「【―間もなく、焔は放たれる】」
翡翠色の長髪に白を基調とした魔術装束。浅く水平に構えられるのは白銀の杖。細く尖った耳を生やした絶世の美貌を持つエルフの腰には白い木剣が携わっている。
「【忍び寄る戦火、免れぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む】」
この戦場の中で誰よりも美しく在る彼女は、その玲瓏な声で呪文を紡ぐ。力強く流麗な詠唱。足もとに展開された
「【至れ、紅蓮の炎、無慈悲の猛火】」
「【汝は業火の化身なりことごとくを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを】」
莫大な魔力の高まりが彼女に執着する。
「【焼きつくせ、スルトの剣―我が名はアールヴ】!」
次の瞬間、弾ける音響とともに
「【レア・ラーヴァテイン】!!」
大炎がフォモールを取り囲む。
はるか昔、人類がその目で確認する以前から在り続けたその『穴』の起源は知るよしもない。その『穴』は無限の怪物を産む、魔窟だった。溢れ出るモンスターは地上にのさばりこの世のありとあらゆる領域を犯していた。なす術なく蹂躙された人類は地上の支配者であった尊厳を取り戻すため、種族の垣根を越えて協力し合い反撃に打って出る。『穴』の奥には、地上とは異なる別世界があった。地下迷宮…ダンジョンには確かな『未知』が横たわっていたのである。人類は『穴』の上に『蓋』という名目で塔と要塞が築かれ始め、モンスターの地上進出を抑えていた。
それから時は流れ。当時の時代、『古代』の節目に、世界へ転機が訪れる。『神々』の降臨。神々の降臨を境に、世界の有りようは変わった。下界の者に無限の可能性をもたらす神々の『
神々はそれぞれの
祈りを捧げ、神に救済を願う古の時代は終わった。
富を、名声を、未知を。
遥かる高みを、渇望をー悲願を。
時は今、神時代。
「リ、リヴェリア様先程はありがとうございました!」
自分の名を呼ぶ声にリヴェリアは足を止め振り返る。そこには山吹色の髪を後ろでまとめた同族の少女レフィーヤが立っていた。
「私たち魔導士は戦場の勝敗を左右する大事な役割だ。先の戦いでも私は自分の役割を全うしただけだ。」
「そうですね…私もリヴェリア様の様な魔導士になってみせます!」
「おっ大きく出たねレフィーヤ!!」
がばっと軽い衝撃とともにレフィーヤは背後から腕を回された。首を少し動かすと1人の少女が背中に抱きついていた。
「ティオナさん!?」
「リヴェリアの様になるって事は都市最強魔導士を超えるってことだよねレフィーヤ!」
「えっ!?」
ティオナと呼ばれた少女の言葉にレフィーヤの顔が青白くなっていく。それもそうだ。リヴェリアは現都市最強魔導士と呼ばれるほどの魔導士だ。自分がなんと恐れ多いことを言ったのか段々と気づき始めたレフィーヤは恐る恐るリヴェリアの顔を伺う。
「ふっははは!」
「「!?」」
普段笑わないリヴェリアが笑いレフィーヤはティオナはもちろん近くにいた他の団員達も驚きリヴェリアに見入る。その姿は妖艶で見るもの全てを虜にしていた。しばらく笑っていたリヴェリアは目尻に涙を浮かべレフィーヤの頭に手を置いた。
「いやなに、レフィーヤが昔の私そっくりの事を言ったからな」
「えっそ「リヴェリア!」
レフィーヤの声を遮りやってきたのは長い金髪を流した美しい少女がやってきた。彼女の名はアイズ・ヴァレンシュタイン。彼女の美貌はエルフ族に匹敵するほどと巷では有名だ。
「どうしたアイズ?」
「…フィンが呼んでる」
「そうか分かったすぐに行く」
やってきたアイズと入れ替わりにフィンの元へ行く。リヴェリアやアイズが所属する都市最大派閥でもあるこの『ロキ・ファミリア』をまとめあげる
「フィン」
「ああ、来たか、リヴェリア」
「来るのが遅いわい…」
幕屋の入り口をくぐった先にはフィンの他にもう1人たくましい体付きのドワーフ、ガレス・ランドロック。フィン、リヴェリア、ガレスこの3人が【ロキ・ファミリア】最古参のメンバーであり中核を担う首脳陣である。
「2人とも少し妙な噂を聞いたんだ…」
「あるモンスターの話を」