キャラのイメージソング募集中。
ちなみに六道伊吹は「セイント・アンガー」、栗栖椎菜は「REVOLVER」、ディートリヒ・フォン・エルケーニッヒは「KICK BACK」で確定しました。
ピンポーン、と。
来訪者の存在をインターホンが告げる。
いつもなら俺の代わりに椎菜が来客を出迎えている所だが、彼女は娘と一緒に俺の胸の中で眠っている。
快眠を妨げるのも忍びない。
起こさないようにゆっくりと毛布から抜け出し、
……久しぶりに自分で移動したからか、思ったよりも時間がかかった。
インターホンが鳴ってから十分程度。来客は今もなお玄関の前から気配を動かさない。
コンコン、と。
控えめなノックが扉を叩く。
……何となく、嫌な予感がした。
そのノックに応じれば、きっと面倒ごとに巻き込まれる。
だが、次第にノックの音はゴンゴンと強くなっていく。
果てはギシッギシッと扉自体が軋みだした。
「……はぁ、どちらさまで?」
「久しぶりだな……伊吹」
ガチャリ、と扉を開ける。
出迎えたのはよく知っている顔だった。
記憶のものよりは随分と老け込んで見えるが、俺がその顔を見間違えるはずがない。
よく親しんだ、
だからこそ、
「──
「他人行儀な言い方だな。
俺の育ての親にして、椎菜や裕也の父親。
「どうして……此処へ? いや、そもそも、どうやって此処へ? この場所は──」
「
「……………………」
そうか、失念していた。
いや、考えたくなかったと言うべきか。
……この人は警察官で、
「俺を、捕まえに?」
「んな訳ないだろ」
「…………ん?」
「あー、先に本題を伝えとくべきだったか……」
親父さんは申し訳なさそうに眉を顰めると、こう言った。
「俺は仕事じゃなくて、プライベートで此処にいる。……お前の
もう随分と昔の事のように思えるけど、たった二年前の話だ。
俺は一人の少女と駆け落ちした。彼女は世界の敵で、転生者やら天命機関やら様々な集団から刺客が放たれた。
身重の椎菜を連れて、二人で逃げ切れた事が奇跡だと思う。
アドレイドを囮にして、ブレンダ先輩を殺して、そうやってようやく俺たちに安寧が訪れた。
現在は裏社会で探偵業をしている。
椎菜と二人三脚で、何とか日々の生活を食い繋いでいる。
「いらっしゃい。生憎と、
「いいや、構わない。……あの子は?」
「まだ寝てる。……だから、こんな時間に?」
「ああ。今から俺が伝える事を共有するかは伊吹に任せるよ」
二年前に無茶をしたガタが来たのか、残念ながら俺の足は動かない。それどころか全身の色々な所がボロボロで……多分、寿命もそれなりに減っているのだろうけど。
席に座るや否や、すぐさま親父さんは本題に入った。
それだけ、椎菜に聞かせたくない事なのだろう。
「お前は母親──
「俺を栗栖の家に預けて、今は行方不明なこと。あとは、それよりも前に栗栖家から絶縁されてる事くらいかな」
「絶縁……まぁ、間違っちゃいないけどな」
親父さんは微妙な表情を浮かべる。
「お前にはずっと伝えられなかった。あの日、何があったのか。なんで母さんはお前に対して余所余所しく接するのか」
「それ、は……」
「……今のお前になら言える。笑っちまうよ。
同じ道……探偵のことか?
俺の表情からその疑問を読み取ったのか、違う違うと首を振って親父さんは言った。
「
「………………は?」
頭が真っ白になった。
だって、伝え聞く母親のイメージとはかけ離れていた。
俺の母親は……アルバムなどで見た栗栖晶子という女性はカメラを向けられれば満面の笑みでポーズを決める明るい人で、誰にでも優しい天使みたいな人だと……そう聞いていたのに。
「殺人……⁉︎」
「酷い現場だった。当時、彼女は両親と祖父母、そして双子の弟と暮らしていたそうだけど、現場に残されたのは誰なのかも判別が付けられないくらいぐちゃぐちゃになった死体が五つもあった。……監視カメラに彼女の姿が映ってなかったら、誰が死んでて誰が生きてるのかも分からなかっただろうな」
「……そんな人、なのか? 俺の母親はそんなクソ野郎だったってのか⁉︎」
「それが……
「は?」
親父さんは俺にファイルを差し出す。
どうやらそれは当時の捜査資料のようだった。
そこには様々な人から事情聴取を行った記録が記されている。
「俺が母さんと出会ったのは、この二〇年前の事件の事情聴取だった。……何度も訴えられたよ、あの子がそんな事するはずないって。
「……ま、さか」
「気づくのが早いな。俺がその結論に辿り着くまでには十五年かかったってのに。頭が柔軟なのか……
「…………………………、」
……ああ、俺が避けられるのなんて当然だ。
俺は栗栖晶子の子供なんかじゃなかった。
「──
椎菜の母さんは俺の母親と仲が良かったらしい。
なら、そいつは親友の体を乗っ取って我が物顔で居座ってるバケモノだ。
だったら、俺はそんなバケモノから産み落とされた得体の知れない怪物じゃないか。
「あの日、母さんが死んだ。裕也が死んだ。お前達は巣立った。……俺にはもう、生きる理由は残されてなかった。だから、母さんの未練に縋ってる。彼女の代わりに、俺が晶子さんを見つけなくちゃならない」
「……復讐しようとは思わなかったのか? 母さんと裕也の仇を取ろうとは──」
「
……そんな事はない。
俺は何もやってない。
全部、椎菜が終わらせた。
その上、
「お前達の事は調べてある。異能犯罪の解決と犯人の追跡を専門とした車椅子の探偵。裏社会じゃ名の知れた調停役だってな」
「二〇年も前の未解決事件の犯人を探せって? それは無理があるよ」
俺は転生者を嗅ぎ分けて犯人を見つけ、異能の反応を感知して逃げたヤツを捕まえているだけだ。しかも、戦闘は椎菜に任せっきりだし。
何が言いたいかというと、何処にいるかも分からない犯人を見つけるのには向いていないという事だ。
「情報が何もない訳じゃない。幾つかの目撃例と直接会って話した母さんの証言から、晶子さんの目的は大体分かってる」
「……それは?」
「彼女は第一位と呼ばれる存在を追って──」
「──冗談じゃない‼︎ 誰が関わるかッ‼︎」
あらゆる転生者の中でも一番関わりを持ちたくないバケモノじゃねぇか‼︎
「帰ってくれ、親父さん。俺はそんなヤツには関わらない。椎菜を……それと、娘も危険に晒す訳にはいかない」
「……変わったな、伊吹。
「……ッ」
ああ、そうだよ。
きっと、以前の俺なら無関係に突っ走ってた。
これは成長なんだろうか。それとも、俺は弱くなっちまったのかな。
……それでも。
(
俺は椎菜を見捨てられない。
俺の信念よりも、彼女の気持ちの方が大切だと気づいてしまったから。
「最後に聞かせてくれ。何故、そこまで恐れる? 第一位とは一体何なんだ?」
最強の転生者、全ての始まり。
俺も伝聞調でしか第一位を知らない。
だが、俺の
「
「じゃあな、親父さん」
「ああ……さよならだ、伊吹。椎菜の事をよろしく頼む」
またな、とは言わない。
きっと俺たちはもう二度と、会うことも話すこともない。
玄関から親父さんの背中を見送る。
──
「キミ、今は幸せかな?」
「…………………………ぁ」
二歳くらいの少女。
ああ、そういえば。
「…………。しあわせ、だ」
「そうか……なら、いいんだ」
「…………………………、」
「……じゃあ、キミは、そのまま幸せに暮らしてくれ。あとは、……ボクが何とかするから。キミが死ぬまでの時間くらいは、稼いでやるからさ」
ずっと、不思議に思ってた。
俺の
何かが起こったから世界が滅ぶんじゃない。何もしなかったら、自然と世界は滅ぶ。この世界はそういう風にできている。
だから、きっと色々な人が世界の滅びを食い止めているんだ。
多分、それは天命機関なんだろう。
だとすると、俺がブレンダ先輩を殺したのは致命的だったはずだ。世界の寿命が縮まったはずなんだ。
「……お前、だったのか」
「…………………………」
「お前が世界を救ってくれてたんだな⁉︎ 俺たちの平穏を、お前が……‼︎」
「……違う。全部、ボクのせいなんだ。だから、ボクが対処するのは当然のことさ。キミに褒められるような……そんな、善い人なんかじゃないんだよ」
「でも‼︎」
「…………ごめんね、そろそろ行かなきゃ」
小さな少女はぐらぐらと不安定に歩く。
「
「
手を伸ばし……それを、諦めるみたいに強く握り締める。
駄目だ、俺は追いかけられない。
手が届かないとか、足が動かせないとか、そんな事は言い訳に過ぎない。昔の俺なら、動かない足で無様でも立ちあがろうと踏ん張っていた事だろう。
……だけど、俺はもう子供じゃない。
彼女の夫で、あの子の父親なんだ。
椎菜と娘を危険に晒して、目の前の少女を助けることができない。
「………………ああ、さようなら」
ばたん、と玄関の扉を閉じる。
それでもう、少女の姿は見えなくなった。
「おはようございます、伊吹さん。もしかして、誰か来客がいらっしゃってました?」
ひょこっと椎菜がリビングから顔を覗かせる。
どうやら、起きていたようだ。
「そうだな。でも、もう帰ったよ」
「……浮気じゃないですよね?」
「んな訳あるか。嫉妬深いなぁ、椎菜は」
「だって、伊吹さんモテるから……」
そう言う椎菜の手を握る。
椎菜は表情に疑問符を浮かべた。
「どうかしましたか?」
「いや……眠いし、もう一眠りしようか」
「えー、折角久々の二人きりなのに」
「そんな事言ったらあの子が拗ねんぞ。ほら、三人で寝よう」
広い世界なんてどうでもいい。
銀髪の少女も……どうでも、いい。
俺にあるのは二本の手だけ。俺が掴めるのは妻と娘の二人だけだ。
だから、きっとこれで良い。
大切な家族さえこの手の中にいるのなら、それで。
▽分岐点35.0『椎菜の告白を受け入れる』を選択
情に流されると、このルートに突入します。六道伊吹は身重の栗栖椎菜の手を取って駆け落ちし、天命機関や
▽本ルートの結末
過去に行った異能の過剰使用の影響で、六道伊吹の身体はボロボロです。なので、彼は二十歳を越える事なく亡くなります。そして、生きる理由を失った折手メアは自殺し、第一位の手によって世界は崩壊します。
▽攻略のヒント
他のヒロインは諦めて、折手メアを好きになろう。折手メア以外と関係を深めると、改心後の折手メアは最終的に自殺します。浮気はダメ、ゼッタイ。