経営状態の悪化などに伴う大学の学費値上げが相次ぐ中、それに反対する動きが活発化している。このほど、東京・永田町の衆議院議員会館内で大学生らが集会を開き、値上げ撤回のための予算増額や給付型奨学金の拡充を求め、国に要請書を提出。集会には2025年度からの授業料値上げを発表した東京大をはじめ、大阪大、中央大、一橋大、広島大、熊本大、武蔵野美術大などの学生を中心に、オンラインも含め250人以上が参加した。また同日、大学教授やNPOらによる「すべての人が学べる社会へ 高等教育費負担軽減プロジェクト」が参議院議員会館内で集会を開催。高い学費に苦しみ、就職後も長期にわたって奨学金の返済に追われる若者の実態を明かし、修学支援新制度の拡大などの救済策を訴えた。
学費値上げを巡っては、東京工業大学(現・東京科学大学)や千葉大、一橋大、東京芸術大、慶應義塾大、早稲田大ですでに引き上げられたほか、東京大では25年4月の学部入学生から授業料20%の値上げを決定。さらに広島大、大阪大、中央大など学費値上げの検討が一時報じられた大学もある。
大学生らは集会で「家庭状況が苦しく、毎日のバイトで体を崩し、授業料納付の時期が来ると不安だ」「奨学金を借りて進学できたが、将来の返済負担を考え大学院への進学は諦めた」「進学できたのは、学費が安い国立大が地元にあったから。周囲には日々、学費や生活費のためにアルバイトをして疲れ切っている学生が大勢いる」などと訴えた。
さらに学生らは、大学が経営難に陥った背景には、国による国立大への運営交付金や私大への私学助成金の削減があると指摘。これらの支援金を増額するなどして学費値上げの撤回や引き下げの措置、給付型奨学金の拡充を行うよう国に要請書を提出した。要請書には大学をはじめ116の高等教育機関が名を連ねた。
公費支出の少なさが影響するのは大学経営だけではない。「高等教育費負担軽減プロジェクト」の集会では、日本の公費に占める教育費の割合が7.8%と経済協力開発機構(OECD)平均の10.6%を下回る公費支出の少なさを指摘。武蔵大学の大内裕和教授(教育社会学)は「高等教育の私費負担が高過ぎることが少子化を急速に進行させている」として、負担軽減の実現の重要性を訴えた。
東洋大学の小澤浩明教授(教育社会学)は「教え子たちは高い学費に苦しんでいる。特に夜間の学生の家計は苦しい。生活のためにバイトに追われ、授業を履修できない矛盾が生じている」と学生の置かれた窮状を明かし、「子どもの人数にかかわらず給付型奨学金の要件が世帯年収600万円になれば、多くの学生が救われるだろう。しかし負担軽減だけでなく、子どもの学費は親が負担すべきとする『受益者負担』の思想とも戦わなければならない」と力を込めた。
さらに進学に伴う奨学金の問題についても言及。「奨学金問題対策全国会議」で事務局長を務める岩重佳治弁護士は「貸与型奨学金は借金と違い、将来の仕事や収入が分からない状態で借りる。返せないリスクがあらかじめ含まれている。十分な救済制度を伴わなければ奨学金とは言えない」と話し、「依然、ほとんどの学生が貸与型奨学金を借りざるを得ない状況。修学支援新制度の拡大が必要」と強調した。
ロシア軍の侵攻を契機としたウクライナ戦争が始まってから3年が過ぎようとしている。そんな中で日本とウクライナの教育分野での交流も始まっている。今月には、ウクライナの高校生らが来日し、福島県の学校を巡るスタディーツアーが行われた。ウクライナと日本の共通点の一つである、原発事故の教訓を学ぶためだ。その1日、福島県立郡山高校での1日体験入学に密着した。災禍を経験した同世代の高校生は、何を分かち合ったのか――。
米国では1月20日、ドナルド・J・トランプ氏が第47代大統領として返り咲き、第2次トランプ政権が新たに誕生した。同政権では、反DEI(多様性、公平性、包括性)の方針を強めており、大企業を中心に揺り戻しが起きている。教育についても、既に教育現場や女子スポーツからトランスジェンダーを排除することが決定した。こうした状況を学校現場の教師はどう受け止めているのか。また、DEIに関する価値観を子どもたちにどう伝えていきたいと考えているのか。DEIJ(多様性、公平性、包括性、正義)の活動を大切にしてきた、米国カリフォルニア州ロサンゼルスにあるキリスト教系の私立高校「キャンベル・ホール(Campbell Hall)」の校長、シャキラ・テイラー(Shakirat Taylor)氏に話を聞いた。
東京都渋谷区では2024年度から、午後の授業時間を探究学習「シブヤ未来科」に充てている。区内の企業など多くの連携先を巻き込み、子どもたちのワクワク体験や好きなことを大切にしつつ、多様なアウトプットをしている点が特徴的だ。ダイナミックな取り組みだが、「渋谷区にしかできないこと」とは思わない。探究学習を大幅に拡充させる動きは、全国各地に広がっていくことが予想される。
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