ポケットモンスター in オラリオ


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作:ニャース
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8 リュー、壁の花になる


そういえば評価が赤フルになっていました!
皆さん評価して頂きありがとうございます!

評価や感想は励みになりますので、これからもどうかよろしくお願いします。


 

 リュー・リオンは異世界に飛ばされたと語った、不思議な少年を見つめていた。

 

 ガネーシャが「うおおおおお! 俺がガネーシャだああああああ!!」と両手を上げて叫ぶのに合わせて、彼もノリノリで「ダハハッ! 僕がベル・クラネルだぁ!」と返していた。

 

「あはは! なにしてるのベル君。もしかしてオラリオ流の挨拶だと思った?」

「ええい、なにやってるんですか、ガネーシャ様!」

 

 それを見たアーディが笑い、シャクティがファミリアの恥だとガネーシャを羽交い締めにする。

 アーディの指摘を受けたベルは、少しだけ顔を赤くして両腕をゆっくり下ろした。

 

 そんな喜劇めいた光景を見て、ようやく他の人や神たちも驚愕が解けたのか、それぞれの思惑にのっとって動き出そうとしていた。

 

 でもその前に、ベルの視線が不意にこちらを向いた。リューに見られていたことに気づいて真っ赤な双眸を見開いたが、すぐに照れくさそうに笑う。

 

 その笑顔にリューの心臓が跳ね上がる。

 どうすればいい? こちらも笑いかければいいのか。それとも軽く手でも振ればいいのか。あるいはこれをきっかけに会話をしにいくべきか?

 

 しかし、リューはどの選択も取ることができず、間抜けにも立ち尽くしたままであった。

 

 ――思えば初めてあった時から、リューは彼に言葉にならない感情を抱いていた。

 

 

 

 

 

 かつての最強に冒険者依頼(クエスト)で呼ばれるという晴天の霹靂に、リューは多大な緊張に包まれていた。

 

 千年もオラリオの安全神話を守っていた、偉大なファミリア。

 しかし、同時に冒険者達に混沌(カオス)ももたらしていた、悪名もあるファミリア。

 

 この時ばかりは団長のお供を決めるジャンケンで負けた己の不運を呪った。

 

 ライラどころか輝夜までもが押し付けておいて、同情した目で見てきた時は腹が立った。

 

 いったい自分たちはなにをされるのか。普段お気楽なアリーゼすら、なんとも形容しがたい乙女にあるまじき表情をしていた。

 アストレアの励ましがなければ、リューもアリーゼも最強が待ち受けるギルドの応接間まで辿り着けなかったかもしれない。

 

 死地に赴く覚悟で扉を開けてみると、そこにいたのは拍子抜けするくらい優し気な雰囲気を持つ同年代のヒューマンだった。

 

 真っ白な髪に深紅(ルベライト)の瞳。まるで兎のように可愛らしい男の子だとリューは思った。無邪気な笑顔で歓待してくれたことにも好感を覚えた。

 

 彼の背後にはかの【静寂】と【暴食】が控えていたが、先に到着していたアーディやアスフィがこちらに手を振ってきたことも合わせて、すっかり緊張が抜けてしまった。

 

 少年――ベル・クラネルとの自己紹介をつつがなくこなし、アルフィアの実子だという衝撃の事実を知らされつつも、次第に穏やかな空気が流れ始めた。

 

 そんな時に事件――そう、リューにとってはまさしく事件だった――が起こった。

 

 ベルが握手をするために、リューに手を差し出してきたのだ。

 

 この時のアリーゼは物凄く慌てた。

 

 このままだとリオンがベルを投げ飛ばしてアルフィアの怒りを買って、ポンコツエルフの串刺しが作られてしまう!

 そしてその余波でアストレア・ファミリアが攻め滅ぼされ、哀れ未亡人になったアストレア様が清く正しく美しかった私を思い出に、涙に暮れる日々を過ごすことになってしまう!

 

 こうなれば先にリオンを殴り倒す。これも正義のため――許してちょうだい、リオン!

 

 わずか0.5秒にも満たない間にそれだけのことを妄想したアリーゼが、意を決して拳を振りかぶろうとしたその時――。

 

 なんか普通に握手してた。

 

 嫌悪感などこれっぽっちもなく、むしろ嬉しそうな顔で自分から握手してやがった。

 

 世界が止まった。アリーゼも、遠目でそれを見ていたアーディもアスフィも、誰もが凍ったように動かなくなった。

 アストレアの「まあ……!」という驚きと感嘆の声が響いて、ようやく時が動き出した。

 

 瞬間、リューの顔が長い耳の先まで真っ赤になった。

 

 私は今何をした? 異性に肌を許したのか?(※握手しただけです)。

 でも、どこか中性的で可愛らしい顔をしているくせに、ベルの手は男らしく私の手よりも大きくて、意外とごつごつしていて、でも暖かくて心地よくて――はっ!?

 

 我に返ったリューは、どうして自分はベルの手を握れたのか、ポンコツになった頭で必死に考えようとした。しかし、いくら考えてもポンコツはポンコツなのでなんの成果も得られなかった。

 

 そのままなし崩しに周りが盛り上がり、ロキとフレイヤ・ファミリアが来るまで散々いじり倒され、結局今でも答えを見つけられないでいる。

 

 

 

 

 

 彫像と化したリューを脇に置いて、冒険者と神々がベルに話しかける。

 まず最初に口火を切ったのは、やはり【勇者(ブレイバー)】であった。

 

「ベル。君は異世界から来たといったね。先日オラリオの上空に穴が空いて、そこからモンスターが出てきたと報告があったけど、それは君の仕業かい?」

「あっ、はい。……すみません、街の人たちを驚かせてしまって。ウルトラホールのワープホールは決まった場所にしか出られなくて……本当にすみませんでした」

「被害も出ていないことだし、そこまで気にしなくてもいいさ。察するに、君はそのウルトラホールという異世界に繋がる通路を通って、この世界に来たのかな? ウルトラホールに出入りする能力を持つのが、目撃されたモンスター……いや、ポケモンか」

「す、凄いです! これだけの情報だけでそこまでわかるんですね」

 

 フィンの鋭い推理にベルが感嘆する。隣に控えていたロキが顎に手をやりながら、小さな子供のような笑顔で二人の話を聞いていた。

 

「うおおお、マジかあああ! 異世界なんてもん、ホンマに存在したんかあ! ヤバい、めっちゃ見たい! 異世界行きたーい! んでもって、こう、無双とかチートとかやってみたい!」

「ロキ、はしゃぐなみっともない。……しかし、ポケモンとは凄い生き物だな。このドラゴンも特殊な能力を秘めているのか?」

「はい。コライドンは人を乗せての走破性が凄くて、あらゆる壁も登れて頭の翼で空も飛べます。あと、ボールから出てくるだけで天候を晴れにして、晴れの力で攻撃力を高めることができます」

「天候操作ができるのか? まるで神のような力だな……」

 

 そんな大層な力を持っていなさそうな、どこか間の抜けたコライドンをリヴェリアが見上げる。

 じっと見つめられ、コライドンが「アギャ?」と首を傾げた。

 

「ちなみにこのコライドン、向こうの世界でタイムマシンを使って捕獲された、大昔のポケモンなんですよ。他にもずっと未来のポケモンがいたり、エリアゼロは凄かったなあ……」

「タイムマシン!? 時間すら操ってしまうなんて……向こうの人の子は凄いわね。神秘の発展アビリティを極限まで高めたのかしら?」

「……神秘? …………ああ、いえ! 向こうの世界で神様は実在を確認されてません。そうかもしれないと噂されるポケモンはいますが……とにかく、『恩恵』なんて凄い力はありませんでした。代わりに『科学』という独自の力でタイムマシンを作り上げたんです。このモンスターボールも『科学』の力で作られてます」

 

 アストレアの勘違いを正し、ベルがコライドンを入れていたボールをかざす。

 すると、眼鏡をしきりに光らせながらアスフィが食い入るように凝視してきた。

 

「神秘がなくても、このような素晴らしい魔道具を作れるとは……」

「あの……近いですアスフィさん」

「クラネルさん。『科学』とは私にも会得できるでしょうか。それで、私もこのようなボールを作れるようになれますか?」

「だから近い……いえ、もういいです。一所懸命に勉強すれば誰でも『科学』は身に着けられます。でも、ボールは工場で作られているから、専用の機械がないと難しいかと。……いや、ガンテツさんは手作りでボールを作ってたから、ぼんぐりがあれば作れるかも」

 

 その言葉を受け、アスフィはその熱意に若干引いているヘルメスに振り返った。眼鏡の奥の瞳がマジになっていた。

 

「ヘルメス様。半年ほどお暇を頂きます」

「おいおいおい。なんとなく予想はつくけど、何をする気だアスフィ?」

「ガンテツ殿に弟子入りして、ボール作成技術を身に着けます。『科学』も習熟したいので、滞在期間が数年伸びるかもしれません」

「行かせるわけないだろう!? こき使ってたのは謝るから、早まるんじゃない!」

 

 主神様のお言葉は可愛い眷属には届かず、アスフィは眼鏡を怪しく光らせ、未知なる知識へと思いを馳せる。

 これには隣で聞くはめになったアストレアとアリーゼも苦笑いするしかなかった。

 

「そ、それにしても『恩恵』もなしにそんなに凄いものを作っちゃうなんて。想像もつかない世界ね!」

「僕としてはポケモン並みに戦える冒険者の方が凄いと思いますよ。こっちの記憶を全部なくしちゃってますから、お母さんが初めて魔法を使ったのを見てびっくりしました」

 

 向こうの世界の驚異の『科学』を称えるアリーゼに、ベルはいつもの(ゴスペル)をやる母の姿を連想しながら、こちらの『恩恵』の凄さを改めて実感する。

 他の異世界ですでに魔法を見ていたとはいえ、本来魔法の使えない者も使えるようになるのは別種の驚きがあった。

 

 自分も『恩恵』があれば魔法が使えるのかなと妄想していると、コライドンをぺたぺた触っていたアーディが目を丸くしてベルを見つめた。

 

「ベル君、記憶喪失なの!?」

「えっ? あ、そうなんです。自分の名前しか覚えてない状態で、向こうの世界の雪原に飛ばされちゃいました。お父さんに拾われなかったら、僕絶対に死んでましたね」

「苦労したんだね、ベル君……。ん? でも記憶がないならどうしてこっちの世界に戻ってきたの?」

「十四歳になる直前に、お母さんのことだけ思い出せまして。それで、お母さんにどうしても会いたくて戻ってきました」

 

 ベルが頭を搔きながら、少しだけ気恥ずかしそうにいう。

 その言葉を受け、アルフィアがどうだ私の息子は良い子で凄い子だろうといわんばかりに、どこかドヤァした笑みをたたえた。

 様子のおかしいアルフィアに、リヴェリアは気持ちの悪いものを見たかのように眉間に皺を寄せた。

 

 しかし、その笑顔も長くは続かなかった。

 いつの間にやらベルの両手を取ったフレイヤが、瞳を潤ませてベルに訴える。

 

「そう……記憶を無くしていたから、貴方は忘れてしまっていたのね。ベル、覚えていないかもしれないけど、小さい頃に『ぼく、おおきくなったらフレイヤさまとけっこんする!』っていってたのよ? 私、嬉しくてずっと覚えていたのに、忘れてしまうなんて……哀しいわ」

「いいっ!? 僕、そんな大層なこといっちゃったんですか!?」

お前を殺す(ゴスペル)

 

 嘘つきの女神に必殺の(かならずころす)魔法が放たれた。

 

「……っ! フレイヤさ――ぐおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 庇いに躍り出た一匹の哀れな猪が吹っ飛ばされた。床に転げ落ちたまま、ぴくりとも動かない。

 病を克服したアルフィアの魔法は、オッタルですら一発でノックアウトできた。

 

「あらやだ、ちょっとした冗談よ」

 

 自身が消されかけたことも気にも留めず、フレイヤは口元を手で押さえて上品に笑った。

 

「言葉に気をつけろ。送還されたくなかったらな」

「お母さん、ちょっとやり過ぎじゃ……でも、本当のことじゃなくて良かった」

 

 さらりと神殺しを宣言するアルフィアを諫めつつも、ベルはほっと胸を撫でおろした。

 床に転がるオッタルは、なんか頑丈そうな人だからきっと大丈夫だろうとスルーされた。

 

「…………くだらん。なんの茶番だ、これは」

 

 少々おかしくなった人もいたが、終始ベル達を受け入れる空気になっていたのを、一人のエルフが切り裂いた。

 

 足元に転がるオッタルの亡骸(死んでない)を踏みつけながら近寄り、ヘディンはベルを見下した。

 不機嫌さを隠そうともせず、第一級冒険者の圧をベルに加える。

 

「あの……すみません、僕、なにか気に障ることをしましたか?」

 

 しかし、ベルは申し訳なさそうな顔はしても、決して怯えることはなかった。そのことにヘディンは目を細めつつも、罵倒をやめない。

 

「馬鹿か貴様は。一方的にモンスターを受け入れろとは、厚顔無恥にもほどがあるといっている。何故、私がそのような愚行を許容せねばならない?」

「ちょっと【白妖の魔杖】(ヒルドスレイヴ)! たしかにちょっとびっくりしちゃったけど、ベルが連れている子はモンスターじゃないわ! ポケモンよ! それを覚えていないなんて、もしかしてうっかり居眠りしちゃったのかしら?」

 

 アリーゼの挑発染みた訂正に、ヘディンの額に青筋が浮いたが、辛うじて暴力ではなく言葉が出た。

 

「愚民にその区別がつくか? コレはモンスターではないので安全だと、考えなしに笑って受け入れられると思うか?」

「うっ……そ、それはちょっと、ねえ?」

「まあ、難しいだろうね」

 

 フィンがヘディンに同意する。他の人も神も、誰もその意見に反論しようとしない。アーディやガネーシャですら、難しい顔をして押し黙っている。

 

 フレイヤはアルフィアとザルドの様子を密かに伺った。

 二人はベルが詰められているのに口を挟もうとはしない。静かにベルを見守っている。

 

(……なるほど。これくらい対処してみせろと。過保護ではないわけね)

 

 その割にはアルフィアはベルに悪い虫がつこうとすると即座に殺気を全開にするが、母親ゆえの愛嬌みたいなものだろう。

 

「さて。彼はどう対処するのかしら?」

 

 フレイヤはお気に入りの子どもを、熱に浮かされたようにじっとりと見つめる。

 果たしてその答えは、すぐに出た。

 

「お母さんとザルドおじさんから、この世界の人たちに根付いた、モンスターへの強い嫌悪や忌避感は聞きました。たしかに、()()()()難しいです。幸いにもポケモンには忌避感が働かないみたいですが、コライドンみたいな大きい子は怖がられると思います。それでモンスターと違う生き物だから受け入れてくださいって頼んでも、うまくはいかない」

「そうだ。考えなしの愚兎だと思ったが、現実は見えているようだな」

「愚兎って……。まあ、いっか。とにかく、難しいことだとは理解してます」

 

 そういいながらも、ベルの瞳に諦めはない。むしろコライドンを撫でながら、余裕そうに言葉を続ける。

 

「でも、今は普通じゃない状況ですから、案外簡単に受け入れてくれるかもしれませんよ」

「へえ? その心を聞かせてもらってもいいかな」

 

 フィンが楽しそうにベルに尋ねる。

 

「今、闇派閥(イヴィルス)のせいで世界は、オラリオは悲惨な状況になっています。あいつらのしていることは到底許されることじゃありません。どんな手段を使ってでもとめなくてはならない。だから僕は、ポケモン達と一緒に全力を持って、闇派閥(イヴィルス)を打倒します」

「へえー? ベルも力貸してくれるんや? でも、過保護なママが許してくれるんかー?」

「反対されましたけど、説き伏せました」

「ぶふぉ! ま、マジか? あの【静寂】に自分の意見を通したんか!? ……ベル、将来でかい男になるで」

 

 ベルの成し遂げた偉業に、かのトリックスターも心からの賞賛を送る。

 

 なお、ザルドがそんな話聞いてないんだがとアルフィアに詰め寄っていたが、完全に無視された。

 ――いや、思い出して吹き出しそうになるのを真顔で耐えているだけだった。てょわわわぁ~ん。

 

「ベル君が協力してくれるのはすっごくありがたいんだけど、さっき話していた通り、ポケモンを怖がられちゃうかもしれないよ? それでもいいの?」

「始めはそうかもしれません。でも、命を助けてくれるのなら、例えモンスターに見えるような存在でも受け入れられる。そうなっても不思議じゃないと思います」

 

 アーディの懸念に、ベルは自論をかざした。

 

「たしかにそういうものかもしれないが、本当に受け入れられるのか?」

「いや、案外うまくいくと思うよ」

 

 シャクティの疑問に、フィンが代わりに答える。

 それに対しリヴェリアが目を見開く。

 

「正気か、フィン。人とモンスターの隔絶は、そんな容易く乗り越えられるものじゃないだろう?」

「正気さ、リヴェリア。何故ならベル・クラネルの仲間はモンスターではなく、ポケモンだ」

「おい、言葉遊びをしているつもり――いや、待て。そういうことか」

「どういうこと? 私にもわかるようにいってちょうだい!」

 

 大きな声で正直にわからないと叫ぶアリーゼに、フィンは苦笑しながら答えた。

 

「彼のポケモンにはモンスター特有の邪気がない。一般人でも冷静になって見れば、モンスターとは違う生き物だと理解できると思うよ。で、その冷静さを持たせる手段が――」

闇派閥(イヴィルス)から守ることか。加えてポケモンが異世界から来た、この世界とは異なる生物だと喧伝すれば、民衆は更に受け入れやすくなる」

「そうすると、ベルが異世界帰りだということも知れ渡り、娯楽に餓えた神々や、よからぬことを考える人間につけ狙われるかもしれないけど――」

 

 リヴェリアの補足を受け、フィンがベルの勇気を問いただそうとするも、そんなことは不要だといわんばかりにベルはいってみせた。

 

「大丈夫です。野生のポケモンとか、ポケモンハンターとか、悪の組織とか、ネモとか、とにかく襲われるのに慣れてますから」

「……あははは! ははは! そうか! いつか君の武勇伝を聞かせてもらいたいものだね」

 

 フィンはベルの回答を心底気に入り、小人族(パルゥム)らしからぬ呵々大笑した。

 

 そんなフィンも、未だに異世界へと思いを寄せるアスフィも余所に、ヘルメスが素朴な問いかけをする。

 

「ポケモンハンターっていうのは、なんとなく意味がわかるけど、ネモってなんだい? 人の名前に聞こえるけど」

「僕の友達です」

「……ベル君、襲い掛かってくる子は友達じゃないよ。犯罪者っていうんだ」

「大丈夫です。四六時中ポケモンバトルを挑んでくる戦闘狂なだけですから」

「それ全然大丈夫じゃないよね? それがまかり通るって、向こうの世界ってどんな魔境なんだ!?」

 

 道行く人が戦いまくる修羅の世界を想像し、ヘルメスは異界の未知に身体を震わせた。

 ……あながち間違っていないのが恐ろしい。

 むしろ、目線があっただけでバトルを挑まないネモは大人しい方?(錯乱)

 

「よし、これでポケモン受け入れられるか問題も解決だね! 私たちガネーシャ・ファミリアも喜んで協力するから、これから一緒に頑張ろう!」

「はい! ありがとうございます」

 

 勝手にファミリア総出での協力を約束する妹に、シャクティはそれでいいのかと自身の主神に目線で問いかける。

 

「うむうむ! それも、ガネーシャだな!!」

 

 ガネーシャはいつものガネーシャだった。

 

「……なるほど。貴様の考えは理解した。足らぬ頭でよく考えたと褒めてやろう」

 

 こうして一段落つくかと思った矢先に、ベルの話を黙って聞いていたヘディンが口火を切った。

 

「あの、それ本当に褒めてます?」

 

 ベルが苦笑いで抗議するも、案の定ヘディンは無視した。 

 

「民衆は万人とまではいかなくとも、大半は納得するだろう。だが、冒険者どもはどうする? 実際にモンスターと対峙している分、より溝は深いぞ」

闇派閥(イヴィルス)の殲滅に力を貸す程度じゃ、支持はあまり得られないでしょうね。家族や友をモンスターに殺されて、仇を討つために冒険者になった子供も多いわ。そうでなくても、仲間を殺されて憎しみを抱く子もたくさんいる。その子たちに、モンスターと違うから割り切れというのは酷よ」

 

 さあ、そんな冒険者たちに、貴方はどうやって信頼を得る?

 そう言外に問いかけるように、フレイヤがベルに艶やかに笑いかける。

 

 そんなフレイヤの思惑に、ベルはいとも簡単に答えて見せた。

 

「ああ、それならやることはとてもシンプルです。――実利で殴ります」

「…………実利で殴る?」

「はい!」

 

 ベルは威勢よく返事をした。

 




なおリューさん、しばらく経って我に返ったけど、真面目な話をしていてどうやって会話に入ろうかと、周りをうろちょろしている模様。
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