「ふぅ~どっこいしょ。今日も働き詰めで何か視界が蒸れてきたな〜」
「お帰りなさい、兄さん」
「む、帰ったか嫁よ」
「お帰り♡一夏♡」
帰宅した一夏を出迎えたのは織斑マドカ、花嫁修業真っ最中のラウラ・ボーデヴィッヒ、そしてペットの姿がすっかり板についたシャルロット・デュノア。
IS学園卒業後、一夏はプロのIS乗り兼プロのエ○漫画家として名を馳せていた。
漫画家とIS乗りの二足のわらじを履く一夏。今となっては安定してきたが当初は慣れない生活や周囲に同性がいないことに対するストレス、プレッシャーに精神を蝕まれていた。
そんな彼を支えてきたのが恋人のVTシステム、そして家族の織斑千冬と織斑マドカ、その他多くの友人たち。
彼は今、幸せの絶頂期にいた。
▫▫▫▫▫
「おやおやシャルロットもうこんなにグチ○グチ○じゃないか
お前はこんなに不貞で下品でこの背徳的状況に興奮してしまうムッツリ女だったのか
ドン引きだわ
指がヌメヌメにコーティングされたぞ*1」
「ちょ……っ♡や……っ♡」
表面上は余裕綽々に見える一夏だが、激務をこなした後の義務マッサージときたものだから少々疲弊していた。
しかし彼はプロ。そんな様子はおくびにも出さない。
(う、嘘……っ私こんなに○れて……っ)
「一生かけて添い遂げるぞ」
それは一生飼い殺しにするという宣言であり、定められた未来を夢見たシャルロットは快感にその体を震わせる。
ちなみに隣のベッドでは。
「はいキスに集中してくださ~い
これは施術ですからね
おい!○く時は申せ!」
「○、○きます……ッ♡」
「簡単に○きすぎ……と
カルテに記入OK
蛇が蛙を吞んだよう
ほら舌絡めるでゴザル」
「き、キスの必要は……!」
「おっほ♡熱烈ブチュキス♡
ラウラさま意外とキス好きだね♡」
激烈なキスの雨にラウラはいいようにされていた。軍人の姿か?これが……。
とまあ、このように織斑家ではシャルロットとラウラはそれはもうおもちゃのように扱われまくっていた。もちろんその中には愛情も介在するが、それにしても二人はクソザコだった。
▫▫▫▫▫
時は移りモンド・グロッソ総合部門会場にて。
客はパンパンに詰めかけていた。それもその筈、今回決勝まで上がってきたのは唯一の男性操縦者である一夏と、その妹であるマドカだからだ。
兄妹対決、更にはあの織斑千冬の家族というネームバリュー付き。有名にならない方がおかしいというものだ。
仮に一夏が優勝者になれば男性がブリュンヒルデになるということ。この動向には世界中が注目していた。
「勝ってこい。一夏」
「陰ながら応援させていただきますわ」
控えている一夏へ声援を送りに来てくれたのは篠ノ之箒とセシリア・オルコット。今回の大会で彼女たちは一夏に敗れている。しかし試合が終わればノーサイド、共に戦ってきた戦友として一夏を激励しようとの心で来てくれた二人。
「おいおいストップストップ!
このままじゃ射○ちまうだろ」
照れくさそうに頬を掻く一夏。これでセリフが普通なら、普通であればよかったのに。
「私に勝ったのよ。負けたら承知しないんだから!」
マドカに声援を送るのは凰鈴音。実質決勝ともまで言われた激戦ぶりから、彼女もまた有名になっていた。
「ありがとう凰鈴音。行ってくる」
穏やかに微笑みながら踵を返すマドカ。今ここに、二人の闘士が相対した。
「お~……っ いつもより『シールドエネルギー』ベロンチョでかなり下品な振り回し……
さすが兄さんだ剣さばきの達人だね」
「あ~極楽極楽
やっぱり激しい声援の後はマドカのブチュブチュ戦闘であったか~い『雪片』入浴しかかたん
陰嚢五輪2024」
もう死ねよコイツら。
▫▫▫▫▫
「やるな、流石兄さん、だ……ッ!」
「おいおいなに勝手に○ってんだ?
戦闘中だろ 仏の顔も3度までだぞ」
熱戦・烈戦・超激戦。
レーザーライフルとナイフを巧みに扱うマドカと、剣一本でのし上がってきた一夏による息を吞むほどのバトル。
それは観客の心を掴み、離さない。いつまでもこの戦いが続けばいいとまで思うぐらいの胸熱ぶり。
だが、どんな出来事にも終わりは必ずやってくる。
「めっちゃレーザーでヌルヌル……闘争本能を煽ってくるよ この名器……さすが英傑だね♡」
「元工作員の私がこんな美男子とイチャイチャバトルできるなんて……
す、隙が……っ!ふぐぅぅぅぅぅ~~っ♡
ベロベロベロ~~ン♡」
「夢みたいだよ♡愛してる♡
好きだよマドカちゃん♡
アイドルになれるくらい顔強いよ叩き潰してやるからなマゾメス」
マドカの狙撃を打ち払い、距離を詰める一夏。当然彼女は距離を取ろうとするが
「あっ♡」
ギリギリまで手加減した必殺の一撃、『零落白夜』により一気にシールドエネルギーを消し飛ばされる。これが決定打となり────
「これはもう明日の一面はスケベすぎる俺について特集するしかないな…… 死ねよ」
バカみてえなセリフを吐きながら拳を掲げる催眠おじさん織斑一夏。彼は晴れて、ブリュンヒルデとなったのだ。
勝利者となった一夏には、当然優勝インタビューが行われる。
初の男性操縦者でありブリュンヒルデとなった彼は何を話すのか────
「サークル:ちんちん亭 商業誌:chin名義で活動中♡ 成人向け、健全共にお仕事募集中♡」
世界中にちんちん亭の名が広まった瞬間であった。
▫▫▫▫▫
「いつも千冬姉は俺を子供扱いするよね
もう大人って所をみせてやるんだ!」
「……ほう?」
ある日、OBとしてIS学園に姿を見せた一夏。
「ち、千冬姉の生教師姿……♡
帰ってきたような気分だよ……
王の帰還」
「やめろ、気色悪い。さっさと本題に入れ、織斑。お前は何を望む」
生徒たちは固唾をのんで行方を見守っていた。偶然学園に戻ってきたくなったわけでもあるまい。一体全体なにが望みなのか……。
「いや~千冬姉といっぱい戦い合っていたくってさ」
「「「「「「!?」」」」」」
──それはつまり、現旧ブリュンヒルデが試合を行う、ということである。
▫▫▫▫▫
「お前とこうなるとはな……」
「さっきはよくも生徒の前でアイアンクローしてくれたな まあそれがスパイスとなって拙者的にはハナマルなんだけどね」
「それはお前が猥褻な漫画を布教しだしたからだろう……」
「これがヨガだ」
織斑千冬は頭を痛めていた。この語録塗れの愚弟を、果たしてどうやって更生させるべきか。いやもう手遅れなのか。
だが、千冬はそれ以上に彼を愛していた。たとえちんちん亭にどっぷり浸かろうとも、かけがえのない大切な弟なのだ。
一夏自身、千冬のそんな感情に甘えていたところがあった。しかしそれも今日まで。
彼が守りたいと決めた姉。そのために、彼女を打倒してみせる。
「私が勝ったら生徒たちに例の漫画を布教するのをやめろ。いいな?」
その言葉には様々な感情が入り交じっていた。なにせ、モンド・グロッソ優勝者の書いた本ともなれば彼の強さを求めてちんちん亭書籍を購入する生徒もいるぐらいだ。本人に宣伝されたらこちらの身が持たない。
「あとなぜお前の書く登場人物は全身オイル塗れなんだ……」
「(チッ効きが浅いな……)ヌメリをよくして執筆を効率化しているのですよ
こちらも忙しいのでね!
カスハラは止めてくださいませんか?
消費者庁案件」
戦いが、始まろうとしていた。
▫▫▫▫▫
「いくぞ、一夏」
かつての愛機『暮桜』を身に纏う千冬。その姿からはブランクのようなものは感じ取れない。
「もっと淫猥な言の葉で」
雪片弐型を構える一夏。その姿からは一切の隙が感じられない。
合図を待つ刹那、視線が交錯する。その瞳に宿る強い意志に一瞬緩みかける千冬だが、次の瞬間には『最強』としての面構えに変わっていた。
片や世界最強、片や唯一無二。
雌雄を決する戦いが、始まった。
「みっちり入っちゃってるね」
間合いを潰し、一合二合と剣戟を重ねる両者。ファーストコンタクトは様子見に終わる。
「流石に反応するか……」
「何だって!?声が小さい!腹式呼吸で」
それからも数回に分けて打ち合う。この時間を楽しむように、相手の実力を測るように。
「!」
拮抗を破ったのは一夏だった。零落白夜を起動し一閃。直撃すれば千冬でさえもただではすまない。
が────
「随分と直線的だな、故に──合わせられる」
直撃すればは、あくまでも『すれば』である。
「最近コンプライアンスも厳しいからの
おいメスオ○ホ!嫁としての貞淑をわきまえよ!?ア○メのしすぎなんだよ!可愛いことじゃ」
煽りセリフを宣うが──虚勢である。強気になってみても彼はまだ年若い男。ダメージを受けたことによる動揺を早くも悟られていた。
「……知れ、私を」
「くおおぉっ!?♡」
激化するラッシュ。弱気になっている間に一気にたたみかけてきた。
(……負けられねえ。負けるわけには、いかねぇ──!)
それは催眠おじさんではなく、ただ一人の男としての意志だった。それに呼応するように、世界は白く染まった。
▫▫▫▫▫
『一夏はどうしてチフユを守りたいの?』
いつの間にか白式のコア内部にいた織斑一夏。その問いには、当然ちんちん亭として応えようとする。
「せっかくだから気持ち良くハッピーエンドに──」
『それはもう聞いた。私が聞きたいのは一夏自身の言葉』
虚を突かれた。ここに来て問われるのが、一人の
「──そんなの決まってる。俺は、千冬姉が好きだからだ!」
『うん。
▫▫▫▫▫
「まったく……私は最高の弟を持ったな」
弾かれながらそう呟く千冬。目の前の一夏に、そして白式に異変が起きていた。
白式・『王理』。一夏の意志が
「──いくぜ、千冬姉。俺は、アンタに勝つ!」
「……ああ。来い、一夏」
再び交錯する視線。逢瀬を重ねる思ひ人のような、熱を帯びたそれに両者は笑う。
ちんちん亭語録さえ捨て去った打ち合いは、重く、しかし流麗である。
観客席の生徒たちは言葉を失っていた。超一流の攻防を前に、憧れすらも追いつかない。
「これで、終わりだぁぁぁあっ!」
「はあッ──!」
ほぼ同時に起動した零落白夜。勝者は一人、空に佇む。
『────っ、しょ、勝者、織斑一夏!』
間違いなく、ただ一人の──守ることを求め続けた少年が世界最強に上りつめた瞬間である。
▫▫▫▫▫
一夏自身も愛機に起きた異変には気にかかるようで、彼にしては大人しくしていた。相変わらず語録は連発して千冬に折檻を食らっていたが。
それも落ち着いたある日、一夏は白式を起動し空の彼方へと飛び立った。
「…………」
「…………」
世界の果て。そこに彼はいた。
「────おじさん」
一夏にちんちん亭としての能力全てを継承させた、原初の催眠おじさん。
彼はゆっくりと振り返る。
「……なあ。なあ、おじさん。俺……世界を救えたかなあ」
未だに女尊男卑の風潮はある。それに起因した悲劇も起こっている。
それでも、一夏少年がトップオブトップに駆け上がったことで世界は少しずつ丸くなり始めていた。
小太りのオッサンはただ黙って一夏を見つめ、そして言葉を投げかけた。
「ありがとう」
彼らはひしと抱き締め合った。