先に動いたのは俺だった。
元より、接近戦以外には勝ち目がない。
《
しかし、それよりも速く魔法の詠唱が届いた。
「
二節の闇属性魔法。
恐らくは
轟‼︎‼︎‼︎ と。
空間を軋ませるような黒い魔力が暴走する。それはアドレイド・アブソリュートを中心として吹き荒れる嵐のようだった。
逃げ場のない超広範囲攻撃。そもそも、避けたところで路上に横たわったイヴリンは巻き込まれて殺される。
ならば、やることは一つしかない。
「《
左手を突き出し、その異能を無効化する。
本日一度目の異能使用、残りは五回。
「なッ⁉︎」
「そこだァ‼︎」
動揺からか、アドレイドは隙だらけだった。
それを見逃さず、ドロップキックで顔面を蹴り飛ばし、体勢を崩してマウントを取る。アドレイドの頭に《
「死ねぇ‼︎」
女性の顔面を叩くことに躊躇があったのか、鼻血が出る程度の威力しかなかった。次こそはアドレイドの頭蓋骨を砕くように、力を込めて剣を振りかぶる。
しかし、その前に世界が真っ赤に染まった。
「《魔界侵蝕》、赤き魔力は人間にとって毒よ。せいぜい痛みに悶え苦しみなさい」
赤い霧が毒ガスのように充満する。
全身に痛みが迸る。空気に触れる皮膚が痛い。開いた目の粘膜が痛い。空気を吸うたびに肺まで汚染される。音が鼓膜を貫通して脳まで撹乱する。
恐らくは
だが、耐えられる。痛いだけなら支障はない。
残り少ない
歯を食い縛って痛みを堪える。
「お返しよッ!」
「ぐっ…………、がっ……‼︎」
痛みによって生まれた一瞬の空隙。
その隙をついて、腹を蹴飛ばされる。
身体が吹き飛ばされ、瓦礫の上を転がる。
「面白いッ……異能ねッ!」
「テメェの顔には負けるがなァ‼︎」
アドレイドは手で鼻血を拭う。
血が引き伸ばされ、おかしな顔になっていた。
「異能に干渉する異能なんて初めて見たわ。でも、長所ばかりじゃないでしょ?」
「……何の話だ?」
「惚けたって無駄よ。アンタは《魔界侵食》を無効化しなかった。アンタも分かってるんでしょ?」
アドレイドは黄金の瞳を細める。
真っ赤な唇を歪めて笑う。
「無効化できる異能の種類に制限があるのか、異能を連続発動できないのか。……あるいは、
額に汗が流れる。
たった一度の異能使用だけで見切られた。
圧倒的な破壊力もあるが、それ以前にこいつッ……単純に戦いが
「だとしたら、アンタの弱点は
その通りだ、俺は七度目以降の異能には対処できない。連撃を受けると、敵の異能を食らって死ぬか、俺の異能を使い過ぎて死ぬかの二択になる。
逃げる暇はなかった。
紅蓮の髪が逆立ち、言葉に魔力が込められる。
「
一節の詠唱、雷属性・風属性・火属性魔法。
三連射の《禁呪魔法》。
ボボボッッッッ‼︎ と。
雷の鞭、風の刃、炎の矢が放たれる。一撃一撃が人体を破壊する威力を持つ。
(避けッ……られねぇッ⁉︎)
避けようと身体が捻るが動かない。
まるで、自分が石になったかのようだった。
俺は《禁呪魔法》とは別の異能の反応に気づく。
「───《石化魔眼》」
アドレイドの黄金の魔眼が輝いていた。
恐らくは
それは視認した生物を硬直させる異能。
最終的に万象を石に変換する魔法の瞳。
その攻撃も俺の弱点を突いていた。異能の無効化は
そして、《石化魔眼》は視線に魔力を乗せた異能……即ち、
更に、異能の使用と効果の発揮にはタイムラグがある。
今から石化を無効化しても、次の攻撃には間に合わない。
「ああああああああああああああッッッッ‼︎」
走馬灯を駆け巡らせる。
折手メアとの戦闘で会得した技能だ。
動かない身体、目の前には迫る魔法。
ゆっくり動く光景の中で、アドレイドを捉える。
アドレイド・アブソリュートはいつの間にか一振りの黒い長剣を構えていた。恐らくは
それすらも俺の弱点の一つ。俺が一度に無効化できるのは、一つの異能まで。二つ以上の異能による飽和攻撃には対処できない。
(…………あ……)
《石化魔眼》を無効化しても、魔法の迎撃には間に合わない。
《禁呪魔法》を無効化しても、直後の黒い長剣による攻撃は防げない。
つまり、どちらか片方だけの無効化では意味がない。しかし、どちらも無効化することは出来ない。
……もはや、諦める以外の
(
片方では死ぬ、両方は無理。
ならば、
「《
本日二度目の異能使用、残りは四回。
この瓦礫は
そして、それを無効化するとどうなるか。
「地殻変動ッ⁉︎」
「生き埋めになりやがれ‼︎」
ドッッッゴッッッ‼︎‼︎‼︎ と。
地面が崩落する。
怪物が棲まう地下迷宮は、言い換えるならば巨大な地下空洞だ。それを崩落させる。どれだけ巨大な異能であろうと、それが一つの異能であるならば一度に打ち消すことが出来る。
足場を崩すことで魔法を避け、瓦礫で視線を遮ることで硬直が解ける。予想外の事象にアドレイドの動きが一瞬だけ停止する。その隙に、崩れ落ちる瓦礫の上を駆ける。
「イヴリン‼︎」
横たわった少女に手を伸ばす。
《
「死んでないのが不思議でたまらねぇ……」
瓦礫で生き埋めに……なんてことはなかった。
位置の問題か、俺とイヴリンは崩落した迷宮の上に横たわっていた。
「あいつはッ、アドレイドはどうなった⁉︎」
辺りを見回すがアドレイドは見えない。
あいつは崩落に巻き込まれ、生き埋めになったのだろう。
「…………くそっ、後味が悪いな」
こんな中途半端な決着じゃなく、自分の手でブチ殺したかった。あと、今のところ誰一人としてヒロインを口説けていないのも、折手メアに申し訳なく感じる。
未だに気絶しているイヴリンに制服の上着をかけ、ポケットの中にあるスマホを探る。いつの間にか学校側の異能の反応が無くなっていた。戦闘は終わったのだろうか。確認のために折手メアに電話を掛けるが、繋がる様子はない。
(折手が負けることはないだろうし……、スマホを壊されでもしたのか……?)
今の状況も忘れて、折手メアを心配する。
この時の俺は完全に油断していた。
第五位を屠った魔王がこの程度でくたばるはずがないのに……‼︎
「───《暴食魔剣》」
ゴッガバァァッッッッ‼︎‼︎‼︎ と。
瓦礫がおもちゃのように吹き飛んだ。
漆黒の嵐がうねり暴れる。その闇は瓦礫を喰らい尽くす。
ディートリヒの《神威聖剣》が万象を消滅させる太陽ならば、アドレイドの《暴食魔剣》は世界を飲み込むブラックホールであった。
「テメェッ、生きて……⁉︎」
その肉体は血で真っ赤に染まっていた。頭から大量の血を流し、腕は変な方向へ曲がり、擦り傷のない場所が存在しない。
正に死に損ない、動ける筈のない重傷。
それでも、黄金の眼は死んでいなかった。
「この程度の修羅場ッ、前世で何度でもくぐってきたっつーの‼︎‼︎」
魔王の名は軽いものじゃない。
アドレイド・アブソリュートにとって、致命傷以外の傷は擦り傷に過ぎない。暴力がコミュニケーションの基本であった前世においては、この程度の怪我は月一回の頻度で負っていた。
「そんなことより……アンタ、面白いわね‼︎」
「……はぁ?」
アドレイドは満面の笑みを顔に浮かべてた。
自身に重傷を負わせた相手に見せる顔ではない。
「その世にも珍しい異能もそうだけど、アタシの異能を感知している素振りがある。それに、素早い決断力に人を躊躇なく殴れる容赦の無さ。気に入ったわ‼︎」
「それ褒めてんのか?」
凶悪犯罪者のプロフィールか何かだろ。
俺は何処にでもいるありふれた男子高校生だぞ。
「気に入ったから、アタシの下僕……魔王軍の一員にしてあげる」
「誰がなるか‼︎」
「何が不満なの? 終身雇用よ???」
「死ぬまでテメェの奴隷ってことじゃねぇか‼︎」
自分を殺そうとしてる奴に誰が傅くか。
これが魔王軍の伝統的な勧誘方法なのか?
……恐らく、こいつの前世においては暴力が尊ばれる価値観だったのだろう。
「そもそも、テメェの目的はなんだ? 魔王軍を作って、世界征服をして、それがテメェにどんな利益を与える?」
「利益なんて無いわよ。アタシが世界征服をするのは、世界のためなんだから」
「……は?」
「世界にはアタシより弱い雑魚ばっかりよ。だから、アタシが世界を導かなきゃいけない。力ある者には、力無き者を救う責任があるのよ」
……
力ある者の責任、強者の義務。
御立派な事だ。例え死んでも信念を貫く姿は、尊敬の念さえ覚える。
だが……。
「それでも、ここはテメェの世界じゃねぇ」
前世ではそう望まれていたのかも知れない。
力ある者が全てを従わせる価値観、何よりも力が尊ばれる世界観だったのかも知れない。
でも、この世界は違う。
「誰もテメェに世界征服なんて望んじゃいねぇ。他者の為なんて言う御題目は御立派だがな、押し付けがましい親切なんざ暴力と何も変わらねぇ。……そうだテメェはまさに暴力の化身だ」
「……何が言いたいの?」
「この世界で魔王軍に入りたがる奴なんざ一人もいねぇよ。テメェの薄っぺらい正義感にも、暴力で全てを解決しようとする傲慢さにも、誰も惹かれねぇ」
アドレイドは何もピンと来ていないようだった。
そりゃそうか、別の文化の者といきなり話が通じる訳がない。言語の問題だけでなく、そもそも生まれ育った環境・価値観が違う。こいつら転生者に至っては世界すら異なる。
「文句が多いわね……。分かった、暴力で決めましょ。殴り合って負けた方が奴隷ね」
「頭蛮族かよテメェ⁉︎」
俺の話を何も理解してないのがよく分かった。アドレイドが俺の奴隷になった所で何のメリットも存在しない。こんな提案、飲む方がどうかしてる。
「……何? 負けるの怖いの?」
「は? 怖くないが? やってやらァ‼︎」
瞬間、頭が沸騰する。
つい、口が滑る。マズイと思った時にはもう遅かった。
「よく言ったわ!
異能の反応、透明な鎖が魂を縛り付ける。
三節の詠唱、属性不明の魔法。
「言質は取った、契約は成されたわ。負けた方は勝った方の命令を一生遵守することね」
「魔法が万能過ぎる……‼︎ 異能バトルに登場して良い力じゃねぇだろ⁉︎」
異能を発動して無効化したい。今にでも殴り掛かりたい。
しかし、下手に動くわけにはいかない。
俺はアドレイドの視界の中にいる。動けば《石化魔眼》に捉えられて終わりだ。何か、アドレイドの気が逸れる何かがあれば……。
そう考えた時だった。
「……あ」
「ん?」
ブワッッッ‼︎‼︎ と異能の反応が膨れ上がる。
方角は学校の方面。まるで新たに異能が誕生したかのようだ。
だが、そんな事はどうでもいい。
ほんの一瞬、アドレイドの気が逸れる。
視線はいまだに俺を捉えているが、俺に集中はしていない。
だったら……‼︎
ポケットからある物を投げる。
「…………ス、マホ……?」
アドレイドは反射的に、空高くに投げられたスマホを目で追う。視線が完全に外れた。
一瞬の隙、これを逃しはしない‼︎
《
生じた土煙の中に身を隠す。
「舐めてんじゃないわよ‼︎」
アドレイドの対応は速かった。
土煙ごと全てを巻き込んだ攻撃を放つ。
「
脅威の一一連一節詠唱。
火・水・土・風・雷・氷・金・光・闇・聖・無。
一一属性の《禁呪魔法》が放たれる。
土煙の何処にいようと避ける事は叶わない。
この連続飽和攻撃は無効化しようがない。
だったらッ‼︎
《
「……何処に逃げた!?」
土煙が晴れる。
そこには《禁呪魔法》によるクレーターだけで、俺の姿は何処にもない。
(いや待て、落ち着いて気配をさぐッ──)
「──がっ……ッッッッ‼︎⁉︎⁉︎」
ゴンッッッッ‼︎ と。
頭を強打され、アドレイドの思考が途切れる。
それは
「ど、こから……⁉︎」
「土煙の中に逃げ場が無いのなら、土煙の外……上空に逃げればいい」
やったことは白川日向戦と同じ。棒高跳びのように上に跳んだだけだ。そして重力に身を任せ、上空から強襲した。
思い切り《
「……《石化、魔ッ──」
「もう効かねぇよ」
その視線は俺を捉えず、鏡によって反射される。
鏡になるかどうかは材質の問題ではなく、表面の粗さ……即ち、形状の問題だ。ならば、《
一瞬の硬直。
しかし、この攻防においては重要な隙。
《
ガバッッッッ‼︎‼︎ と。
俺が振り抜いたハンマーの音……
それは《
「あがッ……ぐあああああッッッッ‼︎‼︎」
そうだ、この異能は魔剣だ。
異世界の産物だと思考停止せずに考えるべきだった。魔剣ならば、自動で人を襲っても可笑しくは無い。
暴れる魔剣を見て思う。そもそも、こいつはアドレイドが兵器として運用していたのではなく、力ある者として魔剣を抑え続けていたのが真相ではないか。アドレイドが一時的に動けなくなったことで、魔剣も元の暴虐性を取り戻したのではないか。
軋む骨を唸らせ、痛む筋肉を動かす。流れ落ちる血なんて気にしない。傷は浅い、内臓は傷ついていない筈だ。
まだ動ける、まだ戦える、まだ立ち上がれる。
軌道が見え見えな魔剣を迎え撃つ。
「《
異能と異能が衝突する。
空飛ぶ魔剣を左手で粉砕する。
本日三度目の異能使用、残りは三回。
しかし、これで貴重な隙は無くなった。相手の頭に傷を与えたが、俺も腹に一撃を食らった。条件としてはイーブンだ。
アドレイドはふらふらと揺れる頭を抑え、血を流しながら叫ぶ。
俺もジンジンと痛む腹を抑え、血を流しながら踏ん張る。
「アタシはッ、第四位を殺す‼︎ その為なら何だってやってやるッ‼︎ だからッ、そこをどけェェエエエエ‼︎‼︎」
「……何故だ。テメェとディートリヒが同じ前世だとしても、何の関係も無いだろうが‼︎ どうしてそこまでして戦うッ?」
殺し合ったことで、アドレイドの人となりは分かったつもりだ。彼女は強者として世界をより良くしようという考えがある。
でも、それなら、ディートリヒだけを追いかける必要はない。奴以外にも転生者はいっぱいいるのだから。
「……アタシには力を持つ者としての義務がある。力を振るった責任がある。アタシの力が引き起こした事は、全部アタシの責任だと非難されて復讐される覚悟もある。でも、だったら、
「…………まさか」
それは、つまり…………。
「
泣いているように叫ぶ。
だが、アドレイドは涙を流さない。
彼女はその資格が無いのだと自覚している。
その顔を見て───
「違うだろ、それは……」
───ブチ殺したくなった。
泣きたいのはテメェじゃねぇだろとキレる。
「行為の動機を他人に委ねてんじゃねぇぞ。責任とか義務とか関係ねぇだろ。正直に言えよ、自分の力を他人に振るわれるのが気に食わねぇんだろ?」
「ちっ、ちがッ……‼︎」
「少なくとも俺はそうだ。躊躇なく暴力を振るうテメェが被害者ヅラしてるのが気に食わねぇ‼︎ ただそれだけの理由で、俺は今ここに立っているッ‼︎‼︎」
アドレイドの事情なんざ知るか。今ここにいるのは俺とテメェだけだ。俺という加害者とテメェという加害者がいる。
御涙頂戴の物語なんてクソ喰らえだ。
俺もテメェもそんな綺麗な存在じゃねぇだろ‼︎
「さぁ、
「あッ、ああああああああああああッッッッ‼︎」
もはや、言葉はなかった。
無詠唱の無属性魔法。
それは魔法と呼ぶには稚拙だった。無秩序に魔力を放出するだけの原始的な魔法。
やっぱり、こいつは強くなんかない。
「弱っちいテメェなんかに負ける訳がねぇ‼︎」
───《
吹き荒れる魔力を全身で打ち消す。
四度目の異能使用、残りは二回。
「そもそも、テメェの言う力って何だ? 人の持つ力ってのは、そう簡単に比べられるもんなのか?」
ぐらつく瓦礫の上を駆ける。鏡に形状変化させた《
「破壊力のことか? それだったら、核兵器にでも土下座しとけよ。テメェの言う責任とやらは押し付けがましい自己満足に過ぎねぇ。それなら、一人でおままごとでもしとけ。
《
今度こそ終わらせてやる。
「───《石化魔眼》ッッッッ!!!!」
ピキピキピキィィッ‼︎ と。
身体が硬直する。有り得ない攻撃だった。
鏡によって俺を視認することはできない筈だ。そこで気づく。鏡で反射した自分も硬直させられるのならば、別の物に映った俺も硬直させられる。
そう、例えば。
戦闘の最初、アドレイドに俺から目を逸らさせるために投げた物だ。真っ暗なその画面に、俺の姿が反射して映っていた。
「それでもッ、アタシにはこれしか……この
毒ガスのように赤い魔力が充満する。
それは世界を虐げる《魔界侵蝕》。
傷口を侵す赤い魔力による痛みは尋常ではなく、根性で耐えられる範囲を超えていた。生理的・物理的に耐えられない痛みに、意識が点滅を繰り返す。
どちらかしか異能は無効化できない。
一か八か、硬直だけでも無効化しようと《
……その一瞬前。
カッッッッ‼︎‼︎ とフラッシュが瞬いた。
その光源はスマートフォンであった。
スマホを凝視していた俺とアドレイドは、その閃光に目を焼かれ、何も見えなくなる。視認を条件とした、《石化魔眼》の効果が途切れる。
「時間稼ぎに過ぎませんわ‼︎ ぶちかましなさいな‼︎」
「
後ろから声が聞こえた。振り向くまでも無い、誰かなんて決まってる。
俺は一人じゃない。この戦いは俺たちだけの戦いじゃない。
そこには初めから
「《
五度目の異能使用、残りは一回。
赤い魔力を打ち消し、意識を取り戻す。
未だ目は利かない、それでも異能の反応から位置は把握できる。
「アタシはこの世界を征服して救うッ‼︎」
「テメェに庇護されるほど、この世界は弱くねぇよ」
暗闇の交錯。
その極限状態で、アドレイド・アブソリュートは最後の切り札を切った。
最後の最後、世界を滅ぼす一撃が現れる。
それはいつかの光景の焼き直し。
「第四摂理擬似接続‼︎ これこそがアタシの奪われた
世界は魔力で出来ている。
魔法の際に魔力を消費する。
アドレイドを中心として万象が消滅する。
世界の歪みが振り切れる。
現世に存在する全てを積み重ねても、この一撃には届かない。
───しかし、ここに一つの
パチン、と。
軽い音を立てて歪みが消滅する。
何の変哲もない右手が、
「……………………あ……?」
「それがテメェの弱さだよ」
《
六回目の異能使用、残りは〇回。
これが最後だ、もう異能を使う必要はない。
「テメェは力が全てだとほざく癖に、過去に持っていた力に縋り付いている。もしも、最後に
俺が思うに、アドレイド・アブソリュートの強みは異能なんかではなく、現世の類い稀な身体能力と前世の戦闘経験だ。
それを真っ向から押されていたのならば、俺は当たり前のように負けていた。全ての敗因は、アドレイドが今の力を信じられなかった事にある。
《
そして、アドレイドにとって最も屈辱的な一言を吐き捨てた。
「異能に頼るテメェなんかよりも、柔道部の奴の方がよっぽど強かったよ」
鈍い音が炸裂した。
金属バットの芯が頭を捉える。衝撃がアドレイドの脳を揺らす。
魔王は己の弱さ故に討伐された。
世界観:《
転生者:アドレイド・アブソリュート
グレード:
タイプ:
ステータス:
強度-C/出力-A/射程-B/規模-B/持続-B
異能:《石化魔眼》《魔剣暴食》《禁呪魔法》《魔界侵蝕》