米学生団体、カリフォルニア大を提訴 「黒人など優遇」
【ワシントン=赤木俊介】米国で、大学の入学選考における人種の考慮を巡る対立が続いている。米カリフォルニア大学が黒人とヒスパニック(中南米系)の応募者を選考で優遇しているとして、白人やアジア系の学生を代表する団体「人種差別に反対する学生たち(SARD)」が3日、同大を相手取って訴訟を提起した。
SARDが西部カリフォルニア州の連邦地裁に提訴した。同団体は選考プロセスで人種を考慮することは国民の平等な権利を保障する米憲法修正第14条に抵触し、人種差別を禁止する1964年の公民権法にも違反すると主張した。
大学側は声明を出し、選考時に収集している応募者の人種データは「統計を取るためで、選考では考慮していない」と説明。現行の法律に従っているとの見解を示し反論している。
連邦地裁に提出された文書によると、保守系の非営利団体アメリカ・ファースト・リーガル(AFL)の複数の弁護士がSARDの代理人を務めている。AFLは大統領次席補佐官を務めるスティーブン・ミラー氏が創設した。トランプ米大統領との関係が深いとされる。
米国では長らく、黒人ら人種的マイノリティー(少数派)を優遇するアファーマティブアクション(積極的差別是正措置)と呼ばれる措置を選考に導入する大学や企業が多かった。
保守派判事6人、リベラル派3人と保守に傾斜する米連邦最高裁判所が23年6月に大学による人種を考慮した入学選考は違憲という判断を示し、米大学選考におけるアファーマティブアクションは禁止された。AFLは22年5月、最高裁に同措置は人種差別的であるという内容の第3者意見を提出していたことで知られる。
23年6月の最高裁判決は大学の採用に影響している。米ハーバード大学が24年9月に発表した入学データによると、黒人生徒の入学者数は前年から4%減った。米国法曹協会(ABA)によると、24年の同大ロースクールの黒人入学者は19人。米紙ニューヨーク・タイムズは公民権運動が活発化した60年代以来の少なさだったと報じた。
もっとも、23年6月の判決に際して最高裁の多数派意見は「人種が入学希望者の人生に与えた影響について、それが本人の人格や能力に具体的に関連していれば、大学が考慮することを禁じるものではない」とした。条件付きで人種を考慮の一つに入れることは容認した。
このため米大学の一部では、アファーマティブアクションに代わりDEI(多様性、公平性、包摂性)の一環として引き続き、学生や従業員の多様性の確保を重視する施策をとっている。教育機関への助成などを所管する米教育省はトランプ米政権発足後の25年1月23日に「DEIを排除する」と表明し、これらDEI施策に逆風が高まっている。
2025年1月20日(現地時間)にドナルド・トランプ氏が再びアメリカ大統領に就任。政権の行方など最新ニュースや解説を掲載します。