目の前に迫る鋭利な爪に恐怖し私は目を瞑った。頭かお腹かそれとも手足かどこにきてもいいように痛みと衝撃に備える。しかしいくら待っても痛みは愚か衝撃すら来ない。恐る恐る目を開くとそこには雲の間から雷が二つ合わさったエンブレムが刻まれた上半身が剥き出しの男が立っていた。
「えっ…」
レフィーヤは目を見開いた。先程まで自分を殺そうとした
「キミ…大丈夫?」
目の前の男が声をかけながら振り返った。長く伸びきった白い髪をなびかせた奥の
「大丈夫です…」
「そう、よかった」
男はそういうとまるで操り人形の糸が切れた様にプツンっと倒れ込んできた。
「だ、大丈夫ですか!?」
慌てて抱きとめ男の首に手をやり脈を測る。ドクンドクンっと正常に昨日しているようで安堵する。どうやら
「レフィーヤ!!大丈夫!?ケガはない?」
「ティオナさん…私ならこの通り何ともないですけど」
「レフィーヤ…大丈夫そうでよかった」
「全く心配するじゃない!」
ティオナ、アイズ、ティオネの3人はレフィーヤへ詰め寄りケガはないか入念に確認し無事なのを確認すると次に彼女に抱き抱えられた男に視線を移す。
「この人…知ってる?」
「あたしは知らないな〜」
「あたしもよ」
もちろんレフィーヤも知らない。ティオナが男の長く伸びた白髪をかきあげステイタスを覗く。分かるものしか
「ア、アビリティオールS!?」
ティオナの声に3人とも男の背中を見る。
○○・○○○○
Lv6
力:987
耐久:963
器用:997
敏捷:999
魔力:999
魔導:SS
??:??
??:??
「なんですかこのアビリティは!?」
「レ、レフィーヤ落ち着いて!」
ティオナが落ち着かせるがレフィーヤは止まらない。
「魔力999って最大じゃないですか!それにこの発展アビリティ…私
と一緒なのに…なんでこの人の方が数段上なんですか!!」
興奮気味に喋るエルフの少女もそうだがその隣にいる金髪金眼の少女は目を輝かせながら男のステイタスを凝視している。
(能力値オールS…限界を超えたステイタス…)
さらに下のスキル欄を見ようと手を伸ばす。
(もし『スキル』にその秘密があるのなら…私は…私は!!)
「アイズ!!」
その手を今まで黙って見ていたティオネが制す。
「見えてしまってるアビリティは仕方ないけど…これ以上はダメ」
「…ごめん」
力を失った手を下ろし迷子のように視線を左右に動かし俯く。
それからしばらくして男の診断を終え50階層にあるキャンプに男を運ぶため4人は帰路についていた。男はレフィーヤの上着をかけられティオナが背負って運んでいる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
突然だった。腹の底から出されたような絶叫がアイズ達のもとに届いてきた。入り乱れた迷路に次々に反響し鼓膜をあらゆる角度から何度も聞き覚えのあるその声音に弾かれたように顔を見合わせたアイズ達は一気に加速し走り出した。
「今のってっ!」
「ラウルの声…!」
悲鳴の方角と後は勘頼りに進んでいく。通路を何度も曲がり現れたモンスターを蹴散らしながら走り回る。するとアイズ達の視界にそれは飛び込んできた。
「なに、あれ」
「い、芋虫!?」
巨大な全身が黄緑のモンスターが蠢いている。ぶくぶくと膨れ上がった柔らかそうな緑の表皮にはところどころ濃密な極彩色が異様に毒々しい。
「団長!?」
そのモンスターに追走される3つの人影が見える。アイズ達に勝るとも劣らない第一級冒険者達が戦闘を放棄して全力で逃走している。
「クソがぁぁぁっ!!!!」
声を荒げながらアイズ達のもとから飛び出していく。モンスターの進撃を食い止めようと、追われるフィン達と行き違いモンスターへと斬りかかった。
「止せ、ティオネ!」
フィンの制止も聞かず肉薄しモンスターの顔面と思しき位置に拳を叩き込む。
「っ!?」
拳がめり込んだ所からモンスターの体液が吹き出す。めり込んでいる拳を引き抜くと皮膚が爛れて肉が剥き出しになっていた。痛みよりもゾッと悪寒が走りティオネがその場から離脱する。
『グォォォォォ!』
モンスターはいきり立つ咆哮を上げその液体を噴出させた。ティオネは大きく避け、フィン達も飛んできた液体を回避する。液の一部が通路の壁に付着し瞬く間に溶かしていく。
「ティオネ!」
「だ、だ、団長!?」
「ここを切り抜けてから話がだ。覚悟してこけ」
「はぁいっ…!」
彼女のもとに駆け付けたフィンはその小さな身体でティオネを抱え逃走に戻る。抱えると言っていたかが抱っこや背負うのではなくお姫様抱っこで運んでいるためティオネは乙女の眼差しでフィンを見つめていた。
「フィン…アレはなんなの?」
「わからない。僕達も突然襲われた」
精鋭集団全隊員、まさかの猛撤退だった。アイズ達と同じように『カドモスの泉』へと辿り着き竜を倒した彼等は引き返す途中にあのモンスターの群れと遭遇。一旦は交戦を試みたが先程の液体で武器を失い、止むなく逃走を選択したと説明をうけた。
「群れってあれ以外にも同じモンスターいるの!?」
「よく見ろっての。てかお前…なに背負ってんだぁ?」
「あ〜話すと長いんだよね」
「だんちょ〜うお怪我かありますか♡」
「怪我をしてるのはキミとラウルだけだけどラウルはあの攻撃の直撃を浴びだから不味い」
乙女の問に平然と答えるフィンはラウルを肩に担ぐガレスの方に目を向ける。今も煙と異臭を放っていて身にまとっていた装備は溶かされ皮膚までも溶けていた。仲間の酷い姿にレフィーヤは顔を蒼白させる。
『ガァァァァァァっ!?』
突撃後ろを追いかけてきていたモンスター達の方から苦悶の叫びが上がってくる。後に迫っていた圧迫感はもうなくただモンスター達の叫びが響いている。フィンが止まり皆もそれに続いて止まる。そして振り返りフィン達は目を疑う光景を目の当たりにした。
『きゅーん!きゅーん!』
先程大量にいた黄緑のモンスター達がすべて灰色の石になり絶命していた。その石化したモンスターの前で小さな白銀のドラゴンが留まっていた。ドラゴンにしては小動物のような声を出しコチラを見ている。
「フィンどうする?」
いち早く戦闘態勢に入っていたベートが声をかける。
「武器が無いとはいえ僕達が逃げる事しか出来なかったモンスターを一瞬で魔石にさせた…刺激しない様にキャンプに戻る」
「あのトカゲ野郎もモンスターだ。襲ってこねえ今殺るしかないだろ!」
「あ、あの!」
2人は声の主…レフィーヤの方に顔を向ける。ベートの睨みに怯えながらもレフィーヤは続ける。
「カ、カドモスの泉で私たち魔石化した
「「「!!」」」
レフィーヤの言葉に信じられない表情をするフィン達にさらにレフィーヤは言葉を口にする。
「その後私は直接は見ていませが目の前で生まれでた
震える人差し指をティオナの方に向ける。全員に注目され少し照れたティオナ…ではなく背負っているレフィーヤの上着をかけられた者に入っていた目を移す。
『きゅんきゅーん!!!!』
今まで何の反応もしてこなかった白銀のドラゴンが鳴き声をあげながらこちらに飛んできた。思わぬ行動だったが戦闘態勢に入っていたベートだけがドラゴンに自慢の速度を活かし肉薄し蹴りを叩き込もうと右足を出した瞬間にドラゴンが更に加速しベートの蹴りを避ける。
「下がって!」
アイズも己の細剣デスぺレートを構える。がアイズの剣はドラゴンに傷を負わせることはおろかかすりもしない。さらにドラゴンが速度をあげ一直線に
「わっわっ!?」
大きく横へ避けたつもりだったが白銀のドラゴンはそれを予測したらしくティオナと同じ方向に飛んでくる。人を背負っているせいか思うように動けないティオナはバランスを崩し尻餅をついた。
「ったー!?」
顔を上げると目と鼻の先にドラゴンがいた。白銀の羽毛に紅と金の目をした50
『きゅーんきゅーん』
鳴きながらティオナから落とされ仰向けになり眠っている男に頬擦りをし始めたのだ。それはモンスターと言うよりかは子犬が主人を見つけたように見える行動だった。
「…このドラゴンは
フィンの言葉にドラゴンに一番近くにいるティオナがドラゴンに手を伸ばす。
「きゅい?」
その手に気づいたドラゴンは自らティオナに歩み寄って来た。