プロットでは第二章は十五話で終わる予定だったんですけど、どうして未だにBパートの途中までしか終わっていないんですかね?
「コイツに我の遺伝子を孕ませ、新たな肉体を産ませるのである‼︎」
ディートリヒは嗤う。
栗栖椎菜の肉体を乗っ取って。
彼女の人生と尊厳をズタズタにして嗤う。
「…………ッ‼︎」
はくはく、と。
唇を動かすが言葉が出ない。
あまりの醜悪さに絶句する。
(…………間違っていた)
敵が情報提供するから聞いてやる?
そんな悠長に話していいヤツじゃなかった。
すぐに殺さなければならなかった。
今も存在していることが許されない。
「前回は憑依から出産まで一〇日かかったァ。それだけあれば我はシン・ディートリヒとして新生するゥゥウウウウッ‼︎」
「……一〇、日……」
短いと考えるか、長いと考えるか。
少なくとも、俺は十分だと感じた。
元々、一週間も経過すれば第二位と第三位が襲来してくる。その前に第四位と第五位を殺害する計画だったのだ。一〇日もあれば間に合う。
今は異能が使用できない。だからこそ、残りの九日間の内に《
そう、思っていた。
……ディートリヒの言葉を聞くまでは。
「まァ、
「……………………………………………………、は」
息を、飲み込む。
ぶら下げられた希望を取り上げられる。
明日……⁉︎ 明日っていつだ⁉︎ 二四時間後かッ? それとも、夜の一二時を過ぎた時点で出産できるのか……ッッ‼︎⁉︎⁉︎
(ひよってたのか、俺は?)
異能がもう使えない?
何をほざいてやがる、六道伊吹。
そんなもんは何の言い訳にもならねぇ。
テメェの怒りはそんなもんか?
もっと殺意を研ぎ澄ませろ。
もっと憎悪を蓄積させろ。
もっと怒りをブチまけろ。
もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっとッッッ‼︎
明日なんて待っていられない。
この先の
コイツを殺す、
瞬間、
裏返った世界を、更にひっくり返す。
これより先は現世、悲劇のない普通の世界。
一歩。
ここまでの絶望を踏み砕く。
ディートリヒの驚く顔が見える。
クシャナは慌てて異能を発動しようとする。
だが、もう遅い。
俺の拳はディートリヒの魂を───
───プツン、と。
俺の中で保っていた何かが切れた。
気づくと、頭に地面の感触があった。
理解できなかった。訳が分からなかった。
俺の体はもう動かなかった。
「フフフフフフッ、フハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ‼︎」
「クックックック、クハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ‼︎」
二つの嗤い声が聞こえる。
俺を嘲笑う邪悪な
現象に頭が追いつく。
端的に言うと、意識が飛んでいた。
まるで、細切れにされたフィルムのように。
前触れなく、体の制御を失った。
「馬鹿めェ‼︎ 貴様の殺意は十分でも、肉体は既に限界を迎えていたようだなァ‼︎」
「そりゃそうだ。これを狙って、この時間座標を選択したんだぜ?」
「……………………ぁ、…………………………」
異能などの外的要因ではない。
昨日と今日で積み重なった内的要因。
現実はギャグ漫画じゃないんだ。一
咬み傷。擦り傷。打ち身。凍傷。火傷。虚脱症状。脳出血。切り傷。感電。出血。自傷。骨折。内出血。一部を挙げただけで、これだ。
積りに積もった疲労と怪我。
単純に、
何処かの筋でも切れたのか。
或いは、脳に異常でも出たのか。
理由は不明だが、少なくとも今戦うことはできない。
指一本、ピクリともしない。
「無様であるなァ……リクドウイブキィ‼︎ この女も貴様のような貧弱な男に
「…………なん、て………………?」
何か今、コイツはとんでもないことを言わなかったか?
「気づいていなかったかァ? この栗栖椎菜とかいう女は貴様に恋をしているぞォ……」
「やべーな、ディートリヒ。ヒデーことしやがる……ククク」
「……………………え……?」
「そうだなァ、我が肉体に呼びかけてみればどうだァ? 愛している椎菜、お前の人格が戻れば結婚しよう、とな。もしかすると、愛の力とやらで戻ってくるかもしれんぞォ……? フゥハハハハハハハハァッ‼︎」
「…………それ、は…………」
少しでも可能性があるのなら挑みたい。
そんなことで、椎菜が助かるのなら。
もしも、そんな奇跡があるのなら。
……だけど、いいのか?
俺は折手の好意に頼って戦っている。
折手メアの
一瞬の躊躇。
それに、ディートリヒは目ざとく気づく。
「何を躊躇っているゥ……この女の命など、どうでもいいかァ? それともッ、
「ち、ちがッ……‼︎」
「フハハハハハハハハハハハッ‼︎ そうだったなァ! 貴様は番外位と組んでいる、ヤツ以外のオンナは眼中にないということかァ‼︎ 告白される前に振るとはァ、貴様も酷なことをする……」
踏み躙られる。
椎菜の恋を、折手の好意を。
「哀れであるなァ。やはり報われない恋なんかに縋るよりも、我が母になった方が幸せである」
嘘偽りなく。
心の底から、ディートリヒはそう言った。
俺は言い返せなかった。
ディートリヒの言葉を止められなかった。
戦えなかった、救えなかった。
今の俺には何もできない。
ここが俺の限界、これが俺の
頭は働くが、それだけ。
今の俺は屍体と何も変わらない。
───それが、どうした。
死んだ程度で俺が諦めるとでも?
「なぁ、ディートリヒ」
「なんだァ? リクドウイブキィ……‼︎」
強い力では無い、それでも確かに。
ギアが変わる。
身体が再起動する。
血液とは別の
「テメェがそのクソみてぇな理由で椎菜を犠牲にするって言うなら! それが椎菜の幸せだってほざくのならッッ‼︎」
「「………………ッッッ‼︎⁉︎⁉︎」」
二人の
ギギギ、と。
壊れたブリキ人形のように、ゆっくりと。
両脚に力を込めて、俺は立ち上がる。
何をしてやがった、六道伊吹。
どうして何もせず黙っている!
目の前の存在が許せないのならッ!
理不尽な現実をブチ壊したいのならッ、叫べぇッッッ‼︎
「そんな
瞬間、足を無理矢理踏み出す。
道理も常識も無視して、自分の道を突っ走る。
目の前にいるディートリヒを無視して、クシャナに向かって《
確かにディートリヒをブチ殺したいが、順番を間違えるな。まずは対処不能な時間停止を先に潰す。
クシャナに攻撃は当たらない。
クシャナは少し先の未来が視えている。
そう考えていた。
……だけど、違ったんだ。
だから、未来視の異能ではない。
考えられるとしたら
少なくとも、これから時間は
だったら、対処法は時間停止と同じ。
異能を発動する前に殺し切る。
しかし、ただ単純に殺すだけじゃダメだ。
「フッッッ‼︎」
「なァ……ッ⁉︎」
振り抜いた《
すっぽ抜けた剣にクシャナの視線は吸い寄せられ、ほんの一瞬だけ隙が生まれる。
肉体を殺しても意味はない。
だから、今必要なのは《
「《
《
来世すら許さず、魂を破壊する異能。
発動条件は接触。剣を捨てた手を伸ばす。
時間遡行する前に魂を破壊する‼︎
死神の手がクシャナを触れる。
魂が握り潰される。
その、一ミリ手前で。
「───《
ギリギリ。
時間が停止した。
宇宙すら呑み込む史上最大の規模を持つ異能。
世界ごと、俺の手が停止する。
神さえ介入できぬ時間の狭間、不可侵の領域。
「…………《
七度目の異能使用。
異能の発動と効果の発揮までのタイムラグ。
異能の反応を感知してから時間が停止するまでに、ほんの一瞬の空隙が存在した。
その隙に、咄嗟に発動する異能を切り替えた。
…………ただし。
異能を無効化するだけじゃ意味がない。
時間が停止すれば俺はクシャナに一方的に攻撃されるが、時間停止を無効化すればクシャナとディートリヒに挟み撃ちされる。
だから、俺は考えた。
その前提を覆す方法を‼︎
「オマエェ…………ッッッ⁉︎」
例えば、ブレンダ先輩との戦い。
俺の世界観は奇蹟の攻撃を阻んだ。
それは奇蹟そのものを無効化した訳ではない。奇蹟が俺に及ぼす効果のみを無効化していた。
それが異能でも出来れば。
時間停止を無効化することなく、俺の停止を否定できるならば。
《
イメージするのは、
効果のみの無効化に特化したためか、本来は一瞬しか発動されない無効化能力の持続時間が引き伸ばされる。
〇秒経過、残り六秒。
「うぐア……ッッッ‼︎」
しかし、その代償は余りにも大きい。
七度目の異能使用……過剰使用。
折手が語った代償は三つ。
一つ目、生命力の喪失。
……既に死にかけだ、関係ない。
二つ目、寿命の削減。
……そんなもの、いくらでもくれてやる。
そして三つ目、ランダムな体の破壊。
これが、致命的だった。
死に、また一歩近づく。
あまりの痛みに貴重な時間を浪費する。
一秒経過、残り五秒。
クシャナは重心を後ろへ傾ける。
迎撃ではなく、回避することに決めたようだ。
逃す訳にはいかない。捕まえようと、俺は必死に左手を突き出した。
六秒をやり過ごせばクシャナの勝ち。
六秒以内に触れることができれば俺の勝ち。
たった六秒の死闘で全てが決まる。
二秒経過、残り四秒。
左手は
俺の動きを読んでいたのか、クシャナは体を捻ることで俺の手をあっさりと避けた。そのままの勢いで、地面を蹴って後方へ跳ぶ。
初見ではあるが、クシャナは時間遡行して俺と何度か殺し合った。その時の経験で俺の癖を分かっているのかもしれない。
だが、俺だってこれで決まるとは思っていない。
体に隠れて見えない右手で、くいっと引っ張った。
三秒経過、残り三秒。
ドスッ、と。
クシャナの後ろから《
投げ捨てたように見せかけていた《
時間停止中の物体は基本的に動くことはないが、動ける者が干渉した場合は別だ。通常の時間の流れと同じように、空気は動くし光も反射する。
同じように、俺が引っ張れば《
俺の手が届かないのなら、クシャナをこちらへ引き寄せる。
四秒経過、残り二秒。
《
綱引きのように、鎖を引っ張る俺と踏ん張るクシャナが均衡する。クシャナは意外とひ弱だったが、俺も俺で握力が死んでいる。決着がつかない。
待っていられないため、突然に力を抜いてクシャナの体勢を崩し、こちらから近づく。
五秒経過、残り一秒。
今度こそ、逃がさない。
マウントを取って体を押さえ込み、手を振り下ろす。
ようやく、右手がクシャナの首を鷲掴みにした。
異能を発動する。
六秒経 ───
試行回数2
「…………《
(…………オレサマ危ねぇーッ‼︎)
クシャナはかつての世界線で、ほぼ奇襲のような形で六道伊吹と戦ったことがある。そこには番外位、自称魔王、
その時は《
だからこそ、咄嗟にまた時間遡行することができた。
異能に使用してから効果の発揮するまでには僅かなタイムラグが存在する。その一瞬で、クシャナは過去に逃げ果せた。
(大して遡れなかったぜ……)
クシャナの異能、《
過去へ記憶を送る、脊椎と一体化した
この異能には二つの制限がある。
一つ目の制限が、準備時間。
引っ張ったゴムが逆方向に弾け飛ぶように、時間を過去へ遡るには先に未来へ進む必要がある。
そして、どれだけの時間を遡行できるかは進んだ時間の長さに関係している。一秒にも満たない準備時間しかなかった今回の時間遡行は、たった六秒前までしか戻れなかった。
二つ目の制限が、待機時間。
《
次の使用までに五秒置く必要がある。
たった五秒だが、この五秒間で魂を破壊されればクシャナはやり直すことができない。今度こそゲームオーバーである。
(だが関係ないぜ。こっからは覚えゲーに過ぎない)
一秒経過、残り五秒。
待機時間の終了まで残り四秒。
痛みを堪えていた六道伊吹が動き出す。
それはもう知っている。
既知の予定調和をなぞる。
二秒経過、残り四秒。
待機時間の終了まで残り三秒。
突き出された左手を、前回と同じく避ける。
ここは問題ない。
三秒経過、残り三秒。
待機時間の終了まで残り二秒。
問題はここからだ。
背中から《
今回は背中から迫る剣を弾き………………、………………?
「はぁ⁉︎」
時間停止中の物体は干渉しようとしなければ、基本空間に固定されて停止している。
だとすれば、《
六道伊吹はそんなことを土壇場で思いつき、実践した。
紙一重で迫る左手を避ける。
しかし、代わりにフードを掴まれた。
四秒経過、残り二秒。
待機時間の終了まで残り一秒。
ズガガガガガガガガッッ‼︎ と。
地面を削るように、左手で引き摺られる。
そして、フードを掴んでいない右手が頭に迫る。
咄嗟に服を脱いで離脱するが、代わりに地面へ投げ転がされる。
(何故だ……? どうして過去が変わったッ? まだオレサマは何もしちゃいないぜ⁉︎ ここまでの流れは前回と同じだっていうのに…………、………………ッ⁉︎)
遅れて気づく。
時間遡行したからこその避けられない変化。
(
異能を使用したからには異能の反応は隠せない。
少なくとも、クシャナはそれを隠せるような能力は持っていない。そして、六道伊吹は未来で行われた異能使用の残り香を感知したことで、
故に、
五秒経過、残り一秒。
待機時間の終了まで残り〇秒。
追撃は早かった。
地面を転がるクシャナの上から踏み付けるように、六道伊吹の足が突き刺さる。接触、条件は満たされた。
異能が発動される。
六秒経 ───
試行回数3
「…………《
前回と全く同じ
今回もまた、準備時間が一秒もなかった。
しかし、今回ばかりは都合が良い。
異能の反応を感知した世界線の動きは前回で分かった。今回ばかりは世界が分岐することはない。後は前回の動きをなぞりながら、致命的な部分を避けるだけ。
(初めの一秒間は六道伊吹が痛みを堪えている時間。ここを狙っても良いが、次の行動が分からなくなる。だから、避けねばならない三秒後までは前回と同じように─────)
「
一秒経過、残り五秒。
待機時間の終了まで残り四秒。
「うおア⁉︎」
右手を避けるために大きく
だが、逆に
(何が起こった……⁉︎ 前回とは訳が違うッ、前回と今回で分岐するようなモノは何もないはずだぜッ⁉︎)
ラプラスの悪魔を例に挙げるまでもなく、時間遡行後の完全に同じ状況では完全に同じ結果が訪れる。前回は異能の反応という分岐要因が存在したが、今回ばかりはそんな言い訳もできない。
そもそも、前回から分岐させるような行動も取れない。そうできるほど、時間が経過していない。
戸惑うクシャナを無視して、倒れ伏した胴体に六道伊吹の踵が落とされる。
二秒経過、残り四秒。
待機時間の終了まで残り三秒。
ガッ‼︎ と。
クシャナの真横の地面を、六道伊吹の踵が砕く。
転がることで攻撃を間一髪で回避する。
(確かに、表情や眼球の動きのような細部まで前回を再現することは不可能だ。そういった小さな変化がバタフライエフェクトを引き起こし、未来が変わることはよくある。オレサマもよく知っているッ‼︎)
クシャナは時間遡行が可能な世界で生きていた。
世界の容量が上限に達し、これ以上時間を重ねることが不可能になった行き止まりの未来。客観的な時間の計測が出来なくなったその時間軸において、主観時間で数十年は生き抜いた。
過去へ遡る以外の道が無い中、人類史を縦横無尽に駆け抜けて戦った。あらゆる時代で経験を積み、あらゆる世界線で知識を獲得した。
特に、時間という領域においてクシャナよりも詳しい者はこの世界に存在しない。
(
折手メアが居たら、こう言っていただろう。
六道伊吹は無限の可能性を秘めた主人公だ、と。
世界の分岐点。
時代の特異点。
無限に枝分かれする選択肢を選ぶことのできる六道伊吹は、些細な変化で未来を分岐させる。それこそ、無限の試行回数の中で全く同じ行動を取ることなど一度もない。
ラプラスすらも匙を投げる理解不能の怪物。
三秒経過、残り三秒。
待機時間の終了まで残り二秒。
ズドンッ‼︎ と。
真上から《
クシャナを殺害することなく、地面へと縫い付ける。
(ヤバいヤバいヤバいヤバい‼︎ まだ《
死神の手が迫る。
四秒経過、残り二秒。
待機時間の終了まで残り一秒。
死神の手がクシャナに届くことは無かった。
薄皮一枚……薄い布一枚に止められる。
それはクシャナの
本来ならば、《
しかし、今回ばかりは状況が異なる。
時間停止中の物体は動ける者が干渉しなければ動くことはない。それは身に纏っている服装であっても例外ではない。
つまり、
僅か数センチ。
宙で停止する服が死神の手を止めた。
もちろん、六道伊吹が意識してその布を動かそうとすれば、問題なく手は届く。
だが、ほんの一瞬。
極々僅かな空隙。
たった一秒の時間稼ぎがクシャナを救う。
五秒経過、残り一秒。
待機時間の終了まで残り〇秒。
死神の手がクシャナの胸に着弾した。
条件達成、異能が発動される。
六秒経 ───
試行回数4
「…………《
(意味が分からないぜ……‼︎ 繰り返しても繰り返してもッ、どうしてたった六秒間を凌げない……⁉︎)
一秒経過、残り五秒。
待機時間の終了まで残り四秒。
(オレサマは
二秒経過、残り四秒。
待機時間の終了まで残り三秒。
(オレサマは世界だって滅ぼした事がある!
三秒経過、残り三秒。
待機時間の終了まで残り二秒。
(あるゆる時代、あらゆる世界線の地獄を経験してきた……‼︎ 人類史に名を残すような怪物共と渡り合って戦ってきたんだぜ……⁉︎)
四秒経過、残り二秒。
待機時間の終了まで残り一秒。
(たった一回でいいんだ‼︎ たった一回でもオレサマが六秒後まで生き延びられたら……‼︎ それだけ出来ればもっと前の時間座標まで遡れるって言うのに……‼︎‼︎‼︎)
五秒経過、残り一秒。
待機時間の終了まで残り〇秒。
(ただそれだけのことが何故できない……ッ⁉︎)
六秒経 ───
試行回数5
一秒経過、残り五秒。
待機時間の終了まで残り四秒。
二秒経過、残り四秒。
待機時間の終了まで残り三秒。
三秒経過、残り三秒。
待機時間の終了まで残り二秒。
四秒経過、残り二秒。
待機時間の終了まで残り一秒。
五秒経過、残り一秒。
待機時間の終了まで残り〇秒。
六秒経 ───
試行回数38
一秒経過、残り五秒。
待機時間の終了まで残り四秒。
二秒経過、残り四秒。
待機時間の終了まで残り三秒。
三秒経過、残り三秒。
待機時間の終了まで残り二秒。
四秒経過、残り二秒。
待機時間の終了まで残り一秒。
五秒経過、残り一秒。
待機時間の終了まで残り〇秒。
六秒経 ───
試行回数769
一秒経過、残り五秒。
待機時間の終了まで残り四秒。
二秒経過、残り四秒。
待機時間の終了まで残り三秒。
三秒経過、残り三秒。
待機時間の終了まで残り二秒。
四秒経過、残り二秒。
待機時間の終了まで残り一秒。
五秒経過、残り一秒。
待機時間の終了まで残り〇秒。
六秒経 ───
試行回数■■■■■■■
「俺は考えた、テメェの時間遡行を破る方法を」
いつか、どこか。
時間軸を超越した場所で。
「思いついた方法は片手で足りる程度だった。時間遡行発動前に殺すとか、時間遡行が使えない間に殺すとか、時間遡行しても逃れられない状況を作るとかな?」
六道伊吹は話す。
クシャナはその言葉を聞いている。
「だけど同時に、その全てが失敗した時のことも考えていた。俺が負けたとしても、テメェに勝つ方法を……いや、違う」
この記憶はいつの時系列だろう。
この会話はいつのループだろう。
「テメェを自滅させる方法を考えた」
客観的な時系列なんて参考にならない。
主観的な時系列も分からなくなった。
「ループに存在する欠点、
積み重なった六秒間は、いつが過去でいつが未来かも分からない。
「俺は五秒以内にテメェを殺せば勝てる。テメェは六秒間生き残れば勝てる。一見
……いいや、こんな対話あっただろうか。
「たった六秒間を全力で駆け抜ければいいだけの俺と、何度も繰り返される六秒間で一度の
六秒間の対話にしては長すぎる。
たった一度のループにしては事情を知り過ぎている。
「さて、テメェは耐えられるか? たった一度も
これは、幻覚だ。
これは、幻聴だ。
「一度でも諦めれば、それでテメェは終わる。そして、俺は絶対に諦めない」
複数回のループでの会話を
長すぎる時間に耐えられなかったクシャナが生み出した思考の産物。
「……諦めねぇのなら、仕方がねぇな。六道伊吹の可能性とテメェの精神。どちらが先に限界を迎えるか、根比べといこうじゃねぇかッ‼︎」
最後に。
頭の中の六道伊吹はこう言った。
「無限のループの先で、また会おうぜ」
六秒経 ───
試行回数∞
六秒間を生存できればクシャナの勝ち。
五秒間に殺害できれば六道伊吹の勝ち。
どちらでもない
たった六秒にして、永遠に続く無限の死闘が始まった。
世界観:《
転生者:クシャナ
グレード:
タイプ:
ステータス:
強度-B/出力-B/射程-A/規模-EX/持続-D
異能:《
終末摂理:『矛盾』