平田順治先生。
熊本大学時代の、民俗学コース時代の恩師である。書棚を整理していると、生前に先生から頂いた御著書に目がとまった。チラチラと眺めている。
私は3年次末(90年度末)に所属コースを変更している。民俗学コースから社会学コースに変更している。問題関心のズレ、当時の民俗学研究室の雰囲気に対する違和感etc色々な理由があってのことである。
コースを変更したことそれ自体について「申し訳なかった」という思いは未だにない。しかしどうしても「申し訳なく」「自分を未だに許せない」ことが一つある。
民俗学コースの必修科目に「民俗調査実習II」というものがあった。3年次に履修すべき必修科目である。しかし私はこれを履修登録しなかった。理由は二つ。
1)もう社会学コースに移籍する気が満々だったので、今後この授業科目が私の卒業要件に入ることはない、という判断。
2)同時期に、サークル(バドミントン同好会)の最後の夏合宿があり、そちらを優先させたかった、という願望。
親から工面した貰った8万円を、「民俗調査実習II」ではなく「夏合宿」に使った。
親にも申し訳なかったが、先生には特に「申し訳なかった」。「どうしても優先させたい私事がありますので、お許しください」。そう先生に「お願い」をした。あのときの先生の「さみしそうな」表情を今でも忘れない。
東北大学大学院に進学できたのは誰のお陰か、熊大時代にお世話になった諸先生から一人挙げろ、と尋ねられたら、迷わず平田先生のお名前を挙げる。東北大学で修士号を取得できたのは誰のお陰か、熊大時代にお世話になった諸先生から一人挙げろ、と尋ねられたら、迷わず平田先生のお名前を挙げる。
平田先生、本当にありがとうございました。社会学者として大成できるかどうかはかなり怪しいですが、少なくとも、退職するその日までには、先生レベルの「教員」にはなっていようと思います。 桑原司