の消し方ァ、覚えがあるぞォ‼︎ 〈
「天使でも転生者でもないのに……⁉︎」
ただの一般人だった時代に第四位を殺したっていうのか⁉︎
しかも七年前ってブレンダ先輩は何歳だ⁉︎
いくら何でも化け物すぎる……‼︎
目に見えないブレンダに対し、ディートリヒは即座に対応する。
「《白亜神殿》‼︎」
ゾゾゾゾゾゾゾゾ、と。
世界が漂白化されていく。
空は白く輝き、地平線まで平坦な地が続く。
見えないのなら、広範囲全てを一掃する。
全身が脱力する。
心臓の音すら弱くなる。
ディートリヒの敵が自動で撃滅される。
…………しかし。
「あァ?」
「無駄ですよ」
ブレンダ先輩は倒れない。
未だにその痕跡すら見つけられない。
「なッッッ⁉︎ どうやって我が異能をォ……‼︎」
「貴方の異能、《白亜神殿》は貴方に対して害意を持つ者に天罰を与えるモノ……
「え……⁉︎」
違ったのか⁉︎
折手の説明ガバガバじゃねぇか‼︎
「それは火を灯す異能を、酸素を減らす異能と言うような誤認です。実際は、自然現象に神が宿るという法則そのもの。天罰はその副次効果に過ぎません」
「それがなんだァ⁉︎ 天罰が下ることには間違いが無いであろうがァッッ‼︎‼︎」
「いいえ。貴方の天罰は
音の反響の仕方が気持ち悪い。
話しているのに音源が分からない。
何処かでブレンダ先輩は言った。
「つまり、
あのディートリヒさえもが絶句した。
神の眼にも映らない、そのレベルの気配遮断。
ディートリヒはドン引きして動揺する。
その揺らぎを、ブレンダ先輩は見逃さない。
「───
ブレンダ先輩はディートリヒの真正面に現れた。
その槍の
神の子の死を確定させた処刑人の槍。
その槍の
「まてッ……‼︎」
一撃必殺、本当の意味での必殺技。
触れたモノの生命を呑み干す絶対死。
その一撃を喰らって生きている者は存在しない。
しかし、ディートリヒは転生するかもしれないが、肉体の持ち主である椎菜はどうなるのか。
止める俺の声も虚しく、
ディートリヒは肉体ごと死滅する。
…………そのはずだった。
「………………え?」
「フフフ、フハハハハハハハッ‼︎」
ガッギィィッ‼︎‼︎‼︎ と。
俺にも経験がある、《神体加護》による防御。
「当たれば死ぬゥ……? 当たらなければ何も問題はないではないかァ‼︎」
「そんなッ、理論上は貫けるはずです……‼︎」
「貴様に天罰を与えられんかった時点で、我を寵愛する神々が加護を濃くするとは考えられんかったかァ? フハハハハハハハッッッ‼︎‼︎‼︎ 七年前のあの日のように武器が異なれば、勝ち目もあったものをォォ‼︎‼︎‼︎」
攻撃は通じなかった。
そして、攻撃の瞬間に姿を現したブレンダ先輩は
「くッ……‼︎」
脱力、と言うよりは重圧と言った方が近いか。
上から押し潰されるようにして、ブレンダ先輩が倒れ伏す。
切り札が破られた。
絶体絶命のこの状況。
そんな中で、ディートリヒの言葉が頭の中を反芻する。
ディートリヒの左胸の傷が目が行った。
《
刺されたかのような小さな痕。
七年前に使った武器は、もしかして……‼︎
「必要なのは触れた者を殺す
…………俺の、せいか。
俺が《
俺なんかが担い手になってしまったせいだ。
もしかして、原作ではブレンダ先輩が《
《
ここにいるのが俺じゃなければ。
そんな後悔が頭に浮かぶ。
折手が盗まなければ、という話ではない。
あんなのでも折手は一応俺の協力者で、相棒で、共犯者だ。あいつの罪は俺も背負わなければならない。
そもそも折手の行動は俺の活躍を見たいがためのものでもある。俺が折手の期待に応えられなかった、それが全てだ。
「終わりだァ……最期に我も見せてやろう」
ディートリヒは掲げるように右手を上げる。
……ああ、何が来るかなんて分かっている。
世界そのものが異世界へと変質する。
顕現するは第四の
この世界に刻まれた『枯渇』の法則。
語られざる
「知っているかァ?
動けない、止められない。
興味の無い演説をダラダラと聞かされる。
「だがなァ、同じ消滅という結果でもその過程は摂理ごとに異なる。例えばクシャナの『矛盾』は、タイムパラドックスを利用した時間軸からの追放であったかァ……?」
ディートリヒは歌うように言葉を発する。
ドスンドスン、と。
地面を揺らしてブレンダ先輩を跨いで歩く。
まるで希望を踏み躙るように、一歩ずつ。
「我が『枯渇』は物質・概念を魔力として吸収して消費することで消滅させる。そしてェ、我は他者から形の無い異能さえも奪うことができるッ‼︎ ならばァ、転生者でも無い人間から異能を奪うとどうなると思う?」
「………………………………ッ」
「失敗する、とかか……?」
ブレンダ先輩の顔が歪んだ。
彼女は既にその最悪の未来が見えていた。
「
「……………………………………………………、」
……
やはり、コイツが諸悪の根源。
今回の転生者騒動の一端を担う最悪の敵。
「その状態で『枯渇』を解除すれば、転生者の製造完了だァ。無理矢理に異能を引き出した為か、現世の人格が前世に記憶に塗り潰されやすいという弊害はあるがなァ……」
ディートリヒの右手がブレンダ先輩に近づく。
コイツ……‼︎ ブレンダ先輩を転生者に仕立て上げるつもりかッ⁉︎
「さぁ、貴様はどんな
ガッッッ‼︎ と。
ディートリヒの右手が振り下ろされる。
触れた者の異能を搾り上げ、無ければ前世の記憶を掻き出しても無理矢理に強奪する最悪の一撃。
「なァ……⁉︎」
「やら、せるかッ……‼︎」
息も絶え絶えで、今にも死にそう。
むしろ、死んでいないのが不思議でしょうがない。
それでもッ、俺はディートリヒの一撃を受け止めた‼︎
確かに《白亜神殿》はディートリヒに害意を持つ者に天罰を与え、害する力も抗う力も奪い取る凶悪な異能だ。
だけど、その異能で害意自体が消えることはない。
つまり、
だから俺は、肉体を外と中の両方から《
立つ事もできない身体を、思考だけで駆動させた。
「…………っッ⁉︎‼︎⁉︎」
チカチカチカッ‼︎⁉︎⁉︎ と。
視界が真っ白に染まる。
既に痛みは感じない。
熱すらも感じられない。
加えて、『枯渇』により異能が奪われる。
ナニカが体から抜け落ちる。
穴という穴をほじくり返されたような不快感。
「…………ァッ‼︎」
命の灯火が消える寸前。
異能が奪われる寸前で、《
それは
むしろ、その逆。
異能の使用にはタイムラグが存在する。
その瞬間に、異能を
「あッがァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼︎⁉︎⁉︎」
異能の効果。
異能の代償。
それら全てを押し付ける。
ディートリヒの
その結果なのかは分からないが、再び俺の元へ異能が戻る。
だけど、何もできない。
(くそっ……‼︎ なにもみえないッ、なにもきこえない‼︎ ……いし、きが……もうろうと、してッ───)
パンッ! と。
椎菜の細い腕で弾き飛ばされた。
《神体加護》が一切働いていない弱いビンタ。
そんなものにも耐えられない。
(───しぬ、のか……? ……なにも、できず……かのじょのきたいにもこたえられず───)
思ったより、ショックな自分に気づく。
……仕方ないか。
いつの間にか、折手メアに絆されていた。
折手メアがクソ野郎だなんて知っている。
それでも、可愛い女の子に好かれているんだ。
その願いを叶えてやりたいと思うのが普通の男子高校生だろう。
たとえ、彼女が
たとえ、彼女が見ているのが目の前の俺じゃないのだとしても。
(うらやましいよ、『
意識が遠のきそうになるのを根性で堪える。
まだ少し、あと少しだけ待ってくれ。
せめて、ディートリヒを殺すまでは……‼︎
意識を保つことで精一杯な俺。
肉体が崩壊しても依代は未だ健全なヤツ。
俺たちは同時に拳を握り、向かい合った。
互いに拳を叩きつける。
着弾の衝撃が吹き荒れる。
銀の長髪がその風にたなびいて輝く。
宝石のように真っ赤な瞳が俺を捉えた。
その小さな口から美しい声が奏でられる。
「お困りかい、
……ははっ、相変わらずふざけやがって。
だけど、それでこそお前だよな。
ガクッ、と。
安心感と共に体が脱力する。
意識を保たせていた最後の糸が切れる。
「任せた、折手」
「任された」
倒れる俺を折手が抱き止める。
冷え切った俺に
そこで、俺の記憶は途切れた。