原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

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 ルーキー日間にランクインしてたみたいでビビり倒しました。
 ありがとうございます。




四話:転生者に銃は効かない

 

 

「俺も異能持ってるのか……?」

「異能も持たないのに転生者と戦わせる筈がないだろう?」

 

 折手メアは当たり前みたいな顔で言い返す。

 いや、折手メアの主人公崇拝を考慮すると、何でもやりそうな雰囲気があった。そう思ってしまうぐらい、折手メアの頭はイかれている。

 

「一部の例外を除いて、転生者は転生者にしか倒せない。正しくは()()()()()()()()()()()()()()、だけどね。読者視点で(メタ的に)言うならば、異能バトルの鉄則だ。戦闘に近代兵器が登場したら興醒めだし」

 

 初耳である。というか……。

 

「だったら、俺も倒せないだろ……」

「だから、キミには戦闘を通して異能に目覚めてもらおうと思っていたのにさ。異能無しでゾンビを圧倒するとは思わなかったよ、流石主人公。でも、キミが異能を発動すれば、あんな雑魚なんて瞬殺だったよ?」

「そんなに凄い異能なのか?」

「いいや、正直言うとしょぼい。効果は限定的だし、ステータスもゴミ。無いよりマシみたいな異能かな」

「ボロカス言うじゃねーか⁉︎」

 

 そんなに酷い異能なのか……。なんというか、ショックだ。とてもかなしい。

 俺も思春期の男子高校生だし、特別な力に目覚めるシチュエーションには憧れも抱いていたが、こんなに酷評されると手に入れる前からガッカリする。

 

「だけど、キミの異能は痒いところに必ず刺さる。滅多刺しだ、刺し殺すと言ってもいい。キミが異能を手に入れないと、後々のイベントで詰む」

 

 真っ直ぐとした赤い瞳が告げる。その声色は何処までも真剣だった。

 ゲームにおける詰みとは、人生における死。

 いわゆるバッドエンドのことだろう。

 

「だから、キミの異能は絶対に手に入れる必要がある。草薙大史との戦いをセッティングしたのも、全てはそのためさ」

「……どうしてそこまでする。お前には関係ない話だ。わさわざ俺に関わって、ストーリーに介入する必要なんて無いはずだ。お前の目的は一体なんだ?」

 

 折手メアがこの騒動に中心にいる意味が分からない。巻き込まれたわけでもなく、中心人物でもない。自殺志願者でもなければ、何も知らない馬鹿でもない。

 一体どうして、俺に話しかけてきたのか。この世界にストーリーがあるのならば、放っておけば勝手に解決するはずなのに。

 だったら、何か目的があるはすだ。命を賭けるほどの目的が。

 

「救済のためさ。『テンプレート・トライアンフ』はどのルートに行っても死者が出る。敵はともかく、味方や一般人の死は心が痛むからね。原作死亡キャラ生存を目指しているのさ」

「……胡散臭いな。本当か?」

「本当じゃないよ」

「オイッ‼︎」

 

 マジでこいつ何なんだ。

 折手メアは口元に手を当てて笑う。

 

「本当はね、大した目的なんてないよ。言わなかったかな、ボクはキミのファンなんだよ。推しのキミがカッコよく活躍する所を特等席で見たい。ただそれだけさ」

「……そんなことのため命を賭けるのか?」

「この世界はゲームだ。死んだところで、残機が一個減ったみたいなものだよ。それにキミの目の前で死ぬのも、それはそれで魅力的だからね」

 

 価値観が……いや、世界観が違う。

 理解ができない。できないが、折手メアには折手メアなりの考えがあるのが分かった。

 

「……分かった、やるか救済。全員まとめて救ってやるよ」

「さっすが六道伊吹! 今の決めゼリフはキュンときた! やっぱり、原作介入するなら原作キャラ救済しないとオリ主じゃないからね! 目指せ、パーフェクトゲーム! キミのカッコいいセリフを思い出すだけで、いくらでも力が湧いてくるよ‼︎」

「やめてくれ……」

 

 褒められ過ぎてむずがゆい。成績も普通で、大した特技もない人生だったので、ヨイショには慣れていない。

 しかも、こいつは美少女だ。俺のことがめちゃくちゃ大好きな美少女にめちゃくちゃ褒められるとかあり得るのか。耳が熱い。顔が赤くなってないだろうか。

 

「……それで、詰むイベントって何だよ」

 

 恥ずかしくなって話題を変える。

 折手メアは薄い笑みを浮かべて答えた。

 

 

「ラスボス戦さ」

 

 

 無意識でごくりと唾を飲み込む。

 ラスボス。この世界(ゲーム)、『テンプレート・トライアンフ』における最大最強の難敵。

 

「他の敵はどうとでもなる。中ボスを完全に殺すことは出来ないだろうけど、封印することはできる。何なら、ボクの異能でどうにかしたって構わない。勝ち目が〇%でないのなら、ボクは必ず勝てるからね」

 

 折手メアの異能。全く想定していなかった単語に、思考が停止してしまう。

 しかし、考えてみると当たり前のことだ。折手メアも転生者、異能を持っていても不思議では無い。……むしろ、異能を持たない方が不自然であると言える。

 

「だけどね、ラスボスだけはキミでないと殺せない。キミこそが主人公(ヒーロー)、この世界の希望。全人類を守る救世主なのさ」

 

 世界の命運が肩にのしかかる。未だに実感は湧かないし、正直プレッシャーでしかないが、俺の行動で全人類の運命が左右されるらしい。

 

「……そのラスボスの名前は?」

 

 世界の怨敵にして、俺の宿敵。

 ある意味では俺が攻略するヒロインとやらよりも、運命の相手と言えるかもしれない存在。

 やがて俺が決着をつけねばならない者。

 

 

「ディートリヒ・フォン・エルケーニッヒ」

 

 

 最悪の敵、その名を胸に刻み込む。

 物語(ストーリー)の最後に殺さねばならない男。

 

六界列強(グレートシックス)・第四位。六道超越者(オーバーロード)の一人。諸悪の根源、第四の終末、転生者製造機、自称魔王。『テンプレート・トライアンフ』のラスボスにして、キミにとっては不倶戴天の天敵」

 

 折手メアはラスボスの異名を次々と告げる。

 その様子はどこか楽しそうでもあった。

 

 

「端的に言うと、この街で起こる全ての転生者騒動の元凶さ」

 

 

 


 

 

 

「こんな事もあろうかと、ボクは次善策(スペアプラン)も用意している。あらゆる事態を想定して、チャートを組み立てているからね」

 

 折手メアの頼もしい発言もあって、俺たちは場所を移動している。犬の屍体が残ったままで、臭かったからという理由もある。異能自体は消えても、異能に汚染された生物自体は消失しないらしい。

 

「何処に向かってるんだ?」

「駅前のデパート。その駐車場に次の転生者がいる。キミも知ってるものさ」

「……知ってるもの?」

 

 ……俺の知り合い、か?

 信じたくはないがあり得る話だ。主人公の古くからの知り合いが敵だったというのは、物語としては有りがちだと言える。

 だが、知ってる人でも知ってる奴でもなく、折手メアは知ってる“もの”と言った。“者”ではなく“物”だとすると、転生者が関わっていそうな物を俺は一つ知っている。

 

「……連続無差別焼殺事件、その犯人がデパートにいるのか」

「正解」

 

 ……人間を誰一人として殺していない草薙大史とはレベルが違う、本当の殺人者。

 

第二界位(グレード2)のゾンビ程度では手も足も出なかったからね。次は第三界位(グレード3)の転生者と戦ってもらう」

「確か、草薙大史の異能を聞いたときにも言ってたよな。グレードってのは何なんだ?」

界位(グレード)とは、転生者の異能や世界観の戦闘力を示す指標さ。前世の記憶があっても、異能を持たないキミは第一界位(グレード1)。異能を持っていても、大したことの無いゾンビは第二界位(グレード2)だ」

「あれで下から二番目か……」

 

 あるいは、前世に目覚めてから一週間しか経っていないからこその界位(グレード)かもしれないが。

 

「全部で何段階あるんだ?」

第一界位(グレード1)から第六界位(グレード6)までの六段階だね。といっても、何か明確な判断基準があるわけでも無い。実際、第三界位(グレード3)第四界位(グレード4)とかの境界線は曖昧だったりするし」

「そっちの業界にも色々あるんだな」

 

 しかし、草薙大史よりも強い転生者か。焼殺がどんな手段かは分からないが、ゾンビみたいに物理攻撃オンリーではないだろう。剣だけじゃ敵わない、装備を揃えたいな。

 

「なぁ、折手」

「どうかしたのかい?」

「その転生者って遠距離攻撃とかしてくるか?」

「うん、よく分かったね」

「なら、見回りしてる警察官を襲撃しないか?」

「うん???」

 

 折手メアの表情が固まった。宇宙を背負ったような顔で、口を開けて遠くを見つめている。耳から入った情報を全く処理できていないようだった。

 内容が伝わっていないと言うか、誤解されてしまうような言い回しだったので、慌てて言葉を重ねる。

 

「俺の異能がどんな物かはまだ分からないけど、武器が剣だけじゃ倒せないと思うんだ。俺の力を引き出すことが目的だとしても、転生者を倒せなきゃ意味ないじゃないか。だから、警察官を襲撃して銃を奪わないか?」

「あぁ、うん。なるほど、どうやら話に齟齬があったようだ。……というより、ボクの言葉選びが遠回しで伝わりにくかったと言うべきかな」

「……何の話だ。俺が警察官に職質されるから奇襲は出来ないって話か? でも、この剣はデカくて仕舞えないだろ」

「その話も面白そうだけど、そうではないかな」

 

 違うのか。今の俺は絶対に職質される見た目をしていると思ったんだけどな。

 深夜に歩く高校生。それも明らかに銃刀法違反の武器を持ち歩き、遠目では小学生にも見える身長の折手メアを引き連れている。付け加えると、世間では連続無差別焼殺事件が起こっている。何処からどう見ても、今の俺はめちゃくちゃ不審者だ。

 

「それに、警察の見回りは心配しなくていいよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 相変わらず、周囲は異常なほど静かであった。

 ……おそらく、折手メアの異能に関係している現象なのだろう。

 

「ちなみに、《破邪の剣(アスカロン)》は頭の中で念じると大きさや形状、重量がある程度は変化するよ」

「マジで? ……ホントだ! すげーなこれ、楽しー! フォークみたいな形にもできる!」

「いやいや、そうではなくてだね……」

 

 剣の形を変えて遊んでいると、折手メアにツッコまれる。いつの間にか話が逸れていた。このクソボケにツッコまれるとは相当ヤバい。気を引き締めないと……。

 

「ボクはさっき、()()()()()()()()()()()()()()と言っただろう?」

「あぁ、そういえば言ってたな。……いや、もしかして、そういうことか?」

「そうだね。分かったと思うけど、()()()()()()()()()()()

 

 銃、それは近代文明兵器の象徴だ。

 ミサイルや化学兵器のような想像しにくい武器とは異なり、危険だとテレビやアニメでよく知っている分かりやすい武器。

 それが通用しない。……つくづく思う、転生者ってのは常識外れの存在だ。

 

「ただし、全ての転生者に通用しない訳ではないけどね。例えば、さっきのゾンビには通じるだろうし、キミも銃に撃たれたら死ぬ」

「……他の転生者と何が違うんだ?」

「世界観の差だね。キミやゾンビの世界には銃が存在した。しかし、他の転生者……例えば、連続無差別焼殺事件の犯人の前世には銃が存在しなかった。だから、銃が通用しない」

 

 草薙大史の世界観……《屍体が動く世界(ゾンビ・アポカリプス)》だったか。B級映画的なゾンビの世界であるならば、現世とも大きな違いはないはずだ。

 

「“銃”という概念が存在しないから、“銃”による攻撃が通用しない……?」

「ファンタジー世界の魔法使いが銃で死ぬのは不自然だろう? そこは魔法や剣で殺されないとおかしい。それは()()()()()()()()。だから、通用しない」

「じゃあ、異能しか通じない訳でも、銃が通じない訳でもなくて……」

「そうだね。最も正確に言うならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 折手メアが転生者は転生者にしか倒せないと言っていたのも当たり前だ。銃、ミサイル、核兵器。転生者にも引けを取らない兵器は数あれど、その兵器は極一部の転生者にしか通用しない。通じるのは原始的な攻撃のみ。軍隊に素手で挑むようなものだ、勝てるわけがない。

 

「異能は前世の世界観を現世に押し付ける能力だからね。他の転生者の世界観を無視して、自分の世界の攻撃が通じるのさ」

「……《破邪の剣(アスカロン)》はどうなんだ?」

「その剣は異能の産物……むしろ世界観そのもの、あるいは転生者の成れの果てだ。例外的に転生者にも通用するアイテムなのさ」

 

 キーホルダーサイズに縮めた《破邪の剣(アスカロン)》を眺める。そんなに重要な武器だったとは思わなかった。

 

「話をまとめると」

 

 折手メアの足が止まる。何かあったのかと周囲を確認すると、いつの間にかデパートにまで辿り着いていた。話に夢中で、周りが見えていなかった。

 

「キミはこれから、連続無差別焼殺事件の犯人と戦ってもらう。武器は《破邪の剣(アスカロン)》のみ。しかも、キミは担い手として認められていないから、金属バット代わりにしか使えない」

「それって勝ち目あんの? 絶対死ぬじゃん……」

「ないよ。異能が使えても、選択肢を間違えたら普通に殺される相手だからね。異能がなかったら死ぬよ」

 

 無理じゃん、死ぬじゃん。

 折手メアはそれでも笑う。

 

「大丈夫、キミなら勝てる。キミなら異能を手に入れられる。キミに不可能は存在しない」

「……何か根拠があるのか?」

「あるよ」

 

 即答、女神の美貌は崩れない。

 何か作戦があるかのように、自信満々の様子だった。そこで俺は思い出した。

 

(そういや折手、あらゆる事態を想定してチャートを組み立ててるって言ってたな。何かあるのか、異能に目覚める特別な方法が)

 

 きっと、何か手立てがあるのだろう。そりゃそうだ、大した根拠もないのに“できる”と断言するはずがない。本人も根拠があると言っている。それはしっかりとしたものに決まってる、多分、きっと、おそらく、……そうだったらいいなぁ。

 

 そして、折手メアは根拠を告げる。この世の真理を述べるかのように、誰もが知っている当たり前の常識を教えるかのように、折手メアは俺に絶大な信頼を寄せて言った。

 

 

「だって、キミはボクの愛する主人公なんだから」

「何の根拠にもなってねーよ!」

 

 

 俺のことをめちゃくちゃ好きな美少女(オッサン)が、めちゃくちゃ頭おかしいから、俺にめちゃくちゃなことを要求してくる。かなしい。

 

 

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