2025-02-17

25歳だったお母さんへ。

母は高校教師だった。

母は24歳のとき妊娠し、仕事をやめ、25歳で出産した。

それが私。

弟と妹も生まれた。

一番下がうまれとき、母は31歳だった。

今の私と同じ年齢である


はいつも穏やかで、今に至るまでずっと「良い母親」だ。

幼い時、母が私を抱きしめてくれるたびに、私の幸せは母の幸せだと感じていた。


私も高校教師になった。

働きはじめはとにかく忙殺されており、朝6時~夜22時まで働いていた。

休日部活のために朝8時~夕方18時半まで学校にいた。

一校目では吹奏楽顧問だったので運動部よりも拘束時間が長かった。

大変だった。でも、体力はあったし、仕事は楽しかった。

授業もしっかりやった。生徒からちゃんと信頼された。

恋人もいた。忙しいからこそ、ノンストップで動き続けていた。

何より、自分で働いて得たお金自分のために好きに使うことができることを楽しんでいた。


ある日洗面所で鏡をみているとき

母が私を出産した年齢と同じ25歳になっていたことにふと気づいた。

今でもそのときのことははっきりと覚えている。

そのとき鏡にうつった私は、手入れの行き届いた髪の毛、艶のある肌、自分に似合う化粧、洗濯機でガシャガシャとは洗えない質の良い服を着ていた。

奮発して買ったブランドもの香水もつけていたと思う。

そして、変に顔を傾けたり、目を見開いたりと迷走していた大学生時代とは違って、

充実した日々に裏打ちされた良い表情になっていた。

恐らくあの時わたし人生で一番きれいな時期だった。


そして母を思った。

私は仕事に恋に趣味に消費にすべてに満足しているが、

同じ歳の母はそれらを全て持っていなかった。

赤ちゃんを産んで育てるというためだけのために全部捨てた。

今の自分にそれができるか?

絶対無理だった。


まれて初めて母が可哀想に思えた。


母のもとには今もまだ元生徒から年賀状やら手紙がくる。

たった数年の教員人生で、数十年経ってもずっと慕ってくれるような生徒が一人以上いる。

そのことだけで、母がある程度優秀な教員だったのだろうとわかる。


なのに母は、母になるために全部なくした。

一人で楽しく生きていけるだけの能力がありながら、

キャリアを捨て、夫の稼ぎに頼る人生を選ばざるを得なかった母。


何も珍しいことではない。

母の世代はそれが普通だったし、充実した育休制度時短勤務なんてものは無いに等しかった。

また、父は母より年上で大企業に勤めていたので、給与の差の面でも母が職を辞めるのは必然だったと思う。


それでも、25歳の母は本当に幸せだったんだろうか。

もちろん赤ちゃんが生まれたことは幸せだったと思う。

でも、それは本来享受できていた25歳の女性としての幸せの全てではない。

しかも、隣にいる夫はキャリアに傷をつけることなく、ずっと働いて、社会で認められ続けている。



昔の母は、よく図書館で借りた本を読んでいた。

よくビーズ小物を作ったりもしていた。レンタルビデオ映画もみていた。

どれも子育ての合間にできるお金のかからない趣味だ。

ずっと私たち子どもの側にいてくれた。

いつも無地の動きやすそうな服を着ていた。

美容院にいくこともあったが、近所のスーパーに併設されているところで一時間以内で切ってもらうだけだった。

母が口紅差しているところを私は知らない。






私の人生は母の幸せを踏みにじった上に成り立っている。

なのに私は母が味わうことができなかったその幸せを手に入れている。






今、私のおなかに赤ちゃんがいる。

もうすぐ産休はいる。

育休が明けた後は夫より給料が低い私が時短勤務で働く。

でも、それは週に二日だけ。あとの三日間は今と同じようにフルタイムで働く。

夫が自宅勤務かつフレックスタイム制からこそできる。


母が私を生むために犠牲にしてくれた幸せも、

母が私を生むことで得ることができた幸せも、

私は両方手に入れることができるように準備した。

母の犠牲があったから、今の私の選択がある。

母に悪い気もする。

そして私もきっと、何かの幸せを取りこぼしてこの選択をしている。

の子どもか誰かがきっとその幸せも拾ってくれると思う。



お母さん、幸せでしたか

私はあなたの娘でとても幸せです。

でもあなた幸せを壊してしまってごめんなさい。



25歳だったお母さん。

あなた幸せを取りこぼしながら別の幸せを手に取ります

それは私のせいです。

から私はあなたが取りこぼした幸せも、手に入れた幸せも、両方つかみ取ります

あなたにもらった命なので、あなた以上に一生懸命幸せになりたいと思っています



お母さん。いつもありがとう

来月のレストランでのディナー、楽しみだね。

  • 子供が生まれたら仕事よりも育児したくなったりすることもある 育児に専念できる喜びというのもあるから、一概には。

  • たからなんでポエムになんねん

  • バカマンコ 今日も今日とて イージーモード

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