ホームで夜を明かしたトロアとアストレア・ファミリアは、朝食を取っている際に
「ねぇ、トロア。今日は朝食を食べ終わったら、ダンジョンに向かおうと思うんだけど大丈夫かしら?」
「構わないが良いのか?俺は、恩恵を授かっていないが…」
「大丈夫よ!私たちが黙っていれば良いんだから!!それなら、問題なく冒険者登録できるわ!!」
「本当に大丈夫なのか…まぁ、良いか。よろしく頼む。」
呆れたように、トロアと他の団員はアリーゼの発言にため息が出た。
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他の団員は緊急時に備えてホームで待機している。残りのアリーゼ、リオン、輝夜、ライラと共にトロアはダンジョンに向かっている際に視線を感じて周りを見渡すと
「先ほどから視線が感じると思ったら、お前たちと俺がいると違和感しかないな」
「ふふふ、トロア、自信をもっていいのよ!なにせこの超絶スーパー美少女と一緒に歩いているのだから!優越感に浸るのも仕方がないことだわ!」
「いや、彼らの視線はどちらかというと、明らかに俺に対する疑念や恐怖が感じるのだが…まぁ、仕方がないことか。こんな姿だと闇派閥と勘違いするだろう…」
「そうね!私もはじめてトロアを見たときは闇派閥と勘違いしそうなくらい、怪しさ満点だったもの!!ねっ?リオン」
「え!それはその、すみませんがアリーゼの言う通り非常に怪しかったです…その風貌では、誰でも勘違いするかと…」
「そうか…ならば何故、俺をそこまで信用してくれる?俺自身の気遣いが行き届いていないのが原因だが…」
自身の姿が周りにどんな印象を与えていたかを改めて反省しているトロアは、信用する理由を問いかけた。
「簡単よ!!トロアは、盗人を殺さずに無力化した!闇派閥なら、周りの人を考えないで暴れていたと思うわ!!」
「それが俺の演技だったとしてもか…」
「その可能性もあったけど...」
「団長さん、話してるところ申し訳ないですけど、バベルに到着しましたよ。」
「あら?もうついちゃったのね?じゃ!また後で合流しましょう!!」
アリーゼの話を遮って輝夜がバベル冒険者登録(偽造)を済ませた後に、アリーゼとリオン、ライラは都市の巡回で、トロアと輝夜はダンジョンに入った。
「では、早速ですが貴方の実力を見せてくださいますか?」
「その前に良いか?」
トロアは歩きながら輝夜に問いかけた。
「えぇ、構いませんよ?」
「そうか…気分を害するかもしれないが、俺の前で猫を被る必要はないぞ?」
「……なぜ、そうお思いになられたのですか?」
「お前と話しているとき、リオンが顔を顰めていたからだ」
「はぁ、あの糞雑魚妖精が…」
先ほどまで、礼儀正しかった口調が豹変した。それを聞いたトロアは
(実際に輝夜さんの本性怖ぇ…)
ビビっていたのである。
「それだけで私の本性に気付いたというのか?」
「…いや、あくまでも可能性があると思って鎌をかけてみた」
「ちっ!私もまだまだだな…それなら、ちょうど良いからこのまま話すぞ」
「あぁ…」
「恩恵がないお前の実力を確認するために、ダンジョンに来たわけだが…はっきり言って私は、お前のことは信用していない…」
「当然の反応だな。例え主神が嘘はないといっても、ぽっと出の俺をすぐに信用することはできないだろう」
「はっ!よく分かっているなじゃないか?」
話しながらダンジョンを歩いていると一部の壁からモンスターが生み出そうとしていた。
「早速だが、トロア。お前の実力を私に見せてみろ」
「良いだろ」
トロアは、大きな鎌を手に持った。するとダンジョンの壁から緑色の腰に布を付けた二足歩行のモンスター、いわゆるゴブリンが生まれた。ゴブリンはこちらに気づくと手に持った棍棒を振り下ろそうとしてきた。
「インレーテの安息の鎌…」
静かにトロアは、武器の名前を呼び、袈裟斬りでゴブリンの胴体を切断した。そして、ゴブリンは灰と化し小さな魔石を落とし絶命した。トロアは落ちた魔石を拾った。
「思っていたよりも弱かったな…この魔石はいくらで売れるのか。このサイズでは期待できないな…」
トロアが魔石を見ていると、輝夜が驚いたような表情でトロアの方を見ているのに気付く。
「どうした…何か俺は変なことしたか?」
「……いや、何でもない」
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その後もトロアはモンスターを狩っていた。
「神剣ケテルク...ネル・ツェウの炎の魔剣...音鳴絶...ムスハインの風の魔剣...バージギールの毒と霜の魔剣...天劫糾殺」
神剣ケテルクは斬撃が飛び、ゴブリンを真っ二つに斬り裂いた。
ネル・ツェウの炎の魔剣は刀身に纏わせた炎でゴブリンを斬ると同時に燃やした。
音鳴絶は衝撃波を発生させゴブリンを吹き飛ばした。
ムスハインの風の魔剣は暴風を生み出しゴブリンを風の刃で斬り裂いた。
バージギールの毒と霜の魔剣は、切ったさきから結晶が発生しゴブリンを結晶で覆った。
天劫糾殺はゴブリンを斬ると同時に渦が発生し、それにゴブリンは飲み込まれた。これは戦闘ではなく一方的な蹂躙だ。不思議なことに、トロアは武器の一つ一つを使いこなしている。
(姿はおぞましきトロアだけど中身が戦闘経験のない一般人なのに、この姿になる前はこんな動き出来なかったぞ?身体が憶えているのか?疑問点があまりにも多すぎる…これから詳しく検証していく必要があるか)
モンスターを蹂躙する見ていた輝夜は驚愕していた。
(有り得ない…恩恵がない状態で、これだけの力があるなど…いや、団長とリオンから聞いた話だとレベル2の冒険者を無力化しているから不思議ではないか…)
「トロア、改めて聞くが本当に恩恵はないのか?」
「あぁ…ないが?」
「そうか...ある程度は実力を見れたからホームに戻るぞ」
「分かった」
「それと暇なときは私と模擬戦をしてくれ」
目を見開いたトロアは不思議そうに聞き返す。
「なぜ、模擬戦を…?今の戦闘では納得できなかったか?」
「モンスター相手ではなく、対人戦闘がどれぐらいなのかを確認しておきたいだけだ」
「まぁ、暇なときなら特に問題はないが…」
「そうか…」
輝夜とトロアの会話は短く終わり、ギルドで魔石の換金をした後にホームへ帰宅した。
「おい、トロア。今日は部屋に戻って休め…」
トロアは輝夜の好意?に従った。
「あぁ、そうさせてもらう。部屋に戻って休ませてもらおう」
輝夜はトロアが部屋に戻るのを確認してからリビングへ向かった。その姿を見ていたトロアがいることを知らずに…
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アストレアと団長であるアリーゼ、リオン、輝夜、ライラの5人が集まっていた。
「それで輝夜、トロアはどうだったかしら?」
最初に話したのは、主神であるアストレアは、トロアと動いていた輝夜に質問した。
「異常としか言えません...恩恵がない状態で弱いゴブリンだったとしても一方的な戦闘は見たことがありません…」
「そう…」
アストレアは静かに目を閉じて考えた。
「ライラ、トロアと一緒にいたという商人についてなのだけれど、闇派閥との関係はどうだったかしら?」
「問題なかったぜ。物資を運んでいたというのも本当にらしい」
「分かりました。トロアについては、しばらく静観するということで良いかしら?アリーゼ?」
「勿論です!!でも、トロアが闇派閥と関わりがあるなんて考えられませんから!」
アストレアも笑顔で同意するが
「えぇ、分かっているわ。でも、念のためよ。大切な仲間としてトロアのことを見守りましょうね?」
「「「「はい!!」」」」
アストレアのお願いをアリーゼたちは元気に返事をした。
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リビングの扉の前でトロアは話を盗み聞きしていた。
(アストレア・ファミリアの人たちは優しいな…原作であんな死が待っているとか考えたくもない…彼女たちの期待には応えよう…他人にやさしくする彼女たちを生き残る権利がある…)
心の中で彼女たちを救うことを決意し、静かにその場から離れた。