原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

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九話:延長戦/vsラスボス

 

 

 肉体が、魂が、魔王の重圧に屈する。

 圧倒的格上。折手メアとは比べ物にならない程の恐怖を感じる。

 

「そうか、貴様であるかァ……番外位ィィィ‼︎」

 

 ディートリヒは折手メアに目をつけた。

 俺ごときは眼中にもない。

 

「何をしに来たァ、異端中の異端(エクストラナンバー)ッ‼︎ 貴様のような女が六界列強(グレートシックス)であると、我はまだ認めておらんぞォ‼︎」

「男尊女卑か。時代遅れだね、第四位。第一位が女性である時点で、古臭い前世の価値観(マチズモ)なんか捨て去ったらどうだい?」

「貴様と第一位を一緒にするでないッ‼︎ 貴様のような巫山戯(イカレ)塵芥(ゴミ)と、人の形をしただけの世界そのものである第一位は全く違うッ‼︎ 六界列強(グレートシックス)の面汚しがァ‼︎‼︎‼︎」

 

 ゴッッッ‼︎ と、ディートリヒは折手メアを蹴り飛ばし、折手メアはサッカーボールのようにバウンドして転がる。その綺麗な顔に傷がつき、鼻からは血が垂れている。

 それを見て、足が勝手に動いた。

 

「あああああああああああああッッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 大声で恐怖心を誤魔化し、《破邪の剣(アスカロン)》を振りかぶる。

 ディートリヒは一瞥もくれず腕を振るう。

 

「ガァッッッッ‼︎」

 

 ドゴォッッッ‼︎ と。

 ディートリヒの拳が胴体に突き刺さる。

 肋骨が折れたのではないかと錯覚する衝撃とともに、吹き飛ばされて地面を転がる。

 

「何だ? 番外位が目をかけていると思えば、この程度であるかァ……」

 

 俺の手から《破邪の剣(アスカロン)》が零れ落ちる。

 拳から剣を握り締める力が抜ける。

 その剣を見て、ディートリヒは笑い出した。

 

「フフフッ、フハハハハハハハハッッッ‼︎ まさかそれは《破邪の剣(アスカロン)》であるかァ⁉︎ 確かにその剣ならば、最強の七天神装(アーティファクト)ならば我を殺せるかもしれんなァ‼︎ ただし、担い手が貴様でなければの話であるがなァ‼︎‼︎‼︎」

「ぐッ……な、にか、……知って、んのか?」

「知っているも何も、それは我を一度死に至らしめた武器である。老衰や災害などで我は何度も死んでいるが、それは我を()()した三度の死因の内の一つであるッ!」

「殺害した……武器……?」

「何も知らないのかァ? ……貴様、もしやただの一般人かァ。憐れであるなァ……」

 

 前世の武器ってことか……?

 いや、だが……何度も死んだってことは、まさか……ッ⁉︎

 

「我ら六界列強(グレートシックス)は既に六道を超越しているッ‼︎ 例え死しても生まれ変わりッ、来世にも記憶と異能を引き継ぐッ‼︎ 我らにとって死とは、一時的な睡眠と同義であるッ‼︎」

 

 …………無茶苦茶過ぎる。

 強いとか、弱点が無いとか、そんな次元ではない。負けても復活し、弱点を突いたところで意味がない。転生回数が無制限の怪物。

 この世全ての生命を殺す以外には、死することのない最悪の転生者。

 

「憐れな貴様には、我に殺されるという最大の栄誉を与えよう。強者との戦いの中で死ぬとは、男にとっては最大の名誉であろう?」

 

 そして、その呪文(キーワード)が放たれる。

 

 

世界新生(reverse)───《剣と魔法の世界(ハイファンタジー)》」

 

 

 直後、世界がひっくり返った。

 世界観(ジャンル)が書き変わる。

 物理法則(第零摂理)が捻じ曲がる。

 これより先は異世界、神秘蔓延る幻想の世界。

 

 ゾゾゾゾゾゾゾゾ、と。

 世界が漂白化されていく。

 大穴は塞がり、瓦礫は跡形もなく消える。

 空は白く輝き、地平線まで平坦な地が続く。

 俺たちを囲むように、白亜の神殿が建てられる。

 即ち、領域(エリア)型の異能!

 

「力がッ……出ねぇッッ‼︎」

 

 全身から力が抜けていく。

 俺の心がディートリヒに怒りを抱くほど、それに比例して身体からエネルギーが奪われる。息を吸うのも辛くなり、心臓の音も弱くなっている。ディートリヒが一人ずつプチプチ殺して回るのではなく、目撃者ごと全員まとめて衰弱死させるつもりだろう。

 

「これは《白亜神殿》、ラスボスが持つ異能の一つだね。神殿内では、ディートリヒに対して害意を抱く者に、神が天罰を下す」

「はぁ⁉︎ 神ってのは贔屓(ひいき)が過ぎねぇか⁉︎ そんなん無理に決まってんだろッ‼︎」

「そうだね。事実上、神殿内でディートリヒを倒すのは不可能だよ」

 

 六界列強(グレートシックス)って奴はどいつもこいつも……‼︎

 話しながら折手メアは俺の元へ歩いてくる。どうやら、こいつはディートリヒに害意を抱いていないらしい。

 

「ボクにはどうする事もできない。……だから、キミが倒すんだ。キミの手でヤツを殺せ」

「……どうやって? 俺だってあいつを殺したい。だけど、そう思うほど体は言うことを聞かなくなる。今の俺じゃ、異能を無効化することもできない‼︎」

「ああ、今のキミには無理だね。……でも、原作終了後の未来のキミだったなら?」

 

 折手メアが俺の頬に手を当てる。

 光の粒子が俺を包むように集まる。

 俺の肉体が作り変わる。

 

 

「《つづきからはじめる(セーブ・アンド・ロード)》」

 

 

 擬似界位昇格(ニア・プロモーション)

 肉体が成長を果たし、異能が進化を遂げる。

 異能の残数が元に戻り、生命力が体に漲る。

 

 

原作知識(セーブデータ)をキミに装填(ロード)した。今のキミは三年後の姿、原作終了後の力を先取りしている」

 

 不思議な感覚だ。

 戦場そのものに親しみを覚えている。

 身長が伸びたのか、視点が少し上がっている。

 

「異能の使用は相変わらず六回まで。たった六回のチャンスで、ディートリヒに異能を叩きつけろ。七回目以降は死ぬと思った方がいい」

「……ああ、楽勝だ」

 

 足に力を込めて立ち上がる。

 原作とやらの記憶はない。

 肉体が成長しようと、人格は今の俺だ。

 でも、身体が戦い方を覚えている。

 いつだって始めに、その呪文(キーワード)があった。

 

 

世界、新生(reverse)───《現実世界(ノンフィクション)》」

 

 

 裏返った世界を、更にひっくり返す。

 世界観(ジャンル)を削ぎ落とす。

 物理法則(第零摂理)が息を吹き返す。

 これより先は現世、悲劇のない普通の世界。

 

 

「《破界(ワールドブレイカー)》ッ‼︎」

 

 

 一度目。

 

 一歩、足から異能を発動する。

 白亜の神殿を踏み砕く。

 この世界に神なんざ居やしない。

 

「何が起こったァッ⁉︎」

「見ての通りだぜ、クソ野郎」

「これは……第零摂理かァ⁉︎ 貴様のような転生者ですらない者が何故その力をォォ‼︎」

 

 転生者ですらない……?

 気になる発言だが、今は無視する。

 《破邪の剣(アスカロン)》を握り、瓦礫の上を駆ける。

 

六界列強(グレートシックス)を舐めるなァァアアアア‼︎」

 

 ディートリヒが携える剣を引き抜く。

 ビリビリとするような異能の反応を感じる。

 光り輝く刀身、世界を焼き払う剣。

 即ち、道具(アイテム)型の異能!!

 

「その異能は《神威聖剣》‼︎ 接触した物体を蒸発させ、切断する光の斬撃を放つ聖剣‼︎」

 

 ジュワッ‼︎ と。

 光速の斬撃が世界を断つ。

 距離も硬度も無視して、万象を切断する。

 異能を感知しても、避ける暇はない。

 接触した瞬間に全身は蒸発する。

 故に、ほとんど勘で異能を発動する。

 

 

「《破界(ワールドブレイカー)》!!」

 

 

 二度目。

 

 タイミングはぴったり。

 異能使用のタイムラグさえ考慮して合わせた。

 光の斬撃が消滅する。

 ディートリヒまでの距離を足早に駆ける。

 

「油断するな! ディートリヒには多重遠距離攻撃を放つ《神聖魔法》が存在する‼︎」

「魔法か……これまたファンタジーな奴めッ!」

 

 折手メアの忠告を聞き、気を引き締める。

 残りの五メートル、油断なく駆け抜ける。

 

 

我が声に応えよ(Call)天を統べる神の王よ(Sky)地を裁く白き木槌(Thunder)空を泳ぐ獣の遠吠え(Bronto)!」

「四節の雷属性魔法! 上から来るよ!」

 

 

 上空の稲妻がクジラのように空を泳ぐ。

 人智を超えた神秘、《神聖魔法》。

 即ち、技能(スキル)型の異能‼︎

 雷の速度であり、生き物のようにタイミングが掴みにくい。

 だったら、こちらから仕掛ける!

 

 

「《破界(ワールドブレイカー)》」

 

 

 三度目。

 

 避雷針のように《破邪の剣(アスカロン)》を高く引き伸ばし、剣越しに異能を発動する。

 上空のクジラが打ち消され、雷が霧散する。

 

 だが、上空ばかり気にしていられない。

 前方に意識を向けると、ディートリヒが詠唱しながら剣を振りかぶっていた。

 

 

我が声に応えよ(Call)命産みし神々の母よ(Earth)芽吹き育つは石の枝(Spear)!」

 

 

 まず始めに、地面が槍となって足を穿つ。

 三節の土属性、または地属性魔法って感じか?

 先程の魔法よりは短文であり、威力も下がっているが、俺のような何処にでもいる平凡な高校生を仕留めるのであれば、この程度の威力で構わない。

 その魔法を俺の異能で打ち消す。

 

 魔法と同時に、斬撃が俺の頭を狙う。

 今の俺は、一度に一つの異能しか無効化することができない。

 だが、未来の俺であれば違う。

 二回分を一度に使用する事で、斬撃と魔法の両方を打ち消す。

 

 

「……《破界(ワールドブレイカー)》‼︎」

 

 

 四、五度目。

 

 これで五回分を使い切った。

 残るチャンスは一度。

 

「何をするつもりだ貴様ァァアアアア‼︎」

 

 《破邪の剣(アスカロン)》を振りかぶり、ディートリヒの頭に叩きつける。

 

 

「《破界(ワールドブレイカー)》ッッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 六度目。

 

 最初からずっと感じていた異能の反応。

 ディートリヒの肉体は異能だ。

 だったら、俺の異能を叩きつけるだけで、ラスボスは消滅するはずだ。

 

 《破邪の剣(アスカロン)》を力一杯振り下ろす。

 剣がディートリヒの頭に吸い込まれ、…………()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 カランカラーン、という音が聞こえる。

 剣が地面に落ちた音だ。

 意外と軽そうな音がするなぁ、と何処か他人事のように考える。

 

 

「フハハハハハハハハハハッッッ‼︎‼︎‼︎ チャンスを使い切ったようであるなァ、小僧‼︎ 気分はどうだァ‼︎ 我は最高の気分であるぞォ‼︎‼︎」

 

 ディートリヒは俺を馬鹿にするように笑う。

 よく見ると、ディートリヒはバリアを纏っているようだった。肉体そのものが異能であったため、反応が紛れて気づかなかった。

 

「これこそが我が肉体(アバター)型の異能、《神体加護》。我が怪力と我が再生力、そして肉体そのものを守る光の障壁である。神が我に与えし加護……過保護の結晶である‼︎」

 

 ああ、気づかなかった。

 異能の反応に紛れたそれに。

 それこそは異能の源。

 転生者の記憶が保管された場所。

 即ちッ……‼︎

 

 

「《破界(ワールドブレイカー)》ァァァァァァ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 七度目ッ‼︎

 

 異能の発動。

 生命力が無くなる感覚。

 頭の血管が切れたのか、鼻から血が流れる。

 

「キサッッ、キサマァァアアアアアアア‼︎⁉︎⁉︎」

 

 さっき、バリアを砕いた場所に手を突っ込む。

 手でディートリヒの頭を掴む。

 

 ……()ッッ‼︎

 俺が触れたのは頭ではない。

 それこそ……()‼︎

 俺の異能の真髄に至る。

 やがて至る境地へ、一足飛びに進む。

 

 ()()()()()()()()()

 

 

「ヤメロォォオオオオオオ‼︎ 我が力が消えてゆくッッッッ‼︎‼︎ 我が七百年かけて貯蔵した魔力であるぞォォオオオオオオ‼︎‼︎‼︎」

「うるせぇな、死なんざテメェには慣れたもんだろうがッ! まぁ、今度は来世()なんざありゃしねぇがなッッッッ‼︎」

 

 

 イメージするのは、死神の大鎌(サイズ)

 魂に触れ、それを根本から刈り取る。

 異能の無効化ではない、転生者の殺害ではない。

 前人未到の領域、()()()()

 俺の世界観(セカイ)に魂なんて存在しねぇ‼︎

 

「ボクたちは世界を破壊できる六界列強(ジョーカー)だけど、六道伊吹は六界列強(ジョーカー)を殺せる一般人(スペードの3)なのさ。キミが転生者である限り勝ち目はない、彼はキミの天敵だ」

「なッッ、なにィィイイイイ‼︎ つまり、つまり、つまり、つまり、つまりィィ‼︎ 貴様が我等の死神であるかァァアアアアア‼︎⁉︎⁉︎」

 

 

 六界列強(グレートシックス)をブチ殺す、異能の殺戮形態(キリングモード)

 名付けるならば、《魂絶(ソウルリーパー)》と言ったところか。

 パキリ、と。

 異能が魂を砕く、硝子が割れるような音がした。

 

 

「テメェに相応しい結末(デッドエンド)だぜ」

 

 

 ディートリヒの絶叫が止む。

 魂から異能を搾り上げた。

 鼻からは血が溢れ、地面にぶっ倒れる。

 ……これでラスボス戦終了だ。

 

 

 

 

 

 

「まだだァァアアアアアアアアアア‼︎‼︎‼︎」

 

 

 ブワッッッッ‼︎ と。

 異能の反応を感知する。

 黄金の輝きが膨れ上がる。

 ディートリヒを中心として世界が軋む。

 奴はまだ生きていた。

 魂を破壊されても尚、奴は動き続ける。

 

 

「我はまだ死なんぞォォオオオオオオ‼︎‼︎」

 

 

 肉体は光の塵になりかかっている。

 それでも起き上がり、執念深く立つ。

 これこそが六界列強(グレートシックス)・第四位。

 ディートリヒ・フォン・エルケーニッヒ。

 

 

終末摂理(ワールドエンド)……ッッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 宣言と同時、世界が塗り替わる。

 異能の反応……()()()()

 極めて異能に近く、異能よりも寒気のする反応。

 異能が局所的な異世界の展開ならば、こちらは現世そのものが異世界に変質しているかの如き感覚。

 

 終末摂理(ワールドエンド)

 曰く、世界の終わりそのもの。

 曰く、現象化した世界の死因。

 曰く、六界列強(グレートシックス)の選抜条件。

 人智の及ばない、世界すら超えたチカラ。

 少なくとも今の俺に分かるのは、このチカラを発動させたら何もかもが終わるということだけ。

 

 だが、何もできない。

 指一本動かすことすらできない。

 俺では間に合わない。

 

「第四摂理接続ゥ! 我は『枯渇』の死因(法則)を世界に刻みし魔王であるッ! 我が権能において、この島ごと全てを消費し──」

 

 だが、あいつが間に合った。

 

 

「断末魔が長い。ソシャゲの周回だったら罵倒されてる所だよ?」

 

 

 ザクリ、と。

 ディートリヒの体に剣が突き刺さる。

 

「グァァアアアアアッッ‼︎⁉︎⁉︎」

 

 ディートリヒの言葉が中断される。

 世界を終わらせる感覚が呆気なく無くなる。

 

 それは《破邪の剣(アスカロン)》だった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その剣の真の力が解放され、その刃がディートリヒを切り裂く。

 

 

「───未来を斬り拓くモノ(Access Code “ASCALON”)解放(Re-boot)天国(ソラ)の彼方へ逝くといい」

 

 

 ザンッッッ‼︎‼︎ という音と共にディートリヒが分解される。

 その剣は選ばれた者にしか使えない。

 では、どうして折手メアが剣を使えたのか。

 

「ご都合主義の化身かよ……」

 

 最初からやれよとは思わない。

 ギリギリまで俺が追い詰めたからこそ、折手メアがトドメを刺すという余地が生まれた。初めから折手メアが手を貸すのは、面白くないため不可能なのだ。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアッ‼︎⁉︎⁉︎」

 

 ディートリヒの肉体が光の塵となって消え去る。

 完全消滅。今度こそ一件落着だ。

 

 ハイタッチでもするかと起き上がろうとするが、体は一切動かない。考えるまでもなく疲労のせいだろう。

 よく見ると、折手メアの姿もボロボロだ。

 傷だらけの顔を眺めていると、目が合った。

 ゾッとするほど美しい宝石のような赤い瞳で俺を見て、目を逸らすようにキョロキョロと揺れる。

 

「……ちょっと、顔を見るのはやめてほしい」

「何でだよ……」

 

 寝そべりながら、折手メアと会話する。

 折手メアは恥ずかしがるように、両腕で顔を隠している。

 

「今、鼻血が出てるんだ。そんなみっともない顔でキミと話すのは耐えられないよ」

「いつも通り可愛いぞ?」

「〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 頭から煙が出るぐらい、顔が真っ赤に染まる。

 そう言えば、こいつは俺のことが好きなんだったっけ? 戦闘があり過ぎて忘れていた。推し的な意味かと思っていたが、もしや恋愛的な意味だったりするのだろうか。

 

「びっくりしたぁ。突然の推しのASMRは心臓に悪い……」

 

 こんなトンチキな発言さえしなければなぁ……と綺麗な顔面を見て思う。一方でこれでこそ折手メアだよな、と短い付き合いながら安心感を覚える。

 

「……いや、いやいや。ボクにも乙女心があってね。いくら素が可愛くても、好きな人の前では一番可愛い自分でいたいのさ……」

「オッサンに乙女心なんか無いだろ。それに鼻血だったら俺も出てる。お揃いだと思えば、恥ずかしくないんじゃないか?」

「……そんなにボクの顔が見たいのかい?」

「ああ、見たいよ。未だに勝った実感がないから、お前のイラつくドヤ顔が見たい」

「タラシみたいな事言うと思ってたら、そんな事思ってたのか……。しょーがないにゃぁ」

 

 ゆっくりと、一歩ずつ折手メアは近づく。

 誇らしげな顔で折手メアが俺を見下ろす。

 

 それはいつか見た構図だった。

 この夜の始まりと似た景色だった。

 ただし、前とは違って、折手メアはスカートの裾を抑えている為、中身が見えることはない。

 

「ボクらの勝ちだよ」

「……それは、よかったな」

「救急車の音も聞こえてきたよ」

「白川日向は、無事なのか……?」

「無事さ。安心して構わない」

「ああ、そりゃ安心、だな……」

「もしかして、眠い?」

「そう、だな。俺の体力は、もう限界だ……」

 

 強い眠気に襲われる。

 意識を保つのが難しい。

 思考が纏まらない。

 

「そっか、じゃあ眠ってもいいよ」

「ああ、眠る……」

「後のことは全部、ボクに任せなさい!」

「ああ、任せた……」

「……もしかして、ボクの言葉を復唱してる?」

「ああ、復唱してる……」

「…………メアが大好きだよ」

「何言ってんだよ……」

「起きてるじゃないか⁉︎⁉︎」

「うるせぇな、寝させろよ……」

 

 今のはちょっと面白いな。

 寝ぼけた頭でそう考える。

 

「うん、じゃあお休みなさい。いい夢を」

「おやすみ……」

 

 折手メアの女神のような優しい笑みを見て、母親のような安心する声を聞いて眠りに落ちる。

 

 

「お休み、原作主人公(タイトルロール)。お疲れ様……」

 

 

 最後に頭を撫でられたのは夢だろうか。

 こうして、長い夜はやっと終わりを迎えた。

 

 







次回のエピローグで第一章は終了。
第二章開始まで少し休憩を挟みます。



世界観:《剣と魔法の世界(ハイファンタジー)
転生者:ディートリヒ・フォン・エルケーニッヒ
グレード:第六界位(グレード6)
タイプ:肉体(アバター)道具(アイテム)技能(スキル)領域(エリア)
ステータス:
 強度-C/出力-EX/射程-B/規模-B/持続-C
異能:《神体加護》《神威聖剣》《神聖魔法》《白亜神殿》
終末摂理:『枯渇』

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