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すべりだい 5.3

実家に帰ると、玄関に見知らぬ靴があった。
おかんに話しかけると、
「あ、おかえり。あんたのファンの子、もう来てるでぇ。
 おとなしぃ子やなぁ。
 ジュースとお菓子出しておいたで。
 それとな・・手ぇだしなや?」

さすがに出さんわ、子どもやで?と答え、久しぶりに自分の部屋に入る。
言われたとおり、花ちゃんは借りてきたネコのようにおとなしく座って、出されたジュースを飲んで俺を待っていた。

「よぉ、会うのは久しぶりやなぁ、妄想王。」
俺は花ちゃんのあだ名を思い出して、ふっかけてみた。
ものの見事にジュースを噴き出してむせながら、
「もう忘れかけとってんから、その変なあだ名で呼ばんとってよ、桑津先生!!」
と抗議のまなざしを向けていた。

花ちゃんが塾生だったころ、俺の授業中でぼーっとしていることが多かったので、クラスメイトがつけたあだ名が「妄想王」だった。
ただ、他の科目の時ではそんな風ではなかったため、他の講師はなぜ花ちゃんが妄想王と呼ばれているのか不思議がられていたそうだ。
俺はそれとなく知っていたんだけど、さすがに言えなかった。笑

「おっきなったなぁ、ってそこまで変わってへんか。笑
 童顔やもんな。笑」
「ちゃんとおっきなってるわ!
 成長もしとるねん!
 ってほんま一言多いねんなぁ。
 久しぶりに会えてよかったよ、くらい言わん?」
「何が大きなってん?
 ん?態度か?笑」

以前と変わらず、軽口を叩きあった。
会うのは3年ぶりくらいだったが、あまり変化が見られないくらい、
ぱっと見は、おぼこい感じだった。
ぱっと見は。苦笑

それからはたわいのない会話をした。
高校時代はこんなことをしていた、それで結局大学には行かずに看護学校に進むことにしたこといったことなどを彼女は話し、俺は塾講師を辞めた後の生活をかいつまんで話した。(もちろん4股してることなどは話してはいない。苦笑)

1時間くらい話し込んでいると、実家の俺の部屋ということでリラックスしたのか、俺は急に猛烈な眠気に襲われてきた。
実は花ちゃんと部屋であった週は本当に激務で、毎日深夜まで残業をしてまた早朝に事務所に向かう感じで、女の子と遊ぶこともなく激務に追われていた。
その日も花ちゃんと会うのでなければ、一日寝てたいと思っていたほどだったのだ。

花ちゃんと話していても、目を開けていられない感じになってきて、
花ちゃんにも、
「あれ、先生大丈夫?仕事忙しい話してたけど、ほんましんどいんやなぁ。」と心配されるくらいな感じになってきた。
ただ、せっかく来てくれたので、いろいろこれからの相談にも乗ってあげないといけないし、飯食いに行くって話をしていたから、必死に眠気をふりほどこうとしていた記憶がある。
急に、「記憶がある」という表記になったのにはわけがあって、実は正直その後のことをよく覚えていないのだ。苦笑
確かに今から10年以上前の話だし、記憶があいまいってのはあるんだけど、どうしてそうなったのかはよく覚えてないんだけれど、いつの間にか俺は花ちゃんを後ろから抱きかかえる形ですやすや眠っていたらしい。(汗

花ちゃん曰く、
「いきなりさ、静かになったなぁーって思ったら、バタンっ!てフローリングの床にそのまま先生、寝ちゃってさ。苦笑
 私がおるのに何寝てるねん!って思ったけど、お仕事しんどいって言ってたし、仕方ないかぁってベッドのタオルケット掛けたろと思って、横に行ったら急に身体起こしたと思ったらさ。後ろから抱きついてきたんやもん。笑
 びっくりしたわさ。これはいわゆるひとつの襲われてる?!って思ったけど、やっぱり寝てるねん。ムニャムニャ言うてたし。笑
 私を抱き枕かなんかと勘違いしとるなと思ってさー。
 めーっちゃドキドキしたし、いきなりこういうシチュエーションなるとはさすがに妄想でも思ってなかったしさ。
 でも嫌な感じではなかったし、なんか先生いい匂いしてたし、ちょっとぐらいなら、このままおってもいいかなーと思ってしまってん。
それがすべての間違いやったなー。このロリコン講師め!!」

とのこと。苦笑
いやはや、ほんとに気絶レベルで眠たかったんだと思います。(汗

時間にして30分くらいだったらしいんですけど、起きたとき、
俺もびっくりしたっていう、ね。
あぁ、やっちまったな、俺、と。苦笑
でも、あれ、服着てるし、俺寝てたっぽい?どんなシチュエーション?
と思いながら、
「あれ、えっと、俺寝てた?」
と抱きしめながら後ろから話しかけると、花ちゃんはちっちゃい声で、
「うん・・」
とだけ答えた。

「そうかー、ごめんな。マジで眠かったんやと思うねん。」
そう真面目に言い訳すると、花ちゃんは
「うん、それはいいんやけどさ、起きたんやろ?そろそろ離しても
いいんちゃうんかな?笑」と後ろ向きに答えた。

「おお、すまん・・でも、お前・・いい匂いするな。
 さすが花ちゃんだけある。
 しかも柔らかいな・・これ。」
ほんとにほんと、無意識なんだけど、俺は花ちゃんのお胸をしっかりとつかんでいた。
いやはや、3年でここまで実るものなのか。

「これやないねん!!さっきからお前、寝てることをええことに、
人のもんを何揉みまくってるねん!!」
花ちゃんはちょっとだけ首を回して、顔を真っ赤にして抗議の視線を送ってきた。
恩師をお前呼ばわりするくらいに成長したのか。立派だなぁ。
(お前が最悪なだけである。)

「あ、すまん。無意識や、許してくれ。
 ってお前、こんなおっきかったっけ?(記憶にないな。。)」
「あほー!!そんなことをええ声で、しかも耳元で囁くな!!!」
そういうと花ちゃんはちょっとジタバタ動いたのだが、次第に頭が冴えて生来のドSが発動していた俺は、後ろからガシっと抑え込んで離さないようにしていたので、花ちゃんにはどうすることもできない。
しばらくバタバタしてたけれど、諦めたようにおとなしくなったので、力を緩めた。
「悪かった悪かった。ほんまに眠たかったんや。でも、花ちゃんのおかげでよう寝れたわ。ありがと。」
本心からそう言った。
「それやったらよかったんやけどさ・・もう終わり?」
身体をくるっと回して俺の方を向いて、そんなことを言うてこられたら、ねぇ。

おかん、ごめん。約束破るわ。笑
そう思いつつ、俺は花ちゃんに優しくキスをした。

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