原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

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 何か略称を考えたいんですよね。
 原オリとか? あるいはGVOとか?
 ゲスオという手もあります。(()んさくしゅじんこうバーサ()()りしゅ)




三話:前哨戦/vsゾンビ

 

 

 犬とは愛玩動物ではない。

 狼から分岐した動物であり、古くから狩猟において人類の相棒として用いられた動物だ。優れた嗅覚と高い持久力を持ち、追跡型の肉食獣として猛威を振るう。

 

 そして何よりも。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 故に、ただの一般人が犬と戦うのは少し厳しい。

 

 

「逃げてばかりじゃあねぇか……。さっきまでの威勢は何処にいったんだぁ? なァ、オイ‼︎」

「うるせぇ! 生きてるだけで勝ちなんだよ、クソ野郎がッ‼︎」

 

 追跡する五匹の狩人(狂犬)と、逃げ惑う獲物()

 二匹の大型犬、二匹の中型犬、一匹の小型犬。

 涎を垂らして俺を狙う屍の捕食者(アンデッド・プレデター)

 

 狂犬たちの主、草薙大史の異能は《ゾンビウイルス》。ゾンビ映画がどこまで当てになるかは分からないが、噛まれたらゾンビになると考えられる。

 

「バウッ! バウッッ‼︎」

 

 中型犬による大音量の威嚇。

 反射的に吠えた犬に目を向け、攻撃を警戒したが、それは悪手であった。

 俺の視界に映るのは一匹の中型犬。

 他の四匹は視界から消え失せる。

 

 つまり、これは囮だ。

 一匹が咆哮で視線を集め、他の四匹が視界の外からの奇襲を行う。それこそが獣の狩り。

 例え畜生であろうと、狩りにおいては知能の働く生粋の狩猟者。

 

 背後から感じる殺気。

 認識外から来る四匹の襲撃者。

 振り向いた先には大型犬が()()()に存在した。

 

「マジかッ!?」

 

 地面からの高さ約一六〇センチ。

 文字通り、目の前まで大型犬が跳ぶ。

 黒き獣の牙が俺の首を狙う。

 咄嗟に腕で首を防ぐが、それすらも悪手。

 

 ガブリッ‼︎ と。

 大型犬が俺の腕に喰らい付く。牙が俺の肌に突き刺さることは無かったが、その歯が俺の服に絡みつく。

 

 一般的に一〇キロ未満の犬が小型犬、二五キロ未満の犬が中型犬、二五キロ以上の犬が大型犬と定義されている。

 では、ここで問題。

 最低でも二五キロの重りが、突然に腕を引っ張るとどうなるか。

 答えは単純、体勢を崩す。

 

 大型犬に腕を引っ張られ、前のめりに倒れそうになる。足を前に出して踏ん張ろうとするが、小型犬に邪魔をされ、足の踏み場を失う。

 俺の体勢は完全に崩れた。身体は前に傾き、膝が地面に着き、まるで首を差し出すかのように俺は頭を下げる。

 そうして現れるは、もう一匹の大型犬。満を辞して俺の首を狙う、人喰らいの顎。蘇る死の恐怖に身体が硬直する。

 大型犬が大口を開けて、俺の喉元へ跳び……

 

 

巫山戯(ふざけ)ているのかい?」

 

 

 ……ザクリ、と。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 折手メアが後方から放ったボールペンが、大型犬の眼を穿ち、間一髪で俺を救う。

 奇しくも、それは狂犬たちの狩りと同じく、認識外からの奇襲。獣たちの思考に一瞬の空白が生まれる。

 その隙に、大型犬の目に突き刺さったボールペンを更に押し込み、足元の邪魔な小型犬を蹴り飛ばす。

 五匹の狂犬から距離を取り、息を整える。

 

「何をやっているんだ、六道伊吹。キミは主人公で、相手はザコだ。どうして選択肢を間違える(BAD ENDに突き進む)。キミはもっと強いはずだろう?」

「……無茶言うなよ。普通に強いぞ、こいつら」

「馬鹿言うな、ソイツは公式の人気投票最下位のザコだぞ」

 

 それの何が戦闘力に関係あるんだよ。

 

「つーか、お前も戦えよ」

「ボクは戦わない。手を出すのはこれで最後だ。次は死にかけようが助けはしない。キミなら何があっても乗り越えられるに決まってる」

 

 無茶苦茶言いやがる。

 折手メアは俺を過大視している。

 神聖視していると言い換えても良い。

 現実の俺を見ろよ。全身汗だくで服はボロボロ、今もまだ死の恐怖に怯えている。

 

 

「情けねぇ、情けねぇなぁ。啖呵を切ったくせに、何もできてねぇじゃねぇか。何もできねぇのなら、でくの棒みてぇに突っ立ってろよぉ。さっさと、死んだらどうだぁ?」

「死ねとか人に言っちゃいけないって、ママに習わなかったのかよブチ殺すぞ」

「キミ、やっぱり凄い理不尽だね。流石だよ、作中レスバ最強……」

 

 草薙大史に煽られ、反射的に言い返す。

 折手メアが何かほざいているが無視する。

 

 何で俺が煽られなくちゃいけない。

 何で俺がこんな目に遭わなくちゃいけない。

 ふざけてるのはどっちだクソが。

 疲れが怒りに、怒りが力に変わる。

 

「年下虐げて粋がってんじゃねぇよ、クソ野郎。それに、デクの棒はテメェの方だろ。犬におんぶに抱っこで恥ずかしくねぇのか?」

「あぁん?」

「お前、前世でもそうだったんだろ? ゾンビウイルスを持ってるってことは、お前の前世は脳死でそこらを歩き回るゾンビだろ。B級映画でもモブの立ち位置じゃねぇか。可哀想だな、死んだ方がマシじゃねぇか」

 

 こんな奴に負けてたまるか。

 こんな奴に殺されてたまるか。

 理不尽を許すな、不条理を赦すな。

 ゾンビなんて全員ぶっ殺してやる。

 

「違ぁう! オレはあんな屍体どもとは違う‼︎ オレは抗体を持った保菌者だぁ‼︎ 死んでも生き返った転生者だぁ‼︎ お前らみたいなクソガキとは価値が違う、選ばれた人間なんだァ‼︎‼︎‼︎」

「喚くなよ、三下。その様子じゃ人気が出ないのも納得だぜ。悪役の中でも、魅力も強さも持たない正真正銘のクソ野郎じゃねぇか。瞬殺される雑魚みてぇな台詞(セリフ)吐きやがって……」

「オッ、オマエェェェェェェェ……ッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 転生者がなんだ、異能がなんだ。

 転生者なんて、全員終わった存在じゃねぇか。

 死を迎えながら、生にしがみつく敗北者だ。

 元の人生も、元の世界も失った哀れな死者だ。

 

 俺は他の転生者とは違う。

 偶然だろうが、奇跡だろうが、俺は元の人生を取り戻し、元の世界に戻ってきた。

 俺はまだ終わってない、俺はまだ生きている。

 初めに敵として出逢った転生者がこいつで良かった。

 こいつは全ての転生者を象徴している。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 俺は屍体(ゾンビ)の身体を見て嘲笑い、草薙大史に向かって鼻を押さえて言った。

 

 

「お前、風呂入ってねぇだろ。転生しても臭いとか、魂まで腐ってるんじゃねぇか?」

「ッッッッッッッッ………………‼︎‼︎‼︎」

 

 

 ブチィィイイイイッッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 草薙大史の何かがキレた音がした。

 顔面が赤黒く染まり、頭に血管が浮き出る。

 

「…………殺せ」

 

 五匹の狂犬が立ち上がる。大型犬の欠損した眼球は、既に修復されていた。力を込めて蹴り飛ばした小型犬も、何の外傷もなく動いている。

 やはり、素手では決定打になる致命傷を与えることはできない。一撃で敵を殺傷する武器が必要となる。

 

「おい、折手。力を貸す必要はない。ただ、何か武器を寄越せ。お前に主人公ってやつを見せてやる」

「め、名言っぽい……⁉︎ 武器ぐらい、いくらでも渡すとも! さぁ、ボクに見せてくれ! キミという主人公(ヒーロー)の輝きを‼︎」

 

 ハッタリに決まってんだろ。

 折手メアの動かし方が分かった。適当にカッコいいことを言えば、こいつは動いてくれる。

 折手メアが俺に向かって武器を投げつけた。

 

「その剣の銘は《破邪の剣(アスカロン)》。決して折れることがなく、鋼すら容易く切り裂く、最硬にして最強の名剣さ」

 

 それは一振りの剣。

 一切の装飾を取り除いた、無骨な武器。

 両手でも片手でも扱える片手半剣(バスタードソード)であり、あらゆる邪悪を滅する撃退する剣(バスターソード)でもある。

 おもちゃの剣のように軽いが、その質感は紛れもなく金属の硬さであった。

 

 戦う覚悟が決まった訳じゃないし、この世界がゲームということを受け入れた訳じゃない。

 ただ一つ、気づいたことがある。

 この世界(ゲーム)のジャンルはバトルものだ。

 だったら、向かって来る敵を全員殺したら全部解決だ。

 俺もこの状況にイラついてるし、丁度いい。

 ストレス発散ついでにやってやる。

 

 

「前哨戦だ、クソ野郎。手始めにテメェからブチ殺してやるよ」

 

 

 制服の上着を脱ぎ、左腕に巻き付ける。

 《破邪の剣(アスカロン)》を鞘から引き抜き、柄を右手で握りしめる。

 

「アイツを殺せぇぇぇぇッッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 五匹の狂犬たちが殺到する。

 草薙大史の命令に突き動かされた獣たちは、知能も何もなく、ただ肉を喰らう畜生と化した。狩人ではなく、ただの肉食獣。

 最大の利点を捨てた獣に、脅威は感じない。

 

「自分で殺しに来いよ、屍体漁り(スカベンジャー)ッ‼︎」

 

 一閃。まずは一匹目。

 鋼鉄すら斬り裂く刃が、小型犬をぶった斬る。

 

「ギャウゥッッ‼︎」

 

 バゴッッッ‼︎ と。

 斬撃……というより打撃が炸裂する。

 小型犬の頭が破裂し、脳漿がぶち撒けられる。

 

「切れ味めちゃくちゃ悪いじゃねぇか。斬殺というより、撲殺じゃね?」

「その剣は使い手を選ぶタイプでね。キミは剣を引き抜くことは許されたが、刃の解放までは認めて貰えなかったのだろう」

「使い勝手悪いな……」

 

 こんだけカッコつけて、剣すら引き抜けなかったら、ダサいにも程がある。危機一髪ってところか。

 

「まぁ、金属バットの代わりにはなるか」

 

 ベゴォ‼︎ と。

 襲いかかって来た中型犬を、ホームランのように弾き飛ばす。中型犬の身体がくの字に折れ曲がり、大量の血が舞う。

 俺が感じる重さと実際の剣の重量にズレがあるのか、《破邪の剣(アスカロン)》は恐るべき威力を叩き出す。

 油断することなく、吹き飛んだ中型犬の頭をしっかりと潰す。これで二匹目。

 

「バウッ! バウッッ‼︎」

「それはもう知ってる」

 

 中型犬による大音量の威嚇。

 しかし、同じ作戦は二度も通用しない。右から聞こえるその咆哮を無視して、左側に振り向いて目を向ける。

 

 そこにいたのは二匹の大型犬。

 俺の首めがけて跳んでくる大型犬を剣で叩き落とし、その頭蓋骨を叩き割る。

 もう片方の大型犬は攻撃から逃げに転じるが、その鼻頭を蹴り飛ばして転ばせる。横たわった大型犬の頭に剣を振り下ろし、躊躇なくその脳髄を掻き乱す。

 三匹目、四匹目。

 

 背後から殺気を感じ、咄嗟に後ろを振り向く。

 それは先程まで吠えていた、囮の中型犬。

 獣の牙が俺の首を狙うが、上着を巻き付けておいた左腕でそれを防ぐ。

 大型犬に比べると軽く、体勢が崩れることはない。そもそも、体勢が崩れた隙に首を狙う他の犬も存在しない。

 

「これで最後だ」

 

 五匹目。

 グシャリ、と。

 俺の腕に噛み付く中型犬の喉を穿つ。

 顎から力が抜け、だらりと地面に落ちる。

 

「もう終わりか。追加は無いのか?」

「オ、オレの手駒がぁぁ……!?」

 

 草薙大史は衝撃を受けた表情で、ただ立ち尽くしている。新たなゾンビが現れる様子も、本人が戦う様子もない。

 人間のゾンビがいたら厄介だと思っていたが、杞憂でしかなかったようだ。

 

「お前、やっぱり雑魚だな。犬しか殺せねぇし、ガキにも負ける意気地なしだ。一週間もあったのに、ゾンビは五匹しかいねぇ。極め付けに、自分で戦う度胸も無いのか?」

 

 トドメを刺すタイミングで別の異能を出されても困るため、挑発することで様子を伺う。何か別の武器があるならば、温存することなく使用するだろう。

 

「舐めるなァッッッッ‼︎」

 

 草薙大史は狙い通り激昂し、ナイフを取り出す。そして、そのナイフを自身に突き刺し、刃を血に浸す。

 

「オレは特別な人間なんだァッッッ‼︎」

 

 そのナイフに強烈な寒気を感じる。正確には、そのナイフに付着した血液だ。

 ミステリに魔法が登場するかのような違和感、一人だけ作画が異なるかのような不自然な感覚を覚える。即ち、物理法則を無視する異能の反応。

 間違いなく《ゾンビウイルス》。それも、狂犬たちの唾液とは、比べ物にならない程の量があると考えられる。掠っただけでゾンビ化する可能性もある。

 

「……来いよ、ゾンビ男」

 

 だが、その動きは素人。戦闘どころか、喧嘩すらしたことがないような運動音痴の走り方。

 草薙大史の攻撃に剣を振って迎え撃つ。

 ナイフと剣。射程も強度も剣の方が強く、鍔迫り合いすら起こらずに弾き飛ばす……そのはずだった。

 

 ガギィィッ‼︎ と。

 《破邪の剣(アスカロン)》が弾き飛ばされる。

 

「はぁっ!?」

 

 ナイフの振り方からは考えられない馬鹿力。

 咄嗟にバックステップで後ろに下がり、ナイフをギリギリで回避する。

 

 全ての動物は一〇〇%の力を出せないよう、脳にリミッターがかけられている。しかし、危機的状況に瀕した際に、火事場の馬鹿力としてそれを発揮することができる。

 こいつは屍体(ゾンビ)だ。故に、死に瀕した時のみ使える力を、いつでも引き出すことができる。更に、反動で肉体に現れる負担も、再生能力によって無視できる。

 

(いや、これ使えるか……?)

 

 良いアイデアを思いついた。

 もう一度、《破邪の剣(アスカロン)》を構える。

 

 

「死ねよぉ、死ねよォォォォッッッッ‼︎」

「うるせぇな」

 

 

 ガギギィィィイイイッッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 剣とナイフが衝突する。

 暴れる草薙大史をナイフごとぶっ飛ばす。

 草薙大史を超える馬鹿力で剣を振り抜く。

 衝撃で内臓を潰した感覚がした。

 

「なっ……なにィィィッッッッ⁉︎」

「俺も一回死んだ。俺も少量の《ゾンビウイルス》に感染してる。だったら、俺も馬鹿力を出せるに決まってんだろうが‼︎」

 

 だが、草薙大史はまだ止まらない。

 諦めが悪く、自前の牙で俺を噛み殺そうと近づく。プライドを捨てて、がむしゃらに駆け出す。

 

「クソガキがァッッ!!!」

「黙って死んどけ」

 

 一撃必殺。

 《破邪の剣(アスカロン)》を振り下ろす。

 重量、速度、タイミング。全てが噛み合い、草薙大史を両断する。切断ではなく、斬撃でもなく、打撃で頭を叩き割る。

 

「はぁ、はぁ……」

 

 肩で息をする。体から力が抜ける。

 足から崩れ落ち、路上に横たわる。

 初めての転生者、初めての殺し合い。

 知らない内に酷く緊張していたことに気づく。

 ただ、生きている実感を噛み締める。

 

「いやぁ、カッコよかったよ! 素晴らしい戦闘だった! セリフの一つ一つが原作の名言に匹敵するし、草薙大史との口論(レスバ)も気持ちよかった! ドキドキしすぎて少し濡れたよ! ボクの語彙力じゃキミの魅力は言い表せない! 体中から愛が溢れ出しそうだ‼︎」

 

 折手メアが拍手と共に歩いてくる。

 ふと横を見ると、草薙大史の肉体は光の塵へと変わり、消えてゆく最中であった。

 

 折手メアは寝そべる俺の近くまで歩き、パンツの件を思い出したのか、体育座りで横に座った。

 そして、心底不思議そうな顔でこう言った。

 

 

「ところで、どうして異能を使わなかったんだい?」

「えっ、俺も使えんの……⁉︎」

 







世界観:《屍体が動く世界(ゾンビ・アポカリプス)
転生者:草薙大史(くさなぎたいし)
グレード:第二界位(グレード2)
タイプ:肉体(アバター)
ステータス
 強度-B/出力-E/射程-C/規模-C/持続-D
異能:《ゾンビウィルス》

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