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16日、埼玉県所沢市議会の松本議長をはじめとする自民党会派から、子育て施策の無償化(税負担化)に関する調査のため視察を受ける機会がありました。所沢市では2023年の市長選挙で、明石市の泉房穂前市長が支援した小野塚勝俊氏が当選し、「明石の成功を所沢でも!」というスローガンのもと、同様の無償化政策の実施を目指しているそうです。 私は所沢市議会の市民クラブ未来の皆さまに対して、無計画な無償化(税負担化)政策について、「マンションの修繕積立金を先食いして共益費や管理費を無料にするようなものです。一時的には住民にとって魅力的な政策に見えるかもしれませんが、修繕時期を迎えたときに財政問題が噴出するのは当然です」と説明しました。まちの維持整備、発展と成長のための責任ある財政計画なしに、扶助費(子育て等に係る経費)の割合を高めることは、将来的な財政負担を考慮していない点で大きな課題があります。 もし所沢市に十分な財政的余裕があり、将来的に必要な街の整備計画が明確に存在し、その財源が確保されているのであれば、無償化政策の実施自体は否定されるべきではありませんし、むしろ、住民に対して幸福と福祉の向上のためにできる限りの支援をするべきです。 しかし、ここで注目すべきは、行政における財務上の「見せかけの健全性」という問題です。明石市の例を見ると、市の借金の少なさを積極的にPRしていましたが、これは別の観点から見ると、本来必要な世代間の負担平準化を伴うインフラ投資を先送りしてきた結果ともいえます(実質公債費率が他都市に比べて低いという喧伝)。 最も慎重に検証されるべき問題は、この政策の「持続可能性」です。明石市において、現在の子育て世代への手厚い支援は、将来を担う子ども世代への負担として転嫁される可能性が高いです(例えば、現状の公共施設の維持費は捻出できなくなり、現在受けているサービスは形も種類も変容せざるを得ない)。つまり、子どものために親世代への金銭的支援を行うことで、そのつけを払わせるのが当の子ども世代になるかもしれません。しかし、この問題の深刻さは、実際に財政的困難が表面化するまで市民には実感として伝わりにくい側面があります。それでもなお、その日が確実に訪れますし、市長が財政問題の積極的な解決策を持たない限り避けられないでしょう。 ただ、誤解のないようご理解いただきたいのは、私は無償化(税負担化)政策自体を悪だと言っているのではありません。むしろ、現在の市民から徴収した税金を現在の市民に還元するという観点では、その還元に対して満足されている、またはその方法を良いと考えられる意見もあります。それは一市民として尊重されるべき意見であり、そのような支持・負託を受けた議員はしっかりとその実現に向けて働くべきだと思っています。 ただし、このような政策の是非を判断する際には、短期的な効果だけでなく、長期的な持続可能性を慎重に検討する必要があります。将来の財政難が顕在化してからの対応では遅く、予見される段階での適切な措置が不可欠です。最終的には、行政の執行権を持つ市長の判断と責任が問われることになりますが、それは同時に、市民全体で考え、また責任を負うことになる重要な政策課題でもあると考えています。
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