半年以上前にいただいた、『良識ある少女を装った折手メア』というリクエストです。つまり、折手メアがもう少し我慢強かった場合のifルートとも言えます。
「準備しなさい、イブキ。
「…………は?」
アドレイドは俺に向かってそう言った。
どうして……こんな事になったんだっけ。
俺は今までの道のりを回想する。
全ての発端は、一日目。
黒い犬に喉を食い千切られ、気づくと俺は転生していた。
それからは、激動の毎日だった。
アドレイドに襲撃され、対転生者同盟として共闘し、毎夜毎夜転生者を倒すために街を駆け回り、俺を殺したゾンビ男を殺し返し、第五位からの襲撃からなんとか生き延び、作戦を立てて二人で第五位を討伐した。
それで終わりかと思いきや、まだまだ転生者は溢れ、クラスメイトまでもが行方不明になり、天使三人組に襲撃され、クマのような転生者を殺し、レオンハルトとかいう厳つい神父にはボコボコにされ、椎菜にさえ転生者の魔の手が及び、不意に遭遇した第四位に殺されかけた。
そして、昨日。
だから、これはその後の話。
この街に巣食う二人の
「なんで……殺すんだ?」
「アンタも知ってるでしょ。アイツは
「それはっ……そうかも、しれないけど……」
驚くべき事に、折手さんは転生者だった。
初めてそれを知った時、俺の心では驚きと納得感の二つが生じた。
すれ違えば誰もが二度見するスーパー美少女である
あとは、クラスの誰も知らない折手さんの秘密を知っているという優越感も少しはあった。
だけど、今はそんな事関係ない。
折手さんを殺す。アドレイドはそう言った。
もしかしたら、それは正しいのかもしれない。
もしかしたら、俺の知らない事情があるのかもしれない。
それでも、俺は何を考えるでもなくつい口を挟んだ。
「
「…………………………、」
彼女は何度も俺を助けてくれた。
本当ならわざわざ俺達の前に姿を見せる必要ない。わざわざ俺達を助ける必要なんてない。
最強の
それでも、彼女は俺を助けた。天命機関に見つかるというリスクを背負って、同じ
第五位に殺されかけた時も、ジェンマに殺されかけた時も、第四位に殺されかけた時も。
俺がピンチの時に駆けつけて、俺を守って戦った。
昨日だって、俺を庇って怪我をした。彼女が弱体化したのは俺のせいなんだ。
余りにも都合が良すぎるその献身に、俺は怖くなって尋ねた。
『なんで、俺を助けた……? 俺が生き延びて、お前に何の得がある』
『決まってるだろう?』
彼女は悩む事もなく。
満面の笑みで即答した。
『
……その笑顔に、俺はやられたのかもしれない。
俺はもうあの少女が絶対的な悪だなんて思えない。
「お前も転生者だけど、ブレンダ先輩には見逃して貰える事になったんだろ? 折手さんも同じことをする訳にはいかないのか……?」
「無理よ。単純に、立場が違いすぎるわ」
「何でだ? お前はディートリヒから
アドレイドは顔を歪めた。
まるで折手さんとひとまとめにされた事が酷く癪に障ったように。
「
「………………え」
「
「………………ッ⁉︎」
それは、思いも寄らぬ言葉だった。
あの満面の笑みの裏側に、血に塗れた本性があるとしたら。
…………俺は、どうするのだろうか。
「…………それでも、何か事情があったのかもしれない。許される事じゃなくても、先に彼女の言い分を聞いておきたい」
「……はぁ、仕方ないわね」
アドレイドはため息を吐いた。
俺に何を言っても止まらないと分かっているのだろう。
部屋の時計を指差すと、彼女は告げた。
「天命機関の連中とアタシで一斉攻撃を仕掛けるのは午後九時よ。逃がさない包囲網が完成するのが、午後八時」
包囲する前にこちらの奇襲に気づかれては意味がない。だから、これから話しかけに行く訳にはいかない。
つまり、俺が折手さんと話すチャンスは午後八時から九時までの一時間しかない。
仕方なさそうに。
それでいて、こちらを気遣った顔で彼女は言った。
「説得するにしろ、アイツの本性を見て失望するにしろ、タイムリミットは一時間。それまでに、アンタの悩みに決着をつけることね」
「……ありがとう、アドレイド」
「……昨日ぶりだな、折手さん」
「そろそろ来る頃だと思っていたよ、六道伊吹」
午後八時。
何もかもを見透かすように、折手さんは焦る事なく佇んでいた。
「なぁ、折手さん。提案があるんだけど、いいか?」
「? まあ、話を聞くだけならね」
折手さんだけを説得しても意味がない。
だから、俺は天命機関を納得させる方法を考えてきた。
「
つまり、完全な無力化。
アドレイドの
「異能さえ無くなれば、折手さんはこれ以上天命機関に追われる事もなくなる。平穏な日常を過ごせるんだ」
「…………………………」
「それとも、異能を手放せない事情があるのか? 何かあるなら、教えてくれ。これまでの事と、これからの事を全部」
俺は聞かなければならない。
それが折手さんに手を伸ばしてる者としての責任だ。
「それは、いい考えかもしれないね。キミと過ごす日常パート。とても魅力なお誘いだ」
折手さんは笑った。
何処にでもいる少女みたいに。
────
「けれど、ダメだ。ボクはこの異能を捨てるわけにはいかない」
「どうして⁉︎」
折手さんの顔が歪む。
彼女は嗤ってこう言った。
「
……………………は?
「敵を前にして遠慮するなんて、六道伊吹らしくないじゃないか。ボクに情でも湧いたかな? 嬉しいねぇ。キミの
「なに、を……」
「だけど、それでもダメだよ。それじゃ満足できない。ボクが好きになった
「何を言ってるんだお前はッ⁉︎」
「だから、さ」
──
「これなら、キミもやる気を出してくれるかい?」
「────ぁ」
血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血足血血血血血骨血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血血血腕血血血血血血血血血血血血血指血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血血血血骨血血血血血血血血血血血血足血血血血血血血血血血血肉血血肉血血血血血血血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血肉血目血血血血血血血血血血血指血血血血血血血血血血血血血血骨血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血足血血血血血骨血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血血血腕血血血血血血血血血血血血血指血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血血血血骨血血血血血血血血血血血血足血血血血血血血血血血血肉血血肉血血血血血血血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血肉血目血血血血血血血血血血血指血血血血血血血血血血血血血血骨血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血足血血血血血骨血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血血血腕血血血血血血血血血血血血血指血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血血血血骨血血血血血血血血血血血血足血血血血血血血血血血血肉血血肉血血血血血血血血血血血血肉血血血血血血血血血血血血肉血目血血血血血血血血血血血指血血血血血血血血血血血血血血骨血血血血血血頭。
息を呑み込む。
それだけで、咽せ返るような錆びついた鉄の匂いが肺を犯す。
信じられない。
信じられる、わけがない。
それでも、目の前の光景が俺の脳裏を刺激する。
ぐちゃぐちゃになった、その女の子は。
真っ赤な血溜まりに浮かぶ、その頭は。
「
手が血で汚れるのも気にせず、彼女を抱える。
当たり前だ、だって首から下が存在しないんだから。
そして、
人間一人分の出血量じゃこんな光景にはならない。
だから、パズルのピースを合わせるみたいにバラバラになった身体の破片から元の人間を思い浮かべる。
「ブレンダせんぱい、ジェンマ、イヴリン、レオンハルト……」
「知り合ったばかりの人間じゃ足りないのかい? なら、こっちはどうかな?」
「………………しいな、ゆうや」
「ボクも物足りないよ、
赤に塗れた世界で、唯一銀の色彩を持つ彼女がくっきりと浮かび上がる。
人命を踏み躙って嗤う最悪のクソ野郎が。
「あ、ああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ⁉︎⁉︎⁉︎」
俺が間違っていた。
こんなクソ野郎に手を差し伸ばすべきではなかった。
彼女たちはどんな顔で笑ったっけ。
確かに、楽しい記憶があったはずなのに。
彼女たちの笑顔を見た顔があるはずなのに。
思い出が血に塗りつぶされていく。
楽しかった日々を燃料にして激情が燃え上がる。
ドス黒い怒りが沸き上がる。
憎悪とすら言ってもいいようなモノが。
「殺すッッッ‼︎‼︎‼︎」
もはや決め台詞すら吐けなかった。
殺意を濃縮した一言が口から溢れる。
対する折手メアはニタニタと嗤う。
……まるでモニター越しにドラマでも観ているかのように、自分だけは安全圏に居ると思い込んでやがる‼︎
報いを与えてやる。
こんな地獄を引き起こしたクソ野郎と。
クソ野郎を信じてしまった自分自身にッ‼︎
「さぁ、フィナーレだ。こんな
「うるせぇ、死ね。テメェに
ギチギチギチギチィッッッ‼︎‼︎‼︎ と。
血に染まった拳を痛いほど握り締める。
憤怒に
己は魔女を殺す一振りの
それは
▽分岐点1.0『一人で下校する』を選択。
折手メアが原作に介入する必要がなくなり、事件は原作Aルートに近い形で進行します。しかし、事件終了後も折手メアが満足することはなく、彼女は致命的な騒動を引き起こしてしまいます。
▽本ルートの結末
六道伊吹は折手メアを殺すために己を切り捨てましたが、それ故に六道伊吹らしさが消え失せたため、殺し合いは折手メアが勝利します。その後、白銀の魔女は世界各地で似たような事件を引き起こし、真紅の復讐鬼がそれを解決するイタチごっこが繰り返されます。
▽攻略のヒント
積極的に原作を破壊しよう。そうすると焦った折手メアが釣り出せるので、クソ野郎の本性を知った上で関係性を深めましょう。