ポケットモンスター in オラリオ


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作:ニャース
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6 ロイマン、胃が爆発する


ダンまち12話ようやく見れました。

やっぱアストレア・レコードは最高やな!


 

 ロイマンの胃はもはや爆発寸前だった。

 

 朝から嫌な予感はしていた。

 愛用のマグカップが突然割れてコーヒーで火傷した。どこから入り込んだかもわからない黒猫が目の前を横切った。愛用のディアンケヒト製の胃薬が品切れで購入できなかった。

 

 だから今日、絶対になにかろくでもないことが起こるだろうという確信がロイマンにあった。

 

 でも、いくらなんでもこれはないだろう。

 

 たしかに汚職や横領といった悪いことはしてきた。だがそれ以上に世界の滅亡を防ぐため、オラリオに身を尽くしてきた自負がある。

 

 なのにこの仕打ちか。神よ――ウラノスよ、あんまりではないか。

 思わず無関係であろう自分の主を呪った。

 

 ロイマンは――ギルドで一番偉い役職であるはずのギルド長は、その役職ゆえに逃げることができなかった。

 

「相も変わらず豚のように肥え太っているな、ロイマン」

 

 目の前にいるかつての最恐の眷属が、冷え切った目でロイマンをなじる。

 

「そんな酷いことをいってやるな。豚に失礼だろう」

 

 その隣に立つかつての最強の眷属が、面白がるようにロイマンをなじる。

 

「ちょっと二人とも、失礼だって。僕はブーピッグみたいで可愛いと思いますよ」

 

 間に挟まれた兎のような白い少年が、まったくの悪意なしで毒を吐いた。

 

「な、ななななな、ななななななな!?」

「どうやらすでに痴呆が始まってしまったらしい。人間の言葉を忘れるとは」

 

 怒りではなく、天変地異を前にしたような驚愕でロイマンはうまく言葉を作れない。胃がもう限界ですと訴えてくる。

 しかし、ギルド長の矜持で胃の訴えを却下し、ロイマンはようやく人間の言葉を取り戻した。

 

「なぜ……なぜここにいる!! 【静寂】!! 【暴食】!!」

 

 ロイマンに呼ばれた二人――アルフィアとザルドは馬鹿にしたような鼻笑いをして、同時にこういい放った。

 

『冒険者がギルドにいてなにが悪い?』

 

 オラリオから追放されたファミリアの眷属たちの、威風堂々たる姿だった。

 

「こ、この……! ぬけぬけといいおって!」

 

 そう反論するロイマンだが、その腰は完全に引けている。

 なにせ相手はあのゼウスとヘラの子だ。過去の封印した忌々しい記憶が滲み出てきた。

 

 面白がって冒険者を可愛がる(当社比)ゼウスの眷属たち。その余波で壊れるオラリオ。

 男関連でまたもや発狂し、奇声を上げ暴走するヘラの眷属たち。その余波で壊れるオラリオ。

 

「うぐぅぅぅぅ……!」

 

 ロイマンの胃は悲鳴を上げていた。あいつらがいた当時と今の暗黒期、どちらがましだっただろうか。本来なら比べることすらおこがましいことを考えてしまう。

 

「なにを豚のような悲鳴を上げている。冒険者依頼(クエスト)だ。姿勢を正して拝聴しろ」

「ぶほぁ!」

 

 可哀そうなロイマンにアルフィアは容赦なかった。胃を抑え前かがみになるロイマンの背をはたき、強制的に伸ばす。

 

「内容は単純明快だ。ロキ・フレイヤの二大派閥、ガネーシャ・アストレアの治安維持がメインの派閥、あとついでにヘルメスをここに連れてこい」

「神は必ず来るよういっておけよ。あと、団長でなくてもいいが、眷属たちの代表者もだ。大勢で来られるとアルフィアが雑音がひどいってキレるから、追加の同行者は一人までだ」

「か、勝手なことを抜かすな! オラリオを追い出された貴様らに、そのような権限は断じてない!」

 

 ロイマンは立派だった。最強の二人に断固として従わなかった。陰で怯えながらのぞき見していた冒険者や職員たちが見直すくらいには、ギルド長としての貫禄に溢れていた。

 

「そうか。お前は私たちの冒険者依頼(クエスト)を受けないというのだな」

「当たり前だ! 貴様らはもうオラリオの冒険者ではないのだぞ!」

「なら、俺たちは好きに動くぞ。ゼウスとヘラの眷属が、なんの制限もなく好きにだ」

「……な、なにをする気だ」

「好き勝手に振舞う高慢な闇派閥(イヴィルス)どもと、それを許す情けない冒険者どもをまとめて叩き潰す」

 

 その瞬間、ロイマンの脳内でリピートされる、ゼウス・ヘラ、両ファミリアの残虐な光景。

 

「…………はあ? はああああ!? はあああああああああ!?」

 

 とんでもない爆弾発言に、ロイマンの貫禄がなかったかのように霧散していく。黙って見守っているベルが憐れむほど、喉を枯らして絶叫し大量の冷汗を流した。

 

「な、なななならん! ならんぞ! ギ、ギルドとして、絶対に許さない!!」

「私たちはすでに冒険者ではないのだろう? ならばギルドに従う義理はない」

「だな。あー、残念だ。俺たちは冒険者じゃないからな。だから仕方ない」

 

 悪魔のような脅しをしかけてくるかつての最強派閥の二人に、ロイマンに目が泳ぎに泳ぐ。助けを求めても誰もが目線を逸らした。

 

 もう一押しだと感じ取ったアルフィアが、最後のとどめを刺す。

 

「鬱陶しい。まずはギルドから潰すか」

「すぐに連れてくる!! だからお前たちはここで大人しく待ってろおおおおお!!」

 

 重たい身体を揺すりながら走り回り、ロイマンがギルド職員に大声で指示を出し始めた。

 

「いいか、お前たち! 最速で! 召集するのだ! でないとあいつらは本気で――ぐほぉ!」

「ギ、ギルド長ーーーーー!!」

 

 あっ、血を吐いた。ロイマンの胃はとっくに限界だったのだ……。

 

 

 

 

 

「ね、ねえ。お母さん。本当にアレでよかったの?」

 

 あんまりな光景を見てしまったベルが、恐る恐るアルフィアに尋ねる。

 

「ああ。これが最適だ。ギルドを押さえれば、例えロキやフレイヤであろうと従わざるをえない」

「でも、ロイマンさんが可哀そうで……これなら僕たちだけで闇派閥(イヴィルス)と戦った方が――」

「散々話しただろう、ベル。それをやったら、お前の可愛いポケモン達は認められないぞ」

「……わかってるよ、ザルドおじさん」

 

 ザルドに窘められ、しぶしぶベルは了承した。宿で二人と話し合った内容を思い返し、思わずひとりごちる。

 

「……モンスターとの確執かあ。ポケモンと暮らすのが当たり前だったから、その辺りの感覚が全然わからないや」

「すぐに切り替えろ――と、できないことはいわない。だが、こちらではモンスターは人類にとって絶対の敵だ。それだけは片時も忘れるな」

「うん。……でも、この世界でも人と歩み寄れるモンスターが居たりしないのかな?」

 

 甘い理想を夢見るベルに、ザルドがやんわりと否定する。

 

「少なくとも、今まで会ったモンスターは全て殺しに掛かってきたな」

「そっか……」

 

 肩を落とすベルに、アルフィアがそっとベルの頭を撫でた。

 

「異世界なんてものがあったのだ。いつかは見つかるかもしれない。だが、それでもモンスターを殺すことだけは躊躇うな。躊躇えば、お前の命が危ない」

「――うん、わかった。お母さんを悲しませたくないからね」

 

 真面目な顔でベルを諭すアルフィアだが、内心ではベルの柔らかな髪を堪能しきっていた。

 流石は第一級冒険者。ポーカーフェイスもお手の物である。

 

「さて、ロキやフレイヤ達が来るのも時間が掛かるだろうし、俺たちはゆっくり待たせてもらおうか」

 

 ザルドは慌ただしく動き回るギルド職員の一人を呼び止め、応接間に案内しろと命じた。

 最強の眷属に声を掛けられたギルド職員は、終始顔を真っ青にして対応した後、今までの疲労と合わさって寝込んでしまった。

 

 

 

 

 

 闇派閥(イヴィルス)の対応に日夜追われていたロキ・ファミリアは、有無をいわさぬギルドの召集に応じ、ロキとフィン、リヴェリアがギルドの通路を歩いていた。

 

 最大派閥の矜持からか平静を装ってはいるが、その足取りは少しだけ早い。彼女たちが緊張していることがにわかに伝わってきた。

 

「なあ、フィン、リヴェリア。【静寂】と【暴食】がオラリオに帰って来たって、ほんまのことと思うか?」

「ロイマンが念押しした冒険者依頼(クエスト)という名の強制任務(ミッション)だ。間違いないだろうね」

「今さらオラリオに戻って来たあげく、我々を呼び出すとは。……いったいなんのつもりだ?」

「追い出した復讐やったりしてなー」

 

 そういってロキが愉快そうにからから笑うが、目だけは決して笑っていなかった。

 

「まあ、そんな単純な話ではないだろうね」

 

 ロキの軽口に答えるように、フィンが肩をすくめる。リヴェリアだけが小難しい顔をして思案していた。 

 

「あまりにも唐突で、情報が少なすぎる。奴らの目的はいったい――」

「あら? 貴女たちも来ていたのね、ロキ」

 

 後ろから掛けられた声に三人が振り返る。すると、そこに絶対の美が存在していた。

 

「フレイヤか。お前らも呼ばれてたんか」

 

 もう一つの最大派閥まで呼ばれていた事実に、ロキが目を鋭く細める。

 

「ええ。くだらない冒険者依頼(クエスト)なら、私が従う義理はないのだけれど、あの【静寂】と【暴食】がいると聞けば、ね。そうでしょう、オッタル、ヘディン」

「……はっ」

「フレイヤ様の御心のままに」

 

 左右に使えていた【猛者】と【白妖の魔杖】(ヒルドスレイヴ )が、主の問いかけに短く答える。

 

「いかつい面子連れとるなー。まあ、うちも人のこといえんけどな」

 

 そういって自派閥の最大戦力の二角をロキは見やった。

 

 最大限の警戒を怠らないのは当然のこと。だが、その警戒があのゼウスとヘラにどこまで通用するものか。

 オッタルとフィン、リヴェリアはかつての泥の味を思い返していた。

 

「昔より強くなった自負はある。でも、相手は『三大冒険者依頼』のリヴァイアサン、ベヒーモスに止めを刺した二人だ」

「アルフィアは病、ザルドは猛毒に侵されているとはいえ、レベル7。我々の遥か格上だ。容易に押さえられるとは口が裂けてもいえん」

 

 もしもの事態を想定し、フィンとリヴェリアが戦力差を悲観する。しかし、オッタルだけは違った。

 

「相手が【静寂】だろうが【暴食】だろうが関係ない。戦えば勝つ」

 

 そう言い切ったが、その拳は強く握りしめられていた。眉間に険しい皺が寄る。そんな団長をヘディンが吐き捨てる。

 

「逸るな猪。考えなしに猛進して負けるつもりか。何が起ころうが、フレイヤ様の身の安全が最優先だ」

「…………むう」

「ふふ、そうね。もしもの時は私を連れて逃げることを優先しなさい、オッタル」

 

 ぐうの音も出ずに押し黙るオッタルに、フレイヤが口元を押さえて上品に笑った。

 少しだけ緩んだ場の空気を更に和まそうと、ロキがとある噂について話し始める。

 

「そういや聞いたか、あのアルフィアに息子がいるって噂。ギルドにいた職員や冒険者が目撃したらしいんやけど、なんでも十代半ばの白髪の可愛らしい男の子で、ザルドのこともおじさんって呼んどったらしいで?」

「…………なによ、その信憑性皆無の噂。あの【静寂】が子どもを作っていた? 冗談はよしてちょうだい」

 

 あまりにも信じられないロキの発言に、思わずフレイヤは真顔になった。

 あの常に男で発狂しては混沌を生み出していたヘラファミリアの中で、唯一といっていいほど男の影も形もなかった女だ。冗談にしても面白くない。

 

「もしその噂が真実なら、何歳の頃に子どもを生んだんだろうね」

「たしか奴の年齢は今は二十代半ばだったはず。……下手すれば年齢一桁で子どもを作っていただと? な、なんと破廉恥な……! 恥を知れ、恥を!」

 

 あの女神にも勝る美貌を持つ【静寂】が、長く生きている自分よりも遥か先に女として進んでいるかもしれない可能性に、リヴェリアは勝手に憤った。

 真っ赤になったリヴェリアに、話を振ったフィンも思わず吹き出す。

 

「大丈夫や。こっちには可愛い可愛いアイズたんがおる。負けてへんで、ママ」

「誰がママだ、誰が!」

「貴様……主神とはいえ王族への不遜、到底看過できん」

 

 ヘディンすらヒートアップし始め、場の空気が和むどころか混沌と化していく。

 

 唯一だんまりを決めこんでいたオッタルは、はた目からは警戒を緩めずにいるように見えた。

 頭の中で男になった白髪のアルフィアを思い浮かべ、『騒がしいぞ、雑音ども』といってフィン達を吹き飛ばす様を想像していたが。

 

 結構愉快なことを考えているオッタルの心情を知らず、フレイヤは「オッタルはこんな時でも落ち着いてるわね。頼りになるわ」と褒め称えた。

 

「まあ、何はともあれ。噂が真実か。はたまたあの二人は僕らの敵か味方か、今からはっきりわかる」

 

 目的の応接間の大扉を前にし、先導していたフィンが皆を振り返る。

 

「心の準備はできたかい?」

「いちいち確認取らんでもええって。ささっと開けて、要件を済ましにいこうや、フィン」

 

 ロキの言葉に異論はないらしく、誰からもそれ以上言葉は上がらない。

 フィンはそれに満足そうに頷くと、扉に手を掛け押し開いた。

 

 ここから先は、どんな困難が待ち受けているかもわからない、アルフィア達が待つ受ける領域。

 

 まるでダンジョンの深層に挑むような心持ちで、中に入っていった彼らを待ち受けていたいたものは――。

 

 

 

 

 

「リオン! その子の手を絶対に放しちゃダメよ! これは運命、運命なの! あんたが肌を許せる男の子なんて、もう一生出会えないんだからね!」

「な、ななな、なにをいっているアリーゼ! い、いきなりこんなこと言い出して! 彼に迷惑でしょう!?」

「あ、あのー? そろそろ、手を放してもいいんじゃ……?」

 

 アストレアファミリアの団長でもある【紅の正花 】(スカーレット・ハーネル )が、非常に興奮した面持ちで【疾風】に言い寄っていた。

 

 アリーゼの猛攻に顔を真っ赤にしたリューは、口ではそういいながらも、兎のような白髪と深紅(ルベライト)の瞳を持つ少年の手を握ったまま放さなかった。彼の静かな抗議は風のように流されている。

 そんな三人をアストレア様が「あらあら、うふふ」と微笑ましそうに眺めていた。

 

「こ、これは! 品行方正で人懐こくてシャクティお姉ちゃんの妹でリオンに触れられるくらい大親友でもあるアーディ・ヴァルマもびっくりだよ! まさかリオンに男ができるなんて!」

「誰向けの説明なんだ、アーディ……」

 

 ガネーシャ・ファミリアの団長であるシャクティが、説明口調でまくし立てる妹に呆れていた。

 傍にいるガネーシャはいつも通り「俺がガネーシャだ!」と叫んでいた。もちろん誰も聞いていなかった。

 

「………………殺すか」

「おい、やめろアルフィア! ベルが手を握られているくらいで殺気立つな! ベル、いったんこっちに戻ってきて、こいつをとめてくれぇ!!」

 

 尋常ではない殺意を宿したアルフィアが、リューを親の仇のように睨みつけていた。

 ザルドがその前に立ち、必死に思いとどめようとするも、圧力に負け早くもベルに助けを求める。

 

 しかし、ベルはリューに捕まったまま身動きがとれなかった。

 ザルドの顔に絶望が浮かぶ。もはや簡単には死ねない身体になったというのに、死を覚悟した。

 

「……ぶっ、ははははは!! あははははははは!! あ、あの、あの【静寂】が、こ、子ども一人にめっちゃ嫉妬してる!! や、やばい、腹が捩れ……あははははは!!」

黙れ雑音(ゴスペル)

「ぶほおあああああああ!!」

「ヘ、ヘルメス様ーーー!? ……いや、最近やたらと仕事を押し付けられていましたし、良い薬になりますか」

 

 それを外から見て大笑していたヘルメスが、アルフィアの魔法で吹っ飛ばされて壁に突き刺さった。

 団長のリディスに押し付けられて、たった一人でお供をしていたアスフィが一瞬だけ慌てるがすぐに冷め、アルフィアの暴挙をスルーした。

 

「あああああ…………私のギルドに穴が……ごふっ」

 

 そんな中、たった一人でカオスな光景の中佇んでいたロイマンが、静かに吐血して倒れこんだ。

 

「…………なんやここは。地獄か?」

 

 予想の斜め上を超える光景に、ロキが呆然と呟く。フィン達も絶句し、誰もが言葉を紡げないでいた。

 

 そんな中、たった一柱の美の女神が恍惚とした表情で、囚われの子兎を見つめていた。

 

「あの子の魂、透明でとっても奇麗…………欲しいわね」

「お前、これ以上話ややこしくすんなや!!」

 

 ロキのツッコみが、地獄の応接間に響き渡った。

 

 




原作ベル君なら金髪ロングのエルフがドストライクなのでリューさん大勝利、希望の結婚式へレディーゴー!! だったけど、異世界育ちのベル君にそんな性癖は芽吹きませんでした。
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