原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

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一八話:小休止

 

 

 ひとまず、アドレイドを連れて家に帰る。

 今更学校に向かっても午後の授業は終わってるだろうし、天命機関に狙われているのにわざわざ一人ずつに分かれる理由はない。

 

「アンタの腹の傷、ちゃんと塞がるまでには一週間以上かかるわ。それまでは、過度な運動はしないことね」

「それは無理だ。悪いがその忠告は聞けない。戦闘になったら、そんなもん気にしてる暇はないだろうしな」

「だったら、覚悟することね。アンタは傷を庇って動けば死に、痛みで動きが鈍っても死ぬわよ?」

 

 《暴食魔剣》にぶった斬られた俺の腹の傷は、アドレイドの治癒魔法によって回復した。しかしアドレイドは治癒魔法が得意ではなく、一時的に傷を塞ぐことはできても、完全に修復することはできないらしい。

 つまり、俺はこれからの戦いにハンデを抱えることになった。

 

「まぁ、考えても仕方ない。致命傷でないなら擦り傷みたいなもんだろ」

「…………アンタがいいなら、別にいいけど」

「これぐらい大したことねぇよ。だから、お前も気にすんな」

「べっ、別に気にしてなんかないわよッ‼︎」

 

 顔を真っ赤にして手を振り回すアドレイドを抑え、帰路を歩いていく。やがて小さな二階建てのアパートに到着する。

 

「せっまい家ね」

「一人暮らしにはこれくらいが丁度いいんだよ」

「ふーん、何処の部屋?」

「ええっと、二階の一番左の……あ?」

 

 視界にあり得ないものが映る。

 アパート二階の一番左、俺の部屋の電気が点いていた。一人暮らしで、誰かに合鍵を渡したりもしていない。勝手に入ってくるような家族もいない。

 

(昨日、電気を消し忘れていたのか? ……いいや、そんな筈はない。消した記憶はある。それに()()()()()()()()()()()()()()。……だとすると)

「何立ち止まってんのよ。アンタの鍵が無いと入れないんだから、さっさと歩きなさいよ」

「待て、アドレイド。……()()()()()

 

 動きが早すぎるが、それしかない。

 先回りして部屋で待ち伏せされたのか?

 だとすると、玄関から普通に入るのは危ない。どんな罠が仕掛けられているか分からない。

 

(だったらッ、相手が予測できない帰宅をすればいい‼︎)

 

 アパートと距離を取り、助走をつける。

 ポケットから《破邪の剣(アスカロン)》を取り出し、部屋に向かって走り出す。

 

「アドレイド! 地面から風を起こせ‼︎」

「えっ? 急になに……っ⁉︎」

 

 戸惑うアドレイドの心を放っておいて、アドレイドの体は命令に従って動き出す。地面から強風が巻き起こり、アドレイドの赤い髪を舞い上がらせる。

 

(普通に階段から二階に上がったら、足音で帰ってきたことがバレる。だからッ、一階から直接部屋に向かうッ‼︎)

 

 ()()()

 強風の魔法に合わせて、地面を踏み砕く勢いで馬鹿力によって跳ぶ。そして、二階の手すりに着地し、間髪を入れずに再度跳躍する。《破邪の剣(アスカロン)》を足に纏わせ、ドアの横の窓を格子ごと蹴破って帰宅する。

 

「ただいまァッッッッ‼︎‼︎」

「えっ、えっ、なになになに???」

 

 窓ガラスが散乱する上に着地する。

 不法侵入者の慌てる声が聞こえて来る。敵の頭が切り替わっていない内に、先手必勝で一撃を叩き込もうと相手を見る。

 

 

「帰宅方法がダイナミック過ぎないかい⁉︎」

 

 

 視界に映ったのは裸足でベッドの上にいる、病的にまで白い銀髪の美少女。そこには折手メアがいた。

 俺のベッドの上で胡座(あぐら)をかいて、俺の中学の時の卒業アルバムを勝手に見ていた。

 

「お前何やってんの?」

「それってボクのセリフじゃない⁉︎」

 

 


 

 

「そっちの転生者はもう倒したのか?」

「そうだね。なんとか現世の人格を取り戻させたから、これ以上の危険性はもう無いかな」

 

 窓が壊れているため馬鹿みたいに風が通る中、折手メアの話を大人しく聞く。どうやら速攻で転生者を退治して、俺の家に先回りしていたらしい。鍵は異能で開錠したそうだ。

 

(しかし、転生者を殺さずに事を済ませたのか……。すげぇな、やっぱ六界列強(グレートシックス)は違うな……)

 

 転生者を死なせてしまった、救うことが出来なかった俺と比較して、折手メアに尊敬に近いものを覚える。まあ、本人に言うと調子に乗りそうなので黙っておくが。

 そんな中、不満げな表情を浮かべている者が一人いた。

 

「……アンタ、こんなやつの仲間なわけ……?」

「ああ、ボクは六道伊吹の対等な仲間だよ。立場が下のキミとは違ってね」

「は? アンタには聞いてないんだけど」

「そうかい? なら随分と大きな独り言だね。キミ、寝言がうるさいタイプだろう?」

 

 凄いギスギスしてるぅ……。

 アドレイドが折手メアを嫌ってるのは納得しかないが、折手メアがアドレイドを嫌っているのには驚いた。原作キャラなのに好きじゃないのか……?

 

「お前ら知り合いなのか?」

 

 ありきたりな質問だった。

 その普通の質問を聞くと、二人は赤と黄金の目を合わせて、同時に俺から目を逸らした。

 

「……七年前にちょっとね」

「うんうん。ほんと、ちょっとしたことがね……」

「いや何があったんだよ!?」

 

 怖い、怖いよ!

 この頭がぶっ飛んだ二人が誤魔化すようなこととか、絶対ちょっとしたことじゃないだろ!

 

「(おいキミ、何を言われても白状するなよ。特にキミはヤバかったのだから、キミのやったことがバレたら嫌われること間違いなしだね)」

「(アンタも絶対に口を滑らせちゃダメよ。むしろ、アンタの方がエグいことやってんだから、ドン引きされるわよ)」

「小声で何話し合ってんの⁉︎ お前らが口をつぐむとかマジで何をやったんだよ‼︎」

 

 本当に話すのを嫌そうにしているので、後でアドレイドに命令して話させようと心に決める。

 

「それで? キミの方はどうなったんだい?」

「話を逸らしたな……」

「いいから、いいから。結果なんて見たら分かるけど、一応ね?」

「……まぁ、いいけど。見ての通り、アドレイドが仲間になった。ただ、その過程で天命機関と敵対することになった」

 

 今の状況は、俺たちと天命機関とディートリヒの三つ巴状態だ。その状態で俺たちと天命機関が敵対するのはマズイ。下手すると、ディートリヒの一人勝ちなんて事になってしまう。

 

「そもそも、天命機関に何人所属しているのかも分からない。場合によっては、普通に俺たちが押し負けるぞ」

「そこは気にしなくていいよ。原作通りなら、この街に来ているのは()()。ブレンダとイヴリンだろうね」

「……そんな少ないのか?」

 

 秘密結社なんだからもっと人が多いのかと思っていた。転生者の数が少なくとも、せめて二桁はいてもおかしくないんじゃないか。

 

「天命機関自体の規模はもっと大きいけどね」

「アイツらがディートリヒ狙いなら、少数精鋭で来ていても可笑しくはないわ。アイツの前じゃ、いくら数を揃えたとしても無駄だもの」

「……《白亜神殿》か」

 

 悪意を持った時点で終わりの領域。

 あれを乗り越えるのは、並大抵の人物じゃ不可能だろう。逆に言えば、青い髪の先輩は()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「こちらからすると、人数が少ないのは都合がいいね」

「そう? 数なんて関係ないわ。何人居ようと、全員ぶっ殺せば残る敵は〇人でしょ?」

「頭蛮族かよ……」

 

 脳筋どころじゃない。脳が暴力に支配されている。むしろ脳死だろ。アドレイドも気が抜けてきたのか、床に膝を曲げて座り込んでいる。

 

「……後々の事を考えると、両者無傷の状態で戦いを終わらせたいんだが、どうすれば良いと思う?」

「そこら辺の子供の足をプレゼントして、言うこと聞かないと次は殺すって脅迫すれば従ってくれるんじゃないかな」

「ありそうね。アイツ、子供には優しいから」

「何なんだよ! 怖いよ異世界人! ターン制キチガイバトルやってんじゃねぇんだぞ⁉︎」

 

 初っ端からそれを思い付くのが怖いし、当然のように同意するのも怖い。

 異世界人(ボケ)が多数派だ。ここは唯一現世出身のまとも(ツッコミ)な俺がしっかりしなくては……。

 

「「窓割ったやつに言われたくない」」

「はい…………」

 

 カウンターが飛んできた。いや、あれは緊急時だから仕方なく……という心の声は、冷たい視線に封殺される。

 

 コホン、と気を取り直して折手メアが言う。

 

「冗談はここまでにして、ちゃんと話し合いをしよう」

「アタシは冗談なんか言ってないわよ」

「この蛮族(バカ)は放っといて、話を続けてくれ」

 

 不満げなアドレイドの口を閉じさせる。

 折手メアは少し反った人差し指を立てて言う。

 

「話を整理しよう。まず、ボク達の目的は第四位を倒す事。その手段として、センパイちゃんを仲間にしようと考えている。しかし、センパイちゃんとの交渉は決裂していて、怪我なく無力化するのも難しい」

 

 そこまで言って、折手メアは笑った。蠱惑的な赤い唇が三日月のように歪む。真っ赤な瞳が爛々と輝き見開く。

 背筋が凍る気味の悪い笑みだった。

 

 

「ボクに良い考えがある」

 

 

 嫌な予感がした。

 

 


 

 

「そうですか。六道君がアドレイド・アブソリュートを仲間にしたと……」

 

 そこは不自然なまでに人が寄り付かない路地裏。

 熾天使(セラフィム)ブレンダは権天使(プリンシパリティ)イヴリンの報告を聞いていた。

 

「番外位が対第四位に向けて戦力を集めていると考えるべきでしょう。……危険ですね。六界列強(グレートシックス)が衝突するとなれば、この街が更地になっても不思議ではありません」

「……不思議ですわね」

「貴方は六界列強(グレートシックス)を見たことないため、そう思うかも知れませんが──」

「いいえ、そちらの話ではありませんわ」

 

 イヴリンはスマホを手で回しながら、不思議そうに首を傾げた。

 

 

「戦力を集める必要などありませんわ。だって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 至極当然の疑問だった。

 番外位とは六界列強(グレートシックス)最悪の転生者。

 未だ全貌が明らかになっていない第一位を除けば、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「恐らく、番外位は自分ではなく他人が戦闘せざるを得ないように計画を立てているのでしょう。奴は性格が悪い。観察対象の生き足掻く姿を見て喜ぶ変態ですから。……()()()もそうでした」

「その計画を阻止することは出来ないのですか?」

「難しいでしょう。奴の計画は緻密で隙がない。失敗しても成功しても、必ず目的が達成されるようになっています。過程(プロセス)における部分的な阻止は可能でも、計画(シナリオ)全体での阻止は不可能でしょう」

 

 実態は異なる。

 折手メアの計画(チャート)はガバガバで杜撰、しかもその場のノリで変更することもある。これまで何度も失敗しており、毎回のように持ち前のアドリブ力でカバーしてきた。それが側から見ると、成功しても失敗しても目的が達成される計画を立てているように見えたのである。

 

「でしたら、今回の観察対象とは……」

「十中八九、六道君でしょうね」

「……あの一般人、番外位の仲間でしたのね。実は転生者だったりしますの?」

「可能性が無いとは言い切れませんが、まず有り得ないでしょう。彼には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。どれだけ近い世界観出身でも、転生者は根底から考えが異なる……貴女もよくご存じでしょう?」

「……そう、でしたわね」

 

 天命機関に所属する天使たちは六道伊吹が一般人だと誤解していた。

 無理もない。六道伊吹は彼女たちの前で一度も異能を見せたことがなく、現世出身であるが故に転生者特有の雰囲気も持たない。

 

 ……しかし、六道たちも一つの誤解をしていた。

 

「ですが、番外位が観察対象に定めた少年です。どんな切り札が秘められているのか分かりません」

「だったら、天命機関最高戦力たる隊長が抑えればいいんじゃないっすか?」

 

 それは修道服を纏った天使。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「アドレイド・アブソリュートはマセガキが、番外位は自分が抑えるっす。隊長はその少年をさっさと始末して、自分たちの加勢に来てください」

「……ええ、分かりました。()()()()()()()()()()()()()()()()()。任せましたよ」

「了解っす」

 

 ()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()

 準備は整った。天命機関は本格的に始動する。

 

 


 

 

 放課後の体育館裏。

 蠢く一つの影があった。

 

「我は戻ってきたぞォォオオオオオオ‼︎‼︎‼︎」

 

 栗栖椎菜の肉体に憑依した六界列強(グレートシックス)・第四位、ディートリヒ・フォン・エルケーニッヒであった。

 佐武真尋(地獄の王)の封印から、命からがら脱獄していた。

 

「死なぬゥゥウウウウ‼︎‼︎ この程度で我は死なんぞォォオオオオオオ‼︎‼︎‼︎」

 

 ボロボロになった肉体を修復する。

 それは()()()()。あらゆる疵は無かったことにされ、肉体は完全に修復される。

 

「完ッ・全ッ・復ッ・活ッッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 そんな勝利の雄叫びを上げるディートリヒに近づく足音があった。

 現れたのは不良のような男。紫色の髪、坊主に近い髪型、両耳のピアス、黒いマスク、いかにもチャラそうな男だった。しかし、何故か身体中に包帯を巻き、全身に大怪我を負ったかのようにズタボロだった。

 

 

「久しぶりだぜ、第四位(ディートリヒ)

「…………第五位(クシャナ)であるかァ‼︎」

 

 

 六界列強(グレートシックス)・第五位、クシャナ。

 魔力を搾り上げた魔王に匹敵する、世界を終わらせた時空犯罪者。

 

「貴様が来たということは、まさか()()()のか?」

「ああ、視えたぜ。オレサマの異能がその光景を捉えた。…………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 クシャナには《未来視》の異能がある……らしい。ディートリヒはその異能の本質は別にあると考えているが、その機能を持つ事自体は間違いない。

 

「…………巫山戯るなァ‼︎ 何故我が殺されなければならん⁉︎ 奴等は人の命を何だと思っているッ‼︎‼︎」

「殺害時刻は二日後の午後一〇時、殺害現場はこの学校。番外位、自称魔王、列強殺し(キングスレイヤー)、……そして名前も知らない黒髪の男によって殺されるぜ」

 

 黒髪の男。

 ディートリヒの魂に刻まれた敗北の記憶(イタミ)が疼く。

 栗栖椎菜の脳に保管された記憶(オモイ)が反応する。

 

「リクドウイブキィィイイイイイイイイ‼︎‼︎‼︎」

「オレサマもその翌日に殺された。同じように四人がかりでな」

「卑怯なッ‼︎ 漢ならば一対一(タイマン)()るのが筋だろうがァァアア‼︎‼︎」

 

 原作において、六道伊吹は二人の六界列強(グレートシックス)を殺害した。この世界の未来でも、辿る道は変わらなかった。

 ()()()()()()()()()()

 

「奴等が卑劣にも徒党を組むならば、我等も力を合わせるぞォ‼︎」

「ああ! オレサマたちの三〇〇年の友情、本当の絆ってやつを見せてやるぜ‼︎」

 

 未来は歪み始めた。

 ここに、最凶最悪のタッグが形成される。

 

 


 

 

()られる前に()ってやろォ。他の下郎共は後回しで構わん。最も大きな脅威はただ一人だァ」

 

 放課後の体育館裏で、六界列強(グレートシックス)・第四位のディートリヒは憎しみを込めて告げる。

 

 

「始めましょう、第四位の手がかりを得る為に。最優先目標は少年の捕縛。即ち……」

 

 光の届かない路地裏で、最強の天使ブレンダはその少年に対する罪悪感を抱きながら命令を下す。

 

 

「さて、長々と話したけれどこの作戦の要となるのはキミだ。みんながキミを注目している。キミこそがこの物語(たたかい)の主役なのさ」

 

 窓が割れたアパートの一室で、折手メアは輝く美貌を歪めて嗤う。

 

 

「「「()()()()」」」

 

 

 三つの場所、三人の声が揃う。

 三者三様の思惑が入り乱れる。

 

 






第二章Aパート終了。
Bパートをお楽しみに。

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