世界の健康のために私たちにできること。G7を前にZ世代と考えた
with Planetは初めてとなるイベントを4月27日に開きました。「グローバルヘルス」をテーマに、一人ひとりにできることを様々な立場から語り合いました。
with Planetは初めてとなるイベントを4月27日に開きました。「グローバルヘルス」をテーマに、一人ひとりにできることを様々な立場から語り合いました。
主要7カ国(G7)保健相会合が5月13日から長崎で開催されるのを前に、「with Planet」が初のオンラインイベントを4月27日に開いた。テーマはグローバルヘルス。国際的な保健医療の課題に取り組むという政府に対し、政策提言団体の代表で早稲田大学4年の茶山美鈴さんは「ODA(政府の途上国援助)で新興国の保健医療体制を構築することが重要だ」と訴えた。
そもそもグローバルヘルスとは何か。登壇した公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)の國井修CEOは「新型コロナなどの感染症や、地球温暖化の影響で世界中に広がるマラリア、デング熱など、国境を越えた世界の健康問題で、国際的な連携協力が必要なもの」だと説明。多様な課題に取り組むため、政府や企業、市民社会が協働する必要があるという。
5月のG7保健相会合では、こうした国際的な保健分野のさまざまな課題について先進国が議論する。
主要なテーマの一つは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進だ。これは「全ての人が適切な保健医療サービスを支払い可能な費用で受けられること」を意味する。イベント冒頭でスピーチした厚生労働省大臣官房国際課の鈴木貴士さんは「(国民皆保険が達成された日本は)平時から強固な保健医療体制が整っていたため、パンデミックという有事に対応できた」と強調した。
その一方、別の側面も浮かび上がっている。パンデミックが起きたことでコロナ以前から地球規模の課題であった、エイズ、結核、マラリアの3大感染症や、生活習慣病などの非感染疾患への取り組みが停滞した。「G7保健相会合では、より強く公平なUHCをキーワードに議論する」と鈴木さんは政府の方針を説明した。
鈴木さんのスピーチに対し、グローバルヘルスの推進を訴える政策提言団体「Health for all.jp」代表で早大4年の茶山さんはこう主張した。
「世界の投資がコロナ対策に集中し、3大感染症やポリオの予防に取り組む国際的な財団の財源が不足していると聞いた。だが、これらの病気で亡くなる人は年間250万人にのぼる。(この問題に対処する)新しい時代のUHCを具体的に議論してほしい」
さらに茶山さんは「議論した結果を発信して」と付け加える。茶山さんは、CSRやサステイナビリティー経営の一環として保健医療の分野に取り組む日本企業はまだ少ないと感じているといい、「利潤を追求する民間企業がグローバルヘルスに投資できるよう、そこで得られる効果を数値で示してほしい」と訴えた。
茶山さんは、Z世代のメンバーを中心に結成した「Health for all .jp」を2022年に立ち上げ、ODAを通して新興国の保健医療体制を構築することを日本政府に訴えてきた。
医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な国を支援するのは、次のパンデミックを防ぐ意味でも重要な取り組みだ。だが改定される新「開発協力大綱」には、経済や安全保障に関する内容が多い、と指摘。茶山さんは「パンデミックが起きてしまえば、経済成長どころではないと痛感したはず。それでもODA大綱に『グローバルヘルス』という言葉がないことに危機感を抱く」と苦言を呈す。
「Health for all .jp」副代表で早大3年の大久保里佳子さんは、「国民がODAの正しい知識を知ることも大切なこと」だと主張。大学で開発経済学を学ぶ大久保さんは「ODAは日本にも恩恵がある。だが、いまだに慈善活動だと捉えている人が少なくない」と現状を憂えた。
「Health for all .jp」は、グローバルヘルスという言葉の認知度を上げるため、SNSでの発信に力を入れているという。
こうした若者の活躍に対し、「果敢に前進してほしい」と感想を述べた國井さん。ヘルスケア分野でのZ世代の活躍を期待する。
國井さんがCEOを務めるGHITは、日本政府やビル&メリンダ・ゲイツ財団、製薬会社などから資金の拠出を受ける日本初の国際的官民ファンド だ。特に開発途上国の人々が苦しむ感染症へのワクチンや診断薬などの新薬開発に対して投資している。
「GHITの活動の中で、資金調達はとても重要。難しいヘルスケアの分野をわかりやすく伝える広報も欠かせない。文系の人もZ世代の人も、私たちの力になってほしい」と國井さんは力を込めた。
また、NPO法人「日本医療政策機構」菅原丈二副事務局長は、非医療従事者がヘルスケアの分野に取り組む意義を説明する。菅原さん自身も医療従事者ではない。それでも「幅広いステークホルダー(利害関係者)が議論することが大切」と話す。
「今は世界中の人の健康を考えるだけでなく、地球全体の健康を目指すプラネタリーヘルスを考える時代。非医療従事者には医療従事者や厚生労働省だけでなく、環境省、農林水産省、専門家など様々な立場の人をつなぐ役割も求められる」(菅原さん)
イベントの最後に、登壇者それぞれが「地球の健康のために、私たち一人ひとりは何ができるのか」についてフリップに記入し、発表した。
大久保さんは「Linkageを見つけてみよう」。「グローバルヘルスは非常に幅広い概念。気候変動や衛生問題、母子保健、食料問題とも関わる。自分の専攻や興味のある分野とグローバルヘルスとの関連を探してほしい」
続く茶山さんは「パンデミック忘れないで、発信」。自身の祖母をコロナで亡くしたと明かし、「みんな、何かしらつらい経験をしているはず。そのことを忘れず、SNSで発信してほしい。それがグローバルヘルスに取り組む機運につながる」と思いを伝える。
「パブコメ」と短くまとめたのは菅原さん。ODA大綱の改定に向け、イベント直後の5月4日まで政府はパブリックコメントを募っていた。菅原さんは、「幅広く国際課題に関心を持ってほしい」とも語った。
最後に國井さんは「Think Planet, Act Local」と表現。正しい情報を見つけ、日常生活でできることから始める。例えば、グローバルヘルスを推進する立場の議員を選挙で選ぶことや、自身の思いを社会に発信することだという。
「この地球のために何ができるかを考え、アクションにつなげてほしい」。國井さんはイベントの最後をこう結んだ。
◆イベントの様子はこちらからご覧いただけます。