知って得する、すごい法則77』(清水克彦 著、中公新書ラクレ)の著者が述べているように、「働きアリの法則」(2-6-2の法則)「マーフィーの法則」など、世の中には「〇〇の法則」と呼ばれるものが多数存在します。

ちなみに前者は、働きアリを観察してみると、よく働いているアリが2割、普通に働いているアリが6割、ずっとサボっているアリが2割という割合に分かれることから、職場も“優秀な社員”と“平凡な社員”、そして“やる気のない社員”に分かれるというもの。

後者は「洗車をすると雨が降る」「急いでいるときに限って赤信号にひっかかる」など、「失敗する可能性があるものは、いずれ失敗する」「物事は必ずしも思いどおりにはいかない」といったケースに用いられる法則

非科学的だとはいえ、「なるほど、的を射ている」「たしかにそうかも」と思わせるものも少なくありませんが、それらは人間の営みや世の中の動きを、実験や検証などによって定理化したものなのです。

「案ずるより産むが易し」「ちりも積もれば山となる」「待てば海路の日和あり」といったことわざと同様、もしくはそれ以上に、こうした法則が職場や家庭生活に応用できるのは、多くが科学者や心理学者らの手で実証されてきたからです。(「はじめに」より)

そこで本書において著者は、職場や家庭生活をはじめ、学校や個人の生活にも使える“人生を豊かに彩ってくれそうな法則”を厳選し紹介しているわけです。

どれもが、人を知り、人との関係を改善したり、組織を概観し、その組織をまとめ上げたり、あるいは、自分を知り、自分を高めていくうえで参考になるはずです。(「はじめに」より)

きょうは第一章「職場で使える法則」のなかから、2つの法則をピックアップしてみたいと思います。

ロミンガーの法則――人は業務を経験することで成長する

「70対20対10の法則」をご存知でしょうか。上述の「2-6-2の法則」ほどの知名度はないかもしれませんが、これはアメリカの人事コンサルタント会社であるロミンガー者が提唱したことから「ロミンガーの法則」と呼ばれているもの。

「企業や組織で働く人々の成長は、7割が実際の業務体験、2割が上司や先輩などからの指導やアドバイス、残りの1割が読書や研修による学びによって得られる」という法則です。

つまりは年齢にかかわらず、社会人として成長していくためには、実際に仕事を経験してみることがいちばんの教材になるということ。

ちなみにここで著者は、サントリーの創業者である鳥井信治郎氏による「やってみなはれ。やらなわからしまへんで」というフレーズを引き合いに出しています。ご存知のとおりこれは、未知の分野への挑戦を後押ししてくれることばとして有名。しかし、日々の仕事のなかで「トライ&エラーを繰り返せ」と説いているようにも解釈できるはずです。

得意なことも苦手なこともあるでしょうが、「トライ&エラーを重ねることで、習熟し、やがて自信にもつながっていく」はずなのですから。

60歳の定年を機に大学教授へと転身したという著者も、前職の放送局と大学とでは仕事内容や組織内のルールが異なっていたため苦労したそう。「こんなはずではなかった」と当惑することばかりだったと振り返っています。

そんなとき、「ロミンガーの法則」を思い出し、とにかく自分でやってみる、小さな失敗は気にしない、の二つを徹底してきた結果、移籍して半年くらいが経過した頃から、しだいに要領がつかめるようになり、「この世界でやっていける」「還暦を過ぎた人間でも成長できる」と実感できるようになりました。(30ページより)

もちろん、誰かに指導を受けたり、アドバイスに耳を傾けたりすること、あるいはスキルアップのための努力をすることも大切。しかし、日々の仕事のなかに成長の機があると考えることもまた重要なポイントだということです。(18ページより)

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メイヤーの法則――仕事は単純化すればするほどはかどる

長年にわたり、在京放送局で報道番組のキャスターや解説役を務めてきた著者は、いつも「難しいニュースをいかにわかりやすく説明するか」という点に腐心してきたのだといいます。

現在も同じで、大学で学生に時事問題や国際情勢を教える際、「どうすれば、ニュースに関心がなく基礎知識も乏しい学生たちに理解してもらえるか」は大きな課題になっているのだとか。

それを端的に示したのが「メイヤーの法則」です。

「メイヤーの法則」とは、「物事を複雑にするのは簡単だが、単純にするのは難しい」という法則で、「シンプル・イズ・ベスト」とも言える法則なのです。(36ページより)

ニュース解説でいえば、ジャーナリストの池上彰さんのように見識がある人は、さまざまな出来事の全体を俯瞰して捉え、ポイントをシンプルに語ることができます。

ところが、それができない人の場合はさほど重要ではない部分に目を向けてしまい、話の内容が散漫になってしまったりもするものです。

そして、それは職場においても同じ。部下に対して大まかに方向性を示し、個々の担務を単純化すればはかどるでしょうが、複雑な仕事をそのまま任せていると、効率が上がらないわけです。

「メイヤーの法則」を活用した単純化作業例

・人に何かを説明する場合

「全体をざっくりと大づかみする」→「まず重要な部分を短く伝える」→「枝葉の部分も必要であれば、最後に伝える」

・チームをうまく動かす場合

「チームとして達成したい目標を明示する」→「メンバー一人一人のタスクを単純明快なものにする」→「作業に優先順位をつける」。(37ページより)

これらの点に留意すれば、難しそうに思えることも単純化でき、話が伝わりやすくなるということ。その結果、チームでも作業効率も上がってくることでしょう。(36ページより)


著者は本書を、おもに40〜50代の、「部長」「次長(副部長)」「課長」「チーフマネージャー」「〇〇補佐(〇〇代理)」といった肩書がつく管理職の方々を思い浮かべながら書いたのだそう。

したがってそういった立場にある方に適した内容ではありますが、同時にプレイヤーの方々にもきっと役立つはず。職場でより快適な日常を送るために、参考にしてみる価値はあると思います。

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Source: 中公新書ラクレ

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