■うつになるリスクを軽減する「煎茶」

最近は、とくに、気持ちが落ち込み気味の患者さんに煎茶をおすすめしています。

煎茶は日本の伝統的なお茶で、カテキンやテアニン、ビタミンCなどが豊富に含まれています。中でも、うま味成分であるテアニンには、脳波のアルファ波を増加させリラックスさせる効果があり、うつ病のリスクを下げる作用があります。

帝京大学医学部精神神経科講座教授の功刀(くぬぎ)浩先生の研究に、東北地方に住む、70歳以上を対象にした調査があります。それによると、緑茶を1日4杯以上飲んだ人たちは、1杯以下の人たちに比べて、うつになるリスクが半分程度でした。

カテキンには、抗酸化作用や殺菌作用、抗がん作用、高血圧低下作用、血糖値の上昇抑制作用などが知られていますし、ビタミンCには肌のハリを維持したり、免疫力を高めたりする効果もありますから、インフルエンザなどの予防にもおすすめです。

また、今はペットボトルでお茶を飲む時代だからこそ、急須で淹(い)れるお茶はいかがでしょう。自分の好きな緑茶を探してみたり、自分のためにお茶を淹れる時間を持ったりすること自体が、目の前にある心配ごとから自分を少し離し、ほっとする時間をつくることにつながります。

私も1日に3、4度緑茶をいただいています。診療の休憩時間に、事務長と一緒に「お三時」の時間をとります。羊羹をいただきながら煎茶をいただくと心がゆるみ、午後のお仕事が頑張れるのです。

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藤井 英子(ふじい・ひでこ)
漢方心療内科藤井医院院長、医学博士
1931年京都市生まれ。京都府立医科大学卒業後、同大学院4年修了。産婦人科医として勤めはじめる。結婚後、5人目の出産を機に医師を辞め専業主婦に。育児に専念する傍ら、通信課程で女子栄養大学の栄養学、また慶應義塾大学文学部の心理学を学ぶ。計7人の子どもを育てながら、1983年51歳のときに一念発起しふたたび医師の道へ。医療法人三幸会第二北山病院で精神科医として勤務後、医療法人三幸会うずまさクリニックの院長に。89歳でクリニックを退職後、「漢方心療内科藤井医院」を開院。現在も週6で勤務する93歳の現役医師で、精神科医、漢方専門医。初めての著書『ほどよく忘れて生きていく』(サンマーク出版)は世代を超えて大反響を呼び、ベストセラーとなる。
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(漢方心療内科藤井医院院長、医学博士 藤井 英子)