カスタマーレビュー

  • 2020年5月19日に日本でレビュー済み
    コロナ休校中の高校生の子供に英文解釈の参考書を探していたところ、本書の評判が良かったので勧めておりました。しかし「和訳が意味不明」という意見をアマゾンレビューで見つけ、あらためて各例文とその和訳だけ通読しました。

    結論として、全体の9割の和訳は問題なし、あるいは許容範囲だと思います。しかし残り1割(具体的には12、22、24、30、42、48、53、63、64、68の計10個)の和訳は、明らかな誤訳、または著しく稚拙な日本語と判断しました。

    これら破綻した日本語を有り難く「正解」として理解を試みている受験生がいるかと思うと、気の毒でなりません。悩める受験生のために、この10個について精一杯の修正案を考えてみましたので、以下に記します。(2020年12月末、全体的に見直してみましたので、よろしくご査収ください。)

    12
    原文原訳:We are creatures of the visible and the perceivable. 私たちは目に見えるもの、また感じ取れるものの制約を受ける生き物である。

    (英文は「制約を受ける」と言っておらず、この和訳全体としても日本語になっていません。この文は、creatureの「生き物」以外の意味を知っていないと訳せません。私も知らなかったのですが、辞書によれば、A person or organization considered to be under the complete control of another 「他者に完全に支配されている者」となっています。)

    試訳→私達は、眼に見えるもの、および感じ取れるものに完全にとらわれている。

    原文原訳:We feel pity for the physically disabled, because we can see his twisted limbs; 私たちにはハンディキャップを負う人の手足が見えるから、身体が不自由な人たちを気の毒に思う

    (なぜtwistedが「ハンディキャップを負った」になってしまったのか、想像がつきません。単にデタラメです。)

    試訳→私たちは身体が不自由な人たちを気の毒に思うが、それは彼らのねじれた手足が目に見えるからだ。

    22
    原文原訳:From the point of view of the individual, 個人というものを考慮する立場から考えると

    (英文は「というものを考慮する」と言っていません。)

    試訳→個人から見れば

    原文原訳:In fact people are found to choose the jobs which require their abilities, 実際に、人々は自分の能力を必要としている仕事を結局は選ぶ。

    (英文は「結局は」と言っていない。findも訳し忘れている。)

    試訳→実際、人は自分の能力が要求される仕事を選ぶ事がわかっている。

    24
    原文原訳:In those European countries that Americans are most likely to visit, friendship is quite sharply distinguished from other, more casual relations, and is differently related to family life. アメリカ人が訪れることが実に多そうなヨーロッパ諸国では、友情というものはほかのもっと表面的なつきあいとはまったく明確に区別されていて、それとは違った関係を家庭生活と持っている。

    (受験生は24番をスキップして下さい。「それとは違った関係を家庭生活と持っている」の「それ」はいったい何を指すのか、「違った関係を家庭生活と持つ」とはどうすることか、日本人に通じない日本語を忙しい受験生に示してはいけません。

    私もこの英文自体の趣旨を理解できなかったためグーグル検索しました。検索ヒットしたこの文の後段を読むと、フランスの友情、ドイツの友情、英国の友情と続き、その各国において1対1の友情関係がその2人の間だけに留まるのか、あるいは家族まで巻き込む関係まで拡大するか、またアメリカにおける友情とどう違うかなどが説明されます。

    この英文は舌足らずなので、文脈があって初めて解釈 (differentlyはアメリカと比べて違うこと、related to family lifeは家族とからみあうこと) が可能になる種類の文です。ここだけ切り取って「さあ読め」と言われても不可能です。)

    試訳→アメリカ人が最も多く訪れそうなヨーロッパ諸国では、友情は、他のもっと表面的なつきあいとは相当はっきり違うものだと位置付けられており、友情が家族の暮らしとどうからみ合うかについてもアメリカの場合とは異なる。

    30
    原文原訳:Educate yourself about the realities of sex discrimination in our society by reading books on the subject and by looking critically at the way men and women are stereotyped on television, in movies and in advertising. 私たちの社会が抱える性差別の実態に関しては, 関連する本を読んだり、テレビ・映画広告で男女がどのように型にはめて描かれているかを批判的に見たりして、その実態に関する認識を自ら高めるようにしましょう。

    (長い英文は途中で区切って訳した方が、日本語としては読みやすいです。またeducate yourselfを「認識を自ら高めるようにしましょう」とは突飛な作文です。英文に忠実に「学びなさい」の一言で片付けましょう。)

    試訳→我々の社会での性差別の実態について学びなさい。その方法としては, 性差別についての本を読むこと、テレビ、映画や広告で男女がどのようにステレオタイプ化されているかを批判的に見ることだ。

    42
    原文原訳:The attitude that now is most in need of change is the way we view the relationship of ourselves and our countries to other lands. 今最も変化を必要としている見方は、私たち自身や私たちの国家と、他国との関係に対する見方である。

    (著者和訳は日本語になっていない。受験生は42番をスキップして下さい。この英文をグーグル検索すると、その前後も含め、ご丁寧に和訳まで付いたページがヒットします。それを読めば「2国間の外交関係の前提を敵対とするか共存とするか」という話題だとわかりますが、その文脈なしにこの部分だけ切り取っても英文の趣旨はわかりません。)

    正しい訳→上述ページによれば、「いまいちばん変わる必要があるのは、自分や自分たちの国と他の国々との関係をどう見るかという点です。」
    (ただ、この「正しい訳」も依然として意味不明に思えますが、、)

    48
    原文原訳:Therefore they tend to accept employment in traditional companies where family-style cooperation is still highly valued, at the same time that they seek to define themselves as individuals. それゆえ, 大卒者は現に家族形態の協力を今なお高く評価する伝統を重んじる企業に就職する傾向があるが、一方では自分を独立した1個人として明確にしようとしている。

    (traditional に「伝統を重んじる」心意気みたいな意味はなく、単に「昔からある」だけです。「自分を独立した1個人として明確にしようとしている」は日本語になっていません。)

    試訳→従って、大卒者は、家族的な協力をいまだに尊重する従来型の企業に就職しがちではあるが、同時に、個人として自己意識を確立する事を目指す。
    (define themselves as individualsは観念的なことなので訳しあぐねます。企業という集団の一員としての自分という意識が対極にあって、そうではなく自分は自分だという意識、という感じですか。)

    53
    原文原訳:"No man is so wise that he may not easily err if he takes no other counsel but his own."
    「自分自身の忠告以外のどんな忠告も受けない場合に、すぐには誤りを犯しそうにないほど賢明な者はいないのである。」

    (10年前のグーグル翻訳かと思いました。元の英文の中身は極めて薄っぺらで、「人の話は聞いた方が良いよ」と当たり前なことを言っているだけです。)

    試訳→誰とも相談せず自分の思うところだけに従っても簡単には間違えそうもないなんて、そこまで頭の良い人はいない。

    63
    原文原訳: when the landscape is dim, 陸地がおぼろで

    (真剣勝負の受験で「陸地がおぼろ」とおどけても、入試の採点官は白けるだけです。英語に忠実に訳すべき。)

    試訳→景色が薄暗くても

    原文原訳: To give only one example, たった1つの例を挙げると、

    (沢山あるなかから抜き出すから「例」なのであって、「唯一の例」はあり得ないです。)

    試訳→一つだけ例を挙げれば、

    64
    原文原訳: indeed, much of the learning takes place within a fairly limited linguistic environment, which does not specify precisely the rules governing competent language use 事実、言語習得はほとんどかなり限られた言語環境で行われ、その環境の中では正しい言語の使用法を決める規則を明確に詳しく学ぶことがないのである。

    (「ほとんど」「かなり」と副詞をつなぐことは、日本語では許されていません。また、後半which節のspecifyにかかる主語は先行詞 linguistic environmentだとわかってるぞ、と受験生は採点者に示さねばなりません。ところが原訳ではspecifyに「学ぶ」という見当違いな訳語を充てて「子供」が主語みたいに訳しており、デタラメの極みです。英文の構造を教える参考書が構文を無視するとは、ただ減点では足りず、減点を2倍して2乗したいほど壮絶な誤訳です。)

    試訳→実際に、学習の相当部分はかなり限定された言語環境で行われるが、その環境は正しい言語使用を支配する規則をはっきりとは定めていない。

    68
    But when the tapping became persistent, or rather insistent, we went to investigate.
    が、コツコツという音がしつこくというよりはむしろ気になってしょうがないほどうるさくなってきたので、調べに行った。

    (英文は「気になってしょうがないほどうるさい」とは言っていない。辞書によればpersistentもinsistentも「しつこい」という意味しかなく、「うるさい」は誤訳です。英文に忠実に訳すべき。)

    試訳→が、コツコツという音がしつこいというか、ともかくしつこくなったので調べに行った。

    他にも変だと思う日本語は所々ありましたが、どうにも見過ごせないと思ったのは以上の10項目でした。本書で学ぶ受験生の悩みがすっかり解消すれば嬉しいです。高校生の親が試しに訳してみただけですので、間違いあればご指摘ください。

    なお、受験生に見て頂きたいので評価を★にしましたが、本書全体としては依然として学習する価値が高い★★★★★だと思っています。英文の構造を正確につかむ訓練は、英語習得の王道かつ最短距離ですし、また本書はCDが良いです。このCDを聞くと、平板に見えていた英文に命が吹き込まれ、文の構造がドーンと立ち上がります。意味のカタマリとカタマリの区切りに挟まれるコンマ03秒くらいの間(ま)が、また良い。「生きた英語」とはこのCDのことかと思えます。さんざん聞いて「意味を理解して読むとはこういう事なのか」と感動してください。

    感動のCDも付いてアマゾン評価も高く、英文解釈参考書の定番も狙えそうなのに、肝心の和訳で手を抜いて画竜点睛を欠くのはもったいないです。ぜひ改訂して、日本人に通じる日本語になるよう和訳を練って頂きたいです。
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