シリア・アサド政権「あっけない」崩壊の裏事情 弱まるイランの影響力、イスラエル一強の時代も
東洋経済オンライン / 2024年12月11日 14時0分
だがシリア民主軍もバカではないので、ウクライナ側から持ちかけられたロシア艦隊攻撃の話を断った。
化学兵器を失ったアサド政権
シリア民主軍はアメリカ軍の支援を受けていて、すでにシリア領土の4分の1を支配している。HTSがアレッポに入ったと同時にシリア民主軍も動いて、シリア東部デリゾール県支配に成功した。ほんの少し前までは、夢にも見ていなかったことだった。
仮にロシアと戦争になったら、2011年から戦いを始め勝ち取った支配地をすべて失う羽目になる。
そしてシリア政権が崩壊すると同時に、トルコ軍がシリア北西部を支配するクルド勢力のシリア民主軍を攻撃し始めた。トルコもまた新オスマン帝国主義に基づき領土拡大を狙っているのだろう。
シリア政権崩壊の決定打はイスラエルがダマスカスのど真ん中にある化学兵器の倉庫をイスラエルの戦闘機が空爆したことだった。
イスラエルの言い分は、化学兵器がテロ指名組織HTSの手中に落ちるのを阻止するため。だが、これら化学兵器はアサドにとっては最後の望みだった。HTSがダマスカス近郊まで迫ってきたときに反政府勢力を一網打尽にするはずが、イスラエルの攻撃により望みが断たれた。
イスラエルはアサドにイランと手を切り、イラン系武装勢力をシリアから追放するか、ダマスカスの化学兵器を攻撃するか選ばせたのだ。アサドがイランを選んだため、化学兵器倉庫が空爆されたと思っていた。
が、その後にアサドがシリアを去る直前の様子が明らかになった。アサドは湾岸諸国を含むアラブ諸国各国に電話をして、シリアにアラブ軍の派遣を要請したが、断られた。
アサドはトランプ次期大統領にも電話して、「イランと縁を切るからアメリカ軍を派遣して助けてくれ」と懇願したが、トランプは電話にも出ず、「手遅れだ(Too late)」とアサドに伝えた。
化学兵器という最後の切り札を失い、八方ふさがりになったアサドは、もうトルコともイスラエルとも交渉する必要はなくなった。イランの武装勢力を追放する必要も、ロシアの支援も不要になった。
タイミング的に、アサドにとってそんな重要な化学兵器倉庫への空爆を、イスラエルはカタール・ドーハでのロシア、イラン、トルコの3者会談が行われるわずか数時間前に実行した。3者会談時にはアサドが反政府勢力を抑え込める可能性はまったくなくなっていた。
ほくそ笑んだのは誰か
ロシア、イラン、トルコの3者会談でほくそ笑んだのは誰か。
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