原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

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 ルーキー日間で一位になってたらしいです。
 ありがとうございます。
 ルーキーじゃない日間でも頑張ります。
 よろしくお願いします。




五話:第1ラウンド/vs紅蓮煉獄

 

 

 駅前のデパートに到着した。六階建ての建物で、二階と駅は一本の通路で繋がっている。五階と六階は駐車場になっており、そこに目的の転生者が待ち構えているらしい。

 

 時刻は午後一一時一五分。デパートは午後一〇時に閉店するため、一時間以上経った現在は中に誰もいない。深夜であるためか、周囲には誰もいない。あるいは、()()()()()()()()()

 従業員入口からデパートに侵入する。本来なら鍵でも掛けられているはずだが、()()()()()()()()()()()()()()

 

「今回の敵……連続無差別焼殺事件の犯人はどんな奴なんだ? 今のところ、相手を焼殺させる異能を持つ以外には情報がない。出来る限り相手の能力は詳しく知っときたい」

 

 折手メアは足で雑に扉を蹴り開けると、こちらに振り向いて答える。

 

「『Character Material』曰く、転生者の名前は白河日向(しらかわひなた)。一八歳、元女子大学生。身長は二〇〇センチ、体重は二二〇キロ……」

「待て待て待て!」

 

 身長が二メートルで、体重が二二〇キロ⁉︎

 

「それ本当に大学生なのか!? クマか何かじゃなくて⁉︎」

「うん、正解。見た目はクマっぽいよ」

「合ってんのかよ‼︎」

 

 クマの女子大学生。クマの転生者。

 字面がもうヤバい。

 女子大生の格好をしたクマを思い浮かべながら、階段をゆっくり上がる。

 

「前世の記憶を思い出す以前は普通の女子大学生だったけど、異能の影響で姿形が大きく変化したのさ」

「……異能にも色々あるんだな。遮って悪かった。続きを頼む」

「血液型はO型で、誕生日は九月一八日。好きなものは肉、嫌いな物は飢え。イメージカラーは柿色。前世の記憶を思い出したのは二週間前で、現世における人格は異能に押し潰されてるタイプ。転生の種類としては人外転生」

 

 人外転生、初耳の用語だが、ニュアンスで意味が何となく分かる。草薙大史は前世の記憶が人間であったが、白河日向の前世は人間ではなく人外(クマ)だったのだろう。

 

「異能と世界観は?」

「異能は《焔命獣(ブレイザー)》。人外としての肉体構造と、生命力を炎に変換する独自の器官を保有する。タイプは肉体(アバター)型、ゾンビと同じタイプだね。」

「モンスター感が強いな……。確か、銃の概念が存在しない世界観だったよな。文明が未発達とか、魔法が発達してたりするのか?」

 

 生命力ときたか、全く分からん。世界観が全く想像できないため、ファンタジーの生物だと予想した。しかし、答えはそれ以上だった。

 

「世界観は《氷河時代(アイスエイジ)》。文明どころか、そもそも人類が存在しない世界だよ」

「……もしかして、肉弾戦すら不可能?」

「ダメージを与えられるのは《破邪の剣(アスカロン)》だけだね。拳で殴ろうが牙を立てようが、そもそも世界観に存在しない人間(キミ)の攻撃は通用しない」

 

 ……ならやっぱり、異能に覚醒するしかない。

 話している間に、最上階へ到達する。駐車場には車が数台のみ置かれている。明かりが少なく薄暗い駐車場の中、一点のみ明るい場所があった。

 

 どうして明るいのか、そんなの決まってる。

 炎を使う転生者、白川日向がそこにいた。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 恐ろしい。恐ろしいからこそ、じっくりと相手を観察する。恐怖の元凶を速やかに排除するために、《破邪の剣(アスカロン)》を元の大きさに戻す。

 

 確かにシルエットはクマのようにも見えるが、眼球は額のものを合わせて三つ存在し、口は十字に開いている。足はその巨体を支えるのに相応しい太さであり、それに比べて腕は不自然に細長い。

 

 異形(いぎょう)の怪物。

 燃え盛る獣。

 連続無差別焼殺犯。

 人外転生者。

 

 対するは、剣しか持たぬ高校生。

 されど、この身は怪物と同じ転生者。

 されど、この剣は竜殺しの銘を持つ名剣。

 怪物退治はいつだって人間の仕事だ。

 

 

「来いよ、怪物。竜殺し(ドラゴンスレイヤー)には程遠いが、テメェを《破邪の剣(アスカロン)》の錆にしてやるぜ」

 

 

 戦いの火蓋が切られた。

 

 

 


 

 

 

 白川日向に通用するのは《破邪の剣(アスカロン)》のみ。

 しかし、相手はクマのごとき肉体を持ち、全身に炎を纏わせた異世界のモンスター。接近戦も分が悪い。故に、最初の攻撃は決まっている。

 

 

「オラァッッ!!!」

 

 

 《破邪の剣(アスカロン)》を()()()()()

 唯一の攻撃手段を投げ捨てたわけじゃない。

 柄はそのままに、刀身だけが飛んでいく。

 

 《破邪の剣(アスカロン)》の形を変えて遊んでいた時に、いくつかのことが分かった。

 最小サイズはキーホルダー程度、最大サイズは不明。実際の重量は変わっているようだが、体感の重さはさほど変化しない。そして、刀身の形状は自由に変化させられるが、柄だけは一切変わらない。形状変化にかかる時間は1秒程度。

 

 だから、俺がしたことは簡単だ。刀身を引き伸ばし、先端以外を鎖のように形状変化させる。最後に、剣の先端を球体に作り替えて、重量を重くする。柄を掴んで形を元に戻せば、剣の先端は戻ってくる。

 後は剣の先端を投げれば、何度でも再利用可能な鎖鉄球(モーニングスター)の完成だ。

 

 しかし、そう上手くいくはずがない。

 パチィィィィン‼︎‼︎‼︎ と。

 細長い腕が鞭のようにしなり、飛来した鉄球を弾き飛ばす。腕が柔らかい。タコの足のように骨がなく、筋肉だけの腕なのかもしれない。

 

「ギャリギャリギャリィィィッッッッ‼︎」

 

 白川日向が絶叫する。急ブレーキでタイヤをアスファルトに擦り付けるかのような不協和音。あるいは、ドリルで金属を破壊する音だろうか。

 人間には不可能な絶叫。三つの瞳が俺を睨み、自らを攻撃した外敵を認識する。そして、歪な口が十字に開く。悪寒がした。

 

「なぁ⁉︎」

 

 眼前には火球。口からの火炎放射。

 慌てて剣を元の形に戻し、駐車された自動車の下に滑り込む。火球が着弾した場所は、今なお燃えている。

 

「……可燃性の体液か?」

 

 身体を纏う炎は汗、口から放たれた火球は唾。そう考えると、生命力なんてものよりも理解しやすい。

 ……いや、物理法則で考えるのは危険か。相手は異世界のモンスター。体液の方が燃やしやすいが、他の部分の肉体も炎に変えられるのかもしれない。

 だが、悠長に考えている暇はなかった。怪物の殺気を感じ、全身が震え上がる。

 

「ギャリギャリギャリ!」

 

 奇妙な鳴き声(笑い声?)と共に、白川日向はこちらへ四足歩行で駆け寄る。大して速くはないが、その巨体も相まって迫力がある。その勢いのまま車に飛び乗り、踏み潰す。

 

 間一髪で車の下から退避する。白川日向が車に飛び乗るタイミングで入れ替わるように飛び出し、逆に白川日向の後ろから剣を振り下ろす。

 完璧な奇襲、完全な死角からの攻撃。三つの視界から逃れた一撃。俺はそう思っていた。

 

 パチィィィィン‼︎‼︎‼︎ と。

 異世界のモンスターはそんな甘い考えごと弾き飛ばす。白川日向の細長い腕が剣を叩き落とし、腕に掠った。逆関節どころではない。関節もないようなその腕は、前後関係なく三百六十度、どの方向にも曲げることができる。

 そして、奇襲は通じなかった。当たり前だ。後頭部にあったのは三つの瞳。眼球の個数は三つではなかった。三対……前後合わせて六つの眼球。この怪物に死角など存在しない。

 

「熱ッッッッ⁉︎⁉︎」

 

 燃える腕に少しだけ接触したからか、俺の腕から炎が上がる。制服の上着を脱ぎ、地面に投げ捨てる。

 やはり正攻法では勝てない。異能が必要だ。これだけ命の危機に晒されれば、俺も自分の異能を自覚できるはず、はず…………。

 …………………………。

 

 

「マジで異能どうやって使うの⁉︎」

 

 

 何も分からん‼︎

 やばいやばいやばい。頭が焦りと死の恐怖でいっぱいになる。悪寒に従って怪物の火炎放射を避け続ける。

 

「ヒント、何かヒントを頼む!」

 

 それを聞いた折手メアは呆れたような顔で、それでいて頼られて嬉しそうな声色で告げる。

 

 

「キミはもう異能を自覚しているはずさ」

 

 

 ……自、覚?

 

「キミ、転生者の異能を見ると不思議な違和感に襲われるだろう?」

「……あ、あぁ。作画が違うというか、ジャンル違いみたいな印象を受ける」

「そうだ、キミは既に他人の世界観に反発している。つまり、キミだけの世界観を構築しているってことだ。後はそれを現世に押し出すだけさ」

 

 ……少し分かったかもしれない。

 異能、転生者が保有する異世界の能力。

 転生者が獲得する能力ならば、俺が転生してから得た感覚・技能に違いない。それには心当たりがあった。それを突き詰めた先に、俺の異能があるはずだ。

 

 考えを深めるために白川日向に背を向けて走り出す。この怪物が大して速くないことはもう知っている。

 距離を取ろうと真っ直ぐ走るが、咄嗟に横方向に飛び退く。思考をスキップして、肉体が先に駆動する。

 不思議に思い、俺がいた辺りを観察する。直後、火球がその場所へ着弾する。それだけでは終わらず、背後から火炎放射が俺を襲う。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 自動車の下に滑り込み、火炎放射の盾とする。ゆっくりと深呼吸をして、考えを巡らせる。俺は先程、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。恐らく、これが異能の手がかりとなるはずだ。

 

 だが、車の下でゆっくり考えている時間はない。俺は自動車に興味がないため、当然のことを失念していた。

 こいつの炎には物理法則が通用しない。生命力を燃料にする炎は、水をかけても消えることはない。一方で、逆は可能だ。俺の制服はこいつの炎で燃やすことができたし、恐らく酸素濃度なども変化させているのだろう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そして、燃えるものは俺の服だけではない。

 あとは、例えば……ガソリンとか。

 

「まずい……ッッッッ⁉︎」

 

 車の下から脱出する。燃える地面とか、近づく怪物とかはもう関係ない。最速でこの場所から離れる。だが、一歩遅かった。

 

 轟‼︎‼︎‼︎ と大爆発が起こった。

 炎がガソリンに引火し、車ごと辺りが吹き飛ぶ。《氷河時代(アイスエイジ)》には、車もガソリンも存在しない。だから、白川日向に爆発の影響はない。

 しかし、俺は別だ。咄嗟に刀身を盾の形に変えて、爆発を防ごうと試みるが、その勢いまでは防げない。爆発に巻き込まれて、身体が吹き飛ばされる。

 

 

「カハッッッッ‼︎」

 

 

 吹き飛ばされた体が、別の車のボンネットに着地する。背中を強く打ち、肺から呼吸が抜けていく。

 全身を痛みが襲う。右手で柄を掴んだままだったのは奇跡だ。

 

「ギャリギャリギャリ」

 

 怪物の鳴き声が聞こえる。しかし、身体は動かない。白川日向が一歩ずつこちらへ近づく。それは死へのカウントダウンと同義だ。音が、振動が、気配が、それを伝える。痛みと耳障りな声で頭が回らない。

 そんな不協和音の中、一つの声が聞こえた。

 

 

「負けるな、ヒーロー‼︎」

 

 

 折手メアの声が駐車場に響く。

 めちゃくちゃだ。自分でこんな状況に追い込んでおいて、ここからの逆転を求める。手助けする気は一切なく、遠くから俺を応援する。

 

 あぁ、でも。そんなクソ野郎でも、中身が中年のオッサンでも、頭のイカれた折手メアであっても。俺のことが好きな女の子の前で、カッコ悪い所は見せられない。

 

 だから、動け。

 だから、立ち上がれ!

 だから、……怪物をブチ殺せ‼︎

 

 

「まだ負けてねぇぞ、クソがッ‼︎」

 

 

 両足に力を込め、車の上に立ち上がる。

 勝ち目はまだある、俺の異能が残っている。

 それに着地点の運が良かった、すぐそばにこんな秘密兵器があるとは思わなかった。

 秘密兵器を持ち上げ、ノズルの方向を定め、安全ピンを抜き、レバーを引く。

 

「仕切り直しだ、火事野郎。消火してやるから、こっちへ来いよ」

「…………()()()()?」

 

 消火器のノズルから、チョークの粉のような薄ピンクの煙が噴射される。視界が真っピンクに染まる。背後から折手メアの悲鳴が聞こえる。

 

「キミは馬鹿かっ⁉︎ 《氷河時代(アイスエイジ)》には消火器は存在しない! 消火器でその炎を消すことはできない‼︎」

「馬鹿はテメェだ、折手。これは火を消すためじゃねぇ。ただの目眩しだ‼︎」

 

 もちろん、周囲が見えなくなったのは俺も同じだ。だが、俺は周囲の状況が感じ取れる。白川日向が俺が立っていた車に向かって突進して来たのが分かる。

 

「《異能感知(・・・・)》、テメェの居場所なんざ丸分かりだ」

 

 バゴン! と。

 ()鹿()()で自動車をひっくり返し、突進して来た怪物にブチ当てる。

 怪物が顔面を車に強打する。だが、ダメージにはなっていない。全身に炎を漲らせ、火炎放射を吐きながら回転する。何処に隠れていようが、燃やし尽くすつもりだろう。車を投げたところで、足止めにしかならない。

 だがな、そんなこと百も承知だ。

 

「《異能感知(・・・・)》、テメェの攻撃も見えてんだよ!」

 

 《破邪の剣(アスカロン)》を引き伸ばす。

 先端を地面に突き立て、柄を握りしめてジャンプする。棒高跳びと同じ要領だ。自動車も、白川日向も、火炎放射の攻撃さえも飛び越え、白川日向の真上に跳ぶ。

 これこそが完全な死角。六つの瞳から逃れる唯一の場所。

 

「《異能感知(・・・・)》、見えるぜぇ……テメェの弱点がなァッッ‼︎」

 

 《破邪の剣(アスカロン)》を極限まで薄く形状変化し、重量を最大にする。後は重力に任せるだけだ。

 特別な技はいらない。折れる心配もない。切れ味さえも必要ない。薄いと言うことは、それだけ威力を集中できるということだ。

 

 ズシャァァァッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 上空からの奇襲。怪物殺しの一撃。

 脳天から爪先までを叩っ斬る‼︎

 血飛沫が舞う、炎を纏う血肉がばら撒かれる。

 

「《異能感知(・・・・)》、まだ終わりじゃねぇんだろ?」

 

 ばら撒かれた全ての血肉が炎に変換される。

 同時に生じた大量の炎は、強力な熱エネルギーとして炸裂する。即ち、大爆発。

 

 音さえ吹き飛ぶような爆発。

 ガソリンに引火したとき以上の衝撃が引き起こされる。だが、それは事前に知っていた。

 着地して逃走する暇はない。故に着地することなく、地面に剣を突き立て、刀身を更に引き伸ばす。天上に張り付き、膜のように形状変化させた剣で身を守る。

 

「怪物退治、いっちょ上がりだ」

 

 爆発が止む。《破邪の剣(アスカロン)》を元の形に戻し、地面に着地する。戦いが終わった安心感と、異能を発動した高揚感を覚える。

 怪物に成り果てた白川日向に手を合わせ、その死を追悼する。例えそこに白川日向の人格が残っていなくとも、魂は輪廻に帰る。これ以上、彼女の尊厳は奪われない。

 

「《異能感知》……これが俺の異能か」

 

 発動した異能を振り返る。ゾンビとの戦いでもそうだったが、俺は殺気やら悪寒やらで攻撃を察知できた。だが、ただの高校生である俺は、そんなものを感じることが出来るはずがない。

 故に、これこそが俺の異能。転生者の世界観に違和感を覚え、世界から外れた異能の反応を感じる能力。()()()()()()()()()

 

「確かに、これはしょぼいな……。こんな異能が刺さるラスボスとか、逆にどんな異能なんだ?」

 

 透明化とかだろうか。まだ見ぬラスボスの能力を妄想し、折手メアに尋ねる。しかし、何も答えない。

 折手メアは戦闘が終わってからずっと黙っていた。ゾンビ戦後とは大違いだと思い、何かあったのかと顔を覗き込む。

 すると、ドン引きしたようにこう言った。

 

 

「知らん……、何その異能……。怖……」

 

 







世界観:《氷河時代(アイスエイジ)
転生者:白川日向(しらかわひなた)
グレード:第三界位(グレード3)
タイプ:肉体(アバター)
ステータス:
 強度-D/出力-D/射程-D/規模-C/持続-B
異能:《焔命獣(ブレイザー)

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