職員のわいせつ行為など虐待が過去最多 三重県内の障害者福祉施設
三重県内の障害者福祉施設延べ22施設で2023年度、職員が施設の鍵を使って女性の居室に侵入しわいせつな行為をしたり、預かる銀行口座から計40万円近くを無断で引き出したりするなどの虐待が確認されていたことが朝日新聞の情報開示請求でわかった。障害者の住所地やもともとの住所地の市町が虐待を認定した。件数は前年度の2倍で過去最多だった。
開示された報告書などによれば、男性施設職員が23年9月、知的障害の女性にハグやキスなどのわいせつな行為をしていたことが判明した。夜間の勤務時間帯の計5回、施設の鍵を使って居室に無断で入り、性的虐待を繰り返した。
11月、女性が婦人科医師や警察に相談し発覚した。虐待を認定した鈴鹿市は未然防止の取り組みが不十分として「運営法人の責任も重大」と断じた。
別の施設では7月、知的障害の女性から、男性生活支援員に「胸を触られ、怖かった」と女性支援員に訴えがあった。
桑名市が男性支援員から聴き取ると、発覚までの約3カ月間で10回程度の行為を認めたため、性的虐待と認定した。商品を保管する部屋で、2人きりで最終確認の作業をしていた時の行為だった。
男性支援員は「業務に1人で対応し判断するしんどさ、家庭環境のしんどさがあり、ストレスの発散先として虐待行為がエスカレートしていった」と説明したという。
別の施設では、職員が知的障害の男性利用者名義の銀行口座から22年6月~23年12月、1回1万~2万円程度の出金を繰り返し、計37万8千円を引き出し、使った。津市は経済的虐待と認定した。
職員は利用者の通帳を預かっており、工賃が入金されていた。法人が利用者からキャッシュカード発行の希望があったため銀行に依頼すると、発行済みだと分かり、12月に無断出金が判明した。職員は「生活費の足しにした」と出金を認め、法人が返済した。
4月には、別の施設の食堂で、他の職員を指導する立場の年長の男性職員が知的障害の男性利用者の服の袖を縛った。利用者は別の職員に結びを解いてもらう際に失禁した。
施設は行政に速やかに通報する義務も怠り、四日市市が把握したのは2カ月以上後だった。市は身体的と心理的の両虐待を認定した。この職員は16年にも暴言による心理的虐待が認定されていた。
8月には別の施設で、作業中に居眠りした精神障害の女性に対し職員が、ハサミで机をたたくなどして怒鳴った。泣き出したり、ひどく恐怖を覚えたりした障害者もいた。亀山市は心理的虐待を認定した。
24年2月には別の施設で、職員に「死ね」と繰り返した知的障害の男性に対し、職員が男性の頭を平手打ちし、胸ぐらをつかんで左側頭部をげんこつで5、6回殴った。作業場の女性2人が泣き出した。亀山市は身体的虐待と認定した。
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三重県によれば、虐待のあった延べ22施設の種別は、障害者支援施設9、共同生活援助4、就労継続支援B型と放課後等デイサービスが各3、生活介護2、短期入所1。
虐待の種別(重複も)は、身体的14件、心理的8件、ネグレクト(放任・放置)5件、性的2件、経済的1件。すでに明らかになっている三重県厚生事業団が運営する「県いなば園」(津市)の身体的1件も含まれる。
虐待者26人の職種は、支援員・世話人などが15人、管理者7人、看護職員とサービス管理責任者などが各2人。被虐待者10~60代23人の障害種別(重複も)は、知的障害20人、身体障害6人、精神と発達障害が各1人だった。
県障がい福祉課の藤谷琢史地域生活支援班長は「施設の通報義務の意識が高まったとはいえるが、職員の人権意識の低さも見られる。研修を続け、業務の効率化など働きやすい環境づくりにも努めたい」と話している。