「USAIDの指示で報道」を否定 国内新聞、通信、テレビの15社

トランプ米大統領(右)の傍らに立つ政府効率化省(DOGE)のトップで実業家のイーロン・マスク氏=ホワイトハウスで2025年2月11日、ロイター

 日本のメディアは、米政府で海外援助を管轄する「国際開発局(USAID)」から資金提供を受けており、報道が操作されている、という言説がSNS(ネット交流サービス)で広がっている。

 X(ツイッター)では「日本の腐敗組織」として、毎日新聞を含む報道機関名などを挙げて、批判する投稿が拡散している。だが、名指しされた新聞社、通信社、テレビ局の計15社は、USAIDからの資金提供について「ない」「確認されていない」とし、報道への関与も否定している。

「世紀のスキャンダル」に根拠なし

 USAIDは1961年に設立された。米ニューズウィーク誌などによると、当時のジョン・F・ケネディ大統領が、複数の機関に分散していた援助政策を一元化して米国の対外援助プログラムを拡充し、「世界の安定と繁栄の促進」を目的に創設した。

 60カ国以上に拠点があり、人道支援、経済開発、保健事業などのために数十億ドル規模の資金を世界中に供給。冷戦期は、主に旧ソ連を念頭に発展途上国への経済支援という形で共産主義の拡大を抑える役割を果たしたとされる。

 トランプ米大統領は2月6日、自身の運営するソーシャルメディアに<数十億ドルがUSAIDなどから盗まれ、フェイクニュースメディアに渡っている>と投稿した。

 歳出・人員削減を担う政府効率化省(DOGE=ドージ)のトップで、Xで2億超のフォロワーがいるイーロン・マスク氏によっても拡散された。

 トランプ氏は投稿で、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)や政治専門サイト「ポリティコ」を名指しし、USAIDから資金提供を受けている可能性に触れ、「歴史的なスキャンダル」とした。しかし、その根拠は示されていない。

 ポリティコは、資金援助について否定する声明を出した。NYTもXに「連邦政府から受け取っているのは購読料だ」と投稿した。

新聞、通信、テレビの各社は否定

 トランプ氏の言説を受け、日本のXでも「USAID」がトレンド入りし、投稿は200万回超にのぼった。

「数十億ドルがUSAIDなどから盗まれ、フェイクニュースメディアに渡っている」。トランプ氏が自身が運営するソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」にした投稿のスクリーンショット

 <USAIDの悪行が表沙汰になっているのにマスコミは報じない>との書き込みが相次ぎ、「USAIDに関与する日本の腐敗組織」をリスト化したとする投稿が拡散した。

 これには、毎日新聞を含む新聞社、通信社、テレビ局の計15社が挙げられている。

 このため記者は名指しされた各社に、USAIDから資金提供を受けたか、報道について指示を受けたか、を尋ねた。

 15社は毎日新聞のほか、朝日新聞▽読売新聞▽産経新聞▽日経新聞▽東京新聞▽北海道新聞▽共同通信▽時事通信▽NHK▽日本テレビ▽テレビ朝日▽TBS▽フジテレビ▽テレビ東京――の各社。

 NHKは13日夜のニュースで「『NHKがUSAIDから資金をもらって、言論弾圧をしている』などの誤った情報が広がっている」と指摘。そのうえで「資金提供を受けている事実はありません」と報じた。

 毎日新聞、朝日新聞、読売新聞、産経新聞、東京新聞、北海道新聞、共同通信、時事通信、日本テレビ、フジテレビ、テレビ東京はUSAIDからの資金提供について「事実はない」と回答。日経新聞、TBS、テレビ朝日は「確認されていない」とした。

 また、いずれも、報道についてUSAIDから指示を受けたとするSNSで広がる言説も否定した。

 朝日新聞は「不正確な情報の拡散は遺憾です」、共同通信は「事実に立脚した報道を徹底していく考えです」、産経新聞は「今後とも公正な報道に努めてまいります」などとコメントした。

 新聞、通信、放送各社の代表者ら約370人が参加した2024年度の「第77回新聞大会」では「SNSが情報流通の主流となり、偽情報や誤情報、詐欺広告が社会的な問題となっている。平和で豊かな未来に向け、私たちは正確で信頼される情報を届ける責務を改めて自覚し、全うすることを誓う」などとする決議を採択している。【デジタル報道グループ】

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