『瞬間、青く燃ゆ』を読み終えて
さてさて、久しぶりに真面目な、しかしネタバレなしで行く書評です。作者、葛城騰成先生とはXにおいて相互フォローで比較的長い付き合いであり、また葛城先生の師匠たる木立花音先生とはたぶん創作を始めた頃からの付き合いですが、葛城先生の人柄から本作品はぜひとも買って読まねば、と思っており、買い求めてじっくり読んで、そして十分にその熱気を覚まして寝かせてからの書評となります。
ところで、ここで一つ私の現在の小説への姿勢を書いておきます。私は現在、古典や相互さんの個性的な書籍化作品を中心に読み、それでも乱発される作品にはあまり手を伸ばしません。今回、葛城先生の作品には読む価値があると感じ、手に取りました。
と、ここまでが前提になりますが、では葛城先生の『瞬間、青く燃ゆ』はどうだったか?
結論から言いますと、『小説の読書』がしっかりと楽しめました。読む意味や価値がしっかりあった作品という事です。では、どの部分が特にそうなのか? せっかくの良き小説ですから、あまりネタバレなしで皆さんに伝える努力をしてみようと思います。
さてまず、文芸、文学小説ではしばしば、男性性の一面とも言うべき問題解決能力が極端に低い男性主人公という問題が散見されますが、この物語の主人公及び周囲の登場人物のバランスはそのような不健全な構成ではありません。普通の高校生として当然の範囲で、しかし全力で問題に当たり、生きていこうとしています。また、主人公の親友は男らしさの面で良き先輩として描かれており、この年頃の少年が問題に向き合う姿勢を複数の角度から示しています。
で、読み進むとある事に気付きます。『ん? 大きな問題解決が近そうだけど、ページ的にどうなるんだ?』みたいな、読書に慣れている人だと気になる流れが出てきます。そして実際に物語は大きな山場を……普通の物語ならほぼラストに来そうな山場を全体の半ば過ぎのところで迎えるわけですが、この構成とそこからの展開がこの物語の特に素晴らしい点なのです。エンタメとしても読めるようなドキドキするシーンや謎もありますが、それらがカタルシスとして回収された後に、各登場人物がそれぞれカタルシス後の一歩をリアルに踏み出していく過程が描かれています。昨今多いエンタメ小説であればカタルシスを最終盤の頂点として描き、あとはさらりと後日談になりがちな所を、あえて中盤に持って来てそこからしっかりした青春小説として各人の本当の浄化と成長を描き、未来に新たな一歩を踏み出せる希望を描いています。つまり、カタルシス後の登場人物たちの成長と未来への一歩こそが、この小説の本編であり、最も大切に描かれた部分なのです。これがとても私には新鮮かつ澄んだ、良い読書体験となりました。
また、中高生にも安心してお勧めできるという点でも素晴らしい作品です。というわけで、みなさんもぜひ構成に驚き、かつての澄んだ心を思い出しつつ楽しんでいただきたい、そうお勧めできる小説であり、そういう意味では年齢不問の作品でもあります。そして葛城先生、お見事です! 良い小説をありがとうございました!
追記。
私の感想及びレビューについて葛城先生とお話したところ、『励ましたい友を思って書いた』というお話が出てきました。確かに、この物語は困難にあっても歩き続けんとする誰かを励ましたいという思いが強く伝わってくる物語であり、それは結果的に読者にも強く及んできて、ページを進ませる大きな力にもなっている気がします。読者は登場人物たちを応援したくなり、彼らと共に歩むような感覚を味わえるでしょう。それこそが、葛城先生の筆から生まれた真摯な思いの証なのだと感じられました。


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