『エヴァンゲリオンANIMA 山下いくと画集』発売記念!「山下いくとロングインタビュー」のこぼれ話を特別掲載!
山下いくと氏が企画、執筆、イラストまでを担当する小説『エヴァンゲリオンANIMA』。全5巻を数える本作には、氏ならでは設定画、カラーイラストが豊富に収録されていますが、そのイラスト群を集めた画集『エヴァンゲリオンANIMA 山下いくと画集』が、2025年2月19日(水)に発売されました。
160ページを埋め尽くすイラストはもちろん、改めて『エヴァンゲリオン』のデザインや、『ANIMA』への思いを語ったロングインタビューはファン必読。
ここでは、紙面の関係上、『エヴァンゲリオンANIMA 山下いくと画集』に収まりきらなかったインタビューのこぼれ話を特別掲載! 画集のインタビューページと併せて、ぜひチェックしてくださいね。
TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』制作時のエヴァデザイン秘話
山下:僕はアニメの制作に途中から参加したので、当時は庵野監督がどのような方なのか、僕に何を求めているのかがまだよく分かっていませんでした。
ただ、「アニメ向きのデザインにしよう」、「アニメだからこういうデザインにしよう」と考えるのはやめようと決めていました。アニメに関わることなく、SF漫画ばかり描いていた当時の僕に声をかけたのだから、アニメ畑ではない人間から出てくる何かを求めているのだろうと。
『エヴァ』の大ヒットを振り返って
山下:(当時の)ガイナックスは新進気鋭のスタッフが集まっていましたから、『エヴァ』にかぎらず何か作品を発表すれば「あの連中がまたすごいことをしているぞ」と好意的な反応は得られたと思います。でも、『エヴァ』の大ヒットは僕の予想をはるかに超えていました。
「埋もれてしまっているおもしろい創作物」は、たぶん僕らが思っているよりずっと多く世の中にあると思います。俗にいう「この作品はなぜヒットしないんだろう」というヤツです。
そういう作品の明暗を分ける分水嶺は、世に出すタイミングもあると思っています。そのときのお客さんたちが欲している要素を満たせる作品であるか。『エヴァ』はそれが見事にハマったからこそ、あそこまで支持してもらえたではないかなと。今はインターネットが普及したおかげでそうした需要もかなり視覚化されていますが、当時(1995年前後)は、ネット環境がある人はまだまだ少ない時代でした。
『エヴァ』におけるミサトのキャラ造形の変遷
山下:TVアニメの企画当時、ミサトさんはもっと管理者サイド然としたキャラクターになる予定でした。僕はそれを見て“リツコさんが2人いる”かのようなイメージを抱いたので、「ミサトさんはあとからNERVに参画したような、もう少し主人公サイドの立場にしてみてはどうか」と提案したのを覚えています。
ミサトさんは「セカンドインパクトを間近で目撃した調査隊の唯一の生存者」という主人公気質を持つ人でもあるので、庵野監督は「そうするとミサトが“女シンジ(≒シンジと並ぶ女性側の主人公)”になってしまわないか」とも危惧していましたが、結果としては“ダメなところもある大人”という魅力的なキャラになりました。
自分がそこまで具体的な提案をしたわけではなく、昇華してくれたのは庵野監督を始めとするアニメスタッフのみなさんですが、それでもミサトさんに関してはいい提案ができたかなと今でも思っています。「ミサトが好きになった、共感できた」という大人の視聴者からの声もたくさんありましたので。
『エヴァANIMA』の舞台設定をTVアニメの3年後に設定した狙い
山下:アニメから3年後のNERVを描いたらおもしろそうだよね、と提案してくれたのは編集の柏原さん(柏原康雄氏)でした。おそらく柏原さんとしては「3年の月日が流れることでライトスタッフ(正しい資質・適性)を身につけたNERVの面々」による『エヴァ』をやりたかったのでしょうし、僕も最初はそれがいいと考えました。総司令となったミサトさんが的確な指示を出し、それをシンジたちが確実にこなす。物事がきれいに解決する、すっきりとした世界が描けそうです。
しかし、物語を詰めていくうちに「そうではないよな」と考えるようになりました。みんなが成長して精神的に安定するのはよいのですが、17歳になったシンジやアスカには、自発的に物を考えてほしい。大人たちの思惑を超えてほしい。そうして、自分たちの足で歩いていってほしい。『エヴァANIMA』の物語は、そのようなコンセプトから生まれました。
文字媒体だからこそできる展開に挑戦した『エヴァANIMA』
山下:ひとつのアニメーション作品が作られるときは、大勢のスタッフから膨大なアイディアが提案されます。しかし「手間がかかりすぎるので、実現するのは難しい」という理由で形にならないものもすごく多い。『エヴァANIMA』に登場するEVA弐号機II式・アレゴレカはそのひとつです。馬のような四本足(が動くの)をアニメで表現するのは、非常にコストがかかります。
でも小説なら「天を突くような~」、「無数の~」というような表現が文字だけで簡単にできるので楽しかったですね。『ANIMA』には“文字媒体だからこそできる思考実験”のような試みをたくさんさせてもらえました。もし『ANIMA』がアニメの企画だったら「簡単に言ってくれるなあ」と言われていたでしょう(笑)。
DATA
エヴァンゲリオンANIMA 山下いくと画集
- 著:山下いくと
- 原作:カラー
- 企画・編集:柏原康雄
- A4判/160ページ・オールカラー
- 発行:KADOKAWA
- カドスト購入特典:複製サイン入りミニ色紙
- アニメイトセット特典:アクリルミラープレート
- 定価:通常版…3,300円(税込)、アニメイトセット…6,600円(税込)
- 2025年2月19日(水)発売予定
- ISBN:9784041158845
(C)カラー
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