よもやケントさんが、投資、利殖の本を出されるとは思っていなかったが、読んでみると過去に投資をして大失敗をやらかした経過をちゃんと反省を籠めて率直に語り、来日してしばらくの借金地獄を赤裸々に綴る。
本書は実際にはケントさんの半生記となっている。
投資のノウハウを愉快に語りながら、失敗の原因をしらべ、その経験則から有利な投資の展望を語るあたり、事業家の側面がある。指針の基礎の一冊は『となりの億万長者』(早川書房)だそうな。
とは言いつつ、評者(宮崎)、じつは本書の中で次の大事なポイント箇所に付箋を貼った。
メディアの偏向についてである。
タレントとして、ときにCMにもでて出演料だけで収入を得ていたら、テレビ局から睨まれたら、途端に収入がなくなる。
だから言いたいことが言えない言論空間がテレビ界にある。
しかし、言いたいこと、真実は、コミュニティで生きづらくなっても、堂々と語らなければならない。
日弁連の正体や憲法改正論を正面から主張されるケントさんは、いまや日本の保守陣営で活躍する言論人でもある。
こんなことがあった。
「ルーズベルト大統領が真珠湾攻撃を事前に察知していながらわざと日本軍の攻撃を許したという考えを新聞で表明したところ、親しくしている友人デーブ・スペクターさんと、当時ジャパンタイムズでコラムを持っていたマーク・シュライバーさんから『そういう発言は自殺行為だ、日本のマスコミからも、日本のアメリカ人コミュニティからも干されてしまうぞ』という連絡が来ました」(175p)
マスコミ世界での裏話であるにせよ、いかに日本のメディア空間が汚染されているかを物語るだろう。
この箇所を読んで評者は、ヘンリー・スコットストークス氏との会話を思い出した。
ストークスも来日してフィナンシャルタイムズ、NYタイムズを渡り歩き、三島由紀夫の英語評伝を世界で最初に書かれ(その取材で氏と知り合ったのは1971年だった。ついでに言うとケントさんの卒論は三島由紀夫だった)、滞日は長い。それでも大東亜共栄圏は悪、真珠湾攻撃は日本が仕掛けたと思っていた。
その嘘に気がついて、ルーズベルトの策略、アメリカの陰謀を暴く一連の作品をストークス氏が始めた。晩年の仕事である。 そこで氏に聞いたことがある。「歴史の真実を認識するに時間がかかりましたね」と。
ヘンリーは応えた。
「だって周囲の日本人の誰もが、そのことを教えてくれなかった」
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